空きのない予定と大騒ぎの謁見
「あー……疲れたー……」
生き返ったみたいだ。背中の扉がひんやりしてて気持ちいい。
板切れ一枚隔てただけで、ここまで緊張感に差がでるもんなのかよ。あの側近どもの針みてえな視線も、謁見の間の張り詰めた空気も、ここまでは入ってこねえ。あるのは、このレンガみてえに重い紙束と、俺の情けないため息だけだ。
なんで俺がこんな仕事やってんだろうなあ。謁見なんて、やるのは王本人だけでいいと思うんだが。やっぱ忙しいのか?
「まだ三十組……いや、三十五組だったっけか?」
あと百組近くいんのかよ。とにかく出口の見えねえ洞窟の中を走らされてる気分だ。いや、確かに出口は存在するんだが……森の中で化け物に追いかけ回されてた時の方が、気分的にはよっぽどマシだったかもしれねえ。
えーと……北方国境付近における河川の氾濫対策及び……読めるかよ。文字は読めるし単語も分かるけど、文章になった途端に俺の知ってる言葉じゃなくなったみたいだ。こりゃよその国の言葉なんじゃないか?
「水理学的見地とか、費用対効果の試算とか、権利調整の経緯とか……何語で喋ってんだ、コイツら」
俺は王族の英才教育なんて、これっぽっちも受けてねえんだぞ。文官だった頃だってこんな面倒な書類に向き合ったことは無かったし、執事長の時はそういう仕事に本格的にかかわる前に死んじまったし。
レミとかマドリーならこういうのもサラサラ読めるんだろうな。俺ももっと昔から頑張っとくべきだったか……。
「最初の数回は、本当に地獄だったしな……」
謁見ラッシュが始まった当初は、側近に言われるがままぶっつけ本番で専用の椅子に座ってたんだが──相手が何を言ってるのか、正直一割も分からなかった。
期待に満ちた目で「この陳情について、殿下のご高説を」なんて言われても、俺にできるのは曖昧に頷いて、「あ、ああ。そうだな。検討しとくわ」と壊れた人形みたいに繰り返すことだけだし。
あの時の、広間の空気の凍りつきようと言ったらなかったな。陳情に来た男は困惑してるし、側近も護衛たちも「こいつ本当に大丈夫か?」と言わんばかりの冷ややかな視線を突き刺してくるし。あのまま続けてたら、俺の無能がバレるどころか、適当な許可を出して国が傾くか、エリザベトに「使えない兄」として見限られてたかもしれねえ。
「だから今──こうして盗み聞きしてる訳だが……」
悪いがこんな紙束、読んでられるかよ。俺の頼みの綱はこっちだ。
部屋のタペストリーの裏、冷たい石壁に耳を当てると……よし、聞こえるな。
微かだが、隣の待合室のざわめきが届いてくる。城の構造上、ここには通気孔か何かが通ってるのか、この位置だけ妙に隣の音がよく響く。
側近には「謁見の間へ直接」じゃなく「病み上がりだから待合室で話す内容を整理してから来るように」と指示を出すように頼んである。これで謁見に来るヤツらは全員この待合室で話す内容を、本音で話してくれるってことになるんだ。
後は待合室の中の会話を盗み聞きして、どういうことを頼みたいのか、どういう狙いがあるのか、良いヤツなのか悪いヤツなのかをこっちで把握すればいい。紙で読むよりこっちの方がよっぽど分かりやすいからな。
中には喋らないヤツもいるが、そういうのは慎重なのか、ちゃんと準備してきてるヤツってことだ。そういうヤツには「今は認定できないが、次の機会にまた」
で、どれどれ。次の奴はー……?
『……おい、まだかよ。俺たちの番はいつ来るんだ』
おっ?
