表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】俺は死んだはずだよな?  作者: 破れ綴じ
11. おまけ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/111

平民と魔女と信者

「なあノエリス。工房への帰り道、こっちで合ってると思うか?」


「ボクに聞かれても分からないって……」




「偶然お前に会えた時は『これで帰れる!』って思ったんだが……なんでお前も迷子なんだよ」


「仕方ないじゃないか、ボクはまだ来て日が浅いんだ。街中でドラゴンになる訳にもいかないし……むしろボクは──なんでキミが迷子になってるのかが不思議だよ」


「前来た時はこんな綺麗な路地裏じゃなかったんだよ……エリザベトが整備したのか?」


「ボクの眷属の癖にボクといる時に他のヤツの名前出さないで?」


「ええ……なんで……?」




「ああ……帰るより先に日が暮れちまうぞ……」


「もういいじゃないか。適当な扉開けて突っ切ればどうだい?」


「お前な……そんなことして良い訳──おいやめろやめろやめろ! 迷惑だろうが!」


「なあに。中のニンゲンは黙らせればいいさ──」


『──は、はーい? し、信者の、方……ですか?』


「……ん?」




「え、ええっ、アシェルさん!? ど、どうして、ここに……!?」


「えっ」


「あっ──キミはいつぞやの性悪女」


「はっ……あ、あなたは──め、迷惑魔女!?」


「えっえっえっ」






 *






「え、えっと……汚いところ、ですが……」


 ……なんだ、これ。


 路地裏で迷子になった後、偶然ノエリスと鉢合わせして、二人で迷子になりながら地図とにらめっこしてたってのに──なんでか路地裏の建物の一つからソラナが出てきて、気づけば中の部屋に案内されることになってやがる。

 ノエリスが普段どんな生活してるか俺は微塵も知らねえし、時たま会うこともあるが……まさかこんな路地裏で出会うなんて予想外だった。


 だが、それ以上に──そもそもなんでこんな場所にソラナがいるんだ、「信者の方」ってのは何なんだ。お前「教会からはもう抜けた」って言ってたよな? 


「うわあ……趣味悪いねえ」


「なんであなたまで入って来てるんですか……」


 で、なんだこの空気は。言いたくねえが、確かに趣味悪いぞこの部屋。

 鼻をついてくるような甘ったるい香の匂いが充満してて、息苦しいっていうか頭がクラクラしてくる。壁一面には蝋燭が灯されてて、その揺らめく炎のおかげで部屋の中央にある「それ」がはっきり見えるようになってる。

 で、その中央にある、黒い布がかけられた台座の上に鎮座してるのは──木彫りの像だ。正直、表面はデコボコだし、バランスも悪いし、出来が良さそうには見えねえが……あれ、どう見ても──


「──俺の像だよな……」


 それだけじゃねえ。像の周りには色々なものが飾られてる。使い古してインクが染みついた羽根ペンとか、書き損じて丸められた羊皮紙の屑とか、いかにもな王族が着そうな服とか。


 どれもこれも──俺が王族の時に見覚えのあるガラクタばっかりなんだよな……。


 ここではガラクタ扱いじゃねえのか、まるで国宝か聖遺物みたいに、恭しく丁寧に並べられてやがるけど。埃一つ被ってねえのが逆に狂気的だぞ。俺の知らないところで俺のガラクタが集められて、俺の像が拝まれてるなんて……正直知りたくなかったんだが。

 なんだこれ。俺の葬式か? それとも呪いの儀式か? 隣のノエリスは明らかに呆れた感じだけど、ソラナがそれに何も言及してこない辺り、この状況ソラナは承知ってことで──




「──じゃあ、巷で話題の『アシェル教』ってのヤツの教祖はやっぱりキミなのか。だろうとは思ったけどさ」


 ……ん? 




「……え? 『ア、アシェル教』……?」


「は、ははは……」


「そうだよアシェル。この性悪女、『アシェル教』とかいう前のキミを崇める宗教作ってるんだよ。『光明の教会』とやらを乗っ取ってさ」


 は、はああ……!? 

