男勇者の怒りと変態巫女の想い
Side:男勇者
アダトリノの使者がシオン達の歓迎会で発表した神祖の話は俺には良く分からなかったが、勇那はパーティーの翌日、神祖を捕える為にギグの森に出発した。
そして勇那がギグの森に入った日の夜。アダトリノから全ての国に手紙と写真が届いた。
『人に仇名した神祖の末裔を捕えた。アダトリノの習慣に従い、月始めに公開処刑に処する』
そんな手紙と同封された白黒写真にはロザリーちゃんが写ってた。
「……フレイヤ、俺アダトリノに行くよ」
自室の前の廊下でフレイヤに告げた。
「駄目だ。お前はこの国の勇者なんだぞ?」
落ち着いた声だ。公女として自分の成すべき事を考えているんだろうな。でもな!
「知るか!あの子は今も暗い牢屋に閉じ込められてるかもしれないんだぞ!?ジルくんがロザリーちゃんが連れてかれるのを黙って見てるはず無い!って事はジルくんもやられたって事だろ!?俺は、友達傷つけられて黙ってられるほど人間出来てないんだよっ!!」
「……どうしても行くなら、動けなくなるまで痛めつける事に成る」
「上等だ!俺を止めるって言うなら、この城破壊してでも通してもらう!」
本気だ。いくらフレイヤでもこれだけは譲れない。
「……ロザリーちゃん、捕まったってホントなの?」
なっ、シオンにクリス!?
「……お前達も少女とは面識が有ったんだっけね」
「うん。アダトリノに連れて行かれたんだよね?」
「そうだ」
「私も助けに行く!」
「……ロザリー、神祖だったんだな」
シオンが何か暗い?
「シオン君?」
「クリス、前に話したろ?俺達が隠れて暮す様に成った理由」
「うん、神祖がシルフに変身して人間を襲ったからって……まさかシオン君…」
「ロザリーもジル坊もダチだ。でも、神祖が憎いのは、嫌いなのは……くそっ!」
後ろ向いて歩きだした。
「シオン君!?」
「やめなクリス。事情はそれぞれだ。アンタにシオンを動かすだけの理由が有るのかい?」
「……ないよ。でも、私1人でもアダトリノには行くよ!」
「フレイヤ、俺も行くぜ。止めるなら、戦ってでも行く」
「それで多くの民が死んでもかい?」
っ!
「何の話だよ?」
「お前は勇者だ。お前が思っている以上にお前はこの国の顔なんだ。それが無理矢理他国に押し入って世界中からうとまれている神祖を連れ出してみろ。人間の国全てがユビキタスを敵だと認識するぞ。
今のアダトリノは非常に不安定だ。ちょっとした切っ掛けで良くも悪くも変わる」
「…………だから、友達見捨てろってか?」
「……必要なら、そうする」
「フレイヤ姫!?」
「……まだ、子供なんだぞ?ただの小さな女の子なんだぞ!?それを寄ってたかって苛めて、そんな風にしか変われない国なら、さっさと潰れろ!!」
黙って俺の言葉を聞いてる。『私を納得させてみろ』ってか?
「子供を犠牲にしてしか変われない国に!小さな女の子を使わなきゃ何も出来ねえ国に怯えてんのかよっ!!それでも1国の公女かよっ?そんな様で今まで俺にしたり顔でアダトリノの事話してたのかよっ?アンタはその程度のヤツだったのかよ!?」
「フレイヤ様への暴言は許しません」
……いつの間にか、俺の首筋にデカい中華包丁みたいなのを付き付けてるメイドさんがいた。
「え?だっ、誰!?」
クリスの気持ちは凄い良く分かるけど、今はそれどころじゃない。
「知るか。公女ならそんな隙作るな!」
「……はっ、何も見て来なかった餓鬼が言いたい放題言ってくれる」
ようやく話したか。
「たかがどの国にも入っていない小娘1人の為に大見え切ってくれるじゃないか」
「……小娘だと」
「いや、勇人よりは大人だったね。少なくとも少女は自立して自分の力で生きてた。ボウヤが来る前はずっと1人で生きてたんだって言ってたしね」
「何が言いたい」
メイドさんの包丁が冷たいけど、どうだっていい。今大事なのはフレイヤの言葉だ。
「勇者だ何だと煽てられて、自分じゃ何にも出来ない餓鬼が随分騒ぎ立てるって言ってるのさ。
お前が動かなくても少女に生きる意志があれば自力で脱出する。ボウヤは生きてればお前よりも確実な方法を模索して動くさ。お前如き外野が、考え無しに動いた所で何も出来はしない」
「……なら考える…考えて動く」
「どうやって?お前に出来る事が有るのか?お前が動く余地が有るのか?