くぐもってるが、相当イラついてやがるな。他にも何人か声が聞こえるぞ。
『静かになさい。壁に耳ありと言うでしょう。……しかし、この国の王子も随分と仕事が遅いのね』
『へっ、どうせ中で昼寝でもしてんだろ。最近急に表に出てきたと思ったら、現場主義だかなんだか知らねえが、好き勝手やってるって噂じゃねえか。王家の権威を笠に着て、俺たちを待たせて楽しんでるに違いねえよ』
『だからこそ、付け入る隙があるのよ。適当におだてて、「殿下の革新的なご判断に期待しております」とでも言っておけばいいわ。この賄賂……いえ、「心付け」を渡せば、新規航路の独占権なんてちょろいものよ』
『違いない。あの若造に、商売の何たるかなんて分かるはずがねえからな』
……お、おおー。
ビンゴだ。壁越しに聞こえてきたのは、下卑た笑い声と、腐りきった本音のオンパレード。
なるほどな。次の相手は、表向きは「物流発展のための新規航路」なんて立派なお題目を掲げてるが、その実は賄賂で独占権を掠め取ろうとしてる商会の豚って訳だ。
「よし……!」
じゃあ次行くか。
助かるぞ。お前らみたいなのは容赦なく落とせばいいし、考えることが少なくて好きだ。
本当にそんな薄暗いことを考えてるならべらべら喋りすぎるのもどうかと思うけどなー。
*
「……以上で、百四十五組目の謁見が終了となりました、殿下」
終わった……。
終わった……よな……?
「ふううぅぅ……」
……百四十五組。
数字にして言えばたった一言だが……思ってたよりずっと大変だったな。
ちゃんとした善人もいたし、詐欺師とかの悪党もいたし、ただの世間話をしに来ただけのお偉いさんこと暇人とかも。ありとあらゆる人間が次から次へとやってきては、俺の精神を少しずつ削り取っていきやがった。
特に後半の記憶はほとんどねえ。途中から「盗み聞き作戦」も上手いこといってるのか不安になってきて、聞こえてきた単語に対して「うん」「良いと思う」「ダメなんじゃないか」の三つの手札だけで乗り切った気がする。
最後の方なんて、相手がまだ喋ってるのに「うん」って言っちまった気さえするが、もうどうでもいい。誰も暴れ出さなかったんだから、たぶん大丈夫だろ。
「まさか、これほどの人数を数日で捌き切られるとは……」
信じられないものを見るような目で俺を見るんじゃねえ。
そもそも謁見押し付けてきたのは側近のお前じゃねえか。俺だって信じられねえよ。
「……じゃ、これで解散、だな。もう俺は寝るから──」
「──お待ちください、殿下。あと一組、残っております」
「……あ? あと……一組……?」
……あれ?
そうだったっけ? 百四十五って言ってなかったか?
俺、その言葉を信じて今まで頑張って来てたんだけど。まさかだと思うが、「数百四十五組」の間違いってことはねえだろうな? 明日もスケジュールはパンパンですとか言われたら俺は隠れ家に引き籠るぞ?
「はい。先日、急遽追加された百四十六組目の方々でございます。これを終えれば、当初のリストにあった分は全て完了となります」
「あ、ああ……! そういえば……!」
そういえば、そんなこと言ってたな。
百四十五組って聞いた後に、「百四十六組になりました」とかいうふざけた報告を受けた記憶がおぼろげにある。あの時は絶望しすぎて記憶から消去してたが……現実はなんて無情なんだよ。
「……ちなみに、俺がこの謁見を繰り返してる間に──新しい予約とか入ってねえだろうな?」
「はあ。数件ほど新規の申請が来ておりますが……」
「断れ! 明日にしろ!」
冗談じゃねえぞ。
これ以上働かせたら、俺は間違いなくこの国の王政を恨んで反乱軍を立ち上げることになるぞ。
