四十五幕 龍騎団の歩み~雷万編
劉備たちは幽州漁陽郡の郡治、漁陽県の県城に来ていた。
「………田ちゃーん」
「………田ちゃんって呼ばないで下さい。なんですか、大将」
劉備の疲れた声に、同じく疲れた様子で答えるのは、元沌狼の副頭領にして、頭脳担当だった田という少女だ。
「………状況はー?」
「目標、依然逃走中です。というか、ああ、雷です。あー、逃げられました」
「っだーーー! ざっけんな!! なんだ、この状況!? 何でこんな時にオレたち、鬼ごっこなんかしなくちゃならねえんだ!!??」
そんな劉備の叫びが、漁陽城に響いた。
ことの始まりは一日前に遡る。
幽州にいる九つの賊。
劉備はそのうち、沌狼、蘇張、青衆、愚馬の四つを併合する事に成功していた。
その勢力は、二百程の集団となっている。
しかし、各賊団は幽州において黄巾やその他の軽犯罪に対する抑止力としての立場もあった。
故に劉備はそれぞれの集団を代表する人間たちとともに他の賊を説得しようとしていた。
現在劉備と行動を共にしているのは、劉備の幼なじみである簡雍と甘英、劉備の義兄弟となった関羽と張飛の他に、沌狼からは負傷した頭の代わりに副頭領の田、蘇張からは頭領の厳、青衆からは頭の魯、愚馬からは頭領の韓がそれぞれ代表として着いてきている。また、官軍代表として、公孫讃も同行し、十人が旅の仲間となっていた。
一行は、愚馬を下した右北平郡から西に向かい、漁陽郡へとやってきていた。
その際に、劉備は田からの提案を受けていた。
「大将。今回は先に太守に挨拶に向かいましょう」
「? それはいいけど、なんでまた?」
「わっちらは偶然だったとして、蘇張は三郡を支配下に置いてましたし、青衆や愚馬はそれぞれの太守よりもよっぽど力をもってますけどね。今回の雷万はこれまでとは違って、完全な官軍の敵です。更に言ってしまえば、奴らの本拠地の情報すらありません。なので、太守に協力を要請しましょう」
「なるほどな。徳っち。俺っちはデンちゃんに賛成だ。漁陽太守からしたら、九鬼を解体してくれる徳っちの肩をもちたいだろうしな」
田の提案に隣を馬で併走している簡雍が賛同した。
「ありがとうございます、憲和さん」
「私も田ちゃんにさんせーい」
「んじゃ、田ちゃんの意見に沿って漁陽城を目指そうか」
簡雍の解説に納得した甘英と劉備も頷く。
「ありがとうございます。あと、田ちゃんって呼ばないで下さい」
「「あれ!?」」
簡雍だけが許可されている呼び名に、二人が首を捻るが、田はそれを取り合わない。
そこで劉備はふと浮かんだ疑問を呟いた。
「そういえば、雷万の頭領ってどんな奴? 武術大会にいたんだよな?」
「生憎ですが、わっちも詳しくは知りません。九鬼の会合には頭領格でないと出れませんし。ただ」
そこで、田は言葉を選ぶように、視線をさまよわせた。
「―――かなり厄介な性格のようです」
そう言って、首を巡らすと、魯や厳も同意を示すように頷いた。
「すっげえ目立ちたがりなんですよ、あいつ」
魯に続くように、厳も苦笑する。
「劉さんがあの時率いた騎馬隊にいただろ? やかましい奴がさ」
その言葉に、一人の煌びやかな男が劉備の脳裏に浮かんだ。
「………ああ、斥か」
「あん時は確か、そう名乗ってたな」
武術大会の開催された村を囲んだ敵の包囲網を突破するためにたてた劉備の策で最も危険だった突撃部隊に劉備が彼を指名した際、天を衝くほどにテンションを上げた男がいた。
奇襲を敢行した際も、大音量で叫びながら、敵の囲いを吹き飛ばしていた男だった。
「頭は悪くないんですけどね。効率とか責任とかよりもとにかく目立つことが好きな奴で、秘密とか隠密とかにとにかく向かない奴なんです」
「そんな奴が、なんで生き残れるんだ?」
魯の言葉に張飛が顔をひきつらせる。
「あそこは副頭領がしっかりしてるらしいからなぁ。細かい計画なんかは副頭領に丸投げらしいぞ」
「あそこの頭領に比べれば、沌狼は知能派ですよ」
田の呆れたような呟きに、頭領たちは大真面目に頷いた。
漁陽城の城門をくぐると、その内部は空気が変わっていた。
それに気づけたのは、劉備、簡雍、甘英を除いた者たち。
(―――なんだ? 市内が緊張してる?)
