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第二部:禁じられた領域へ2

尾行された夜以来、アキとサユリは一層慎重に行動していたが、真実への渇望は二人を危険な領域へと駆り立てていた。古文書の解読は進み、生贄の物語が捏造されたものであり、一部の家系がその嘘を利用して村を支配してきたという確信を深めていた。禁じられた領域こそ、その嘘を暴く手がかりが眠る場所だと考えた二人は、ついに足を踏み入れる決意をする。


鬱蒼とした森の奥深く、昼なお暗い禁じられた領域。足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を刺し、異様な静けさが二人を包んだ。古文書のわずかな記述を頼りに、二人は慎重に奥へと進む。倒木や低い 灌木が行く手を阻む中、アキはサユリを支えながら進んだ。


やがて、開けた場所に出た。そこには、苔むした 古い 祭壇と、風雨に晒された 石の 碑がいくつか残っていた。アキとサユリは、それぞれの碑文を注意深く調べ始めた。その中で、ひときわ大きな碑の裏側に、これまで見たことのない 古代 文字が刻まれているのを発見した。


サユリは、持ってきた古文書と碑文の文字を照らし合わせた。その結果、碑文には、古文書の内容を裏付けるような、災厄の際の村人の協力や、自然への畏敬の念が刻まれていることがわかった。生贄の儀式に関する記述は、やはりどこにも見当たらない。


「アキ…これを見て!この碑文は、私たちが解読してきた古文書の内容と一致するわ!」


サユリの声は震えていた。ついに、嘘を暴くための確たる証拠を見つけたのだ。二人は喜びを分かち合ったが、その時、背後から複数の足音が近づいてくるのに気づいた。


振り返ると、険しい表情をした村の長老たちと、数人の屈強な男たちが、二人を取り囲んでいた。彼らは、アキとサユリが禁じられた領域に侵入したことを知っていたのだ。


「お前たち…!禁断の地に足を踏み入れるとは、何をするつもりだ!」


長老の一人が、怒りを露わにして叫んだ。アキは、手にした碑文の拓本を掲げ、毅然と言い返した。


「長老様たちこそ、一体何を隠しているのですか!古文書とこの碑文が示す真実は、村に語り継がれてきた物語とは全く異なります!生贄など、なかったのです!」


アキの言葉に、長老たちの顔はさらに険しくなった。彼らは、自分たちの権力の根幹を揺るがすアキとサユリの存在を、危険視していたのだ。


「黙れ!お前たちは、古の御霊を冒涜する者だ!村の秩序を乱す輩は、許されない!」


長老の合図とともに、屈強な男たちがアキとサユリに襲いかかった。アキはサユリを守りながら応戦しようとしたが、多勢に無勢だった。病弱なサユリは、すぐに捕らえられてしまう。


「サユリ!」


アキは叫び、彼女を助けようとするが、背後から強烈な一撃を受け、意識が遠のいた。


次にアキが目を覚ました時、彼は見慣れない場所に拘束されていた。手足は縛られ、口には布が詰められている。朦朧とする意識の中で、彼はサユリの姿を探したが、どこにも見当たらない。


やがて、部屋の扉が開き、冷たい眼をした長老たちが姿を現した。


「愚かな若者よ。お前たちは、知ってはならないことを知ろうとした。村の安寧を乱すお前たちの存在は、もはや許されない。」


長老の言葉は、アキの心に 冷たい 絶望を突き刺した。彼は悟った。自分たちは、あまりにも危険な真実に近づきすぎてしまったのだ。


そして、アキが最後に見たのは、 光 を失ったサユリの 無力な 体を抱きかかえる村人たちの姿だった。二人の若い命は、村の長老たちによって、秘密裏に奪われたのだ。


しかし、アキとサユリの死は、決して無駄ではなかった。二人が命を懸けて見つけた真実の断片は、碑文の拓本という形で、アキが密かに隠し持っていたのだ。そして、その拓本は、やがて、別の誰かの手に渡り、長年語り継がれてきた嘘を暴く、小さな 波紋 となって村に広がり始めることになるだろう。アキとサユリの犠牲は、静かに、しかし確実に、村の未来を変えようとしていた――。

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