書庫での合流とまさかの戦果
今日も間に合いませんでした……。
毎度毎度ご迷惑をおかけしております……(・ω・;)
新しい三人の仲間を隠れ家に紹介してから数日が経った。
あの時のタリエの困惑っぷりは凄まじかったな。
何度も何度も「先輩の弟さんと妹さんと婚約者さん……?」って確認してきて。
そりゃそうだよな、急に知らない三人が現れて、しかも全員が俺の家族か婚約者を名乗ってるんだから。処理が追いつかなくて当然だ。つい最近、俺と俺の姪が同一人物だって知ったばかりだし、もしかしたら「コイツらも全員アシェルなのか……?」とか考えててもおかしくねえ。
んな訳ねえか。なんかじっとりした視線を感じたが、多分そういうことじゃねえよな。
カルとロエマ、それにレミが戻ってきてからは、もっと大変だった。
つってもロエマは「あらあら~! 賑やかになったわね~!」って、のんびりした調子で受け入れてくれた。
あの人は懐が深いっていうか、細かいことを気にしないタイプだからな。ネルを見て「可愛い子ね~」って言って、すぐに打ち解けてたし。ネルもまんざらでもなさそうだった。俺以外にされたこと無いからか、ロエマに頭を撫でられて照れくさそうにしてたのが印象的だったな。
ちょっとだけ威嚇もしてたけど。なんだったんだアレ。
だけど、カルは明らかに戸惑ってた。
元々カルは人と話すのが苦手なヤツだからな、急に知らない人間が三人も増えたら、そりゃ困るよな。
でもリアンが「兄貴の友達なら俺の友達だ!」とか言って積極的に話しかけて、その後意外に打ち解けてた気がする。アイツ、ずっと黙ってたけどそこまで嫌がってる様子ではなかったし。職人同士、通じるもんがあったのかもしれねえな。
こっそり「お前も弟じゃねえよな……?」って聞いてたのは無視することにしよう。
レミは……まあ、レミだったな。
いつもの笑顔で「初めまして、レミと申します」って挨拶してたが、目の奥が全然読めねえのはいつも通りだった。分かりやすく友好的な視線を投げかけてるのは相変わらず俺にだけで、新しく来た三人のことをどう思ってるのかはさっぱり分からねえ。
ただ、俺が「こいつらも仲間だ」って言った時に「承知いたしました、ご主人様」って即答したから、少なくとも敵とは見なしてねえんだろう。多分。
マドリーはレミを見てどこかピンと来てたみたいだった。正しい判断だと思う。
「にしても……こっちで動ける準備を完全に終わらせてるとはな……」
聞いたところによると、リアンとマドリーの二人は、王都に来て即座にバレク家とグロス家の両方で王都への支店を準備したらしく。
ただ俺を探すだけじゃなくて、こっちに来る時の活動拠点や、これに乗じて家の名前を上げておこうっていう強かさが垣間見える。
リアンはバレク家の代理人として、家の酒を本格的に王都で売り出すため、酒の卸先を探してるんだと。「兄貴が作った酒をもっと沢山王都で売るんだ!」って、目をキラキラさせてたな。
リアンがやる気なのは良いことだ。王都は人が多いし、良い取引先が見つかるだろ。
マドリーはグロス家の代理人として色んな商会との交渉を進めてるらしい。主に新しい取引先を開拓してて、計算が早いから損得勘定も上手いと評判だそう。
隠れ家にも何度か顔を出して、タリエの書類仕事を手伝ってくれてるみたいだ。
で、ネルはというと……墓荒らしのことでキレてるマドリーによって、グロス家支店の店員として扱き使われているんだとか。
おかげで本人はマドリーにちょっと苦手意識があるんだと。
……俺が言うのもなんだが、まだ根に持ってたのか。
一応そのことは謝っておいたし、ネルは俺の指示を受けてただけなので、優しくしてやってほしいとも頼んでおいたが……マドリーは「彼女は油断できないから」とか言ってやがった。
まあ、職場って点で見れば間違いなく優良だし、ネルが安定した職に就けてるってことでひとまずは安心しておくことにしよう。
