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婚約者との出会いは最悪でした。

作者: うずらの卵。

「私はケーキが食べたいの」

「一度着たドレスは捨ててと言ったでしょ」

「あんたなんかもうクビよ」

私はザルビア王国の王女カルティエ。

国王と王妃の一人娘で、生まれた時から甘やかされ我が儘は何でも許された。

金の髪に色白で目鼻立ちがハッキリしていて見た目は可愛らしいのだが、

18歳になっても性格は変わらず、

家庭教師を雇っても勝手にクビにしてしまう始末。

そろそろ婿養子を貰い国を任せたいのだが、

いくら政略とは言え、この我が儘な娘の所に来て貰う殿方にはとても申し訳ない気持ちになり、国王と王妃は悩んでいた。

そして、悩んだ末に隣国に留学させる事にしたのです。

隣国は農業が盛んで自然豊かな国でした。

カルティエは隣国に留学の話を聞き、

「何で私があんな田舎の国に行かねばならないのです?」と国王に文句を言ったが、

国王は「勉強の為に色々経験を積んで来なさい」とこの時ばかりは我が儘を許さなかった。

そして、カルティエはドレスや首飾り等を持ち、隣国に付き人二人と旅立った。

しかし、2日かけて着いた留学先は平屋の農家のボロい一軒家だったのだ。

そして、何と付き人二人は荷物を置き1ヶ月後に迎えに来ると言い帰ってしまったのだ。

カルティエは唖然として家の前で突っ立っていた。

すると、中から日に焼けた背の高い男が出て来たのだ。

「何ボケっと突っ立ってんだ、早く入らんか」

「私はザルビア王国の王女よ、何よその口の聞き方」

「はぁ、王女か何か知らんがここではお前は下っ端だ」

カルティエは今までそんな口の聞き方をされた事がないので怒り心頭した。

「私帰る、こんな無礼な男が居るなんて聞いてないし」

「帰りたければどうぞ、一人で帰れるならね」

カルティエは勿論一人で帰れる訳がないので、

渋々男に従い家に入った。

すると、そこには老夫婦が座っていた。

「まぁまぁ、遠いい所をこんな田舎まで来て頂いて、ゆっくり休んで下さい」とお婆さんが優しく言ってくれた。

カルティエは「クッションは無いの?」と言うと、さっきの男が「何言ってんだ、直に座れ」と言った。

お爺さんは無口な人で喋らないけど、優しそうな顔をしていた。

すると、お婆さんが「素敵なドレスですね、でも畑仕事をすると汚れてしまいますから、服をお貸ししますね」と言い奥に引っ込んで服を持って来てくれた。

しかし、その服は何の飾りもないシャツとズボンだったのだ。

ドレスしか着た事の無いカルティエはとにかく嫌だった。直ぐに帰りたいと思った。

でも、1ヶ月は我慢しなければならないと腹をくくり、奥に引っ込んで服を着替えたのだ。

そして、少し休んでから男が言った。

「俺はレイだ、これから畑に行くぞ、着いてこい」と上から目線で言った。

カルティエはとにかくこの男が嫌いだった。

しかし、ここでは男の言う事を聞くしかないと我慢して付いて行った。

畑には見た事の無い野菜が色鮮やかに実っていたのだ。

カルティエは既に料理された野菜しか見た事が無いので初めて見る野菜に驚いた。

そして、レイが野菜を枝からもぎ取り籠に入れて行くのを見て、カルティエも真似をして野菜を枝からもぎ取った。

籠一杯に野菜を取ると、今度は町に野菜を売りに行くと言うのだ。

重い物を持った事がないカルティエにレイが軽々と籠を背中に背負い、二人で町に野菜を売りに行き夕方やっと家に帰った。

ここまでが、レイと私の仕事らしかった。

カルティエはずっと歩きっぱなしで疲れてもう動けなかった。

「何1日でへばってんだよ、こんなんじゃ1ヶ月持たないぞ」とレイは相変わらず冷たかったが、お婆さんが暖かいお茶を出してくれて「お疲れ様ね、慣れるまで大変だよね」と優しい言葉をかけてくれた。

