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【完結】俺は死んだはずだよな?  作者: 破れ綴じ
8. 信者

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76/111

偶然の巡り逢いと猛毒のナイフ

「なんで、ここに」


 タリエだ。間違いねえ。門番と話してるアイツは──確実にタリエだ。

 あの几帳面な歩き方、背筋の伸ばし方、ローブの着こなし──全部、文官と写本師の時に何度も見た光景だ。一瞬ちらっと見た顔も間違いねえし、体格も、微かに聞こえた声も一致してる。


 なんで、タリエが光明の教会の集会に来てる。おかしいだろ。

 まさか──信者に、なっちまったのか? 

 写本師の俺が死んで、協力者を失って、一人になって──気づいたら教会に取り込まれてた、なんてことは十分あり得る。


「クソ……!」


 俺のせいだ。

 俺が死んだから、タリエは一人になっちまった。犯人への復讐を止める役目の人間がいなくなって、暴走するか、それとも──教会に取り込まれるか。どっちにしろ、ろくな結末じゃねえ。早くなんとかしねえと──


 ──「そして、犯人が分かったら──これを、飲ませます」


 ──「犯人が分かったら、これを飲ませてやるんです」


 ──「アシェル先輩が味わった苦しみを、そいつにも味合わせてやるんです」


 ……待てよ。

 さっき、門番が何か言ってたな。で、タリエは「持病の薬瓶です」って答えて、飲んで見せたよな。門番の前で、瓶の中身を口に含んで、飲み込んだ。

 タリエに持病なんてあったか? 今まで見てきたいつの時代でも、アイツは健康そのものだったはずだ。いや、俺が死んで多少ヤツれてはいたが、文官のアシェルとしても写本師のシェラとしても、アイツが薬を飲んでるとこなんて見たことが無かった。

 もしかして、あれは──復讐のための、毒か? 


 もしかして、この集会のどこかに犯人が紛れ込んでて、タリエはそれを特定したから、信者のフリをしてここに潜り込むつもりだったんじゃねえか? 

 アイツは「アシェルの復讐ができるなら刺し違えたってかまわない」って言ってた。レミの嫌いそうな台詞だとか今になって思ったが。

 あの毒は、飲み始めてから、効果が表れるまでかなり時間がかかる。

 アイツは、今日犯人を仕留めるつもりで、門番の検査をスルーできるように──わざとあの毒を、飲んで見せたんじゃねえか? 


 もし、あの瓶の中身が本当に毒で、タリエが自分も死ぬ覚悟で飲んだとしたら──


「……ッ! ヤバい。ヤバいぞ、これは……!」


 タリエは、この集会のどこかに紛れ込んでる犯人を殺すため、この会場に入るためだけに──自分も毒を飲んで、捨て身で突っ込む……つもりなのか? 

 時間差で効く毒なら、飲んでから数時間は動ける。その間にヴェインに近づいて、毒を盛るなり、刺すなりして──そのまま自分も死ぬ。


「……そんなこと、そんなことさせられる訳がねえだろうが!」


 まだ、まだ間に合うはずだ。ローブを着た人間ばっかりで見分けがつきにくいが、さっき入って来たばかりなら入口の近くに──ああ、いた! 

 部屋の隅だ、テーブルの近くに立ってる。周りの信者たちと距離を取って、一人で佇んで、誰かを探してみるみたいな──いや、今はそれどころじゃねえ! 


「おい!」


「──!?」


 タリエが振り返った。

 驚いてるとこ悪いな、ちょっとでも遅かったらどうなんのかこちとら分かんねえからよ! 


「ちょっと来い!」


「え、あの、誰ですか──」


「いいから!」


 周りの信者たちがちらっとこっちを見てくるがどうでもいい。

 ちょっと目立って、それでタリエを救えるならなんだっていい。

 便所は……あっちか! 

 中には……誰もいないな。よし! 


「な、何を──!」


「吐け!」


「──は?」


「吐けって言ってんだ! さっき飲んだもんを全部吐き出せ!」


「え、ちょ、待って──」


 ああもう、心当たりあるだろ! ついさっきのことなんだから! 