公孫瓚や張飛はその空気の変化を城門内が高い緊張感に包まれていると悟った。
しかし、もう一歩進んだ理解を示した者もいる。厳や韓たち、賊の面々だ。
(―――これは、警戒度が上がってる?)
タイミングがタイミングなだけに、嫌な予感がする、と田も周りと目配せをする。
「大将。なにか―――」
おかしい、と告げようとした田は、近くを歩いていた兵に近寄っていく劉備たちを見て言葉を切った。
異常な企画を立案してきたり、短期間で蘇張について調べ上げたりするせいで見落としがちであったが、劉備たちは一介の民草だ。
市内が殺気立っていることなど、知る由もない。
そんな事実に市内の殺気を感じ取った面々が思い至ると同時、劉備が兵に挨拶を交わした。
「どうも。劉玄徳といいます。陶刺史から連絡を受けていますか? できれば九鬼を捕捉するのに、太守様の力を借りたいのですが」
その言葉を聞いた兵は、安心したように一気に破顔した。
「はっ! すぐにご案内します!!」
そして、何かに追い立てられるように、漁陽城へと連れて行かれた。
漁陽城は郡治である。郡治は他の県と異なり、太守と県令が同じ城にいる。
漁陽郡の太守は雛介、字は桂単という。そして県令は法純、字は大正といった。
雛介と法純は二人ともが狭い室内に向かい合って座り、頭を抱えている。
「あの義賊気取りめが! この厄介な時に仕事を増やしおって!」
雛介の罵声に、法純は肩を落とす。
「刺史殿は不穏な動きを見せているし、雷万以外の他の九鬼も妙な空気を出している。おまけに黄布のせいで治安は悪化する一方。どうしますか、桂単殿」
「どうするもこうするも、………ええい、私はこういう頭を使う出来事は苦手なのだ! 大正殿、何か考えはあるか」
逆に問いかけられた法純は、困り顔で唸る。
「とりあえず、警邏を強化するようには言ってあります。しかし、既に三度も入られている。此度も守りきれるかは怪しいですな」
その答えを聞き、雛介はうなだれて、卓の上に置かれた紙を見た。
そこにはこう書いてあった。
『漁陽の五宝を頂きに参上する。雷万』
これは三日前、城に矢とともに射ちたてられた文だった。
それから三夜にかけて、雛介や法純が集めた珍宝が三つ盗まれた。
警備を強化しても変わらず被害は続いている。
最早お手上げ状態だった。
そこに使者がやってくる。来客の報せだ。
その名前を聞き、二人は耳を疑った。
劉備たち一行は客間に通されていた。
(―――嫌な予感がする)
そう、心中でぼやいたのは張飛である。
彼は別行動をとっていた間の劉備の行動を聞いて、似たような状況が幾度かあったのを思い出していた。
蘇張しかり、陶刺史しかり。
劉備という男が客間に通されて、何事もなかったためしがない。
(絶対、厄介事がくるぞ、これ)
張飛はそんなふうに顔をしかめていた。
(―――さて)
しかし、九鬼の内情を知っている面々は、事態をおおかた予想していた。
おそらく、雷万が暴れているのだろう。
城内に盗みに入る予告でも出したのだろうか。
(そんなところでしょう。問題は――― )
漁陽城に駐屯している太守や県令が、こちらを信頼してくれるかどうか。
そもそも、劉備たちは雷万を捕まえ、呑み込むために動いている。太守や県令と協力して、これを為すことも想定内だ。そのためにこの城まで来ている。
しかし、相手からしてみれば、劉備たちは得体の知れない相手だ。
刺史からの通達は来ているはずだが、それでもつい先日まで賊だった者たちを信じてくれるだろうか。
その信頼を引き出すには、駆け引きが必要になってくる。
田が顔を上げると、韓、魯、厳がこちらを見ていた。
その視線に、表情を引き締めると、六つの視線は少し微笑んで逸れた。