「えーと……書庫はどっちだっけ……」
で、今日はエリザベトと一緒に、王城にある書庫内の資料室で上層部の腐敗に関する資料を探すことになってる。証拠集めの一環ってやつだ。
タリエとカルの件を正式に片付けるためにも、やれることはやっておきたい。
正直、資料室で何が見つかるかは分からねえ。古い記録とか、過去の不正の前例とか、そういうのがあれば手がかりになるかもしれねえが……まあ、俺は大々的に動ける手段を知らねえし。何もしないよりはマシだろう。
さて、そろそろ時間だな。
エリザベトを待たせる訳にもいかねえし、いい加減さっさと書庫を見つけねえと。
*
「遅かったな、兄上」
「悪い……ちょっと道に迷ってな」
なんとか書庫に辿り着いたが……やっぱ俺に王城は広すぎる。
未だに把握できてねえとこがあるし、廊下はどれも似たような見た目だし、何度か侍従に道を聞いてようやくここまで来れた。王子なのに道に迷うってのも情けねえ話だが……成り代わってまだ日が浅いんだから仕方ねえ、よな?
「兄上は相変わらず奇行を繰り返しているのか。侍従を捕まえて案内させればいいだろう」
うっ……。
いやまあ、中身が別人だからな。お前たちみたいに「もっと人を使えば効率的だ」みたいな頭してねえんだよ。こっちは基本的に使われる側の立場だったんだし。
過去に関係性があった訳でもないコイツにそんなこと言える訳もねえが。
「別にいいだろうがよ……ほら、さっさと入ろうぜ」
「ああ」
扉を開けると……おお、若干埃っぽい。
天井まで届く棚がずらりと並んでて、古い本や巻物がぎっしり詰まってる。なかなか壮観だ。王城ってのはこんな書庫まであるのが普通だってのかよ。やっぱり俺の価値観とは規模が違うんだな。
「さて……どこから探すか……」
「おや? 兄上、自分で探すのか?」
「ん? そうだが……」
え、何言ってんだ。
自分で探すって……当たり前だろ。それ以外にどうやって探すっていうんだ。
書庫の中が勝手に変形して本が自動的に出てくるとでも言いたいのか? 俺が知らないだけで王城の書庫ってそういう機能があったり?
「基本的に王族であれば、使いに探させるものだ。自分で探しに行くというのは珍しいな……」
「あっ……」
「しかし、確かに──これは内密の調査だ。内情を知る人物は少ない方が良いな。侍従達を下がらせよう」
「あっ、えっ」
その手があったのか。
確かにそうすれば自分たちだけで探さなくてもいいじゃねえか。しまった。
俺はそこまで考えてなかったが、どんな資料を探してるか知られたら情報が漏れるって理由でエリザベトは納得したらしい。侍従に指示を出して、俺が止める間もなく書庫は俺たち二人だけになっちまった。言わなきゃよかったな。
……まあ、いいか。関連しそうな資料を探して精査するだけだからな。別に二人きりでもなんとかなるだろ。
「そういえば、例の兵士の件はどうなった?」
「問題は無さそうだ。推薦者たちの身元も確認したが、関連性こそ見えないものの、特に怪しい点は見当たらなかった。このまま特に問題を起こすようでもなければ、採用を検討できるだろう」
おお、そりゃ朗報だ。
ルシアの推薦者たちが怪しい連中だったらどうしようかと思ってたんだ。
関連性が見えねえってのはちょっと不穏だが、悪い企みに巻き込まれてねえってことが分かっただけ良い方だろう。
「礼を言われることではない。優秀な人材を確保するのは、王家にとっても利益になる」
「そうか」
まあ、エリザベトにとっては「優秀な人材の確保」って話になるよな。
俺としてはルシアのことが心配だっただけなんだが。立場が違えば見方も違うってことか。でも結果的にルシアが採用されるなら、俺としては文句ねえ。これでアイツの夢は叶うことになる訳だ。
「じゃあ──腐敗について調査の方はどうなってる? 俺の方はからっきしだが」
「いくらか進展はあった」
おお!