 なんだその、俺の名前を冠した怪しげな宗教は。俺は神様になった覚えはねえぞ。教祖になった覚えもねえし、信者を集めた覚えもねえが。

 ていうか、ソラナが作ったのか? あの人見知りで、いつもオドオドしてたソラナが? 光明の教会を乗っ取って? ええ? 


「この像も、趣味悪くないかい? キミのゴミまで集めて……ストーカーもいいとこだよ」


「ち、ちが……っ、違います! これは、アシェルさんの尊さを広めるため、タリエ君と、協力してっ……!」


「だってさ。迷惑だねー」


 なあソラナ、顔真っ赤だぜ。もうこれ言い逃れできねえよ。

 俺のゴミを「尊さ」とか言ってる時点で、もうアウトだぞ。尊いってなんだよ、ゴミはゴミだろ。お前、自分が捨てた紙屑を拾われて、綺麗に伸ばして飾ってる姿を想像したら鳥肌が立たねえのか……? 


 あとタリエと協力ってなんだ。

 すげえ言葉が聞こえた気がするんだけど。


「そ、そういうあなただって……! あの時、ド、ドラゴンになって、アシェルさんの前にやって来て! 迷惑なのは、どっちですか!」


「なっ……それについては、その……もう謝ったじゃないか! 自分の眷属に『近所迷惑だからやめてくれ』って土下座されたら、主としては無視できないだろう!?」


 おっと、今度はソラナが反撃してきたな。

 普段は大人しいのに、俺のことになると結構強気っていうか。


 確かに、あの時のノエリスの登場は派手すぎたぜ。工房の屋根は吹き飛びかけるし、普通に目撃者もいたからあとちょっとで間違いなく大パニックだったな。エリザベトがいてくれたおかげでなんとか誤魔化しが効いたが、あの苦労を思い出したら頭が痛くなってきた。




「そ、それを言うなら……! キミだって、ボクの眷属の背中に呪いを刻んだままじゃないか! 今もずっと監視してるんだろ! このストーカー女!」


「わ、わわわ! わーわー!」


 ……えっ?  背中の呪い? 

 えっこわいこわいこわい。なんだそれ。背中に呪いってどういうことだ。




 ソラナが「追跡用の呪い」を使えるのは聞かされてたが……確かに、俺が眷属だった時、どうやって俺を探して来られたのか不思議だったんだ。そんな呪いをかけられた覚えなんてなかったし、でも呪いがなきゃ迷いの森は間違いなく突破できなかったはずだし……。


 ……もしかして、あれか? 信者の証としてソラナに刻印を彫ってもらった……あの時に呪いが書き込まれたってことなのか? ただの入れ墨じゃなくて? 言われてみれば……たまに背中が熱くなるような感覚があったような気もするけど。てっきりただの気のせいかと……呪いのせいだったのか? 

 ソラナが俺を見つけるために使った「追跡用の呪い」って……遠隔で、何かしらの方法で探知してるんじゃなくて──俺の体に直接仕込まれてたってこと? 


「え、えっと、アシェルさん……!」


「お、おう」


「あ、あれは、その……お、お守り、です……! アシェルさんが、どこにいても、分かるように……!」


「そっかあ……」


 お守りってレベルかなあ。

 位置情報が分かる呪いって……いや、助けてもらった恩はあるし、ソラナが悪意でやってるわけじゃねえのは分かってる。分かってるんだが……流石にちょっと重すぎねえか? 


 それに、まだ「刻んだまま」ってことは……今もまだずっと消えてねえってことか。

 いやまあ、前から「呪いは魔法と本質的に同じなんだから、『成り代わりの魔法』が死後も続くなら『追跡用の呪い』も続いて当たり前じゃねえか」とは思っちゃいたが。残ったままってことは今もずっと俺の居場所はソラナに筒抜けってことだよな……別にいいけど。


「そ、そもそも、あなただって、で、伝説の魔女とか言ってたくせに……あの時、わ、私の呪いに、負けかけてましたよね? 口ほどにもない……」


「はー!? 何さ、あれは不意打ちだったからだよ! 言っておくけど今ならキミぐらい余裕だからね!? キミぐらいの魔法使いなら当時から山ほどいたんだから!」


 今度はノエリスが顔真っ赤になってるぞ。図星か。

 確かにあの時はお前、ソラナの遠隔呪いに苦しめられてたもんな。遠距離攻撃できないお前とは対照的に、ソラナは位置さえ分かれば一方的に攻撃できるからな。姿も見えない相手から一方的に攻撃されて、手も足も出せずに苦しんでたのはよく覚えてるぞ。