「ですが、この最後の一組だけは、本日中にお通ししなければなりません。何しろ数日前から待機されておりましたし……」
……ああ、クソッ。
やるしかないのか。あと一回。
でも、あと一回だけ耐えれば、解放されるってことだよな。
「……はあ。分かったよ、分かった。会えばいいんだろ、会えば」
「ありがとうございます。では、すぐにお通しし……」
「待て」
俺は側近を手で制して、よろりと立ち上がった。
「その前に、また、資料を確認してくる」
「資料……でございますか?」
側近の目が丸くなった。
そりゃそうだ、俺はてっきり百四十五組だけだと思ってたからな。読んでないんだから百四十六組目のことなんて知らなかったし。
手元にはもう読み終わった(ことになってたつもりの)紙束の山がある。側近からすれば、これ以上何を確認するんだって話だ。
「いや、最後の一人まで万全の準備で迎えるのが王族の務めだろ。また……隣の部屋で、少しだけ頭を整理してくる」
「しかし殿下。最後の一人なのですし、紹介状なら私がここでお読み上げいたしますが……何度も何度も、わざわざ移動される必要など……」
「いや、その。なんか、毎回少しは歩かないと頭に入らないんだよ。それに一人になって考えたいし」
いや、なんか疲れでだいぶ支離滅裂なこと言ってんな。
歩かないと頭に入らねえってんだ。後者だけでよかったろ。
ただ──悪いな。予め準備された綺麗な謁見のお願いなんて信用できなくてよ。
しっかり盗み聞きして、万全の体勢で迎えてやるから、見逃してくれ。
*
待合室の隣の部屋にある、この長椅子ともすっかり親友になっちまった気がする。
この最後の謁見が終わったら、コイツ俺の部屋に運ばせようかな。
「さて、と」
とにかく! 泣いても笑ってもこれが最後だ。
百四十六組目。どこのどいつか知らねえが、せっかく最後の一組なんだからこれまで以上に真剣に取り組んでやるよ。だから、多少なりとも今の俺に実りのある話を持って来てくれ、そうすりゃ喜んで許可出せるから。
で、どれどれ……?
『──ねえ、まだなの? もう随分待ったんだけど!』
……なんか聞いたことある声だな。
大体一か月とちょっとぐらい前によく聞いてた声な気がする。
若い女の声で、謁見に来るような貴族の令嬢にしちゃあ、品がないというか、育ちが悪そうというか……失礼、元気があり余ってるっていうか。
『静かになさい。待つのも仕事のうちよ──それに、無理を通して謁見をねじ込んだのは私達の方なのだから、これくらいの待ち時間は甘受すべきだわ』
『そうだぜ。俺たちのいる場所は王城なんだ。これで家にまで変な悪影響が出ちゃやってらんねーし』
……こっちの二つもなんか聞いたことある声だ。
最後に聞いたのは大体……丁度同じ。一か月とちょっとぐらい前。
落ち着いた女の声。理知的で、冷ややかで、でもどこか余裕のある、妙に耳に残る声。ちょっと圧があって、知性を感じさせるような……。
それと元気な男の声。こっちも若くて元気そうだが、なんとか抑えてる気配を感じる。王城の待合室で「無礼に気をつけろ」って言うセリフが「不敬だから」じゃなくて「家に迷惑がかかるから」って理由を選ぶあたり──自分の家業に誇りがあるのか、そこそこでけえ家なのか、はたまたその両方か。
『そもそも、この国の王子の渾名が「アシェル」なら、なんで言わなかったのさ』
『文句を言わないでもらえるかしら。逆にこの国の王子の名前を知らない方が驚きよ』
『だって勉強なんかしたことないんだもん。王子様は王子様じゃん? 名前なんて普通知らなくない?』
『王国の人間なら常識じゃねーか。俺もアシェルって渾名知った時、兄貴と名前が同じだってビビったんだぞ!』
……兄貴?
渾名が同じ名前……?