もとより頭を使うのは田の仕事だ。それは沌狼でも劉備の下でも変わらない。
(幸いこっちには属国長吏がいる)
田は手持ちの札を数えながら、弁舌を振るう算段をつけていた。
「ややや、お待たせして申し訳ない。貴方が劉玄徳殿ですな? 私、この漁陽の県令をやっております、法大正と申します。実はこの漁陽城、ただいま大変なことになっておりまして。雷万という賊の襲撃を受けているのです。奴らは我が城に伝わる五珍宝を狙っておりまして、既に三夜、三宝が盗まれております。奴らは今夜にでもまた来るでしょう。最大限の援助はします。どうか、力を貸してはもらえませんか」
一息に、法純はそう言った。
それに室内は呆気にとられる。
気づいていなかった劉備ら幼なじみ組は、そんな事になっていたとは知らず、気づいていた他の面々は包み隠さず話した法純に驚いた。
そんな室内の様子を見て、法純は笑う。
「私どもは腹芸が不得手でして、更に事態は逼迫しています。刺史様からの紹介状も受け取っていますので、全面的に協力しますよ」
法純は決まりが悪そうに笑いながらそう言った。
「太守様も奥におられます。しかし、指揮を執る者が二人とも持ち場を離れるわけにはいかず、顔を出すことはできませんが、同じ気持ちを抱いております」
そう言った法純に、田は不信げに顔をしかめた。
少し考えればわかることだ。
幽州の郡治とはいえ、帝都洛陽から離れたこの地で城に伝わる宝などろくなものではないだろう。
まして、雷万は義賊だ。
今までも豪族が不正にため込んだ物しか狙っていない。
(腹芸が苦手とはよく言ったものですね)
そう考えた田が、法純に物言いをしようとした。
しかし、それを劉備が手で制した。
「お話はわかりました。是非、我らにお任せください。雷万を必ず、捕らえてみせましょう」
そう言った劉備を、法純は安心したように見る。
「ですが、刺史様の書状はご覧になりましたか? 我らの目的は九鬼の併合。雷万を捕らえた後の処遇は、こちらに任せていただきますが、よろしいでしょうか」
「それはもちろん。あなた方が雷万を捕らえることができるのならば、その後のことは劉殿にお任せしましょう」
その言葉を聞いて、劉備はニヤリと笑った。
法純からもらった城の見取り図を見ながら、劉備は進入経路を探そうとしていた。
「何を企んでるんですか?」
そこに、半眼になった田が問いかけてくる。
それに対して、劉備は困り顔で笑った。
「『何を企んでるんですか』って言われてもな。別に小難しいことは考えてないぞ?」
「あの人たちは、民の血税を財貨に変えている盗人ですよ? それなのにそれを指摘しないで義勇軍を名乗るんですか!?」
そう言われて、劉備は頭を掻く。
「まぁ、実際そうなんだろうけどさ。証拠もないし。雷万の捕縛には協力はするけど、盗みを防止するとは言ってないし、宝が盗まれたとしても、雷万を捕まえれば雷万の身柄はこっちのもんになるし、別に平気だろ。それに、あの人らもそうやって蓄財しないと罷免されちゃうんだろ? それは今そういうシステムになってる漢が悪いんであって、彼らはその中で必死に足掻いてるんだ。それといちいち戦ってたら身が保たないって」
劉備が取り合う気がないのを知って、田は不満げに押し黙る。
「徳っち。昨日までの雷万の進入経路、仕入れてきたぜ」
そこに、席を外していた簡雍が戻ってきた。
「初日は堂々と城壁を乗り越えてきたらしいな。で、次の日は変装して警備に紛れてる。昨日は屋根づたいに進入。警備の奴らは疑心暗鬼状態だ」
そう言いながら指差すポイントを、劉備は墨で示していく。
「下水道なんかは鉄板だよな」