「件のヴェインと繋がっていた人間、不正に関与していた可能性のある者を複数名特定した……ただ、証拠は足りないが」
あー……。
証拠が足りねえ、か。
疑わしいだけで動いたら、逆に反撃される可能性があるし、やっぱ証拠を固めてから一気に叩くのが正攻法だよな。
タリエとカルの件を正式に片付けるためにも、ちゃんとした証拠が必要なんだ。アイツらはまだ「再調査中」って扱いで、正式に無罪になった訳じゃねえ。容疑を晴らすには、証拠が揃うまで待たねえとってことか。
「しかも──腐敗はこれだけではない。調べれば調べるほど、根が深いことが分かってきた。ヴェイン一人の問題ではなかったということだ」
「げ、芋づる式ってヤツかよ。面倒くせえな……」
少ないとは思ってなかったが……こりゃ思ってたより多そうだな。利益を共有してる連中がいて、お互いに庇い合ってる。だから証拠を固めるのが大事なんだろうが、気が遠くなりそうだ。
「そのため、ウッド侯爵と手を組むことも視野に入れるべきかもしれない」
「ん? ウッド侯爵?」
え、誰だそれ。
ああいや、エリザベトが「知ってて当然ですよ」って体で話してるんだから、このリアクションはおかしいか。王族なら侯爵の名前も知ってて当たり前なんだろうな、ややこしい。
「……あー、アイツか。えっと、今、そういうことしてるんだっけ」
「ああ。ウッド侯爵が教会について独自に調査を行っているという話は兄上も聞いているだろう」
「あっそうそう、そうだよな、そうだったぜ」
なるほどなるほど。
その言い方だと、光明の教会について独自に調査してる大貴族がいると。
多分ソイツも教会に何か思うところがあるんだろうな。
何だろう。自分の領地に信者が多いとか?
「ただ、兄上も知っての通り。あの者とは関係が良好とは言えない。借りを作ると後々面倒なことになるだろう」
敵の敵は味方ってやつか。
光明の教会を倒すって目的の上だと協力できるかもしれねえが、それで一度頼ったって事実があると王家としちゃ困っちまうと。
「じゃあ、最終手段ってことか」
「そうだ。できれば自力で片付けたい」
成程な。味方は多い方がいいが、借りを作るのは厄介だ。
特に貴族相手となると、後で何を要求されるか分かったもんじゃねえ。
助けてもらった相手に後から無茶な要求をされて、断れなくて面倒なことになったことは俺だっていくらか経験がある。借りってのは、作る時は楽だが返す時が厄介なんだ。最終手段ってのは妥当な判断だろう。
「じゃあ、そのためにも──この資料室に何か発見があることを祈るしかねえな」
「そういうことだ、兄上」
*
「『伝説の魔女ノエリス』……?」
……なんかすげえ心当たりのある本が置いてあるんだが。
「……気になる。めっちゃ気になるぞ……」
腐敗に関する資料を探してたはずなのに、なんでこんなもんが目に入ってくるんだよ。
いや、古い書庫だから色んな本が混ざってるのは分かるが。よりにもよってこの名前かよ。
……エリザベトは近くにいないよな?
