一幕 会合
大人数収容用の天幕の中で、複数の人間が蠢いていた。
その数は十二。
上座となる三つの席が空いており、それ以外の席は埋まっていた。
その集団の中で、妙に挙動不審な男がいた。
男の名は趙弘。二十歳を過ぎたばかりの青年だった。
その青年がなぜ挙動不審なのかというと。
(なななななぜオラはこんな所にいるだー!?)
この場所が、黄巾党の本拠地で、この天幕にはその黄巾党の兵士が集められていたからだった。
黄巾党。
後に黄巾賊とも呼ばれるようになる反乱軍のことである。
黄巾党は党首に張角という男を置き、太平道という道教の教えによって、民を腐敗しきった王朝から救い出さんと考える、義侠の集団でもあった。
趙弘はそんな集団の末席に属していたはずの青年だった。末端の歩兵として名も知られず朽ちていくはずだった青年は、自分がなぜここにいるのか、本気でわからなかった。
なるべく目を合わせないようにしながら、周りの人間を盗み見る。
最初にこの天幕に入った際に、自分の名前が書いてある席に案内された。案内してきたのは、鼠の面を被った小柄な人間で、「こちらにどうぞ」という短い言葉が発せられて初めて、女性だということがわかった。
名前の書かれた椅子に座ると、長机の片側に六の椅子が並べられていた。そして机の目の前には『酉』と文字の書かれた紙が置いてあった。
趙弘は紙を初めて見たので少し感動してしまった。この時代、紙の発明自体はされていたが、まだ貴重品のはずだった。
(こ、これが都会なんだなぁ)
と、妙な感心をしたところで限界が訪れ、冒頭の状況へと戻るのだ。
趙弘は恐る恐る自分の右隣を見る。机の上には『申』。
サルといえば何を連想するだろうか。ひょうきん者? 賢い者?
しかし、隣に座っているのはでっぷりとした大男だった。巨体の上にある頭が不自然に小さく見え、その小さな頭にある目はさらに小さく、そして鋭かった。
たまに「………うまそう。………うまそう」と呟いているが気にしてはいけない。どこにも食べるのに適した物がないことにも、視線がなぜか人を見ているような気がすることにも気づいてはいけない、と趙弘は必死に自分に言い聞かせた。
左隣には『戌』と書かれている。
イヌといえば忠義、真面目、わんぱくというイメージがある。
趙弘は意を決してそちらを向いた。
ガタガタと震える面長の痩せた男がいた。
(わかってた。わかってたさちくしょう! だって隣だもん! ガタガタさせてるのが響いてくるもん!!)
救いを求めるために正面へと視線を上げていく。書かれているのは『卯』。
(今までのパターンだと、ウサギ=か弱い、みたいなイメージを抱きかねないが、この趙弘、学習したぜ! ごっつい奴がぎょろりと目を剥いているに違いない!)
見ると、普通にガタイはいいが、あくまで常識の範囲内のオールバックの男がボケーッと頬杖をついていた。
(まともそうな人だ!)
