それぞれの今後
Side:女勇者
「うぅ…勇那様ぁ~…」
変態巫女の、いやアダトリノが潰れたからただの変態だったな。
変態が疲れたらしく情けない声で縋りついてくる。
城が崩れ、生き埋めに成る前に玉座の裏に外への抜け道を見つけ脱出しようやく外に出れたのだが、
「ここは……ギグの森か?」
太陽の位置から見るに来たと南に黒い煙の壁が有る。確かにかなり歩いたがまさかギグの森に繋がっているとは思わなかった。
いや、ギグの森には地位を追われた権力者が逃げ込むと聞くし有り得る話か。住んでる種族も人間、獣人、魔族にドワーフとバラバラらしいしな。
「……さて、どうしたものか」
「順当に行くならばネイキッド様の領に行くのが無難だと思います。あの街は治安も良く、ギルドも有りますから勇那様なら御金の心配も無いと思います」
「……いや、恐らく姫もそこに行ってるだろう。アダトリノには、あまり居たくないな」
向こうは死んだと思ってるだろうから見つかると面倒だ。
「あ、そうでしたね……どうしましょう?」
「仕方ない。ユビキタスの街か、第2大陸にでも行けば良いだろう。それまではギルドや狩で食い繋げばいい」
「……あの、ロザリーちゃんに会いに行くのは、どうでしょうか?」
……凄い事を言う。私は考えもしなかった事だぞ?
「そうだな……もし近くに見えたら、謝罪しに行ってくる」
「……はい」
まぁ、私に償える事等、有りはしないのだがな……
Side:男勇者
ぐぅぅ……口の中がカオスだ……
フレイヤ気にし過ぎとかイトハも向こうの世界の人だったの?とか色々考えてたのにそんな余裕は無くなった!!
あの激辛デザートをどう攻略するか皆で悩んでいたらジルくんが甘くて美味しいエキスを持って来た。
ロザリーちゃんがちょっと舐めたら凄く甘くて美味しいと言ったので皆でそのエキスを使って攻略しようと言ったのが間違いだった。
そもそもあのジルくんがそう簡単に許すはずがなかった。
甘いエキスと激辛ソースは化学反応を起こしたかのように俺達の口の中で混ざり、融けあい、異様な味に変化した。
……ナスの出し汁に砂糖を大量に入れ牛乳を追加、さらに炭酸にして辛くしたようなそんな訳の分からない味に成って俺達の口の中を蹂躙していった。
…………これならまだ辛いだけの方がマシだった……
「これに懲りたらもう盗み聞きなんてしないでよ?」
そう言って床やソファ、机に突っ伏している俺達のデザートを片づけていく……許されたのか?
「ジル~、これじゃ皆お風呂入れないよ?」
「あ~、口直しにちゃんとした物作ってあげなきゃだね」
「そうだね~。でもやり過ぎだよ?」
「うん。ちょっと反省してる」
あんなバイオテロと変わらないレベルで『ちょっと』!?
てかロザリーちゃんも気にするのは風呂で良いのか!?
「さ~て、何作ろう?アイスは不安がって食べないだろうし……普通に果物で良いかな」
それで頼む。下手に手を加えてると怖くて手が伸ばせない……
今後は絶対に盗み聞きなんてしないと心に誓った。
Side:女A
う~、ヒドイ目に遭ったよ~
まさかジル君があんなに怒るなんて思わなかった……あまりの不思議感触に一瞬気絶しちゃった…下手な魔法よりよっぽど攻撃力あった……
「口直しに果物切ってきたよ…………今回は何もしてないって。ほら」
私達の疑いの視線を受けて無造作に果物を一切れ食べた。これなら安心だね。
「ジル信用な~い♪」
ロザリーちゃん、ホントにジル君の事好き?嬉しそうに言う事じゃなかったよ?
「でもリリーとモリッシュさん気絶してるよ?どうするの?」
……あ、ホントだ。リリーちゃん意識無い。モリッシュさんも白目剥いてる……えっ!?
「あちゃ~、リリーはいいけどモリッシュさんは白目剥いてる……仕方ない。毛布くらいかけてあげよう」
そうゆう問題じゃないと思うんだ!
「うぅ……届かない…」
「あ、姫様。はい♪」
「ああ、有難う……2度と盗み聞きなんてしないと誓うよ」
「ジル、怒るとスゴイもんね~♪」
「そうだね……うぅ、これはどこの最高級品だい?」
「普通に気に成ってる物だよ?」
ヤバいよっ!フレイヤ姫、味覚オカシク成ってる!もしかして私も?……恐る恐る一口…
あぁ~、このブドウはドコで作られたんだろう?こんなに瑞々しいブドウ始めて食べた!……ダメだ、私も味覚壊れちゃってるよ~……
でも何とか動けるくらいに回復した……動ける人だけでお風呂~…さっき見せてもらったらスッゴク広かった♪外と中両方合わせたら8人でもゆったり入れそうだったし女の子全員で行っても平気だよね?
