気にするまでもない違和感と巡り巡って来た噂
また忘れてる……(´・ω・`)
何故私はあらかじめ準備しておかないのだ?
翌朝になった。今日が遂に計画の最終段階決行日だ。
宿を出る前に、ネルに声をかけておかねえと。
コイツには申し訳ねえが、俺とネルはここで別れることになる。いや、別れるっていうか──正確には、嘘をついて遠ざけるって表現の方が正しいか。
これからやることは俺の問題に関係することであって、それにコイツまで巻き込む理由はない。というか、犯人が二人組だって知られてる以上、これ以上一緒にいるとネルは捜査の目から逃げられなくなっちまう。
だからコイツと別れるなら今だ。長いようで短くもあった俺とネルの盗賊暮らしはここで途切れることになる。まあ向こうは俺を嫌ってるから喜んで離れていくだろうが……。
「なあ、ネル」
「ん? なに?」
呑気な顔しやがって。やっぱりコイツは純粋だな。
この無防備な顔を見てると、危険な目に遭わせたくねえって思っちまう。盗賊団にいた頃は、コイツにこんな感情抱くことなんて一度もなかったんだが。俺も情に弱くなってるのか。
「例の隠し財産の在処なんだが──多分、王都にあるかもしれねえ」
「え? 王都?」
──例の隠し財産。結局そんなもんは存在しねえんだが。
今まで山ほど嘘ついて来た大悪人の俺だが、その中でもこれは結構よくできた嘘だったんじゃないかと思う。今だってネルはこのお宝探しのために俺と協力してる訳だし──逆にこれを利用すれば、ネルの行き先を自由に指定することもできる。
「ああ。色々調べてみたんだが、どうもこの辺りじゃなくて、王都に隠されてるらしいんだよな」
「ふーん。なんでこっちにしなかったんだろ」
「さあな──だからとりあえず、お前には先に王都に行ってもらいたい」
王都なのは人も職も多くて、治安も悪くないからだ。それ以外の理由は無いから、「何でそんなところにあるんだ」とか深く考えられないよう話は早めに遮っておくべき。
ここで躊躇したらコイツに疑われるし、自信満々に、当然のことを言うみたいに──
「──これが、お前の分だ」
「えっ。なにこれ。お金じゃん」
「そうだ。俺たちの全財産の半分ある。残り半分は俺が持ってる」
嘘だ。全財産だ。
今まで日雇いで稼いできた金と「光明の教会」の幹部から奪った金含めて全部。ネルが王都で生活するには十分すぎる額だ。これだけあれば当分は宿代にも食事代にも困らねえはず。安くない宿に泊まって、まともな飯を食って、それでもしばらくは持つだろう。その間に、どこかで仕事を見つけてくれればいい。コイツならできる。この前教えた常識だって、ちゃんと身についてきてる。大丈夫だ。きっと、コイツは一人でも生きていける。
「用事があるから俺は後から行く。お前が先に王都に着いたら──まず、安くない宿を取れ。安宿は治安が悪い。それから、潜伏するためのいい感じの職を探せ。何でもいい。怪しまれなければいい」
「う、うん。でもお宝が手に入るから仕事なんて適当でいいんじゃ──」
「いいから、ちゃんとした職を探せ。盗みは止めろよ、王都にいられなくなる。俺が追いついたら、そこで金の整理をするから、ちゃんと金の管理もしておけ。無駄遣いするなよ」
「わ、分かった……!」
ネルはというと「そ、そうか……! だからあの時、馬車の乗り方とか宿の泊まり方とか教えてきたんだ……!」とかなんとか言って納得してやがる。ちょっと誤解してる気もするが、悪い誤解じゃないからそのまま誤解したままでいてもらおう。
ネルが持ってる金袋の中には──小さな手紙を忍ばせておいた。ネルが王都に着いて、宿で金の整理をしてるときに、その手紙の存在に気づくように。
中には「財宝のことは嘘だってこと」「これからお前は普通に生きろってこと」「追われる身だからこっちの地域には戻ってくるなってこと」「嘘ついたことの謝罪」。それから──「俺のことが嫌いだからって、俺との約束を破らないでほしい」──ってことを書いた。
最後の一文は、ちょっと気恥ずかしかったが。俺に従っていたくないなんてためにまた盗みを繰り返す暮らしに戻ったり、リアンやマドリーが犯人探しをしてるこっちに戻ってこられたりでもしたら堪ったもんじゃない。
「じゃあ──今から別行動だ」
「う、うん……。でも、ホントにすぐ来るんだよね?」
「ああ。すぐ追いかける」
「……分かった。じゃあ、待ってるよ」
すまねえな。これで多分、俺たち最後の会話になるんだが、こんな時でも嘘ばっかりで。
でも、お前を守るためだから──見逃してくれよ。
*
……のはずだったんだが。
「じー……」
見てるな。結構遠くから。隠れながら。
別行動っつったのになんか着いてきてるんだけどアイツ。
なんで着いてきてるんだ。王都に向かったんじゃなかったのか。それとも何か問題でも起きたのか? 王都までの馬車乗り場がどこか分からなくなったか? あんなに教えたのに?