そう話し始めた劉備たちのもとに、別行動していた甘英が合流した。
「調理場借りれたから、簡単なご飯作ったよー。食べよー」
そう言って、張飛と共に鍋を持ってきていた。
数人で動く場合はそんなに気にしないが、人数が増え、野営も増えると、食料事情も怪しくなるところだった。
しかし、その懸念は甘英と、意外なことに張飛が払拭した。
張飛は肉や魚を美味しく食べる方法を熟知しており、甘英は野草や香味料を扱うのが得意だった。
この二人が一緒に料理をすると、不味いわけがない。そんな信頼すら勝ち取っていた。
「鶏の手羽をほぐして、中に炒めた飯を入れて焼いたやつ」
「山椒がピリリと効いた野菜汁」
「「召し上がれー」」
全員が思い思いに汁や鶏を掴んで食べながら、打ち合わせは続いた。
所変わって、幽州代郡桑乾県。代郡は幽州の中でも西端にある郡で、桑乾県はその代郡の郡治、代県にほど近い県である。
とはいっても、県と県の間は大小の山野が広がっているような場所だ。
そんな山と山が密集して谷間のようになっている場所。その場所には地元の人間が近寄らない場所となっていた。
その場所の名は、『虻蛇の谷』。
九鬼の一つである虻蛇がねぐらとしている場所だった。
そこを、夜明け前に動き出した一団がいた。
誰であろう、虻蛇の頭領と副頭領だった。
虻蛇の頭領は、武術大会の折に芭と名乗った男だった。劉備に率いられ、奇襲部隊として包囲を攻撃した者の一人だ。
副頭領は艶やかな女だった。
黄と呼ばれる彼女は、着物を着崩しており、豊満な胸の谷間が強調されている。
そんな二人が、住処を出たのは劉備に会うためだ。
非道を繰り返してきた虻蛇にも、劉備の義勇軍に加わることで得られる恩赦という条件は魅力的だった。
その魅力的な提案に乗るため、虻蛇を治めている二人が直々に劉備に面会を求めることにしたのだ。
「さて、漁陽に向かうぞ」
「は~い」
短く言う芭に、黄が間延びした返事を返した。
更に所変わって、幽州涿郡涿県。涿郡の郡治のとある飯店に丁髷頭の男がどっかりと座っている。
そこに、一人の少年が駆け寄ってきた。
「所長! こんな所で何やってるんですか!? そんな堂々と店のど真ん中にいて! 立場わかってます!?」
「この皓龍詰所が所長。お天道様に顔向けできぬことをしたことはない!!」
「このバカ所長がっ!! 正義の集団とはいえ、反政府活動をしてるんだから目立つなっつってんですよ!! 周りで必死に目を逸らしてくれてる一般市民さんに申し訳ないとは思わないんですかっ!!」
「どちらかというと、お前の無駄に長い突っ込みの方が周りに情報を振りまいてないか?」
そんな二人のやり取りを笑いながら見ていた男が「まぁまぁ」と少年をたしなめた。
彼は臥顎の頭領だ。武術大会の時には郭と名乗っていた。
ちなみに、皓龍の頭領は湧と名乗っていた。この二人も劉備に指揮されて奇襲を敢行した部隊の中にいた。
「崔くん。相変わらず大変そうだね。そこで副所長やるの嫌になったらいつでもウチにおいで。崔くんなら即日採用だから」
皓龍の副所長を務める崔は齢十三。沌狼の田と同い年だった。
「おいこら。皓龍の優秀な人材を引き抜きに来たのなら、帰れ」
「ただの挨拶じゃないか、まったく。さて、皓龍の。いい情報がある」
「聞かせてもらおうか」
皓龍は前回の九鬼会議の後、すぐに臥顎に対して、劉備につく旨を報告した。
さらに、皓龍の手紙はこう続く。
―――臥顎も劉殿に降るのならば、一緒に行こうではないか。
と。
そこで臥顎の頭領―――郭は劉備の動向を探り、次に彼らが到着するであろう場所が漁陽だとわかり、嫌な予感がした。