「だ、第一……アシェルさんにけ、眷属とか偉そうに言ってるくせに……実際は、アシェルさんに構ってほしくて尻尾振ってるだけじゃないですか」


「!? ボ、ボクは主なんだよ? アシェルはボクのものだし、尻尾振ってるのだってアシェルだよ!」


「えっちょっ」


 ……まずい、ヒートアップしてきたぞこれ。

 空気がビリビリして、像に亀裂が入ったり、蝋燭の炎の色が変わったりしてる。

 ……これ、放置したらマズいんじゃねえか? 魔法と呪いのエキスパートだぞ? もし二人が本気出せばこの場所ごと吹き飛ぶんじゃねえか。俺も巻き添えで消し炭になる未来が考えなくても見えてきそうだ。


 ああもう、なんでこう……心臓に悪い執着されるようになっちまったかなあ……。






 *






「──ま、まあまあ、二人とも。そこまで熱くならなくてもいいだろ?」


 割って入るんじゃなくて、あえて一歩引いたところから言えば大丈夫なはずだ。

 今ここで俺まで慌てて大声出したら、余計ややこしくなるだけだしな。感情が高ぶってるのは分かるが、コイツらは話が通じない相手じゃねえし、俺がいつも通りでいれば、勝手に頭も冷える……と信じたい。


「な? ここが崩れたら、俺も巻き添えくうし……せっかくの祭壇も台無しになっちまうぞ? な?」


「あ、アシェルさんの像が……! ご、ごめんなさい……!」


 お、おお。

 祭壇って単語が効いたか、ソラナはピタッと動き止めたな。


「フン。ボクは祭壇なんかどうでもいいし、キミだってボクが守るから落ち着く理由なんかないんだけどー」


 うわ。

 ソラナとは対照的にすっげえ冷めた目してやがる。鼻で笑いまで始めたぞ、この女。


 いやまあ、コイツにとっちゃ俺以外の人間が必死こいて作った祭壇なんて、ゴミの山と変わらねえんだろうけど。壊れようが燃えようが知ったこっちゃない、むしろこのままソラナごと吹き飛ばして、俺だけ連れて帰ろうって腹積もりなんだろうけど。コイツの物騒な思考が分かっちまう自分が怖いな。

 後でちゃんと埋め合わせするから、なんとか機嫌直してほしい。


「でも、守るって言ってもな……ほら、例え後で助けられるとしても、埃まみれになったり、生き埋めになったりするってのは御免なんだよ。ほら、圧死した経験があるからさ。だから頼むよ、収めてくれ」


「……むぅ。キミがそういうなら……」


 まだ不満そうだが──魔力引いてくれたな。ようやく部屋の揺れが収まったぞ。

 一時はどうなることかと思ったが……ひとまずなんとかなったか。




 さて、と。


「一息ついたところで……ソラナに確認しときたいことが一つあるんだが」


 改めて部屋を見回せば……俺の像に、俺のガラクタに、鼻につく香の匂いに……。

 正直、ちょっとどうかと思うぞ。自分の葬式会場に迷い込んだ気分っていうか、アシェル教って名前から考えるに今の俺は「崇拝されてる」立場なんだろうが……そんなこと言われて素直に喜べる神経は持ち合わせてねえ。


「なあソラナ。正直、自分の像があるのは引くけど……それはまあ、いいとして」


 ──俺の認識としちゃ、ソラナはとっくに教会を抜けてるって聞いてたんだが……。


 あれは嘘だったのか? いや、ソラナが俺に嘘つくようなヤツだとは思えねえ。ソラナの俺への執着心考えたら、俺に嫌われるような嘘は絶対につかねえはず──じゃあ、なんでこんなことになってんだ? 