腐敗の調査が本題なのは分かってるが、ちょっとだけ、ちょっとだけ中身を確認するぐらいならいいよな。
「えーと、何々……」
表紙を開いた瞬間、これでもかって古い紙の匂いが鼻をついてきやがった。
かなり年季の入った本だな。文字も今とは少し違う書き方で、読みにくいところもあるが……まあ、なんとか読める。
『ノエリスは、かつて辺境の村に生まれた少女である』
「ふむふむ」
『彼女は村の風習により生贄に選ばれたが、その瞬間に強大な魔力に覚醒した』
「……おお」
ノエリス本人から聞いた話と一致してるな。
生贄に選ばれて、儀式の最中、魔女に覚醒したって言ってたもんな。
『当時、この邪教が教える儀式によって魔法使いに目覚めた者は、正気を失い、契約者の従順な僕となることが普通だが──ノエリスは違った』
「ん?」
え、そうなのか? それについては知らなかったぞ。
まあでも、普通に考えれば、確かに。
俺はノエリス本人の話しか知らねえし、ノエリスも自分自身の経験しか知らねえから、普通はどうなるって分からねえのか。
『覚醒したノエリスは、自らを生贄に捧げようとした、邪教に染まった村の者たちを皆殺しにした。その方法は酷く残忍であったとされる』
「……なんかところどころ憶測が」
『彼女の魔力は当時の魔法使いの中でも別格であり、それが正気を保てた理由の一つとされている』
「……確かに、自分は別格で強いとか言ってた」
『以後、彼女は各地の邪教の拠点を破壊して回った。その際、彼女は巨大な竜の姿に変身し、炎で全てを焼き尽くしたと伝えられている』
「……へえ」
この竜ってのは見たことないが、ノエリスはデカいトカゲだって言ってたよな。
というか、世界中で暴れまわったって言ってたけど……俺はてっきり、国とか町とかに攻め込んで焼き尽くしてたのかと。ここに書いてある通りだと、自分を魔女にした──邪教ってヤツらだけを狙ってるように見えるが。
ほとんど無自覚だったのか、それとも──一般人には手を出さず、自分に酷い仕打ちをした邪教のヤツらを狙って殺しまわってたのか……ここにノエリスがいれば聞けるんだが。
『ノエリスの破壊活動により、かつて各地に存在した邪教の拠点はほぼ壊滅した。同時に、儀式の手法が失われ、ノエリスに立ち向かう者も全て焼き尽くされたため、魔法使いたちも数を大きく減らすこととなった。これにより、現在では魔法の才能を持つ者はほとんど存在しないと言われている』
……成程な。アイツが「昔はもっと魔法使いがいたのに」って言ってたのは──他でもねえノエリス自身が原因だったのか。
魔法使いを生み出す大本の「邪教」とやらが、恨みに駆られたノエリスによって拠点を潰されてった結果、必然的に魔法使いの数も一緒に減っちまったと。
『邪教を打ち倒していくその姿から、彼女は「伝説の魔女ノエリス」として崇められるようになった』
「……」
『彼女は自身の後追いを減らすため、わざと自分を恐怖の対象として見せることが多々あったという』
「……」
『そしてある時、ノエリスは忽然と姿を消した。ある者は彼女が死んだと言い、ある者は彼女がどこかで眠りについていると言う。真相は定かではないが、彼女の伝説は今なお語り継がれている』
「……姿を消した、ね」
実際はあの森に引きこもってただけなんだが。
俺が会った時も普通に生きてたし、普通に喋ってたし。
でも……なんか、アイツに対する印象が変わったな。俺にとっちゃアイツはただの性悪だったんだけど、ここに書いてある話を読む限り、結構良いヤツに思える。
実際は美化されてるだけで、昔から性根の腐った悪戯をしてたのかもしれねえし。逆にこれが全部真実で、アイツはわざと悪ぶってるだけなのかもしれねえし。
真相はどっちか分からねえが、この本を読めて──良かった気がする。
今度アイツに会うことがあれば聞いてみようか──
「──兄上? 何を読んでいる?」
「え──うおおっ!?」
「ひゃっ!?」
い、いつからそこにいやがった!?
ちゃんと誰もいないことは確認してたのに……
──って、そうか。俺が本読むのに必死になってただけで、結構時間が経ってたのか。
しまった、つい夢中になっちまった。腐敗の調査そっちのけで何やってんだ俺は。
「あ、兄上! んんっ! 読書もいいが、本来の目的を忘れてもらっては困るぞ!」
「……っ、悪い! ちょっと気になる本があって、つい……」
「まったく、もう……驚かせないでほしい……」
いやでも、お前だって旧友のことが詳細に書かれてるっぽい資料見つけたら読まずにはいられねえだろ?
