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REGALIA FLAME  作者: ふんころ
アルメリア編
7/15

フレアの現実1

そして翌朝。

 晴天――というより、朝から肌を刺すような暑さだった。人工太陽はすでに高く、夏の光を容赦なく降り注いでいる。半袖と短パンで寝たのは完全な失敗だった。夜の間に何度刺されたのか、顔も腕も脚も、どこもかしこも赤く腫れ上がっている。


「かゆいなーもー!」


 これが目覚めて最初の言葉ってどうなのよ。

 せっかく野宿に慣れてきた気がしていたのに、身体中が騒ぎ立てるように痒くて、テンションは最悪だ。


「うぃーす。えっと……」


 声のほうを見ると、ラースが寝癖を立てたまま、のそのそと起き上がっていた。


「起きたのね、ラース。あと、私ルナね」


「あぁ、そーだったな。ルナ、おはよ」


 軽く笑って返すラース。その顔は無邪気と言えば無邪気だが、同時に申し訳なさそうな色も混じっている。そして次の瞬間、案の定、余計なひと言を放り込んできた。


「おれ、道迷っちまって…………」


 私はまたしても宇宙猫になった。

 首をかしげて固まるしかない。


Hun???


「あんた、アルメリア住みなんじゃないの!?自分の街までの道で迷う!?普通!?」


「おれ方向音痴で……すまん。道案内してくれ!」


 滞在人の私が、首都住みのあんたに道案内……?

 なにその逆転現象。こんなことある?


 でも――私は内心でガッツポーズする。地図を持ってきていたのだ。元お嬢様の準備力をなめないでほしい。


「とりあえず着いてきなさい? 目的は合致してるんだから」


 ラースはほっとした表情で頷いた。

 そうして、私たちは門へ向かって歩き始めた。




 しばらく歩くと、巨大な城門が視界に入り始める。

 近づけば近づくほど、人工太陽の光に反射した白い壁が眩しく、威圧感を増していく。


「門の前に着いたわね! さっそく証人になってほしいからお願いね!」


「まぁ約束だしな! おーい、門番さーん!」


 ラースが手を大きく振る。

 門番は最初、のんびりとした顔をしていたが――ラースを見た瞬間、心底呆れたように眉をひそめた。


「おいラース……またお前、道に迷って朝帰りかよ……」


「しゃーねーだろ。俺方向音痴なんだよ。仕事は終わらせたからいいだろー?」


 まるで日常会話のように言い返すラース。

 どうやらこれは“いつものこと”らしい。


 門番の視線が、こちらに移ってくる。

 私を見る目には、警戒がはっきりと浮かんでいた。


「それにしてもそいつ……証明書ないのに、この門の中入ろうとしたやつじゃねーか。ラース、どうしたんだよ??」


「あー、証明書ねえから証人になったんだよ」


 ラースが軽く答えると、門番はバツが悪そうに眉を寄せ、私に尋ねる。


「ここに来た目的はなんだ?」


 私はためらわなかった。


「あたし、フレアに入りたいの!」


 その瞬間、門番の顔が引きつった。

 本気でドン引きしている。


「おまえ、まじで……? アレに入りたいの……?」


「当たり前じゃない! あたしを救ってくれた組織よ?」


「ま、まぁ好きにしろよ? ほら、開けてやる」


 門番は匙を投げたように肩をすくめ、門を開いた。

 私はその反応の意味が分からず首を傾げるしかなかった。


 だが――その謎はすぐに理解することになる。




 門を越え、フレア本部へ向かう細い道を進む。

 レンガ造りの街並みを抜け、目的の建物の前に立った瞬間、私は息を飲んだ。


 ――空気が重い。


 入り口をくぐった途端、辺りの空気がひやりと冷たく淀み、張り詰めた緊張感が肌を刺す。

 そこに漂うのは崇高さでも、英雄たちの誇りでもない。


 もっと、別のものだ。


 疲弊。

 絶望。

 焦燥。


 かつてあたしを救ってくれた“あの背中”のイメージとは、あまりにも違う。


 そして――理解した。


 門番の引いた顔の意味も。

 ラースの複雑な沈黙も。


 フレアは、壊れかけていた。

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