そう喜びかけたが、
(って、よく見るとあの人か)
と落胆した。
趙弘は本営からの呼び出しということもあり、半刻(約一時間)前からこの席にいる。当然一番乗りだったのだが(その後延々と待つ羽目になり既に緊張と疲労はピークに達している)、その間にひと悶着あったのだ。
この十二の人間の中に女が二人いるのだが、その一人が入ってきた際に、男がいきなり立ち上がり、「ヤらないか?」と言ったのだ。
(ウサギって、精力、強いんだっけ………)
趙弘はもはや諦め気味にそう思った。
ちなみに、その時声をかけられた女は「銭力たったの5か。ゴミめ」と鼻で笑って返していた。『午』の席に座っている。
「やぁ、揃っているね」
そんな声とともに、男が入ってきた。続いて男女が入ってくる。
三人は、上座へと真っ直ぐ進み、椅子の前に立った。
途端に、他の面々も立ち上がる。趙弘も遅れて皆に従った。
「ここまで足労頂き、ありがとう。僕がこの一団の発起人、張角だ」
その静かな、しかしそれでいて、意識に染み込んでくるような声を聞き、趙弘はあんぐりと、口を大きく開けた。
「あ、あなたが大賢良師様であらせられますか!?」
静かな場に一石を投じる者がいた。
張角がそちらに顔を向けると、まだ年若いであろう青年が、あんぐりと口を開けて立っていた。
座っている席は『酉』。趙弘だ。
「………ええと、うん」
張角の言葉に趙弘は張角の全身を上から下まで見て、
「地に足が着いてますね」
とてつもなく失礼なことを言った。
「ええと、どういう意味?」
俄かに殺気立つ弟妹を抑えるように、張角が一歩、足を進める。
その様を見て、趙弘も失言を悟ったのだろう。涙目になって弁解を始めた。
「いや、大賢良師様は南華老仙様に教えを受けて仙術を会得したって………。だから宙に浮いて頭からは角を生やし、天候を操り、言葉は頭に響くと、そう、聞いていたので………」
尻すぼみになっていく趙弘の言葉を受けて、張角は頷いた。張角の両脇に控えていた弟妹も殺気を解いて、呆れたような目を趙弘に向けている。
確かに、張角は巷でその様に噂されていた。それ自体は、箔がつくので別に良かったのだが、上層部でもそれが事実のように受け取られてしまうのは困りものだった。
そこに、
「あっはっははははは」
大きな笑い声が割って入った。
皆がそちらに目を向けると、趙弘よりも少し年上といった感じの柔和そうな顔つきの青年が腹を抱えていた。座っている席の名は『辰』。
「これはこれは。百万の規模から成る大群を率いる大将から直々に呼ばれたこのメンツの中に、とんだ田舎者が混ざり込んでいるみたいだ」
その言葉に、趙弘の顔が朱に染まる。
「たくよぉ」
その青年を不愉快そうに見て、体の大きな男がため息を吐いた。席の名は『牛』。
「おい兄ちゃんよ。煽るな。場が荒れるだろ。あと、そこのガキ。噂ってのは当てにならん。おめえさんがどんな幸せな生き方してきたかわからんが、今のおめえさんは堅気から一歩踏み出してんだ。その状態で根も葉もねえ噂とそうでない噂の見極めもできなけりゃ、すぐ死んじまうぜ」
そう言った。
男を見て、なぜか張宝が誇らしげに胸を張る。
張角は辺りを見渡して場が静まったのを確認すると、話を進めることにした。
「うん。言いたいことは彼が言ってくれたかな。まずは、お互いほとんど初見だよね。だから自己紹介から入りたいと思う。名前と、そうだな。所信表明でもしてもらおうかな」
そこで言葉を区切り、張角はにこりと笑った。
「僕は張角。先も言ったけど、この反乱軍の発起人だ。薬学を学んで病と薬の知識はあるけれど、南華老仙には会ったこともないし、仙術も使えないな。当然、空も飛べません。この乱を起こし、この国を変える一助となればいいと思っている」
そう言って張角は一歩、後ろに下がった。次いで、幼い少女のような女が進み出てくる。
「私は張宝。お兄様の張角とは義兄妹の契りを結んでいるわ。この軍の作戦統括を任されています。あと、歌による民衆の意識誘導なんかもしてるわね。お兄様を支えることこそ私の誇りよ」
次に禿頭の大きな男が歩み出る。
