【※本編読了後推奨】すれ違いのバトンタッチ
初めて会った時、俺にとってお前はただの「可愛い妹」だった。
小さくて、震えていて、俺が守ってやらなきゃいけない存在だと思った。
お転婆で、危なっかしいからとにかく目が離せなかった。
いつからだっただろうか。
お前が俺を見る目に、親愛以上の熱が混じり始めたのは。
お前は不器用だから、隠しているつもりでもバレバレだったよ。
無意識ではあったんだろう。
でも、お前のその幼いゆえの無意識は、4歳上の俺には残酷なほど『明確』だった。
最初は、可愛らしいものだと思った。
妹が兄に好意を抱く、幼い頃ならよくある話だ。
ましてや、俺たちに血の繋がりはない。
勘違いするには十分すぎる条件だった。
そんなお前があまりにも眩しすぎて。
お前のその優しさと、愛らしさと、俺に向けてくる純粋な恋心に、俺も少しだけ当てられた。
俺の心にも、兄妹としては不適切な芽が生まれそうになった。
だから俺は、蓋をした。
俺たちは兄妹だ。
この幼い恋心に付け込んで、お前の未来を縛るような真似はしたくなかった。
だから俺は、徹底して「兄」を演じた。
俺の演技は完璧だった。
歳を重ねるにつれて、お前の瞳から、少しずつ俺への熱が引いていくのが分かったから。
俺の徹底した「兄」としての対応で、お前の恋心は、やがて肉親への信頼へと変わり、そして……消えた。
皮肉なものだね。
お前が俺を「兄」としてしか見なくなった頃、そう望んでいたはずの俺の中で抑え込んでいた種が、どうしようもなく膨れ上がってしまったなんて。
お前の恋が終わった場所から、俺の恋が始まった。
まるで、バトンタッチをするように。
お前が成長し、自立していく様を見て、俺はお前を、妹ではなく、女性としてしか見られなくなっていった。
お前の中から子供の面影が消えていき、どんどん素敵な人へと変わっていったから。
でも、もう遅い。
今のお前の瞳に映るのは、俺ではなく、煌びやかな王子たちだ。
今さら「好きだ」なんて言えば、お前は困るだろう。
俺が演じ続けてきた「頼れる兄」という居場所さえ、失ってしまうかもしれない。
だから、俺はこの想いを墓場まで持っていくと決めた。
その代わり、俺は世界で一番の「お兄ちゃん」になってやる。
恋人の座は譲ってやる、だが、家族の座だけは誰にも渡さない。
幸せになれ、レイラ。
いや、俺がお前を、世界一幸せな「妹」にしてやる。
その相手は俺でなくていい。
お前の心の中にいるのは、もう俺じゃないから。
だから、俺は精一杯、お前を支える。
「兄」としてお前の未来を守る。
それが、お前が向けてくれた、あの恋心を無視し続けた……俺の償い。
そして、俺自身の救いでもあるから。
俺の愛した、永遠の妹。
お前の幸せは、必ず俺が見届ける。
ご覧いただき、ありがとうございました!
これを読んでいるということは、あなたは真のセドリック推しということでしょう。
彼だけが本編で本心を語られていなかったので、彼だけ何もなしで終わらせるのは少しな……と思いまして。
本編完結後の今なら、この独白も許されるだろうと思い、筆を執りました。
【ここから制作裏話(少しメタい話になります)】
実はプロット段階では、セドリックと結ばれる「IFルート」も構想にありました。
ですが、最終的に没にしました。
理由は、執筆を進めるうちに「セドリックは兄として完璧にサポートムーブをする、見返りを求めない愛こそが彼という男を表している」という結論に至ったからです。
私の中で、彼は「本編で恋愛要素に絡んでこない、素敵なお兄ちゃんだからこそ輝く」というキャラ造形になっていました。
なので、今回のような「秘めた想いを昇華させる独白」という形が、彼に対する一番の誠意であり、ご褒美であり、彼に対する最高のハッピーエンドだったのかなと思っています。
ですのできっと、彼にとってこれ以上の幸せはないなと思い、セドリックルートは消滅しました。
彼は影のMVPであり、彼がいなければレイラはこのハッピーエンドに辿り着けませんでした。
そんな彼が、報われないながらも「妹の幸せを見守る」という最強のポジションで最高の幸せを感じていること。
それが伝われば嬉しいです。
これにて、本当に完結となります。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。




