第2話 サメとタコその6
魔力を流し込まれたハンマーは、瞬く間にマリンの背丈の半分以上もある巨大なサイズへと変化した。
マリンは巨大なハンマーをズズズ……と引きずりながら、恐怖に震えるイザベラの元へと歩み寄る。射程圏内に入ると、マリンはイザベラの命乞いなど耳に入らぬ様子で、ハンマーのヘッドを思い切り蹴り上げた。
蹴り上げられたハンマーは、その重量と遠心力で唸りを上げ、イザベラの体に激突した。 その反動でマリンの体が大きくのけぞるほどの威力だ。しかし、マリンは体勢を崩すことなく、遠心力を利用して次の打撃、また次の打撃と、容赦なくイザベラに叩きつけていく。
イザベラの意識が飛びかけるのを見て、マリンは次の攻撃で終わりにすることを決めた。
「あくあ、お願い!!」
その声を聞きつけたあくあは、いつの間にかクロヱたちの後方に現れていた。主人の言葉の意味を瞬時に汲み取ったあくあは、魔法を発動し、イザベラの背後に逃げ場を塞ぐような氷の壁を作り出した。
マリンは壁が現れたことを確認すると、ニヤリと笑った。 彼女が柄を操作すると、一つだった巨大ハンマーが二つに分裂し、両手に収まるサイズへと変化した——とはいえ、それでも十分に凶器と呼べる大きさだ。
何か言いたげに口を開こうとしたイザベラに対し、マリンは慈悲も情けもかけず、両手のハンマーで怒涛のラッシュを叩き込んだ。最後の重い一撃が入り、イザベラは壁に縫い付けられたままズルズルと崩れ落ち、意識を失った。 静寂が戻るビーチ。マリンはハンマーを小さくして懐に戻し、髪をかき上げる。ボロ雑巾のようになったイザベラを見て、駆け寄ってきたあくあが呆れたように言う。
「船長……やりすぎ。これじゃ生きてるかわからないじゃない」
「あ! うっかりしてた! だって久しぶりの運動だったからつい……」
「回復魔法なんて、気休め程度にしか使えないんだから」
「かけるだけかけて、海軍に任せよ。あと彼女の海賊船から食料とかその他諸々もらおうかな。」
やれやれと言わんばかりにあきれていたが、マリンに言われたことをこなした。しかし、敵の海賊船にもらっていく物などあまりなかった。港で一晩過ごし、身支度を済ませて船を出航した。