 そりゃ、いきなり知らねえヤツに便所に連れ込まれて「吐け」とか言われたら誰だって混乱するだろうが……でも時間がねえんだ。毒が効き始める前に吐かせなきゃいけねえ。


「いいから吐け! お前さっき毒飲んだだろ!」


「毒!? 何を言って──」


「いいから吐け! 今なら間に合う!」


「あっ痛い痛い! 待って、待ってください! あれ、あれは──!」




「──あれはただの水です!!」






 *






 ……は? 


「ただの……水……?」


「そうです! ただの水です! 本当に! だから離してください!」


 水……水だと? 

 じゃあ、あれは毒じゃなかったのか? 

 ……いや、確かに。あの毒は透明だった。ベラが見せてくれた酒は実際見た目こそ同じだった訳だし、写本師だった時にタリエが見せてくれた瓶の中も透明な液体だった。

 タリエが門番に見せた瓶の中身も透明だったし……俺が毒だと思ってた瓶の中身は──俺のナイフと一緒でただのダミー、ただの水だったってことか。


「……そうか」


 ……なんだ! よかった! 

 だよなだよな。本当に犯人と接触できるかどうかも分からねえのに、事前に毒を飲んじまうなんて、いくら刺し違える覚悟とはいえ早まりすぎだよな。本物の毒はちゃんと別に準備してあるんだ。ああ……よかった……。


 タリエの腕を離すと、肩で息をしながらこっちを睨まれた。

 当たり前だ。見ず知らずの人間にいきなり便所まで連れ込まれて、吐けとか言われたんだから。酒を飲んだ訳でもねえのに。


「じゃあ……お前は、何しに来たんだ?」


「それは、勿論、集会で……」


「嘘つけ。背中見せてみろ。お前には印がねえだろ。教会の人間なら印があるはずだ」


「……! ……そんなものが」


 だよな。俺はソラナに背中の印を彫ってもらったが、あれはきちんと教会の信者として認められたヤツにしかないはずだ。タリエはここに忍び込むために来たんだから、幹部が彫れるあの印を──既に背中に彫ってもらったって訳がない。


 ……ん? でも、俺も信者だったのなら、ソラナに彫ってもらうまでもなく初めから印があるはずなんじゃねえのか? なんで前の俺には印が無かったんだ? 

 ……まあいいか、今は関係ねえし。後でソラナに聞こ。


「……なら、隠しても無駄そうですね──僕は、復讐に来たんです」


「……復讐?」


「ええ……僕の尊敬する先輩を殺した犯人への復讐です」


 ……やっぱりか。

 当たり前だが、タリエはまだ復讐を諦めてなかった。ただでさえ憎悪に燃えていたところ、協力者だった写本師の俺が死んじまって、より一層この計画を完遂させなきゃならねえって気持ちが強くなったんだろう。

 あのタリエがそう簡単に諦める訳がねえよな。真面目で几帳面で一度決めたことは絶対に曲げねえ。復讐するって決めたなら最後までやり遂げるつもりなのか。


「──で、犯人が分かったのか?」


「……ええ。犯人はこの集会を開いている──ヴェインという男です」


「……!」


 ヴェイン。アイツが? 

 あの胡散臭い「長老」が……ベラに毒の混ざった酒を渡すよう指示した犯人、いや、犯人の一人ってことなのか? 


「……証拠はあるのか?」


「はい。僕は知り合いの写本師と協力して、様々な資料を集め、その写本を二人で精査して犯行の記録を突き止めました」


 知り合いの写本師……? まさか──カルか? 

 いや、それ以外あり得ねえよな。カルは人と話すのが苦手だったが、タリエはあの店の常連だった。その上、二人には「写本師のアシェルと仲が良かった」っていう共通点がある。もしかしたら、タリエが「シェラには叔父の復讐をするという目的があった」って話をして、カルを味方に引き込んだのかもしれない。

 てことは、カルがあの時持ち運んでた──『王国の歴史概要』とか『貴族の系譜』とか『法律の基礎知識』とか『商業取引の記録』とかは、犯人探しをするために必要だった書類だったってことじゃねえか。タリエみたいな政府の人間が、仕事を無視して政府の取引とかを調べようとすれば上から目を付けられるが、借りた後すぐ書類を返す一般人なら疑われることもない。で、カルなら写本ができるから資料を返却しても、工房の中で写本を読めばいい。