晩御飯はとても質素だった。

「えぇーこれだけ?食後にケーキは無いの?」と言うとレイが「何おまえ言ってんだ、毎日食べれるだけでも有難いと思えよ」と呆れられたた。

布団はペチャンコで朝起きると身体中が痛かった。もう帰りたいフカフカのベッドで寝たい、美味しいケーキが食べたいと思った。

そして、畑に行って収穫して町に野菜を売りに行って帰宅する毎日が続いた。

もう、カルティエは心も身体もボロボロだった。

そんなある日、レイと畑に行き収穫を終えると、レイが「ちょっとこっち来て」と言いカルティエを畑から10分程歩いた山の奥に連れて行った。そこには綺麗な川が流れていたのだ。

レイは「この川に足を入れて見ろよ、冷たくて気持ちにいいぞ」と言い、レイは自ら靴を脱ぎ川に足を入れた。

私も川辺に座り靴を脱ぎ足を入れて見るととてもひんやりして気持ち良かった。

「良く頑張ったな、もうすぐ1ヶ月になるな」とレイが話し出した。

出会った頃は大嫌いだったレイ。

でも、毎日一緒に畑仕事をして行く内にカルティエはレイに対して段々好意を抱いて行ったのだ。

しかし、カルティエは素直になれなかった。

「やっと、こんな田舎暮らしから解放されるのね、とても嬉しいわ」と言いながら、何故か心の中では寂しい気持ちが溢れていた。

そして、いつものように家に帰り、

夜布団に入ると何故か涙が止まらなくなった。

すると、横に寝ていたお婆さんがそっと頭を優しく撫でてくれた。

そして、1ヶ月が経ち畑仕事最終日を迎えた。

レイと共に畑に行きいつものように野菜を収穫していた時、私は遂にレイに自分の気持ちを伝えた。「私このまま帰りたくない、あなたとここで暮らしたい」

すると、レイは「あなたは王女様です、帰るべき所に帰らねばなりません、もし又何処かで出会えたならばその時は私の気持ちをお伝え致しましょう」といつも憎まれ口を叩き、上から目線だったレイが何故かこの時だけは違う人に見えた。

そして、家に帰ると今まで無口だったお爺さんが初めて「お疲れ様」と言ってくれた。

次の日の朝迎えが来て私は1ヶ月ぶりに国に帰る事になった。

来る時に着ていたドレスに身を包み、お爺さんとお婆さんに深々とお辞儀をした。

そして、レイの顔を見るとレイは笑顔で「良く頑張ったな、又いつか」と言い手を降った。

又いつか何てもう会える訳が無いのにと悲しい気持ちになって、1ヶ月お世話になった家を後にした。

国に帰ると王国と王妃が出迎えてくれた。

そして、

私が居ない間に婿養子が決まったと伝えられた。

私はレイの事が忘れなれなかったが、

国王の命令で逆らえないのだ。

私はレイへの気持ちを心の済みに押し込めて、

覚悟を決めた。

そして、国王と王妃に呼ばれ部屋に行くと、

私の未来の夫となる人がソファーに座っていた。

そして、私が入って行くと立ち上がり、

「初めまして、レイモンドと申します。宜しくお願い致します」と深々と頭を下げたのだ。

私はその場に立ち尽くして動けなくなった。

そこには立派な服を着たレイが立っていたのだ。

そして、私の前に膝まづき私の手を取り「カルティエ様、結婚して下さい」とプロポーズしたのだ。

我が儘に育ててしまったと後悔した国王と王妃が、婿養子候補のレイモンドに相談してカルティエを1ヶ月平民の仕事をさせ鍛えて欲しいと頼んだのだ。

その上で、カルティエとレイモンドの気持ち次第で結婚の話を進めて行く予定だったのだと。

我が儘に育てられたカルティエが、

人の優しさに触れ、平民の暮らしを学び、

愛する人と共に国を引き継ぎ、国民に愛されこのザルビア国は栄えたのであった。





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