「俺は張梁。そこの張宝と同じく、張角殿を兄と仰ぎ、契りを交わした者だ。以前は官界に身を置いていた父が、濡れ衣を着せられ放逐された。私怨、というのももちろんないではないが、この国を正したい。そんな気持ちが大きいな」
張梁が下がると再び張角が前に出てきた。
「僕ら三人はそれぞれ『天公将軍』、『地公将軍』、『人公将軍』を名乗り、大方長とする。大方長は大隊長と同義だ。さて、ここに集まってもらった諸君を僕らは、中方長に任命しようと思っている。中方長は中隊長と同義だ。軍は三十六の方に分ける。その小方を三つずつ指揮するのが中方長の君たちだ。それが十二。干支にちなんで『黄徒十二支』と名付け―――」
張角の言葉が止まる。
「お兄様?」「兄貴?」
張宝、張梁も何事かと張角を仰ぎ見た。
「まてよ。『黄徒十二支』より『黄徒十二士』の方が………いや、『黄徒十二志』の方がカッコイいか!?」
『………………×13』
その漏れ出た呟きを聞いて、全員が無言になった。
「おほん。干支にちなんで、『黄徒十二志』と名付ける!」
『(なんかどうでもいいこと拘りやがった!!)』
全員の気持ちが一つになった瞬間だった。
「さて、気を取り直して。次は君たちに自己紹介をしてもらいたいな。じゃあまずは『子』から」
「オレからか」
指し示されて立つのは、平凡な身なりの男だった。強いて特徴をあげるのならば、どことなく幸薄そうな雰囲気が漂っている。
「あー、オレは馬元義。そこの、あー、天公将軍や地公将軍なんかとは古い付き合いでな。その縁もあってこうして参加している。昔から何でも屋をやっててな。ま、足を引っ張ることはねーと思うぜー」
そう言って笑いながら座ろうとする。
それを張宝が止めた。
「待ちなさい、バゲン。あなた大事なことを言ってないわよ」
「ん? なに?」
「あなたの二つ名よ」
「そんな珍妙なもんは記憶にないな」
「『椿花椿郎』」
そう張宝が呟いた瞬間、幕内でどよめきが起こった。
「あの、か!?」「本物か!?」「触らせてくれ!!」「食わせて~」「銭力500。まぁまぁ」「マンセー」「ほぁー、いいもん見たぜ」「手合わせしたいのう」「呪われろー」
「おい誰だ!? 途中と最後の物騒な奴!?」
馬元義の叫びに皆が一斉に顔を逸らす。
「あのさー。僕、裏稼業歴短いんだけど、そんな有名な人なの?」
『辰』の言葉を受けて『牛』が振り向く。
「裏稼業じゃ伝説的な男だ。滅法、不運な男でな。こいつと組むと、悪いもんは全部こいつの所に行く」
その言葉を『巳』が継いだ。
「で、ついたあだ名が首落ちの花、『椿花椿郎』ってわけだ」
「どちくしょう!」
「要するに、優秀な避雷針ってわけだ。そりゃ引っ張りだこにもなるよねぇ」
その言葉を聞いて、馬券義は崩れ落ちた。
馬元義の座っていた椅子の足が折れた。
「ぶぎゃ!?」
その様を見て『辰』が笑う。
「なるほど。確かに優秀そうだね」
「絶対認めねぇ!!」
馬元義の叫びがこだました。
「次は俺か」
そう言って立ったのは、『牛』の大男だ。
「俺の名は鄧茂。兗州で賊の頭をやってた。別に際だったもんをもってるわけでもねーから、何でこんな所に呼ばれたのかは知らねえ。所信表明としちゃあ、俺の力がどこまで届くのか、試してえ、ってとこか」
「本人はこう言ってるけど、ウモー君は才能の固まりなのよ」
またしても、本人の着席を妨げたのは張宝だった。
『………ウモー君??』
「その呼び方はやめろと言ったぞ、チビ」「お姉さまに失礼な発言すると呪うわよ、あなた」
鄧茂の乱暴な物言いに、黒髪が目元まで伸びている女が立ち上がる。席の名は『未』。
「お前か!? さっきの物騒な片割れ」
馬元義が立ち上がり、机を叩くが誰も反応しないので座った。座ったら先ほど交換されたばかりの馬元義の椅子の足が突然折れた。
「あー。チョーホー様チョーホー様。で、チョーホー様は呼び方を改める気は」
「ない!」
「………」
「あ、ちなみに、ウモー君は私の親衛隊やってもらうね。ウモー君、楽器も弾けるし歌も上手いもんね。ユニット結成だね」
