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REGALIA FLAME  作者: ふんころ
アルメリア編
3/15

出会い(こっちがep4)

メイビス家を出て3日程が経つ。

それにしても――虫が多い。汚れる。ベッドはない。汗は止まらない。

 この環境でどうやって寝ろっていうのよ。


「寝れるかーーーっ!!」


 叫び声が夜の空気を震わせた。人工太陽が沈み、夜の帳が降りる。空に月はなく、代わりにぼんやりと浮かぶのは、人工光源が生み出す白い幻の輝き。

 けれど、それがどんなに文明的でも、ここはただの野宿地。地面はボコボコ、湿気は最悪、そして


「また虫に刺された!!もーーーっ!なんなのよーーー!!」


 腕も足も真っ赤。掻きむしった跡が痛むたび、貴族の頃の柔らかな肌が遠い過去に思えた。

 もう嫌。もう歩きたくない。――そう思っても、ここで立ち止まるわけにはいかない。


 食料はある。……あるはずだった。

 家を飛び出す前、メイビス家の冷蔵庫からこっそり拝借してきた高級食材の数々。

 だが、私は知らなかった。人工太陽の熱調整で季節が変わるこの世界――今は夏。しかも、この地は灼熱地帯。


 1日ならギリギリ持つかもしれないが当然、数日も冷蔵もされずに食べ物を持ち歩けばどうなるかなんて、教わっていない。

 メイビス家の食卓には、いつも完璧な温度と味の料理しか並ばなかったから。


「……なんか、変な匂いがする。」


 風呂敷を開けると、甘酸っぱい腐臭が鼻を刺した。中身はどす黒く変色し、もう原型を留めていない。


「……く、腐ってる……?食料が……ナイ……え、食べ物って……腐るの?ほぇ???」


 愕然と立ち尽くす私。頬を伝う汗が涙に変わる。

 ――まさか、食料の管理ミスで人生詰むとは思わなかった。


「オワタ……オワタ……いや、待って……!このあたしがこんなところで終わるわけにはいかないの!」


 まだ、腐ってないものが一つだけ残っている。一食分。

 私は震える手で風呂敷をまとめ、再び背負い直した。


「……よし、食べよう。」


 そう呟いたそのとき――視界の端で、何かが倒れていた。

 人影。道の脇、砂埃の中に、ひとりの青年がぐったりと倒れている。


「ちょ、ちょっと!?大丈夫!?」


 私は駆け寄った。

 あの時の――あの“背中”が脳裏をよぎる。

 幼い日のあの瞬間。助けられた自分。救われたあの声。

 今度は、私の番だ。


「もう、大丈夫よ。」


 震えながらも、優しく声をかけた。

 その青年がゆっくりと顔を上げる。黒髪が陽炎のように揺れ、目はどこか焦点が合っていない。


 けれど――その服に刻まれた紋章を見た瞬間、私は息を呑んだ。


 燃え上がる炎のような紋章。

 それは、私が憧れ続けた組織――“フレア”の証。


 胸の奥が高鳴る。

 この人は……もしかして、私を救ってくれたあの“誰か”と関係があるのでは――。


 そう思って声をかけようとした瞬間、青年は口を開いた。


「……はらへった……みちまよった……。」


 ――バタリ。


 地面に倒れ込む音。

 あっけなく、再び沈黙が訪れた。


「…………。」


 思わず宇宙猫のような表情になる。目が点、口が半開き。現実に戻るまで数秒を要した。


「え、ちょっと……嘘でしょ。なにこの人……。」


 私は呆然とした。

 目の前で倒れている青年の服には、確かに“フレア”の紋章がある。けれど――その姿は、私の憧れとは程遠かった。


 情けない。頼りない。

 “英雄”という言葉のかけらもない。


 胸の奥にあった理想が、一瞬で崩れ落ちる。

 それでも、放っておけなかった。

 ――放っておくのは間違ってるから。



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