平民と令嬢と官僚
「さあアシェル、遠慮せずに飲んで頂戴。せっかく弟と妹を撒いて来たんだから」
「おいおい、マドリー。そんなに注ぐなって。まだ一杯目も飲み切ってないんだぞ?」
「あら、いいじゃない。どうせ今夜は帰さないつもりなのだから……ねえ、ベラ?」
「……ああ。せっかくの機会だ、お前も腹を括るべきだぞ」
「お前まで……まあ、俺も楽しんでる手前文句言わねえけどさ」
「にしても、マドリー嬢がここまで酒に詳しいとは思わなかったぞ」
「それは私の台詞よ、ベラ。私の知る酒飲みはバレクの酒しか飲もうとしないから面白みがなくて」
「お前の知る酒飲みは俺除けばバレク家の人間だけじゃねえか。当たり前だろ」
「そうね。だからベラがここまでの種類を準備してくれたことに感謝してるわ」
「私もここまで話せる友人ができて嬉しいさ、マドリー嬢」
「ほら、これも美味いぞ? 取り寄せた年代物だ」
「確かにいい香りだな」
「ふふ、お酒の前だと貴方は素直なのね。ほら、もう一口……どう? 美味しい?」
「……んぐっ、ぷはっ。あー、美味いな。流石だ」
「どうだアシェル? 今の状況も中々悪くないだろう?」
「ああ。昔はこんな美人二人と酒が飲めるなんて思わなかった。両手に花ってヤツだな」
「まあ、アシェルったら……口が上手くなって……」
「……口説いているのか? 八方美人は止めておけよ?」
「ははは……」
「……それはそうと、いい加減この縄、解いてくれねえか? 手が痺れてきたんだが」
「……」
「……」
*
なんで俺はこんなことになってるんだろうな。
マドリーから「ベラが良い酒を仕入れてくれた」「リアンやネルには内緒で飲まないか」「俺とマドリーとベラで、三人だけで」って手紙が来た時点ではまだ良かったんだ。ベラとマドリーがつるんでるのは意外だったが、ベラはマドリーの患者だった訳だし、二人とも酒好きだ。共通点を考えれば仲良くなっててもおかしくねえし、それを踏まえても踏まえなくても俺には断る理由がねえ。むしろ喜んでグロス家の屋敷に向かったんだ。
ベラの目利きが確かなのは分かってるし、そもそも仲間と飲む酒が世界で一番美味い飲み物なことはとっくに承知。俺もいくつかつまみを買って、屋敷の奥にあるマドリーの私室に通されて。既に準備してた二人に挨拶をした後、こじゃれたグラスの酒を早々に頂き、俺はすっかり安心してたはずだった。
──椅子に座らされて、部屋に入って来た薬家の連中から縄でぐるぐる巻きにされるまでは。
流石にビビったぜ。命の危機かと思ったぞ。
マドリーは「逃げ出さないように、念のためよ」とか言って微笑みつつ目は笑ってなかったし、ベラも「……すまない」って小さく呟くだけで止めようとはしなかった。
抵抗しようにも、出されたウェルカムドリンクに何か入ってたのか、妙に体が重くて力が入らねえし。結局されるがまま拘束されて、今に至るってわけだ。
別に逃げるつもりなんてねえのにな。そんな気にさせるような危ないことをするつもりなんだろうか。どちらにせよここまできつく縛らなくていいと思うんだけど。
「さあ、アシェル。口を開けて?」
「なあマドリー、縄を……んぐっ」
「二人とも、距離が近すぎじゃ……ああ、いや。何でもない、私が気にしすぎだな……」
目の前には、上機嫌でグラスを傾けるマドリーと、どこか気まずそうに酒を煽るベラ。
そして、身動き一つ取れずに酒を飲まされ続ける俺。
まあ、酒は美味いし、美女二人に囲まれてる状況自体は悪くねえんだが……。
いかんせん俺の自由だけ奪われ過ぎてる。ここまでされる謂れはないぞ。
「ふふ、いい飲みっぷりね。やっぱり貴方には上品な飲み方が似合うわ」
「上品かなあ」
ちょっと俺違うと思うんだけど。縄でぐるぐる巻きにした相手に飲ませることが上品な飲み方だとはとても思えねえんだけど。