いや、そんな感じじゃなさそうだな。足取りは迷いがねえし……ていうか普通に真っ直ぐこっちに向かってきてる。え、普通に追いつかれそうだぞ。
「あの……さっきぶり」
追いつかれちまったよ。
「……ネル。なんでここにいるんだ」
「いや、その……一人で行くのってなんか怖くて」
怖い? あの狂犬ネルが? お前そんなこと言うのか。盗賊団にいた頃から周りに噛みついてばっかりだっただろ。何を今更。
一人で行動するのが怖いってことは……そうか、思えば今まで俺がつきっきりで指示出してたからな。俺の時はルシアがいたから大丈夫だったけど、やっぱ初めての一人行動だから戸惑ってるってことか。
「それこそ、さっさと王都に行って宿見つけた方がいいだろ。ここにいたって危険なだけだぞ」
「いや、そうじゃなくて……」
何だ。何がそうじゃないんだ。コイツは何を言いたいんだ。
こっちに残る方が危険なんだぞ。昨日の殺る気満々のリアンとマドリーを見てなかったのかお前は。
「……アンタがついてこない理由が分からない」
「理由なんて言っただろ。用事があるって」
「……それ、わざわざ残ってやる意味ある?」
……ごもっとも。
そう言われてみればそうか。元々存在しねえんだが、確かにそんな用事があるなら一緒に王都に行って二人とも安全な状態でやる方がいいもんな。嘘だからって適当言うのはよくないな。
にしても、なんて言おうか。正直、コイツが俺の指示無視して自分なりにもの考えて行動してるってことになんだか成長感じて若干感動までしてるんだが……思考逸れすぎだな、俺。
「──それにアタシ、何だか『嫌な予感』がして……」
嫌な予感……か。
あれだよな、なんか取り返しがつかないような危ない時にビビっと感じるヤツだよな。俺もこれまで何度も感じてきた。これまでの人生の死ぬ直前とか、レミに睨まれた時とか、レミが近づいて来た時とか、レミに脅された時とか……。
俺たち盗賊はボスの作戦によってポンポン死んじまうから、生き残ったヤツは大抵危険を察知する勘みたいなもんがどんどん育っていくんだよな。いや、あくまで俺の所感だけど。
……ネルが言ってるのも同じ勘なのか?