 そうか、それでヴェインが犯人だと突き止めた、と。

 言われてみれば確かに。アイツは政府の上層部にも他国の人間にもコネがある。あの時ベラが解雇され、処理を命じられたのは「敵国式の暗号」が書かれた紙について「上」に問い質したからだ。じゃあ、その両方と繋がってるヴェインが犯人ってのは何もおかしいことじゃない。むしろ最適って言っても過言じゃないぐらいだ。

 教会全体が腐ってるんだから黒幕がヴェイン一人だけって訳じゃねえだろうが、少なくともヴェインが指示を出してた一人だったってことなんだろう。


「だから僕は、信者になりすましてこの集会に潜り込みました」


「……ヴェインを殺すために?」


「……ええ」


 懐から小さな瓶を取り出してくる。さっきと同じで透明な液体が入ってるが、さっきよりもずっと重たい雰囲気を感じさせる──あれが本物の毒か。


「僕はこの毒をヴェインに浴びせるつもりでした。飲ませるのは難しいですから、直接顔に浴びせて皮膚から吸収させようかと。飲むより効果や苦痛は薄いでしょうけど……それでも確実に命を奪えます」


 浴びせる──なるほどな。

 確かに飲ませるのは難しい。でも浴びせるなら一瞬で済む。護衛がいても一瞬なら間に合うかもしれねえし、群衆に紛れて逃げることもできる。

 いやでも、逃げられるのか? この崖の上の屋敷から。正面の門を通るしかねえんだぞ。追われたらどうするつもりだったんだ。


「で、どうして貴方は僕が毒を持っていると分かったんですか? どうして僕が暗殺しようとしていることがバレたんですか? 貴方は一体誰なんですか?」


「……!」


 ああクソ。来たか。どう説明すればいい? 

 俺が文官のアシェルで写本師のシェラでお前のことをずっと見てきたなんて。そんなこと言える訳がねえ。どうする。何て答える。嘘をつくか? 


 偶然、目的は一緒になった訳だが……。

 俺は──お前に人殺しなんて汚いこと、させたくねえんだ。






 *






「俺は──」


 そうだ、これしかない。

 懐から、ナイフを取り出して──


「──俺も、同じ目的で来た」


「……っ!?」


 タリエの目が見開かれた。そりゃ驚くよな、この場所に武器になるもののの持ち込みは禁止されてるんだから。

 出入口で検査だって受けるんだから、それを踏まえた上で武器を持ち込んできたってことは──計画性を持って害を為そうとしてるってことの証明になる。


「……あ、あなたもヴェインを?」


「ああ。俺もアイツを殺しに来た」


「……!」


 タリエだって、見ず知らずの人間が自分と同じ目的でここに来てるなんて思いもしなかっただろう。でもこれで、少なくとも俺がタリエの敵じゃねえってことは分かったはずだ。

 ただ、俺の目的は「目の前の男が協力者だ」「だから二人でヴェインを殺そう」って理解させたいことじゃない。


「で、本題だ──お前の持ってるその『毒』を俺に渡せ」


「……は? なにを……」


 俺は、「タリエが人殺しをするって未来」を避けたいんだ。「ヴェインを殺すのは俺だけでいい」って思わせなくちゃならねえんだ。何としてもタリエには、ここで諦めて帰ってもらう。


「お前さっき『信者になりすまして潜り込んだ』って言ったよな。お前は教会の人間じゃねえ、顔だって知られてねえ。お前じゃヴェインになんて近づこうと思ってもそもそも不可能だ」


「何を言って──」


「でも俺はちゃんと背中に印がある。しかも、ある幹部のお気に入りっていう、そこそこ名のある信者だ。ヴェインに近づくのも話しかけるのもお前よりずっと簡単だ」


「……っ」


 パッと見でタリエが信者かどうかなんてことは分からねえが、背中の印が無いことを見られれば終わりだ。もしヴェインに近づこうとして怪しまれたら護衛に取り押さえられて、毒なんて飲まなくてもそこで人生が終わっちまう。

