木枯らしのワルツ
冷たい風が吹き抜ける。
学校帰りの公園、枯れ葉が落ちる並木道。
チャックがあいたままのスクールバッグを肩にかけた幼なじみが、木枯らしにさらわれたプリントを追っている。
「やばいって、テストだって!」
焦る彼は、舞い上がるプリントを取り返そうとステップを踏んでいた。
まるでワルツを踊っているような、それにしてはめちゃくちゃな、情けない動き。
渾身の伸びでなんとかプリントを取り返した彼に、私は笑いながら声をかけた。
「0点ワルツ!」
彼はプリントをぞんざいにスクールバッグに突っ込んで、私に言い返した。
「30点だし!」
テストの点数じゃないよ、とさらに笑う私に、彼は気恥ずかしそうに唇を曲げた。
「俺が0点なら、お前のワルツは何点なんだよ」
「私、ダンスは嗜んでこなかった人生なので」
「ふぅん」
途端、彼にぎゅっと手を握られた。
体を引かれ、いきなり始まった彼の大きく円を描くステップに、私は巻き込まれた。
「えっ、ちょっと!」
「はは、ひでぇステップ!」
「転ぶって、離してよー!」
「お前のワルツも0点だな!」
振り回される私は足がもつれて転びそうだし、笑って振り回す彼もよくわからないステップを踏んで転びそうになっている。
木枯らしの吹き抜ける、夕暮れ時の公園。
夕陽が落ち葉を照らした、オレンジ色のステージで私たちはくるくると回った。
秋の終わり、冬の始まりを告げる木枯らしの冷たさなんて、お構いなしに。
お互いの手のひらが熱を持つほどに高揚して、笑って、やがて私たちは落ち葉の中に倒れ込んだ。
「バカすぎるな、俺ら」
「意味わかんない、いきなり回り出すとか」
「ワルツな、ワルツ」
「ただ回ってただけでしょ」
上がった息で、また二人で笑う。
「ずっと二人でバカやっていこうな」
「時と場合によるわ」
「ずっと二人で笑い合えたらいいな」
「それはそう」
「卒業しても、ずっと二人で」
それは、どういう意味だろう。
意図がわからず顔を向けると、息を整えた彼が秋空に言葉を紡いだ。
「俺、お前が好きだよ」
それは、どういう――。
とっさに頬が紅潮して、違う意味かもしれないのにと否定する私の頬を、彼が指でつついた。
「そういう意味で」
つんつんと触れる指に恥ずかしさが止まらなくて、私は彼の指を捕まえた。
「……あんたのワルツに付き合えるのは、私くらいでしょ」
木枯らしが吹く。
秋の終わり、冬の始まりを告げる、冷たい風。
その冷たさが、頬を火照らせた私たちには、ちょうどよかった。




