姫巫女の罪悪感と償い
Side:姫巫女
「ロザリーちゃん、やっぱりジルのトコ行っちゃったわね」
「あれでもロザリーにとっては大事な家族じゃからな。仕方あるまい……ケッ!」
ボウヤ、酷い言われようだね。少し同情するよ。
「ね、シオン君。見に行かない?」
「クリス、お前こういうの好きだな…」
「うん♪」
シオンの嫌味も乙女モード入ったクリスには効かないみたいだね。
「イイんじゃない?もしかしたらジルの意外な顔が見れるかもしれないわよ?」
「……興味深いですね」
「ロザリーちゃんは……多分そのまんまだろうな」
「いや、意外とロザリーの意外な一面が見れるかもしれねえぞ?」
「あの2人、話題が尽きませんね♪」
「まぁ、スキャンダラスなコンビだからね」
さて、皆でキッチン覗いてみようかね。
…………8人でキッチン覗くのは流石に無理が有ったね。まともに覗けやしない。
これは交代で覗くしかなさそうだね。
「よし、ここはジャンケンで決めよう!」
「う~、見たい見たい!」
「ジルめ、ロザリーに傷一つでも付けてみろ…ふっふっふ……」
「入って行ったばかりだから大した話はしてないわよね?……いやでもあの2人なら……」
「もしかして誰も見てないからと御2人で愛を確かめあってたり?でもでも、まだ2人とも子供ですし……ああぁ、気に成ります!」
……この面子思った以上に纏まりが無い。と言うか団体行動に向かない。皆して好き勝手言いまくっている……よく氷の館無事に脱出出来たね……
「フレイヤ様、これはもう気付かれるのを覚悟で全員で覗いた方が無難かと」
「その様だね…………はぁ~」
「俺は戻って飯だな」
シオンは食事に戻って、無い!?
1度戻って皿に料理乗せて来ただけだ。話声だけでも楽しむ気満々だった!!
あ、ボウヤがサラダの盛り付け頼んだね……何か新婚夫婦の空気が漂ってる……う、羨ましくなんかないよ!?
「チッ!ジルめ、ロザリーと一緒に暮しておるからと調子に乗りおって」
「アンタ、ホントに女の子好きよね…」
「違っ、わらわはイトハ一筋じゃ!」
「……それはそれで怖いのよね…」
阿呆なコントのおかげで多少は空気が緩和されたね。このまま見てたら虚しさで心折れそうだったから丁度良いね…
『お城で言ってた秘密って……今聞いても、イイ?』
お、秘密?ボウヤの秘密?少女と会う前の記憶は無いって聞いてるけど…
全員私と同じ様に興味津々だね。メイドさんですら聞きたくて耳がピクピクしてる。
内容は……は?異世界人?実は1度死んでる?勇人やイトハと同じ世界の住人?勇人の召喚に巻き込まれた?
…………思った以上に衝撃的な話だったね……つまり、私が勇者召喚をしなければボウヤとイトハはこの世界に来なかった?
2人がこの世界に来てしまったのは私が原因?
ははっ…何だそれは……そんな相手に、私は氷の館なんて危険な所まで案内させて、あまつさえ危険に曝したって事かい?