…………この家、イイな~……
Side:女B
う、油断するとクルわね…流石にお風呂にブチ撒けるわけにはいかないわ。
「皆大丈夫?メイドさんスゴイ顔色悪いよ?」
そう、実は1番ヤバそうなのがメイドさんなのよね。意外とゲテモノに耐性ないみたい。
「御心配には及びません。この程度私に掛かれば御茶の子さいさいの瞬殺です」
……ダメだ、何言ってるか全然分からない。あの無表情なメイドさんがおかしくなるって……ジル恐るべし。
「モリッシュと魔王は後かい?」
「流石に動かせないわ。どっちも死んでるしね」
意識不明と白目剥いて気絶。どっちもアウトね。回復待つしかないわ。
「でもホントにお風呂おっきいね♪こんなに広々したお風呂はじめて♪」
「でも1人で入るのには大きすぎるのよね?」
「うん、ちょっと…」
「じゃあジル君と一緒に入りなよ♪」
クリス、ノリが軽いわ…年上に見えない。
「…………」ボンッ!!
「…………どうすんのよ?気絶しちゃったわよ?」
「思った以上に初心だったね~」
「私より酷くないかい?」
そうね。姫様の方がまだ反省してた分マシだったわ。
「……私達がいなければジルと入ったのかしらね?」
「ボウヤはその辺嫌がりそうだけどね。最終的には押し切られるんだろけど」
「そうね」
ロザリーちゃんが涙目に成ってジルが諦めるのが簡単に想像できるわ。
「あ、言い忘れてた。イトハ、近い内にユビキタスから魔王に平和会談の申し込みが行く筈だ。そん時はよろしく頼むよ」
「……何だか分からないけどリリーには言っておくわ」
「ああ、頼むよ。明日の朝までに魔王が回復してれば改めて言うよ」
「そうしてちょうだい。私には何の話か分かんないし」
平和会談……人間と魔族が、手を取り合える状況になるのかしら?
Side:男A
「ジル坊、テメさっきはよくも」
「盗み聞きしたシオ兄が悪いんだよ」
「シオン、今回は言い返せないぞ」
「くっそ~」
これで言い返されたらただの言いがかりだよ。
「しっかし……今風呂はパラダイスか」
……おい!
「シオ兄、まさか…」
「何だかんだで全員美人だ。特に姫さんとメイドさんは胸結構有るよな?」
「何で俺に聞くんだっ!?知らないぞ?見た事無いぞ!?」
「ロザリーだってスタイル悪くないよな?」
「クリ姉はいいの?」
「…………/////」
あ、クリスの裸は想像するだけでアウトなんだ。
「そんなんじゃ見えた瞬間茹で上がっちゃいそうだね?」
「ウルセエ…」
「全く、覗きなんて最低だぞ?」
「勇人さん、トイレはそっちじゃないよ」
シオンを注意しながら立ちあがって風呂の方に行こうとしてるのを止めた。
2人ともエロガキだな。まぁ俺も見たいけど。
「……どうする?俺はクリスさえ見れれば良い」
「ロザリーの見たい」
「普段から見る機会あっただろ?……どっちも捨てがたい」
「言われるまで気付かなかった……」
そうだよっ!普段から覗き放題だったじゃん!!
「てか2又か?」
「えっ……くっ!」
おいおい、確かにどっちも綺麗だけど……
「マジかよ、勇人、お前…」
「いや、待て!俺は、俺はっ!」
「落ち付け」
落ち着いた声でシオンは勇人の肩を押さえた。どうするんだ?
「お前なら2人とも落とせる!!」
良い台詞言った風に親指立てて良い笑顔……アホだ、アホが居る。
まぁ、馬鹿な話してる間に出て来ちゃったんだけどさ。
…………いつか、皆で覗こうっ!と3人で誓い合った。
覗かなくても堂々と見れる関係に成った方が速くないか?と気付いたのはその日の夜、ロザリーに抱き枕にされた時だった。
女勇者が勇者じゃなくなった!?
変態巫女はとうとうただの変態になった!?
そして男Aの料理の全貌が明らかに!?
……あれ食べたときは時が見えました。比喩ではなく
皆さん、胃は御大事に
食べた後、作者は病院に行くはめになりました
今となっては良い思い出です
……嘘だけど
思い出すだけで冷や汗ものの悪夢でした
登場キャラにそんな思いをさせるいじめっ子な作者でした