無いな。もしボウヤが動いてたらお前は邪魔なだけだ。ボウヤの言葉で言うなら、お前は敵だ」
「……敵でもいい。あの2人を助ける為なら、俺は悪でいい」
「……世界中から蔑まれるよ?歴史上最悪の勇者としてその名を残す」
「それでも、見捨てるなんて出来ない」
「……メイドさん。アダトリノに手紙だ」
「公がもう出しております」
「…………は?」
「ロザリー様の作る魔具はどれも一級品です。その技術を無くしてしまわれるのは惜しいとの事で、アダトリノに手紙を出しております」
「……少女の魔具?」
「城が懇意にしている貿易都市コールスの雑貨屋です。店主が色香の有る美人です」
何か最後どうでもいい情報入った!
「……私達の言い争いって」
「……完全に無意味だったな」
「明日、アダトリノに訪問しますので御準備を」
「私も行くよっ!ロザリーちゃんは絶対助けるんだから!」
とりあえず、何か考えなきゃな。
Side:変態巫女
勇那様がいない。入れ替わりで神祖の少女が牢屋に入った。騎士達の話だと殿を務めたと言う。
……勇那様、どうか御無事で。
とにかく、少女に会いに行く。何を話そうか、決めてはいないけど何か話は出来る筈です!
そうしてジメジメした地下階段を降りて奥の牢屋に行くと、勇那様と同じ黒い長い髪の、表情の無いお人形の様な少女がいました。クロちゃんも一緒です。
「……こんにちは」
「…………」
「私はエルーダ・サモン・ラーク。貴女の御名前は?」
「…………ロザリー」
ボソッと答えてくれました。
「そう……」
会話が続きません!これは気まずいです!
「にゃ~」
「……クロちゃんの事、触ってみませんか?」
何言ってるんでしょうね私は。
「…………柔らかい」
やってくれました!素直な良い子っぽいです……王はこの子を処刑しようとしている……
「貴女が、本当に、神祖なのですか?」
「っ!……お母さんには、そう聞いた」
泣きそうな顔をさせてしまいました……私は昔からこうです…無神経です……
「ジルにも、知られちゃった……きっと、嫌われちゃった…」
勇那様が戦っている少年の事でしょうか?
「ずっと、言おうと思ってたのに……言えなかった……言えないまま、知られちゃった」
……嫌われるなら、自分から嫌われたかったのでしょうか……嫌われたくなかったから、自分で言いたかったのでしょうか……
私には分かりません。
「きっと、嫌われちゃった……ずっと、隠してたから……嫌われちゃった」
「……嫌われても、好きでいればいいんです」
私は何を言ってるのでしょうね……
「私にも好きな人がいます。でも、勇那様は私の事を好きには成ってくれないと思います」
きっと、自分より不幸な人がいるんだから大丈夫だよ、とでも言いたいのかもしれません。
「でも、私は勇那様を愛しています」
そんな対比には何の意味も無いのに、そう言っています。
「勇那様が好きに成ってくれなくても、私の想いは変わりません」
でも、それでこの少女が楽に成れるなら、私の自己満足も少しは役に立ちます。
「だから、貴女もその人の事を好きでいて下さい」
自己満足で誰かの心を楽にしてあげられるなら、それは無神経でも良い事です。
「もしその人が貴女を助けに来たら、素直にそう言ってあげて下さい」
その為らな、私の自己嫌悪なんて有ろうが無かろうが変わりません。
「きっと、その人も喜んでくれます」
「…………分かんないよ……でも、どうしよう」
大丈夫。そこまでしてくれる人が貴女を嫌いな筈有りませんよ。
……勇那様。願わくは、その人をロザリーさんの隣にいさせてあげて下さい……
ようやくの全員集合
そして
ストックが切れそう
書く時間が無さそう
……泣き言ばかりでスイマセン
書きます!
ちゃんと1日1話投降してみせます!
注)酒で頭がおかしくなってます
生温かい目でスルーしてくださると助かります