 でも俺は教会の人間で、幹部ソラナの知り合いだ。近づくのに何の不自然もねえ。


「でもっ……僕には、先輩の無念を晴らしたいっていう気持ちがあるんです。あなたとは違うからって、それであなたにこの毒を譲る理由にはならない」


「お前の気持ちは分かる。でも俺の方が恨みも強い」


「そんな……何の事情も知らないくせに、何を……!」


「俺は──俺に近しい人間の人生が六回も狂わされた」


「!?」


 嘘じゃねえぞ。「六人」じゃなくて、「六回」ってのが重要だが。

 文官の俺は勿論のこと。酒家の俺、探検家の俺、執事の俺、写本師の俺、盗賊の俺──この五回分のアシェルの人生が始まったのは全部、ヴェインが仕込んだ毒のせいだ。初めの指示がなければこの五回分のアシェルも無かった。つまりヴェインは文官の俺を殺したことも含めて、六回人生を狂わせたことになる。


「だから俺の方が恨みも強い。お前に譲る気はねえ」


「でも──」


 近しい人間ってのもそうだ。俺が背負ってるのはアシェル本人の恨みだからな。これ以上近い存在ってのもない。タリエは文官のアシェルの復讐と写本師のアシェルの無念、二人分を背負ってるつもりだろうが、「六人分」って言われちまったら、相手の方が強く恨んでるって思うしかねえだろ。


「それにお前には──その協力者がいるし、未来や仕事だってあるだろ」


「……!」


「生憎俺にはそんなもんねえが──お前にはこれからの人生がある。復讐なんかのために捨てるな」


「……僕は、覚悟してます!」


「覚悟してるからってやっていい訳じゃねえだろうが」


 目に迷いが見えた。

 押せ。このまま押しきれ。


「──お前は『偶然ここに迷い込んで』『偶然怪しい瓶を持っていて』『偶然それを俺に奪われた』。それが事実で、文句をいうヤツは誰もいないし、ここのことは誰も見ていない。いいな?」


「……そんな」


「お前がただ無念を晴らしたいってんなら俺がやった方がより苦しめられる」


「……っ」


「それともお前は、死んだ仲間の無念を晴らすためじゃなく、ただ単に憎む相手を個人的に殺して気持ちよくなりたいってことなのか?」


「──!」


 いける。

 復讐を正当化しつつ、それをお前ががやる必要性がないってことを暗示するんだ。

 俺の理論に対して、ろくに知識もない状態のタリエが反論できる術はない。「復讐はコイツに任せて、自分は去ればいい」──それが目的を成功させるためにも、よりよい効果を見込むためにも、有効だって思い知れ。


「……分かりました」


 よし。

 ……よし。

 ……よし!! 


「僕には──他にも策があります。どうせ貴方が失敗しようが別にまだ手は打てます」


「……そうか! 予備策があるのはいいことだぜ。その必要は今日で無くなるが」


「……もし、あなたが裏切って、これの告げ口をするようであれば──あなたも復讐の対象に加わるだけですよ」


「分かった分かった。裏切らねえよ」


 裏切る訳ねえだろ。

 お前にとっちゃ、今の俺が「本当に復讐をしたい」のか「ヴェインの回し者で、暗殺を阻止しようとしてる」のか分からねえだろうが……ヴェインを仕留めなきゃいけねえのは俺だって同じだ。


 タリエが毒の瓶を差し出してくる。

 よし、受け取ったぞ。大船に乗った気持ちでいてくれ。


「ありがとよ」


「いたっ、ちょっ……背中叩かないでください! ……あなた、本当に成功させてくれるんですよね!?」


「はっ、当然だろ。それよりお前は自分の心配してろ。ほら遅くなる前に帰った帰った」


「……!」


 用件は終わった、人が入って来て見られてもマズいし、さっさと便所から出るか。

 ヴェインはもうそろそろ来るはずだ。万が一見失うことがあっちゃいけねえからな。


「じゃあな、タリエ」


「え? あ……」




「──なんであの人、僕の名前を……?」






 *






 これで集会は終わり……か。


 ヴェインの長々とした演説と、光明の教会の胡散臭い教義を解説して、後その他にも色々やって──集会は終わった。

 話を理解させやすいよう「呪い」の存在を信じ込ませるとこから始めて、「教会に入ることのメリット」より「教会に入らないことのデメリット」を強調することで集まった人間の恐怖を煽り、実際に存在した事故や事件をあたかもその「デメリット」による具体例だと嘯くことで信憑性を持たせてた。