えっと……王国の人間なら王子の名前を知ってて当たり前ってのはちょっと違和感あるが。この国の人間からすれば、俺は「初めから王子として存在してた」ってことだよな。だから、その名前ぐらい知ってて当たり前だと。
で、文句垂れてる若い女はそういう勉強をする機会が無かったから、そもそも王子の名前すら知らなかった。言ってるのは、そういうことだよな……。
『周知の事実だと思っていたもの。貴女、彼と一緒にいた時、世の中のこと何一つ学ばなかったの?』
『うっ……うるさいなあ! とにかく! 名前が似てるなら、やっぱりそうじゃん! 絶対そうだって!』
『いや、まだ分かんねーだろ。名前が似てる他人って可能性だってあるぜ? なんてったって、相手は雲の上の王子様だぞ? あの兄貴が、実は王子でしたなんて……そうだったら、ちょっと嬉しいな』
……待てよ。
ちょっとだけこの三人組に心当たりあるんだが。
でも、あの三人がここにこうして集まってるってのはちょっと納得がいかねえ。
三人のうち二人は今王都からかなり離れた場所にいるはずだ。少なくとも関係が険悪そうじゃないのは救いだが……そもそもアイツらがこっちに来る理由はねえし、俺が俺だって確証すら持てるはずがねえ。
一人は確かに王都にいるはずだが……それじゃこの二人と一緒にいる理由がない。あの場所には戻るなって手紙に書き記したはずだし、文字の読み書きもある程度は教えたはずだ、読めなかったってことはねえはず。
『でも、ここ最近の王子の噂、聞いたでしょ? 「急に性格が変わった」とか「現場主義で口が悪い」とか。どう考えても確定じゃない?』
『もし見当違いであれば私達は不敬罪で投獄もあり得る訳だけど』
『まー、確かに噂を聞く限りじゃ兄貴っぽさはあるけどよ。でも、もし本当に兄貴だとしたら、なんで俺たちに連絡寄越さねーの? 水臭いじゃん。俺たちのこと忘れたってのはあり得ねーし』
『だから! 会いに行って確かめるんでしょ! 別に捕まるのだって私は怖くないし!』
『貴女が……じゃなくて、私達が捕まれば、彼はきっと悲しむわよ』
『……うっ。それは、そうだけど……』
え。
いやその、まさかだよな。
もし本当にあの三人なら、別に会えるのは嬉しいんだが──アイツらが今この場所にいることの説明がどう足掻いてもできねえぞ。
もしかして、同じ声をしただけの別人なんじゃねえか? 同じ状況にあるだけのまるで別人なんじゃねえか? せめて、名前の一つでも合ってるなら、流石に認めざるを得ないが、そんなことあり得る訳──
「さあ、そろそろ時間よ。行きましょうか──リアン、ネル」
「おっ、遂にか。あっでも約束のこととか忘れてねえよな──マドリー」
「やっと……! やっと遂に会えるんだよね──アシェル兄!」
……ええ?
マジで? 期待しすぎて耳腐っちまったのかな俺。
*
「アシュレム殿下。貴重なお時間を割いていただき、感謝致します」
うわあ。
マジだったよ。期待通りっていうか、予想とは違うっていうか。
「この度の御前にて、名乗りを上げさせていただきます。グロス家代理人、グロス・マドリーにございます。連れには、バレク家代理人バレク・リアン、そして侍従ネルがおります」
目の前に──マドリーと、リアンと、ネルの三人がいる。
なんで? おかしくねえか? いや嬉しいんだけども──やっぱり訳が分からねえ。
ていうか──圧がすげえ。上から見下ろしてるのは俺のはずなのに、なんで俺の方が追い詰められてる気分になるんだ? 相変わらず綺麗な瞳が俺を真っ直ぐ射抜いてきてて、嘘も誤魔化しも全部お見通しだって言いたげで……すげえ胃が痛い。
それにしても……こうして見ると破壊力が凄まじいな。
マドリーは相変わらず涼しい顔で、深紅のドレスを着こなして。王城の空気にも全く呑まれてねえ。顔には俺が原因でできちまった火傷の跡が見えるが、髪と被り物みたいなヤツで極力隠されてる。なんか、そういうところまでオシャレだ。
斜め後ろのリアンはガチガチに緊張してるのか、借りてきた猫みたいになってるが……不安と期待がないまぜになったような目で俺をじっと見つめて、何かを訴えかけてきやがる。あの元気と勢いの塊みたいなヤツがここまで自分を抑え込んでるのは初めて見た。
で、ネルは……なんだそのこぎれいな服装は。似合ってねえ訳じゃねえけど……これまでの恰好と違いすぎる。見慣れなすぎて逆に不気味だぞ。なんか新鮮だな、お前がそんな恰好できるようになるまでの立場を持てたことが俺は嬉しいぞ。就職先が心当たりしかねえが。
多分マドリーが黙らせてるんだろうな。
この二人が好き勝手喋り始めたら、もう収集がつかないのが分かり切ってるしな。
「殿下。私達は、ある『探し人』の情報を求めて、はるばるこの王都まで参りました」
「そっかぁ……」
「その人物は、少し抜けていて、お人好しで、でも誰よりも頼りになる、私の『夫』です」
「そうだったかぁ……夫だったかぁ……」
やめろマドリー、そんな目で見るな。罪悪感で押し潰されそうに……えっ。
おい見たかマドリー、お前の後ろの二人を。リアンもネルも『夫』ってワードが出た瞬間、「は?」って顔したぞ。多分位置的にお前からは見えないだろうけど、とてつもない殺意をひしひしと感じたぞ。
お前が気づいてねえ訳ねえだろ。あんまり周りを煽るようなことを……。
あっ。わざとか。
わざと言ったのかお前。すげえな。
「……そういうヤツがいるんだな。でもな、王都の人口は多いし、もう少し具体的な特徴がないと、探しようがないんじゃないかなあ……って、俺はその、思う」
「ええ。仰る通りですわ」
えっと、これ信じていいのか?