「おい待てふざけんな。俺は前線に出たいんだ」
「うん却下」
「あー、まぁ、鄧茂。ホウの親衛隊なんだから、いざって時には前線並みの戦場になると思うよ。その時は頼みにしてる」
張角の言葉に、鄧茂はうなだれた。
馬元義の椅子は一回目同様、鼠の面を被った女の子によって交換された。
「じゃあ、次の人お願い」
張角が視線を向けた先に、長身の男がいた。席の名は『寅』。男は目を固く瞑りながら立ち上がり、
「マーーーンセーーー!!」
目をカッと見開いて叫んだ。
『………………』
場を沈黙が支配する。その面々に『寅』は目を向け、
「あ、私の名は張曼成と申します。どうぞよろしくお願いします」
と言った。
しかし、誰も何も返せない。
「なんかあいつ怖い」
このメンツの中で一番ホラーテイストな容貌の『未』が涙目で呟いた。
「チョーーウ、マーーーンセーーー!!」
注目されていた張曼成は最後にそう叫んで座ろうとした。
「うー、呪うー………」
『未』が張曼成の大声に耳を塞ぎながら恨み言をぼやく。
馬元義の椅子の足が折れた。
「なんでだよ! 三回目だぞ!?」
それを尻目に、『辰』がまたもや制止をかけた。
「さっきから無茶苦茶煩いんだけど、なんなのそれ」
「む? あぁ、失礼。偉大なる天公将軍に敬意を表していたのです」
「叫ぶのが? 騒音を撒き散らすのがいつからそんな高尚な行いになったの?」
「海に浮かぶ島の言葉なのです。マンセーは万歳を表しています。ですから、私は天公将軍から御言葉を授けられたときに言うのです。『張マンセー』と」
「で、名前も張曼成、と」
「はい」
「なるほど。狂信者か」
『辰』は尚も煽るが、張曼成は気にした風もなく笑って頷いた。
「えーと、次は『卯』だね」
張角の声に崩れたオールバックの男が立ち上がる。先ほど女をナンパしていたのを見ていた者たちが身構える中、
「おれは黄邵。青州で賊をやっていた。あの辺りで動くなら任せてくれ!」
とだけ、声高に言う。
『………?』
その事実に皆が言い知れぬ不安を感じる中、張角はその発言を受けて素直に喜んだ。
「よろしくね、黄邵。青州は重要な地になる予定だから、君が来てくれて嬉しいよ。何か所信表明はあるかい?」
そう、心の底から嬉しそうな張角の問いに、
「ぎゃひ」
と、黄邵は短く笑い声を上げた。
『………?』
一同が、一様にイヤな予感を覚える中、黄邵は呟いた。
「―――だ」
その声は小さく、張角の耳までは届かない。
「え?」
張角が聞き返すと、黄邵はがばりと顔を上げた。
「女女女女女だぁ! 女を抱く! 抱いてよがらせ狂わせ壊す! ただそれが為だけに、おれは生きている!! だから、お前とお前とお前! おれに抱かれろ!!」
ぎゃひひひひ、と下卑た笑いをする黄邵に、張角は笑顔のまま固まった。
指をさされた張宝と『午』と『未』がゴミを見るような目で黄邵を見ながら恐怖に身を震わす。
「うー、呪われろー」
『午』が呟くのを聞いた、馬元義がバッと椅子から立ち上がる。
「はっはー、学習したぜ、呪いっ子。てめえが呟くと椅子が壊れ(べちゃ)る………なんで?」
飛びのいた先、たまたま開いていた天幕の穴から、鳥の糞がきれいに馬元義の頭に落ちた。
「あっははは。この反乱軍にはろくな奴がいないねぇ」
『辰』の言葉に、皆が心中頷いた。
「え、えーと、次は『辰』だね。よろしく」
「ふむ」
呼ばれた『辰』は口に指をやって視線をさまよわせる。
「『子』『牛』はうなだれ『寅』『卯』は周りを引かせた。ではでは。埋没しないように僕も何かやろうとしよう」
「え、いや、そんな決まりはない―――」
張角の制止も聞かず、
「僕は曹子廉。洛陽に住まう曹孟徳の身内にして、この黄巾軍に潜り込んだスパイだ。潜入中は波才って名乗ることにしてる。まぁ、仲良くしてね」
そんな爆弾を投げつけ、
「とまぁ、『驚愕』って奴を次のテーマに打ち出したり」
そう言って、曹洪―――波才はにっこりと笑った。
場を沈黙が支配する。波才は自分の番は終わりだとでも言うように席についた。
「おいおいおいおい、待て待て待て待て」
それに待ったをかけるのは鄧茂だ。