…………最低じゃないか、私は……
「……フレイヤ様…」
唯一の救いはボウヤもイトハもこの世界を嫌ってはいないって事くらいだね。これでこの世界が嫌いだったら、私はただの誘拐犯、場合によってはそれ以下だ……
「……ジルくん、話す事にしたんだな」
「勇人は、知ってたのかい?」
「ああ。あの2人に初めて会った時に、俺の価値観を押し付けて、拒絶されて、ジルくんが俺のせいでこの世界に飛ばされたって知った」
「……ジルが浴衣とか天ぷらとか知ってたのは、私と同じ境遇だったからなのね」
「……思った以上にデカい話だったな。何て言っていいか分かんねえ」
「……誰も、何も言う事は出来ないと思います。その権利は、我々には無い」
メイドさんの言う通りこの世界の住人には、何も言う権利は無いだろうね。私に至ってはどれほど罵声を浴びても足りない。
「……勇人、イトハ。今の内に言っておくよ」
「何よ?」
勇人は何も言わずに先を促した。有り難いね。
「この先、お前達が困った時は私が必ず助ける。どんな手段を使おうとも、周りからどう思われようとも、必ず」
「……別にそんなコトしなくていいわよ」
「……済まない。これは、私の我儘だ。私が償いたいから償う。それだけなんだ」
「はぁ……分かったわ。何か困った事があったら、その時は頼むわ」
「ふん。イトハの危機はわらわが全てどうにかしてみせる。人間の姫の手を煩わせる事など有りはしないのじゃ」
「それが1番良いんだけどね」
「……済まない」
勇人は、先程から無言でボウヤ達を見ている。
2人は既に深刻な話からデザートの話で盛り上がっている……少し、羨ましいとも思う。私にあんな経験は無い。
ただ友と楽しく遊ぶ。それすら私は殆どした事が無い。
「……フレイヤ、俺の事は守らなくていい。ただ、あの2人が静かに、幸せに暮せるようにしてあげてくれ。あの2人には、障害が多過ぎる」
……勇人らしい。自分の事は二の次か。
「どちらも守ってみせるよ。ボウヤも、私の犠牲者だ」
私の犠牲者は誰であろうと守ると決めた。その為ならどんな無茶もしてみせるさ。
「……ジル君、ロザリーちゃんと秘密、共有したんだね…私は……」
おや?クリスも何か思う所が有るようだね……当然か。自分よりも幼い子供が、自分よりも辛い状況に居たら誰だって何かしら思う。
「皆様、そろそろ戻りませんとロザリー様とジル様に見つかります」
もしかしたらもう見つかってるかもしれないね…
「……ジルめ、ロザリーにあの様な事を隠して……」
少女の友としては、ボウヤが秘密にしてたのは許せないのかね……私にフォローする資格は無いね。
全員でリビングに戻り、思い思いに過ごす。ほどなくしてボウヤと少女が綺麗に盛り付けられたアイスの様な物を持って来た。
あんな風に覗いていた手前2人の顔を直視出来ない。情けないね……
「デザートだよ~♪新作だって~♪」
「ああ、有り難う……じゃ、改めて」
「「「「「頂きまーす」」」」」
一口。口の中にひんやりとした気持ち良い感触と適度な甘さが広がり痛みが…………
「「ぶはあぁっ!!!」」
「「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
「か、辛っ、痛っ!!」
「「…………」」バタッ
「お、おおぉぉぉぉぉ……」
「…………へ?」
「全く、俺の秘密を盗み聞きしなければこんな事しなかったのに」
やっぱりバレてる…うぅぅ…舌が、辛い…いや、痛い…唇まで腫れ上がりそうだよ…
2人くらい倒れたみたいだけど、確認するだけの力も無い。
「あ、悪いと思ってるなら全部食べてね?」
「「「「「「!!?」」」」」」
それは…食べきらなかったら、悪いと思ってないとみなされると言う事かい…
「ジル、どうなってるの?」
「さっきの俺達の話、盗み聞きしてたからお仕置きに激辛ソースかけといたの」
「あ、だからアタシ達のだけ別に用意してたんだ?」
「うん」
悪魔だ、悪魔が居る。
「……はっ、そうだわ!姫様っ!」
イトハ?何だって大声なんて?
「今が困った時よ!」
!!!???
「ま、待てイトハ!ほら、魔王もさっきイトハのピンチは自分が何とかするって…」
「気絶したわ!」
魔王使えないねっ!自分の嫁が大変な時に何気絶してるんだい!!
「まぁ、誰が食べるんでも俺は構わないよ?それに、姫様がイトハの分全部ってのも面白そうだ♪」
……私の目に移るボウヤは、背後に死神を従えて見えた……
男Aのお仕置きでした
どんな味かは……次話でお話しします
ちなみに作者の友達が昔作った物をベースにしてます
よかったら闇鍋などでお試しあれ!
作者は絶対に断りますが……