なんか、俺を騙そうとしてるとか、そんなんじゃなくて?
なんとか顔が崩れないよう維持してるつもりだが……誰が見ても分かるくらい引きつってると思う。ちょっと隠せそうにない。
「……殿下。私たちが何を言いたいか、貴方なら──お分かりなのでは?」
すっごい。
相変わらずキレイな笑顔なんだけど、目の奥が笑ってねえ。「白々しいこと言ってないで、さっさと認めなさい」っていう無言の圧力が溢れてやがる。リアンの目も「約束、覚えてるよな?」ってこれでもかって訴えかけてるし、ネルの目はさっきから期待でギラギラ輝きっぱなしだ。
いやでも、さっきの発言で周囲の空気が一気に凍りついちまったぞ。
そりゃそうだ。王族に自分から謁見申し込んでおいて、いざその時になったら「お分かりなのでは?」なんて丸投げ、周りから見りゃ不敬にも程がある。
「無礼者! 殿下に対して何たる口の利き方か!」
ああほら。側近がキレちまったよ。
怒鳴り声が響くのと同時に、周りの護衛たちが剣の柄に手をかける音が聞こえてきた。ヤベエぞ、このままじゃ三人とも危ねえし、だってのに何故か三人も逃げようとする気配が全く見えない。俺がなにか言わねえと……。
……ああ、そうか。
コイツらは、俺を──信じてるのか。
「殿下、如何いたしましょうか。即刻退去か──あるいはこの場で即座に処することも……」
俺がもし本当に俺ならきっと助けてくれるってのを、コイツらは信じてるんだ。
だから、逃げようとしないんだ。俺を見極めようとしてるんだ。
じゃあ、俺が言うべきなのは。
えっと。
「……側近と護衛は全員、武装を解除して即座に退室しろ──用が済んだら呼ぶから」
「兄貴ぃーっ!!」
「アシェル兄ぃーっ!!」
「うおおおおお!?」
ぐえっ!?
や、やめろ二人とも! 飛びついてくるな! 危ねえだろ!
ほら! 側近含め周りが全員呆気に取られてるじゃねえか!
ああ違う止めろ! お前ら剣を抜くな! この二人は敵襲でも暗殺でもねえから! ていうか、退室しろって言ったんだからさっさと出ろ!
「やっぱり! 絶対離さない! アシェル兄、生きてた! やっぱり生きてた!」
「兄貴! 兄貴ぃ! 心配させやがって! なんで連絡くれなかったんだよぉ!」
折れる! 骨が折れるから!
抱き着くの止めてくれ! 力を抜いてくれ! 圧死する! それはマズい!
「はあ。本当に、貴方は……」
「な、なあマドリー。助けてくれ、見てないで引き剥がしてくれよ……」
「あら、いいじゃない。感動の再会なのだから……ね?」
……おい、待て。
なんで引きはがしてくれねえんだ。なんで近づくだけなんだ。
マドリー? 近いぞ、マドリー?
待て待て待て顔が近い近い近い!
感想やご意見をお待ちしていますのでよろしければ……(´・ω・`)
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