「おいこら、曹子廉とか言ったか。待て待て。今のは流せるもんじゃねぇぞ。なに澄ました顔してんだ」
「え? 段落変わったから僕の番はおしまいでしょ? 次の人どぞどぞ~」
「お前は異次元の人間なのか!? 話がつながらねぇぞ!?」
「メタネタに対してその返し。おじさん上手いねぇ~」
「意っ図っしってっねっぇっよっ!!」
鄧茂が頭を抱える。
「あ~、と、さ。君のことは波才、でいいのか?」
鄧茂が脱落したので、馬元義が会話を引き継いだ。
「うんそー。そう呼んでくれると嬉しいね」
「君は、オレらを告発するのかい?」
「ん? してほしいの?」
馬元義が立ち上がり、俄かに陣内が殺気立つ。
そこに。
「子廉くーん」
情けなくか細く、けれどなぜかよく聞こえる声が割り込んだ。
「張角さんのその声質って、才能だよね」
毒気を抜かれ、静かになった場の中で、波才だけが頬をヒクつかせる。
「とりあえず、君の所信表明がまだだよね? だから、段落が変わっても、座るのは待ってくれるかな?」
その言葉に、波才はぐ、と圧される。理は、張角にあった。波才は、一つ溜め息を吐くと、立ち上がり、再び語り出した。
「僕は野心家でね。人材を集めに来たんだ。ここにはね。で、人材適当に集めたからおさらばしようかと思ってたら、中隊長に、あ、中方長だっけ? それに任命されたから、どうせなら実戦経験も積んじゃおうと思ってさ。あと、単純に太賢良師とやらにも会ってみたかったし。そんなわけで、条件はあるけど基本的には僕はこっち側。僕の従兄弟の誰かが敵陣にいない限りは、ね。僕の従兄弟たちは容赦がない上に型破りだから、そんな奴らの相手はごめん被りたいし。ま、それまでは、僕の頭には黄布が巻かれるよ」
そこまで言って、波才は席についた。
静かなざわめきが場を支配する。誰も声を上げないが、しかし、周りの出方を窺いながら頭の中で、心の中で声を上げていた。
『これでいいのか』と。
その答えを握っている人物は、うん、と頷き、
「で、波才。人材は見つけたかい?」
そう笑顔で聞いた。
「ええ、二人ほど。面白いのがいたんで」
そう返すのを聞きながら、他の十一人は緊張を緩めた。頭である人物が決めたのなら、下は何も言うことができない。
「けれど曹子廉。もし君の前に直接曹家の人間が立ちはだからないのなら君の逃亡は認めない。それでも逃げようとするのなら、その時は死んでもらうからね」
底冷えのするような殺気。それが張角から漏れだしているのに十四人が、張宝や張梁までもが固まる。馬元義も後ずさりをして、机に脚をひっかけて転んだ。
「は、は~い」
波才も、流石に手を挙げて返事をするよりほかなかった
「次は俺な」
『巳』が立ち上がる。周りの人間が身構える中、男はへらへらと笑った。髪はボサボサで伸び放題ではあるが、それでも不潔さを感じない不思議さがある。
「身構えてるとこワリィが、俺は残念ながら凡百の賊だぜ」
すまんなぁ、と頭をかきながら言う。
「俺は劉辟。金が好きでな。儲かりそうだからここに入ったにすぎねー」
頭の後ろに両手を組んでへらへらする。
「だから、しちめんどくせー教えだとか民のためだとか、そういうものもしちめんどくせー。金さえあれば何でもするしどこにでも行くぜ。しちめんどくさくねー。わかりやすいだろ?」
劉辟はへらへらと笑い続け、そして座った。
「やれやれ、波才くーん。君のせいで俺、反応なしだぜ?」
「それは申し訳ないねぇ。君のキャラがここまで弱いとは思わなかったんだ」
「どちくしょう!!」
劉辟の番は静かに終わりを迎えた。
「次は私ね」
言って立ち上がったのは、『午』の席のショートボブの女だった。すらりと長い手足に切れ長の目がよく映え、一目で美人とわかる。黄邵がナンパした女だ。
「私の名は卜己。私の特殊たる価値観において、この反乱軍に身命を賭したいと思い参加したわ。よろしく」
そう言った。
「特殊な価値観?」
皆を代表して波才が突っ込む。
卜己の視線が波才を捉えた。
「アナタの銭力は700ってところね。先の口上面白かったわ」
「せんりょく?」