「だって、アシェル兄が死ぬときも──こうだったから」
「……そうなのか?」
「う、うん。……アシェル兄が捕まった、あの盗みの時も、同じ予感がして。……それで、アシェル兄は……死んじゃって!」
「おい、おい! 落ち着け!」
え、そんな、泣き出しかけてんじゃねえか。マジか、そこまで心配してくれてたのか。お前、元のアシェル嫌いだったんじゃねえのかよ。
いやでも、俺が死ぬって思い込んでるってことは──アイツは俺の計画に気づいてる訳じゃねえんだな。ただ単に、昔のアシェル兄の時と同じ状況だから不安になってるだけか。
……大丈夫だと思うけどなあ。ネルの言ってる「嫌な予感」が俺の言うあの「嫌な予感」と同じものだとして、今の俺にはあの予感してねえんだよな。
リアンとマドリーはそれこそ「犯人見つけたらぶっ殺してやる!」って感じで息巻いてるが──多分、あの予感がしないってことは殺されるまではいかねえってことなんじゃないだろうか。あの二人だって根は善人なんだし、いくら怒りに身を任せたからといって相手を殺すようなことはしないってことだろ……多分。
いやどうかな。ルシアとかタリエとか思い出したらちょっと断言できかねるな。
「大丈夫だって、ほら。すぐ追いかけるから、よしよし」
「っ……もう……」
うりゃうりゃ。
とりあえずこういう時は撫でとけばいいんだよ。撫でとけば「撫でるな!」ってなって元気になるし。そしたらさっさと離れる気になってくれるし。
……あれ、ならねえな。
顔真っ赤にして固まっちまったぞ。どうすりゃいいんだこれ。
「(……やっぱり、この撫で方。アシェル兄と同じ……どうして……)」
*
ネルを何とか説得して別れて、気づいたらもう夜になっちまってたよ。アイツ納得してくれたかな。明らかに納得してなかったよな。あのままじゃもう一回ぐらい追いかけに来たりするんじゃないだろうか。
この後、俺は両家の捜索隊に捕まらなきゃいけねえから、森の近くまで来て遺品を持ったまま待機してる必要がある。
あるんだが……。
「おー……だいぶ集まって来てやがんなー……」
こりゃ森に近づくのにも一苦労ありそうだ。
途中で一回捜索隊の様子を見ようと思ったんだが──リアンやマドリーは今日、本気で犯人を捕まえるって周囲に働きかけまくったせいで、捜索隊は両家以外の人間も参加しててこれまでとは比較にならないほど大規模になってきてる。
勿論一般人も混ざってるから、戦闘になった時用の備えも完璧だ。まあ、相手は逃げようと必死で見境のない盗人って設定なんだから当然って言えば当然なんだが。どこの部隊にも専用の警備兵とかが混ざってるし、全員に最低限の装備が支給されてる。
これの準備するのに両家はどれだけ金払ったんだ? こりゃキレてるのは次期当主だけじゃなくて、現当主まとめて家の全員な気がするぞ。おお怖。
「にしても……誰が誰だ……?」
勿論、抵抗して相手を汚させるつもりはねえし、俺を捕まえるって意味なら人数が多いのは別に悪いことじゃない。むしろいいことなんだが……ちょっと人数が多すぎて誰が誰だか分からねえ。
俺は両家の関係を改善させたいんだ。そのためには「共通の敵」を両家が協力して打ち倒す必要がある。なのに、もし一つの陣営だけに捕まっちまったら協力してる印象が薄くなっちまうよな。だから、贅沢ではあるが、できれば両家が揃ってるタイミングで捕まりたい。だが、これだけ人数が多いと、どれがバレク家の陣営でどれがグロス家の陣営なのか見分けがつかねえ。暗くて顔もよく見えねえし、それに両家以外の連中も混ざってるから余計ややこしい。
まあ最悪どっちかに捕まっても、後でもう片方も合流するだろうから結果的には協力したことになるか。そう考えればそこまで神経質にならなくてもいいのかもしれねえ。計画通りに行かなかったことなんてこれまでいくらでもあったし、臨機応変にやるしかねえだろ。
「それより捕まった後何を言うか、だな」
リアンとマドリーに捕まった時、どういったことを言うべきか。両家を結託させるためにはできるだけ怒りを煽る方が効果的だろう。アイツらは犯人に対して相当な恨みを持ってる。だから煽れば煽るほど、二人は協力して俺を追い詰めようとするはずだ。そうすれば和解も完璧なものになる。
「でも煽りすぎてもなあ……」
多分やり過ぎたら殺されちまうよな?