どうやらマドリーの中の価値観は俺のものと同じじゃないらしい。生まれ持っての金持ちってのはこんな感じなんだろうか。多分違うよな。
「あー……マドリー嬢は、積極的……だな?」
ほら、ベラを見ろよ。明らかに困惑してるんじゃねえか。
ちょっと出かけた手が宙を迷って、結局グラスに行きついては、を繰り返してるぞ。
「……はぁ。それにしても……困ったわ」
「おう、どうしたマドリー。話は聞くから撫でるの止めてくれねえかな」
コイツさっきからずっと満足そうに俺の頬を撫でるんだよな。困ってる風には見えねえ。
今日はやけに積極的だ。普段はもっと理性的で、計算高いヤツなのに……まあ、狙いはなんとなく察しがつくが。
「……お父様がね、最近うるさいのよ。『また縁談をつけてきた』『良い相手をそろそろ見つけるべきだ』って、毎日毎日……」
「ああ……」
そういや、確かにそうだったか……。
マドリーの婚約相手だった酒家の俺は死んじまったし……酒家と薬家が共同製品を作れるようになった以上、もうマドリーがバレク家の人間と婚約する必要もない。
次男のリアンは和解したとはいえマドリーに対抗心むき出しだし、死んだ長男の代わりに次男を宛がうってのはどっちにも失礼だからやらねえだろう。
いやでも、コイツは名門の令嬢だし、相手ぐらい選び放題じゃ──
「──それに、この顔でしょう?」
「……うん、いや……すまん」
そんな風に火傷の跡見せられたら何も言えねえんだけど。
あの火傷は──俺があの火事の中からコイツを助け出した時に負わせちまった傷だ。俺がもっと早く助け出せていれば、こんな痕は残らなかったかもしれねえし……。
「ほら、顔に大きな火傷のある女を貰ってくれる物好きなんていないでしょう? ああ、どうしたものかしら。こんな顔だと殿方を怖がらせるだけ、そうよね?」
「……そんなことねえよ。お前は綺麗だ」
「……っ! ……そう。ふふふ……」
ああでも……コイツは焦ってるんだろうな。
本来は早い段階から決まってた婚約で、自分は問題なく身を固められるって思い込んでた訳だ。立場上、次の世代はどうでもいいっていう訳にもいかねえだろうし。
それにしてはあんまり悲壮感が見えねけど。明るく振舞ってんのかな。
「……だからね、私は時々思うのよ──いっそ、私のことを一番よく知っている人と一緒になれたら、どんなに幸せかしらって。心当たり、あるかしら?」
……で、この感じだと、俺にその責任を取ってくれねえかって言いたいんだろうな……俺が自惚れてるだけかもしれねえけど。
で、この場で俺を拘束したまま潰しちまって、あわよくば既成事実を狙ってるんじゃねえかと。
コイツとしちゃ、亡くなると壊れちまう程度に俺は心に残ってた存在だ。フリーになった今、プライドの高いマドリーが別の男を探すってなれば時間もかかるだろうし、かといって自分の都合でダラダラ引き伸ばすってのもコイツの性には合わねえだろう。
だから、仲の良い俺をそのポジションに据えることで、なんとかこの問題を乗り切り、焦りを解消できれば……って思ってるんだ。
ただ、だからといって、名家の令嬢が何の脈絡もない一般受付嬢を婿に迎え入れるってのもそれはそれでどうなんだろうか。少なくとも薬家の現当主やその他諸々の連中は嫌がるだろ。
別にマドリーが悲観的に考えすぎてるだけで──ほとんどの男たちはお前の火傷の跡なんざ気にしねえし、仲良くなれる男だってきっと他にいると思うんだが。
「……おい、ベラ。お前からも何か言ってやってくれよ」
この状況に関係なく、物事を冷静に見れるベラなら……客観的に意見を出してくれると思うんだが……。
「……まあ、マドリー嬢の気持ちも分かる……だが、だがな」
お、おお!