「お前、教会からは抜けたって言ってたよな? 新しい仕事も見つけたって」


「は、はい……それは、本当です」


「なのに、なんでこんなことしてんだ? こんな……『アシェル教』なんて怪しげなもん作って……」


 俺が心配してるのはそこだ。

 この祭壇の趣味が悪いとか、俺のガラクタが集められてるとか、そんなことは二の次だ。

 問題は、ソラナが危険な連中に関わってるかもしれねえってことだ。一度は抜けたはずの泥沼に、また自分から足突っ込んでるようにしか見えねえ。


「……そ、その、アシェルさん。わ、私は……ただ……」


「ただ?」


「……ほ、放っておけなくて……」


「……放っておけない?」


 ん? 


 なんか想像してたのと違うような……。

 俺の中だと、「俺を崇めるために都合が良いからわざと危険な場所に頭突っ込み直しました」っていう流れかと思ったんだが……「放っておけない」? 


「は、はい……! 教会の幹部がいなくなって……信者の人たちが、混乱してて……このままだと、暴走しちゃうかもしれないから……だから、私が……!」


 ……ん?  「暴走しちゃうかもしれないから、私が」? 

 ……ああ、なるほど。そういうことか。


「……そうか。お前、あえて教祖になったのか」


「えっ?」


「行き場を失った信者たちが暴れないように……お前が新しい『神輿』を用意して、あいつらの不満や不安をコントロールしてるってことか?」


 そう考えれば辻褄が合う。

 教会の残党が新しい組織を形成して、今でこそ教義も変わったから危ない真似をしちゃいねえって話だけは聞いてるが……もしかして、それをやったのがソラナってことか? 

 教会の残党が暴徒化してないのも、大規模な騒ぎが起きてないのも、ソラナが裏で手綱を握ってるからだとしたら……全部納得がいく。指導者は信頼されやすい自分のまま、信仰対象を呪いなんてあやふやなものから、現実に存在していて悲劇の死を遂げた王子の俺にすり替える。力でねじ伏せるんじゃなく、信仰を利用して内側から管理するっていう……。


「……そ、そうです! そ、その通りです!」


 お、図星だったか。


「し、信者の人、たちを……野放しに、するわけには、いかないので……! わ、私が、責任を持って……監視というか、み、導くというか……!」


 確かに、暴力で抑え込めば恨みを増やすだけだが、信仰で誘導するなら血は流れねえ。

 元の「光明の教会」が腐ってたとしても、「何かにすがりたい」って気持ち自体は本物だったんだろうし。行き場を失った信仰心は、放っておけば暴走する火薬みたいなもんだ。幹部連中がまとめて吹き飛んだ後、信者が暴徒化する可能性なんていくらでもあったはず。実際、俺も襲われたし。あの時はなんとかなったが、国中で同じことが起きててもおかしくなかった。

 でも、そうはなってねえ。大規模な暴動なんて聞いてないし、街も平和そのものだ。ってことは──誰かが陰で誘導してたってことになる。そして、その「誰か」の最有力候補は、元幹部で組織運営のプロだったソラナってことで……。


 俺のガラクタ集めてんのも、信者に「ほら実在の証ですよ」って見せるためかもしれねえ。そう考えりゃ、このクソ趣味悪い祭壇も、「平和維持装置」って風に見えないことも……ない、気がする。あの書き損じの紙屑も、信者たちにとっては「聖なる経典の一部」に見えるのかもしれねえしな。そう思えば、まあ、許せなくもないか。俺のゴミが国の平和に役立ってるってんなら、悪い話じゃねえ。


「は、はい! そ、そうです! 平和、のために、アシェルさんの威光が必要で……! 暴走する、信者さんたちを、導くためで……! 悪いこともさせて、ないですし……! え、えへへ……」


「おお、やっぱりそうか!」


 よかった、俺の読みは合ってたんだな! 