俺には例の如く次の成り代わりの保証がない。今までは死んでも次があったが、もし次がなかったら? 正直もう余裕で次もあるだろって考えちまってるが、慢心はよくない。
この地域一帯からずっと出れてねえから、やり残したことは全然達成できてないままだ。特にソラナの生存安否は急務だ。これができてないままだと死ぬにも死にきれない。
だからこそ、捕まった時に何を言うかは重要だよなあ……。
怒らせすぎず、でも和解するには十分なくらいに──その塩梅が難しいんだよな。どこまでやればいいんだ。どこからがやりすぎなんだ。リアンは熱血タイプだから感情的になりやすいし、マドリーは冷静だが根に持つタイプだ。二人とも怒らせたら何しでかすか分からねえし。
「ネルは無事馬車に乗れたかな……」
今頃、馬車で途中の街まで向かってる頃だよな。宿を自力で探すようになるのは……大体三日から五日後ぐらいか。
金の整理をしてる時に、手紙を見つけてくれればいいんだが──見つけなかったらどうしよう。いや、見つけるだろ。あんなに目立つように入れといたんだから。
手紙を読んで、コイツはどう思うんだろうな。怒るのか? 悲しむのか? 金の匂いに鋭いアイツのことだ。もしかしたら先にひ独り占めできるかもって考えてるかもしれねえし──
「──おい、アシェルじゃねーか!」
え?
は、もう見つか……え?
……え。なんで、いる。
なんで──「眠らずの狼」の連中がここに……。
*
「よう、久しぶりだな。お前、生きてたのか」
「……ああ、まあな」
……落ち着け、落ち着け、俺。
なんで「眠らずの狼」の連中がここにいるんだ。ボスはもういねえから、バレク家とグロス家を襲うっていうあの計画はパアになったはずだろ。完全に団は空中分解したと思ってたのに。
ボスがいた頃は盗みの経路から実行のタイミングまでアイツの指示で決まってた。だが、そもそもが戦闘専門の集まりじゃない上に、今はどっちの家も厳戒態勢を解いてない。ザっと見ただけでも人数は十人いるかいないか程度……全員武器すら持ってねえ。素手の丸腰だ。ボスがいない以上、脳筋で突っ込む以外情報を知りようがないコイツらじゃもう両家は落とせねえ、はず。
なのに、どうして。
クソ、最悪のタイミングだ。
「俺たちもよ。ボスがいなくなってからバラバラになっちまったから、また何人かで集まってさ。で、行く当てもねえし、金もねえし──どうしようかって話になってたんだ」
どうしようもなくなった奴らが再結成したってことか。だよな、本来盗みしか知らねえ連中の集まりだもんな。どうかそのまま今すぐにでも立ち去ってほしいんだが……コイツらそんな雰囲気じゃねえ。
でもどうして今ここなんだ。ボスがいねえなら盗みは成功しねえって分かり切ってるじゃねえか。なのにどうしてこっちに来た。他に何か「お宝の噂」でも掴んだってのか。
……「お宝の噂」。
………………あっ。
「弱ってるっつっても、指示がねえ状態で、ボスが言ってたあの二つの家の警備を突破するのはもう無理だろ? そう思ってたんだが、そしたら──『亡くなった長男坊の隠し財産がある』って噂を聞いてよ」
「……っ! ……ああ、その噂か。俺も、知ってる、一応」
「おお。だよな、真面目でボスに従順なアシェルはそういう噂に敏感だよな」
最悪。敏感も何も俺が流した噂だし。
畜生、誰だこの噂が「よくできた嘘」なんて言ってたヤツは。噂流した当の本人が今、噂のせいで自分の首を絞められてるぞ。よくどころか、なにもできてねえじゃねえか。
ああもう、じゃあ今の状況は限りなく最悪に近いじゃねえか。
コイツらは元々盗賊団で、両家を直接狙う気はないものの、俺が流した嘘の噂に踊らされてこんな場所まで集団で来た大馬鹿だってことだ。そしたら、偶然その場所に先行してた昔馴染みがいた、だから声をかけた。
そして、その昔馴染みは──とんでもないものを持っている。
「っておい、お前の持ってるそれ。例の長男坊の『遺品』じゃねえか」
「なんだよアシェルー。お前も同じ狙いだったのかよ。独り占めする気だったのかー?」
「なあ、一緒にやろうぜ。お前は使えるヤツだ。隠し財産、山分けしようや」
──そうだ。俺は酒家アシェルの遺品を持ってここに待機してる。
傍から見れば、お宝の手がかり片手に様子見してる盗人にしか見えねえ。
断りたい。マジで断りたい。
なんでここまで上手くやってこれたのに、最後の最後でこんな望んでもない盤外からの罠が飛んできやがるんだ。あとちょっとで両家の関係修復は目前だったんだぞ。
コイツらの要求に応じて協力するか、もしくは大人しくこの遺品を明け渡せば──俺の命は助かるかもしれねえ。この人数差だ、いくら武器がないとはいえ、多分拒否したらボコボコに殴り殺される。
別にここでコイツらに道を譲ったところで、どうせ今の膨れ上がった──しかも武装済みの捜索隊相手に勝てる訳ねえ。すぐに捕まるだろうし、戦闘になっても簡単に抑え込んじまうだろう。そう考えりゃ、俺が巻き込まれる必要はねえ。むしろ、身の安全を考えるなら遺品を渡して俺はその場を去るべきだ。だって俺には次の人生があるって保証が無いんだから。
「なあ、どうした、アシェル? お前も同じ目的で来たんじゃねえのか?」
……でも、それをしたらどうなる?