やっぱりベラは分かってくれてる。俺の味方だ。マドリーの焦りは分かるが、だからって俺を無理やり婿にするのは物事を急ぎ過ぎてる。それをちゃんと指摘してくれるんだ。
「その……焦って決めることでも、ないだろう。アシェルにも心の準備というものがある。それに、今のこいつはまだ身分が安定していない。そんな状態で名家に婿入りなどすれば、余計な火種になりかねん」
そうだ、その通りだ!
流石、理屈が通ってる。マドリーの感情論に対して、現実的な問題点を突きつけてくれた。これならマドリーも無理強いはできねえはずだ。よし、これでこの「責任取れ」って空気は霧散する。あとはこの縄を解いてもらって、普通に飲み直せばいいだけ──
「──だが、せっかくの酒だ。まずはこれを飲み干してからでも遅くはないんじゃないか?」
「……は?」
おい待て。なんでそこで酒の話に戻るんだ。
俺とマドリーの結婚話には釘を刺してくれたが、今のこの状況──俺が拘束されて、一方的に飲まされてるこの状況は継続させるつもりかよ。
助けてくれるんじゃなかったのか? いや、確かに「結婚しろ」とは言わなかったが……代わりに「もっと飲め」って言いやがった。俺の自由を奪ってることに関しては、肯定しやがったぞ。
「……それもそうね──さあ、アシェル。ベラもこう言っていることだし、ほら、もう一杯」
え、ベラは何考えてんだ……? 俺の味方じゃないのか?
このまま俺が潰されでもしたら、後はマドリーの思惑通りだぞ……?
*
「……待て! 待ってくれ!」
このまま流されるがままに飲まされていたら、確実に潰される。
マドリーのペースに巻き込まれず、この状況を打開するには──酒の席での主導権を、俺が握り返すしかねえ。
「あら、何かしら? もうギブアップ?」
いかにも余裕って顔だな俺が何を言おうと、この縄が解かれない限り逃げられねえと確信してる、そしてそのまま言質を取ってやろうって企んでる顔だ。
だが、俺が狙うのは慈悲じゃねえ。取引だ。
「いや、逆だ。こんな美味い酒、俺一人で飲むのは勿体ねえと思ってな。お前らももっと積極的に飲むべきじゃねえか? 具体的には──『飲み比べ』……とか」
「へえ……」
……よし、反応したな。
俺が飲んでる姿を見るのが楽しいのは分かるが……酒ってのは、一緒に飲んでこそ美味いもんだろ。それとも何か? お前ら、俺のペースについてこれないのか?
そんな挑発を込めた視線を送れば、プライドの高いコイツなら乗ってくるはずだ。
「……残念だけど、却下よ。私がそんなバレク家の人間のように下品な飲み比べなんて、するわけないでしょう?」
……そう簡単には乗ってこねえか。
確かに、名家の令嬢が男と酒を競うなんて、外聞が悪すぎる。それこそ、コイツが苦手としてるバレク家のやり方と一緒だからな。そもそも、今の圧倒的優位な立場を手放す理由がない。
だが、ここで引くわけにはいかねえ。幸いにも、マドリーは自分に有利な点があれば──多少の状況だって飲み込める容量の良さを兼ね備えてるはずだ。
だから、俺はここで、「マドリーが絶対勝てそうな提案」をすればいい……!
「──じゃあ、こうしよう。お前らが一杯飲むごとに、俺も一杯飲む。それなら文句ねえだろ?」
「……貴方が?」
「ああ。マドリーが飲んだら俺も飲む。ベラが飲んだら俺も飲む。俺は二人の倍飲むことになるが……それなら公平だろ?」
これなら文句はねえはずだ。
俺は今、椅子に縛り付けられて身動き一つ取れねえ。酒を注ぐのも、口に運ぶのも、全部お前らの手加減次第だ。その上で、俺は自分から「二人の倍飲む」って自殺行為みてえな条件を提示してる。
マドリーの目的は俺を酔わせてそのまま既成事実を作ることだろ。俺が自分からペースを上げるって言えば、断る理由はどこにもねえ。圧倒的に有利な条件で、俺が自滅するのを眺められるんだからな。
な? ベラ。お前は乗るよな? 分かってくれるよな?