更に下調べを進め、嫌な予感が確信へと変わり、郭は皓龍の頭領―――湧に連絡をとったのだ。
その確信とは。
「雷万が漁陽で大掛かりな盗みを働いてる。それに劉さんも巻き込まれ中だ。ここで協力すれば、劉さんからの心証も良くなるだろうさ」
そんな郭の言葉が終わらない内に、湧は店を飛び出していった。
取り残された崔がため息と共に会計を済ます。
「行きましょうか、臥顎屋さん。ウチの所長が猪突っ走って行っちゃったんで」
「崔くん。悩みとかあったら、溜め込まないで相談するんだよ?」
そんな言葉に会釈で返しながら、崔は猛進している湧の馬をひきながら、自分も馬に跨がった。
場所は漁陽に戻る。
夜になって、劉備たちは城壁の上で騒ぎが起こったのを呆然と見ていた。
「はーっはっはっは! 雷万、ここに見参!!」
ピシャーン、と声高に名乗りをあげた男の背後に雷が落ちる。
「え!? 雷が落ちたけど、あいつ平気なのか!?」
それに答えるのは厳だ。
「ああ、大将はあれ見るの初めてか。よくわからんが、あいつがかっこつけると決まって雷が落ちるんだよ。不思議なことにあれに触っても痛くも熱くもないんだ」
「なにその超常現象!?」
「演出効果みたいなもんだろ。気にすんな」
「んなアホな!?」
そう言いながら、城壁を駆け上るが、そこは既に誰もいない。
「ちくしょう、どこ行った!?」
辺りを見渡していると、俄かに城内が騒がしくなる。
「しまった。囮か」
「今の斥だよな!? 頭を囮にしたのか!?」
驚愕の事態に、劉備が面食らう。
完全に後手に回った劉備たちが城内に入ると、法純が脱力してへたり込んでいた。
「県令殿! 宝は!?」
「やられた。………四つ目も………………」
その言葉に、劉備は悔しそうに歯噛みした。
「はーっはっはっは。目立ってたよな、俺!」
暗がりから現れた斥を、仁が出迎える。
「お疲れ様、頭。首尾よく行きましたね」
仁は雷万の副頭領だ。雷万は仁による綿密な計画と、斥による卓越した潜入能力によって様々な獲物を盗み出してきた。
二人とも二十代半ばの年齢だ。
三夜にして内に意識を持っていき、敢えて今夜は城外で目立ち、気を引かせた。
城内を警戒していた警備は、泡を食ったように騒ぎのもとに集まる。
その隙に、下水道から入り込んだのだ。
内と見せかけて外、と見せかけた内側からの侵入。
虚実を織り交ぜた作戦は見事に嵌まり、漁陽の守備隊を混乱させることに成功した。
「劉さんが漁陽にいるみたいですね。警備の質が変わってました。下水にも兵を配置してるとは」
普段はそんな面倒なことはしない。漁陽の守備隊など小物もいいところだ。しかし、念のため。そう思って策を複雑にしたことが結果として功を奏した。
「ははははは! しかし、それを読んだお前もたいしたものだ」
「頭が騒いでくれたおかげで、下水の警備も外に行きましたからね。とはいえ、同じ手は通用しないでしょう。さて、最後は明日。少し計画を修正しますか」
「任せたぞ、仁! わはははは」
城の見取り図を広げる仁の横で、斥はご機嫌な表情で酒を飲んでいた。
「さて」
仁は斥に聞こえない声で呟く。
「皓龍、虻蛇も動き出したみたいだな。派手に動いたかいあって、大騒ぎだ。この状態で残りの一つも盗み出せれば、頭も満足してくれるだろ。さーて、あちらがどう動くか、な、と」
雷万の大きな動きが誘蛾灯となり、役者が続々と漁陽城という舞台に集結していた。
劉備義勇軍結成秘話後編、スタート。
義勇軍を構成する九鬼のメンツは、
ちゃんと名前を与えられて活躍する人もいます。
誰が誰かは、まあ、ぼちぼち。
章番号修正(2024年9月27日)。
誤字、ルビ、表記ゆれの修正を行いました(2024年11月4日)。