コイツらがここを通って行ったら、間違いなく捜索隊と激突することになるだろう。当たり前だ、今現在この辺り一帯はどこもかしこも捜索隊だらけだ。
大丈夫だろうが、きっと大丈夫だろうが、きっと問題なく制圧できるだろうが──それでも万が一、億が一の可能性だとしても、コイツらの反撃が通ったとしたら。
酒家のアシェルの無念を晴らすために、捜索隊に加わってくれた優しい一般人の誰かが、俺のために働いてくれてる両家の人間が、これから当主として輝かしい未来が待っているリアンやマドリーが──コイツらを通したせいで怪我をするかもしれない、その可能性がほんの少しでもあったとしたら。もし──それで死ぬことがあったとしたら。
──それだけは、絶対に、止めなきゃならない。
「……悪いが、断る」
「は? なんでだよ。一緒にやった方が──」
「断るって言ってんだ。お前らには渡さねえ」
相手の顔が歪んでく。怒ってる。当たり前だ、協力を断られたんだから──でも知ったことか。それがコイツらを通していい理由にはならねえ。
俺が流した噂のせいでこいつらがここに来たんだ。だから俺に責任がある。コイツらを止めなきゃいけねえ。リアンやマドリーのために、酒家アシェルのために──俺自身のために、止めなきゃいけねえんだ。
「お前、何様のつもりだ? 元リーダーだったからって偉そうにしやがって──」
「偉そうにしてる訳じゃねえ。ただお前らには渡せねえって言ってるだけだ」
「あ? やっぱ独占するつもりだったのか?」
「あの真面目なアシェルもここまで堕ちたってことかよ」
「じゃあ──力ずくで奪っていいってことだよな」
一気に殺意が漏れ出してきて、そのまま俺の周りを取り囲んで来やがった。
大丈夫だ、アシェル。相手は全員武器を持ってない、盗みが専門の素人だ。俺と違って兵士の訓練をしてた訳じゃねえし、レミみたいなとんでもなく強い敵と相まみえた訳でもない。
というか、こんなヤツら。レミやルシアに比べれば怖がりようがねえだろ。全員雑魚と同じだ。あの二人を知った以上、こんなヤツら止まって見えるに違いねえ。
構えろ。
俺はきっと大丈夫だ。きっと乗り越えられる。怖がる必要なんてない。きっと勝てる。こんなヤツらに負けていいのか。目にもの見せてやるべきだろ。俺にはまだやることがあるんだ。ここで負ける訳にはいかねえ。ここで逃げるなんて──皆に顔向けできねえんだから。
「やってみろよ……! できるもんならなあ!」
ああ、もし今、ネルが戻って来たとして。
今の俺を見たら──なんて言うんだろうな。
「生まれ変わりのこと聞いたのは……そういうこと、だったんだよね……!」
「下っ端の雑魚寝も、手を繋いで寝たことも、知ってるのは、やっぱり……!」
「アタシに優しかったのも……いや、アンタは初めからずっと優しかった……!」
「ねえ、アンタなんて嫌いって言ったのは、あれ、嘘だから、ホントは、ホントは……!」
「──だから、だから、だから……目を、覚ましてよ……アシェル兄……」
これで第7章終わりです。ここまで読んでくださってありがとうございます。
この後、彼らは遺品を奪って共に意気揚々と突撃、捜索隊に犯人と誤認されぶちのめされました。
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それでは、次話以降も宜しくお願いします。
みんなも怖い人たちへの口の利き方には気を付けよう!(´・ω・`)