「なるほど、そういう……それなら私は乗るぞ。マドリー嬢はどうする?」
「……二人がそこまで言うなら、悪い話ではないわね」
食いついたな。目が獲物を見る肉食獣みてえに細められてるぜ。俺が自暴自棄になって墓穴を掘ったとでも思ってるんだろ。
ベラが乗ってくるのも一応想定通りだ。コイツは俺との時間を楽しんでるし、酒が入ればノリも良くなる。マドリーだって、自分だけが飲むんじゃ不公平だと感じるだろうが、ベラも巻き込めば「共犯者」としての意識も強まるはずだ。
これで役者は揃った。あとは、俺が潰れる前にマドリーには眠ってもらって、先にご退場頂くだけ。
「じゃあまずは……ベラが持ってきた……その、それからいこうか」
「いいわよ。貴方が望むなら、たっぷりと味わわせてあげる……はい、どうぞ」
……自分で言っておいてなんだが、やっぱり人に飲まされるのは慣れねえな。
ペースも自分で調整できねえし、タイミングも合わせねえといけねえから若干難しいぞ。
冷たいグラスの縁が押し当てられて、琥珀色の液体が喉の奥へと流し込まれて……。
……熱っつ、喉の奥が焼けるみてえだ。ベラの目利きは確かだが、よりにもよってこんな度数の高いものを初手から選んじまうとは。上手くいけばいいんだが……。
……腹がたっぷたぷになってきた、今の俺便所行けねえし。
単純計算で俺は二人の倍の量を摂取することになるから、酒に呑まれるかどうかは勿論、胃袋の容量との戦いにもなりそうだ。
「……ふぅ」
だが、マドリーの頬も確実に朱に染まり始めてる。段々ペースが早くなってるよな。
俺が倍の速度で消費していくのを見て、コイツも釣られてペースを上げちまってるんだ。自分の方が有利だっていう慢心が、ブレーキを壊してる。普段の理性的な対応も、酒で鈍くなって働きにくくなってるんだ。
「おいおい、飛ばしすぎじゃないか? 顔、赤いぞ?」
「あら、貴方こそ。もう目が据わってきてるわよ?」
「まさか。まだまだいけるぜ──ベラ、次、頼む」
「ああ、任せてくれ……」
ここで俺が弱音を吐けば主導権を奪われちまう。
だが、マドリーの目も、若干とろんとした色が混じり始めてきた。理性的な仮面が剥がれ、本能的な部分が出てきている証拠だ。
あと少し、あと少しで──コイツの限界が来る。ここを乗り切れば、俺の勝ちだな。
「んぐっ……ぷはっ……」
「……よし。私はもう飲んだからな──次はマドリー嬢だ」
「ベラは早いわね……」
そうだな、ベラはさっきから微塵も酔いそうな気配がない。
そこそこ回って来た俺やマドリーの代わりに、今は酒を注ぐ役を担当してもらってる。
まあ、「マドリーを潰したい俺」と「俺を潰したいマドリー」にとっちゃ、ベラが潰れるか潰れないかは特に関係がない。俺が負けようとマドリーが負けようとベラはその勝負に関与しねえ訳だし……これなら「マドリーが一杯飲むと俺が二杯飲む」のルールでも特に変わりなかったな。
新しい瓶が開く音……ベラの手つきは静かだ。
まるで儀式みてえに、粛々とグラスを渡す気配がする。
「さあ、マドリー嬢。これはとっておきだ。是非味わってくれ」
「ええ……頂くわ……」
そう言うマドリーの、グラスを受け取る手つきが、もう危なっかしいほどに覚束ない。
これが最後の一押しになるか──それとも、俺へのトドメになるか。
*
……勝った。
「……すぅ……すぅ」
勝ったぞ。俺の勝ちだ。
ふう、危なかったぜ。まだなんとか余裕があるが……この「作戦」を仕組んでなきゃ、先に限界を迎えてたのは間違いなく俺の方だった。思ってたよりギリギリの勝負だったが……なんとか乗り切ったぞ。
「ふぅ……これでひとまずは一安心か……」
「……上手くいったな、ベラ」
「ああ。見事な作戦だったぞ、アシェル」
