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第18話 熱が下がった翌朝。ベッドの周りで国のトップ3が雑魚寝していました。……徹夜の看病、ありがとうございます


 翌朝。


 目を覚ますと、体が驚くほど軽くなっていた。


 熱は完全に下がっている。喉の痛みもない。


 どうやら、昨晩の「騒がしい看病」が効いたらしい。


 私はゆっくりと起き上がり、周囲を見回した。


 そして、言葉を失った。


「……うそ」


 私のベッドの周りには、国の重要人物たちが、無防備な姿で沈没していた。


 右側の椅子には、イグニス殿下。


 腕組みをしたまま、少し首を傾げて眠っている。その眉間には、心配そうに皺が寄ったままだ。


 足元には、テオ殿下。


 豪快な生き様からは想像もつかないような優しい寝息と美しい寝顔で眠っている。更に、私の足が冷えないように、毛布をかけてくれている手が優しい。


 そして左側には、ウィル殿下。


 私のベッドに突っ伏して、私の手を握ったまま寝息を立てている。天使のような寝顔だが、その手だけは絶対に離さないという執着を感じる。あと、何故か薄らと私の手の甲にキスマークがあるような気がする。


(……皆様、徹夜したの?)


 枕元には、新しい水差しと、綺麗に畳まれたタオル。


 そして、私の体調を記録したメモが置かれている。


『23:00 体温38.5度。解熱剤を投与』

『02:00 汗をかいたため着替え(メイド長)』

『04:00 呼吸が安定。安眠を確認』


 その筆跡は3人のもので、交代で私の様子を見守ってくれていたことが分かる。


 胸の奥が、じんわりと温かくなる。


 この人たちは、本当に不器用で、重くて……そして、優しい。


「……ん」


 ウィル殿下が身じろぎをし、ゆっくりと目を開けた。


 私と目が合うと、彼はパチパチと瞬きをして、それからパァっと顔を輝かせた。


「レイラさん! 目が覚めましたか!?」


 その声に、イグニス殿下とテオ殿下も跳ね起きた。


「レイラ! 気分はどうだ!?」


「熱は下がったか!? どこか痛いところはないか!?」


 3人が一斉に私に詰め寄る。


 その顔には、隠しきれない疲労と、それ以上の安堵が滲んでいた。


「……おはようございます、皆様。おかげさまで、すっかり良くなりました」


 私が微笑むと、3人は深い深いため息をついて、その場に崩れ落ちた。


「そうか……本当によかった……」


「やれやれ、生きた心地がしなかったぞ」


「やっぱり、元気なレイラさんが一番美しいです」


 大袈裟だ。ただの疲れでダウンしただけなのに。


 でも、そんな風に心配してくれる家族のような存在ができたことが、何よりも嬉しかった。




 ◇◆◇




 その後、私たちは部屋で遅めの朝食を囲んだ。


 メニューは、テオ殿下が厨房で作らせた(一部自分で作ったらしい)特製の薬膳粥だ。


「どうだ? 味は薄めにしたが」


「美味しいです。……テオ殿下、お料理もお上手なんですね」


「戦場じゃ自炊が基本だからな。栄養バランスと消化の良さは完璧だぞ」


 彼は少し照れくさそうに鼻をこすった。


「レイラ。これからは無理をするな」


 イグニス殿下が、コーヒーを飲みながら静かに言った。


「お前が倒れると、私の心臓に悪い。……業務の効率も落ちる」


「はい。肝に銘じます」


「それと……昨日のこと、覚えているか?」


「昨日?」


「うなされている時に、お前が言った言葉だ」


 3人が、妙に真剣な顔で私を見つめてくる。


 私は首を傾げた。


「何か、失礼なことを申し上げましたか?」


「……いや。忘れているなら、それでいい」


 ウィル殿下が、意味深に笑った。


「ただ、『一人は寂しい』とか『行かないで』とか……とっても可愛いことを仰っていたので、録音できなかったのが悔やまれます」


「えっ!?」


 私はスプーンを取り落としそうになった。


 嘘。


 そんな恥ずかしいことを口走っていたの?


「ま、まあ、熱に浮かされていた戯言ですので! 忘れてください!」


「忘れるものか。俺たちの宝物だ」


 テオ殿下がニカっと笑い、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「安心しろ、レイラ。お前が嫌だと言っても、俺たちは二度と離れない。寂しい思いなんてさせないさ」


「……」


 真っ直ぐな言葉。


 それが、今の私には何よりも心地よい「鎖」のように感じられた。


 私は小さく息を吐き、そして観念したように微笑んだ。


「……ありがとうございます。これからも、よろしくお願いしますね」


 私がデレると、3人は顔を見合わせ、そして同時に顔を真っ赤にして天を仰いだ。


「……なんという破壊力だ」


「心臓が持たないぞ」


「今の笑顔、永久保存したかった……」


 この騒がしい朝が、私の新しい日常の象徴だった。


 こうして、私の「初めての休日」と「看病騒動」は、3人との絆をより強固なものにして幕を閉じたのだった。

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