俺もそうだったってだけだよ。だからなんとか許してくれねえか──
「それで……そのような古い──子供向けの御伽噺を読んで、何か得られるものはあったのか?」
「えっこれ子供向けのおとぎ話なの? すごい重要な資料とかじゃなくて?」
「……そのような言い訳は通用しないぞ、兄上」
*
結局、腐敗に関する有力な資料は見つからなかった。
まあ、そう簡単に証拠が転がってる訳もねえか。地道に探していくしかねえな。
エリザベトは俺の見つけた資料のいくつかを見て、「調査に使えるかもしれない」とか言って持ち帰ってたが。アイツも普段の仕事が忙しいだろうし、あんまり期待しすぎるのもダメだよな。
ノエリスの本のことは収穫っちゃ収穫だが、腐敗とは何の関係もねえし。
「ノエリス……か」
アイツ、今頃どうしてるんだろうな。
俺が死んだ後、一人で寂しくしてねえといいんだが。
あの場所に俺が行けたのは、ノエリスの結界も貫通する「成り代わり」の力によるものだし。ソラナが到達寸前まで行けたのも、俺っていう目印があったからだ。
普通の方法じゃアイツのとこに行けるヤツはいねえし、アイツも自分から他人を迎え入れるようなヤツじゃねえから、俺がいなくなったらまた話し相手がいなくなるのはほぼ確定だ。
また機会があればあの森の奥に行かねえと。「ノエリス! 俺だ! アシェルだ!」とか言えば分かってくれるかな。少なくとも今は会いに行けねえけど。
「……って、感傷に浸ってる場合じゃねえな」
今日はいつも通り、新しい政務の書類を隠れ家に持っていかなきゃいけねえんだ。その後、既に処理済みの書類も回収しておかなきゃならない。
これは俺が政務できねえことを隠すための作業だし、他人には頼めねえ。
ただ、最近はマドリーも作業を手伝ってくれてるみたいだし、速度自体は上がってるだろう。そうだとすれば、もっとスパンを長くしてもいいかもな。やりすぎても俺が怪しまれるだけだ。お忍びとはいえ、護衛に囲まれながら隠れ家まで行くのもなんだか気まずいし。
さて、そうと決まれば城門を抜けて街中へ──
……ん?
「はぁっ……はぁっ、ア、アシェル……! どこ、に……!」
……あれ、カルか?
え、なんでこんなところにいるんだ。隠れ家にいるはずだろ。
しかもなんか必死な顔して走ってきてねえか。
あのカルがわざわざ王城の方まで俺を探しに来るなんて、普通じゃねえぞ。アイツは基本的に隠れ家から出たがらねえタイプだ。
人と話すのが苦手で、外に出るのも億劫がって、最近やっと買い出しに自分から行くようになったぐらいのヤツなのに。そのカルが息を切らしてまで俺を探しに来るってことは、よっぽどのことがあったってことだろ。
何だ。何があった。
政務の内容でマズイもの見ちまったのか? 期限を大幅に超えてた書類が見つかったとか? それとも他の何かが?
「お、おい。カル」
「! あ、ああ……! アシェル……やっと、見つけた!」
息切らしてやがる。相当急いで来たな。
「どうしたんだ、カル。ここまで来て。何かあったのか?」
「あ、ああ。大変、なんだ……」
「大変? 何が大変なんだ」
「その、護衛の……メイドさんが……」
「護衛のメイド? レミのことか?」
え、遂になんかやらかしたのかアイツ。
関係ないヤツに手でも出したのか? 理由もなく相手を重症にさせたとか? それとも、もしかして……まさか殺しをやったんじゃ──
「ああ……あの、メイドさんが……」
「や、やられた……倒された……!」
「……は?」
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