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REGALIA FLAME  作者: ふんころ
アルメリア編
5/15

月光

倒れている黒髪の青年に、私は――躊躇なく――私の最後の食料を与えてしまった。

 ――ああ、なんてことをしてしまったのだろう。

 こんな奴に構っている場合じゃない。生き延びなきゃ、私は!


 でも、もういい。

 この人は今の私にとって、そんなに重要じゃない。

 今必要なのは――首都アルメリアの門を突破する方法、そう、証明書の問題だ。


 そして、ある考えが閃いた。

 ――私の能力を使えば、侵入できるんじゃないか?


 “ドアを開け閉めする魔法”。


 小さく呟く。

 「ふっふっふっ……首都の門を魔法でこじ開けて、深夜に侵入してやろうじゃないの! 我ながら天才ね!」


 犯罪である。

 ――本来なら、この思考は慎重になるはず。

 しかし、過酷すぎる環境と慣れない野宿で、私の思考回路は完全にバグっていた。


 そんなことはさておき、私は本能のまま、首都アルメリアを目指す。

 暗闇が深くなり、体力は限界に近づいている。徹夜は地獄だ。

 寝る準備をしながら、ふと空を見上げる。


 「三日月……かぁ……」


 あの日、助けられた日の夜も、確か三日月だった気がする。

 胸がぎゅっと痛み、あの背中を思い出す。


 ――やっと、眠れる。そう思った瞬間だった。


「よぉ。メイビス家の元、嬢ちゃん。」


 悪寒が背筋を走った。

 ――なぜ、こんな輩たちが私のことを知っているのか?


「だ、だれよ、あんたたち!!!」


「いーじゃねぇかよ。こんな夜に女が出かけてりゃ危ねーぞ? 俺らみたいな奴らに狙われるんだろ???」


 ゾロゾロと、数人の男たちが現れた。

 全員、悪意に満ちた笑みを浮かべている。


「あ、あたしに手を出したらどうなるか――」


 言葉を飲み込む。

 そうだった、もう私はメイビス家の令嬢じゃない。

 理想も仮面も、もう意味はない。


「……あたしがビビるわけないじゃない!! この輩!」


 咄嗟に唾を飛ばした。

 ――我ながら気が強い。

 でも、そんな気合も虚しく、次の瞬間、拳が私の頬を打った。


 ――殴られる。


 メイビス家の人質として扱われ、力なく地面に押さえつけられる。

 せっかく、フレアまでもう少しだったのに……。

 もうだめ、私は目を閉じた。


 その瞬間――。


「だ、誰だこいつはァァ!?」

「うわぁ!逃げろ!」


 悲鳴が響く。


「こ、こいつ……!!まさか……フレアの……」


 暗闇から、圧倒的な魔力の気配が現れる。

 そして同時に――







 【名月・弥生ノ太刀】







 ――その名が夜空に轟いた。

 鎌のように鋭利で、空間さえも切り裂く技。

 目の前の敵たちが、一瞬で次々と倒れていく。


「“月光”だぁぁぁぁ!? ぐわあぁぁぉぁあ!?」


 振り返る間もなく、仲間は討たれる。

 黒衣の死神のような存在が、三日月の光に照らされて立っていた。


 ――その姿は、まさに。






“月光”






 三日月に照らされ、赤い紋章が燃え上がるその背。


「あの人は___!」

 人は違えどかつて憧れた、あの背中の再来。

 先程見た人とは思えない、圧倒的な力と存在感に、私は言葉を失った。


 この瞬間

 あたしとラースの出会いが確かに私たちの運命をを動かし始めたのだと思う。

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