「ありがとな、ソラナ。お前のおかげで、この国は救われてるのかもしれねえ」


「いえ、そんな……! 私はただ、アシェルさんのために……!」


 ソラナ、誰にも気づかれないように一人で抱え込んで、こんな薄暗い地下室でガラクタに囲まれながら国の平和守ってたってことか……責任感の塊かよ。俺なんて自分の隠居生活のことばっかり考えてたのに、こいつは国の未来まで背負ってたのか、頭が下がるぜ。元幹部としての責任を、こんな形で果たしてたなんて……正直、見直したよ。


「──ただな。もし危なくなったらすぐに言うんだぞ。教祖のお前を内部から狙うヤツはいねえだろうが……万が一があるからな」


「は、はい!」


「……フン。いい子ぶっちゃってさ……」






 *







 あの後ソラナは信者との集会があるからって言って出ていった。


 そうかそうか、今思えばソラナの新しい仕事ってのはアシェル教の教祖だったんだな。

 確かにあれだけの前科と認知度があれば一般的な立場での復職とか不可能な気がするし、ソラナの立場の人間がいなきゃ余計大問題になってたかもしれねえってなると、今の状況で多分間違いは無いんだよな。


 あの拠点から工房までの経路が詳細に記録されてる地図がいくつもあったのはよく分からなかったが……まあ余計なことは考えないでおこう。ソラナが俺に執着する分には誰にも迷惑かけちゃいないし。


「……で、キミは結局、あの陰湿女のことばっかり褒めちぎっててさ。へー、キミは眷属の癖に主人よりも他所の女のことを優先するんだ。ふーん、そうなんだ……」


 問題は隣を歩くノエリスがめちゃくちゃ不満そうなことだけど。

 まだ根に持ってるのかお前。まあ、仲介に入った俺がソラナばっかり褒めたら面白くねえのは分かるけど。


「悪かったよ。お前も俺のために色々やってくれてるのは分かってる。ありがとな」


「……言葉だけじゃ足りないんだけど。キミにとってボクがどれだけ大事な存在か分かってる?」


「分かってるって」


 ……俺にとってノエリスが大事ってのは間違いなく真実だ。

 ソラナの呪いは死後も継続する。ノエリスも、それを参考に俺を見つけたとか言ってやがった。

 つまり──俺が死んでも、ノエリスは俺を見失わねえってことだ。

 普通ならゾッとする話だが……。


「じゃあボク、泊ってる宿屋がこっちだから。ついてくるっていうなら許してあげるけど……」


「いや、カルが心配するからそりゃ無理だ。悪い」


「……ぐすっ」


 でも、今の俺には──そんなノエリスがいてくれなきゃ困る理由がある。


「なあ、ノエリス。今日は無理だが、いつか埋め合わせをさせてくれないか。俺には、そうしなきゃいけない理由があるから」


「……そうしなきゃいけない、理由?」


「ああ」


 もし俺が百歳になる頃には、他の仲間たちも大体同じぐらいの年齢だろう。

 俺が老衰で死んで、また新しく成り代わったとしても……皆とまた楽しく過ごせるとは分からない。


 ただ、その時でも一緒にいられるヤツが一人だけいる。


「……もし俺が老衰で死んだら、その時に──俺はお前と二人きりになっちまうと思う」


「……かもねー」


「で、そうなったらもう百年。一人は寂しいから、お前とよろしく頼みたい──だからその時まで、俺と仲良くしてほしいんだ……いいか?」




「……ま、大事な眷属の頼みだからね。いいよ」


「……ありがとう」


 俺はコイツに返しきれない借りがあるし、コイツもそれを分かってるのに、こうして俺と仲良くしてやってもいいって言ってくれてる。きっと時間が経っても、コイツなら俺と一緒にいてくれるだろうし、そんな日々はきっと楽しいはずだ。

 だから、そんなヤツの眷属になれたのは、俺の人生で良かったことの一つだ。


「それじゃあまた今度な」


「うん、また今度……」






「……フフフ、もう百年だって? 馬鹿だなあ、アシェルは……」


「こんな気持ち初めてなんだよ? きっと一番愛してるのもボクに決まってる」


「確か……斬首、出血死、毒死、焼死、溺死、転落死、撲殺、圧死、病死だったよね」


「てことは、凍死や感電死や窒息死はまだ試してないってことになる……」


「ねえ、アシェル……キミを別々の方法で殺せば、何百年でも一緒にいられるんだよ?」

感想やご意見をお待ちしていますのでよろしければ……(´・ω・`)

ブックマーク・評価・リアクション等も、可能であればぜひお願いします。大喜びしますので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