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第2話 サメとタコその5

 アランが倒れると、クロヱはアランを背にかばい、イザベラに挑んだ。戦況は一方的な防戦で変わらず、彼女は相手の強さにどんどん疲弊していった。イザベラは最初こそ興味を持っていたが、次第にクロヱの実力が分かってくると落胆し、早く終わらせたいという焦りを見せ始めた。


イザベラがわざと隙を作ると、それを見逃さなかったクロヱは反撃に出た。しかしイザベラは攻撃をうまくかわし、クロヱの腹に重い一撃を食らわせた。予期せぬ痛みに動揺を隠せないクロヱは、相手の次の攻撃が最後になると直感した。


即座に後退し、相手の全体像を捉えた。攻撃をカウンターでき、かつ強力な一撃を放てる技がないか、彼女は目一杯頭をフル回転させた。脳裏に、かつて元の世界で「風間」が戦っていた相手が浮かんだ。空手の名人で、人間の力では到底不可能なほどの破壊力を持っていた人物だ。彼をコピーするしか方法がないと判断した。


クロヱは攻撃の型を作り、相手が仕掛けるのを待った。


「スタイルコピー『野崎』、見切り正拳突き……」


クロヱの動きに関係なく、早く終わらせたい一心でイザベラは渾身の一撃を彼女の胸に叩き込もうと迫った。しかし、クロヱは彼女の攻撃を左手で受け流し、その隙に踏み込んだ。


「鎧殺し!!!!」


イザベラの腹に正拳突きが突き刺さった。この技は、相手が硬ければ硬いほど内部に与えるダメージが増大するという奥義である。通撃と呼ばれるものと同じである。それゆえ、イザベラの強靭な肉体が仇となった。打撃による衝撃が内部から外側へと広がり、内臓を破壊する。耐えきれなかったイザベラは吐血し、腹を抱えるようにして倒れた。


それと同時にクロヱの右手に激痛が走った。彼女の「スタイルコピー」はその名の通り、一度見たものをそのまま模倣するため、自分の肉体的限界を考慮しないからだ。クロヱもまた、激痛に右手を抱え込んでうずくまった。


痛みが少し引いたアランは、一部始終を見てイザベラがすぐには起き上がらないだろうと判断した。彼はクロヱを敵から遠ざけようと、必死に重い体を起こし、彼女の両脇を抱えて引きずった。


5メートルほど離れたところで止まる。あとはマリンが来るのを待つだけだ。アランは内心焦っていた。敵の意識はまだある。いつ痛みに慣れ、襲ってくるか分からない。アランがクロヱをなだめていると、その懸念通りイザベラがゾンビのようにゆらりと立ち上がった。


「まじかよ。どっちも満身創痍だっていうのに……。クロヱさんは俺のよき理解者だ。こんなところで死なせるわけにはいかない!」


そう自分に言い聞かせると、アランは最後の力を振り絞ってクロヱの盾になるように立ちはだかった。視界がふらつく中、アランはイザベラが目を細めて自分たちの背後、遠くを見ていることに気づいた。振り返ると、マリン船長がこちらに向かってきているのが見えた。


マリンはアランの横まで来ると、「おつかれさん」とだけ言って肩を叩き、イザベラに向かって歩き出した。仁王立ちで相手を待つその背中には、まさに王者の風格が漂っていた。


しかし、アランは彼女の実際の強さを目の当たりにしておらず、漁師仲間や父親からの噂程度しか聞いていなかったため、思わず疑問を口にした。


「あんた戦えるのか、貴族の娘だろう? そんなに強いとは思えない」


アランの言葉に反応し、マリンの雰囲気が明らかに変わった。その変化に気づき、アランは「あっ」と声を漏らした。マリンは振り返り、その貴族のことを秘密にしてほしいらしく、人差し指を唇に当てた。


アランがその意図を理解した直後だった。マリンを奇襲する勢いで、背後からイザベラが迫っていた。


アランは警告の声を上げようとしたが、マリンは後ろに目がついているかのように反応した。振り返りざま、イザベラの攻撃をいとも簡単に振り払うと、その美脚からは想像もつかないような強烈な蹴りを放った。攻撃をまともに食らったイザベラは、勢いよく吹き飛ばされた。


アランはその光景に唖然としていた。衝撃波の音で意識がはっきりしたクロヱも、目の前の光景に目を見開いた。先程、港でアクアに「強い」と言われた際、どうしても疑念を拭いきれなかったが、その言葉が真実であることを理解した瞬間だった。


イザベラの身体は数十メートル先まで吹き飛び、岩に激突した。クロヱの打撃によるダメージも相まって、激痛が再び彼女を襲う。二度も致命的な攻撃を浴び、死を悟ったイザベラは、何とかこの状況から逃げ出したいと必死に頭を働かせた。


しかし、ダメージに体が耐えきれず、意識を保っているのが精一杯だった。徐々に近づいてくるマリンは、まるで生物の上位に位置する魔物のようで、イザベラの思考は「逃げること」一色に染まった。必死に身体を奮い立たせて足を動かそうとするが、体は言うことを聞かず、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


マリンは、その怯えた様子に情けをかけることなく、懐から小さなハンマーのような武器を取り出した。それは魔力を流すと本来の大きさに戻る魔道具である。ただ、小さくなっても重量は変わらないため、腰に着けるとバランスが悪くなって動きづらいという欠点があった。

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