 終わってからは相変わらず胡散臭い笑顔で信者たちに語りかけて、優しい言葉をかけて握手をして──そうやって信者を取り込んでやがる。なるほど、確かに話の上手いヤツだな。


 問題は集会が終わったってのに護衛の数が減らねえことだ。もう必要ねえはずなのに、ヴェインの周りには常に二人三人の護衛がついてやがる。何か警戒してんのか、食事の時間になってもヴェインは何も食わねえし飲まねえ。テーブルには豪華な料理が並んでるってのによ。部屋に入る時も護衛が必ず二人ついていく。ヴェインが部屋に入ったら、護衛は外で待機。ありゃヴェインが入った後に侵入するってのも難しいな。

 クソ、用心深え。『洗脳の呪い』なんて大層な名前をつけてるが結局は話術だけ。だからこそ自分の身を守ることには人一倍気を使ってやがるってことか。


 ただそれでもやり方はある。今みたいにな。


「へえー……寝室の趣味まで悪いのかよ……」


 要はアイツが確実にやってくる部屋に、先回りで入っておけばいいんだ。ここは崖の上の屋敷だが窓の外に出たら即落下って訳じゃない。足場ぐらいならいくらでもある。盗賊の頃はこういうのは得意だった。壁の凹凸に指をかけて足場を探してゆっくりと慎重に。

 窓はナイフで一面だけ切り出して……手え突っ込んで内鍵開ければいい。後はカーテン閉めて切り出した窓を隠し、俺自身もベッドの下に隠れられれば……こういう風に先回りできるってことだ。


 豪華な寝室だな。立派なベッドに高そうな家具。

 信者から巻き上げた金でこんなもん揃えやがって。

 それに比べてベッドの下は狭えのなんの、息苦しい。


「どれくらい待てばいいんだ……っと」


 足音と扉が開く音。

 三人分の足音が一つだけになった。てことは──ヴェインだ。


「……ふう。まったく、使えない連中ばかりだね」


 おっ。

 一人になった途端本性を現しやがったな。本当は俺がいるぞ。

 部屋にまで護衛を連れてこないのは、護衛にも本性を見せないためなんだな。それが逆に今回仇となる訳だが。


「ソラナ君も、最近は言うことを聞かなくなった。あの子は以前は従順だったのに──何が変わったんだろうか……ロエマという女の勧誘もずっと成功できていないようだし……幹部になって欲が出たのか?」


 ソラナが他の幹部の言うことを聞かなくなったのは俺の指示を優先するからだ。

 ロエマの勧誘に成功してねえのは、俺の依頼でレミが守ってるからだ。

 やっぱり呪いなんて使えねえんだな。教義にあるような超パワーが使えるならそれで調べればいいのに、わざわざ様子を見に行かないとできねえってあたり、やっぱりお前は嘘っぱちなんだ。


 で、俺たちを苦しめる教会の重要な幹部で、俺とベラを猛毒で苦しめた真犯人で、罪のない人間を騙して金を巻き上げるボスみたいなヤツで──


「もっと使える人材に鞍替えしようか。ソラナ君は──もう用済みだな」


 ──あー、助かるよ。

 お前のこと俺はよく知らねえし、あんな仕打ちを受けたってのに、心のどこかでほんの少しでも「あの毒を食らわせてやるのは可哀想なんじゃないか」ってバカみたいな哀れみが出てきてたんだ。なのに──まさか標的のヴェイン本人から背中を押してもらえるとは思わなかった。


 ところで──あの毒は直接ぶっかけても十分強力だが、やっぱり体内に取り込んでこそ効果があると思うだよな。

 なのに、残念ながらお前は何から何まで警戒して滅多に飯を食うつもりがねえんだよ。困るよなあ。まあ自分で使うように指示した毒なんだから、当然自分に使われる可能性も考慮してるだけなんだろうが。


 ──で、全く関係ないんだがな。俺は持ち込んだナイフにさっきタリエから貰った「毒」をこれでもかって塗り込んでやったんだよ。


「まあ、今日の集会で信者が増えればまた私の発言権が強まる。細かいことは明日にでも回してしまえばいい……」


 だな。

 永遠におやすみ。

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