その声には、相変わらず酔いなんて微塵も残ってねえ。涼しい顔してやがるのが目に浮かぶぜ。
そりゃそうだ。だってコイツは初めから全然飲んじゃいねえし──戦いが始まった瞬間から俺と結託してたんだからな。
こう見えても俺とベラはツーカーの仲だ。何度もサシで飲んでるし、目配せすれば断片的にではあるが情報を伝えることだってできる。だから、「飲み比べ」の前にいくつか目配せを送れば、ベラは俺の意思を察してくれるって訳だ。
そもそもベラは「俺と一緒には飲みたい」が「俺とマドリーの結婚には反対してくれる」立場なんだ。だから、「俺の拘束は解かなくてもいいが、ずっとマドリーの掌の上ってのも面白くない」ってのがコイツの心境になる。
それなら、「俺がマドリーを潰したい」って意図を伝えれば、コイツは特にそれを拒否する理由もなくなる。
「で……マドリーの酒に混ぜた、『睡眠薬』については気づかれてそうだったか?」
「いや、気づいていないだろう。酒で相当感覚が鈍っていたようだし……多分な」
そうか、それなら助かるんだが。
ベラには、俺にだけ「度数の低い酒」を、マドリーには「この家の睡眠薬を入れた酒」を注ぐように指示しておいた。注ぐ役もベラだからその辺の細工はやり易いはず。
つまり、俺は二杯分飲んでる風に見せて全然飲んでなかったってこと。マドリーから見ればこの状況は「自分が勝負に負けてそのまま寝落ちまった」って構図になる。
マドリーは自分の優位を確信してたから、まさかベラが俺に加担してるなんて疑いもしなかっただろう。普段なら薬の味にも気づくだろうが……今日は相当飲んだからな、なんとか隠し通せたらしい。
「助かったよ。お前がいなきゃ、今頃どうなってたか」
「礼には及ばない。私は、お前に償いきれない過ちを犯しているのだし……」
「だから、そのことについては気にしなくていいんだって。むしろ俺が礼をする立場なんだから」
「そ、そうか?」
ただ、ベラがこうしてすぐ従ってくれるってのは、未だに「俺への償いをしたい」みたいな思いが根底にあるからなんだよな。んなもん気にしなくていいってもう何回も言ってるんだが。
口ではこう言っておきながら今回の俺はそこに付け込んだ形で協力してもらってるし、そこだけベラにはちょっと悪いような……。
「……まあ、これでようやく自由って訳だな」
マドリーには悪いが──アイツだって俺を呼びつけてから大勢で拘束させて、酒の勢いで自分の要求通させようとした訳だし。これでおあいこだよな?
ぐっすり眠って起きる気配もねえし、後は適当にマドリーをベッドに運んでやって、俺たちは改めて飲み直すなり、帰るなりすればいい。マドリーには後でちゃんと話し合って決めようって言えば大丈夫だ。
「じゃあベラ、悪いけどこの縄、解いてくれねえか?」
「……ああ、そうだな」
……ん?
どうしたベラ。動かねえな。
「おい、ベラ? 聞いてるか?」
「……ああ、聞いているぞ」
……おい、待て。
縄を解くんじゃなくて、新しい酒を開ける音が聞こえたぞ? 酒を飲むのは良いが、まずは俺を解放してからでも遅くはねえと思うぞ?
あれ? ベラ?
「……邪魔者は消えたな」
「え?」
「なに、どうせ今外に出てもグロス家の連中に捕まって結局マドリーの掌の上だ」
「ここを出る必要は無い。じゃあ、もう朝まで二人きりで飲むしかないだろう?」
「それに……さっき礼をしてくれるとも言ったな。じゃあ──今がその時だ」
「ん? ベラ? 良いぜ、良いんだけど……先に解いてくれると嬉しいっていうか──」
「──だからアシェル、第二戦だ。今度は私と『飲み比べ』しようじゃないか……な?」
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