「才能や将来性なんかを加味して考えたアナタの値段よ。今の漢は銭力で言えば50万。対するこちらは、まぁ25万かしら。これは驚異的な数字よ。先に起きた党錮の禁。あれが5万であることを考えればね」
「党錮は2回あったよね?」
「一度目は7万よ。けれど処断が甘く、緩みが生まれたせいで二度目は5万」
「一度目は判決が甘かったのか?」
鄧茂の問いに、波才が答える。
「一回目の党固では筆頭に立った李鷹や中心になった郭泰は獄に入れられたけど、死刑にはならなかったんだよ。それどころか、李鷹なんかは釈放されて田舎に帰ったらしいよ? ま、結局政争に巻き込まれて死んじゃったけど」
「要するに、一度目の判決が甘かったから二度目の奴らも甘い考えと緩い覚悟で反乱を起こした、と?」
波才の言葉を継いだ馬元義の言に、卜己は頷く。
「なるほど。人の才だけでなく、意気込みまでをも含めて人を評する訳だ。確かに、独特な価値観だね」
波才がそう締めると、卜己は頷いて座った。
(………ふむ)
やり取りを見て、張角は思ったところがあった。目線を隣に向けると、張宝と目が合う。
(ダメですよ、お兄様。あいつはダメです)
張宝が目で訴えかけてくる。
(流石にダメかぁ)
惜しい、と思った。
波才の事だ。
彼は個性的な面々の特異的な自己紹介に対し、果敢に突っ込み、その人物の更なる深みへの理解へと皆を導いていた。
波才の煽りともとれる言動は、しかし的を射ており、皆が言葉に出せない疑問をスルリと発する。それにより、波才はこの場にいる人間たちにとって無視できない存在となっていた。
自身も異質さを孕みながら、正常な視点を持つ波才は、この個性的な面々を纏め上げるのに適している。
しかし、彼は刻限付きの中方長だった。それが張角には惜しく、そして、こんな彼をも以てして厄介といわしめる彼の従兄弟の存在が気にかかった。
(とはいえ、ウチの作戦参謀が否と言うのを無理に行うのも良くないか)
張角は意識を切り替える。
「………それじゃあ、次は『未』にお願いしようかな」
自己紹介も残すところ後五人になっていた。
「………私の番ね」
ゆぅらり、と。幽鬼のように『未』が立ち上がる。
「………私は程遠志。特技は呪いよ。おかしな死に方をしたくなかったら、態度には気をつけることね」
「呪うー、の子だね」
波才がお約束のように煽る。
「なんだか今更取って付けたかのように妖艶な感じを出されてもねー。さっき泣いてたでしょ」
「泣いてない!」
「低園児?」
「ちーがーうー! アナタ呪うわよ!?」
「どうぞ?」
「のろまーのろまーじゅむじゅむ!」
「ふぎゃあ!?」
馬元義の座っていた椅子が壊れた。
「はっはー! 僕には優秀な避雷針があるのさ!!」
「なんて………こと」
「おかしいよね!? 何でオレがとばっちり食うの!?」
「と、いうかだ」
一連の流れに鄧茂が顔をひきつらせる。
「呪いって、マジかよ?」
「あー、もう! 男なんてみんな、呪い死ねば良いのよ!! 特にアナタとアナタ………は何もしなくてもバラバラになって死にそうね」
そう言って程遠志が指さすのは鄧茂と馬元義。
「お姉さまと仲がいい奴は特に死ねばいいのよ!!」
「俺、別に仲良くないぞ!?」
「ウモー君、大好きー」
「ぐがぎぎごぎがぎ」
「バカチビ、煽るな!」
「あっはははは。百合百合しい呪いっ子かー。そういえば、司州に呪いを専門に扱う占い師がいるって聞いたことあるな」
波才の言葉に劉辟も頷く。
「本業の占いよりも、呪い屋としての方が有名な奴か。確かに覚えがある」
皆が視線を向けると、程遠志は両手を腰に当てて胸を張り、
「私の力は全て、お姉さまのためにあるんだから! お姉さまは私の全てなんだから!!」
「だ、そうですが?」
波才が目の前にあった紙を丸めて張宝にマイクのように突き出す。
「要するに、私のファンね!!」
「わーお。幸せな人だなー」
「さっきから失礼なのよ、アナタ! 呪われろー!」
「だからそれやったらオレに来るってみゃぎゃあー!?」
お茶の配膳をしていた鼠面の少女が、馬元義の声に驚いて、湯呑みをひっくり返してしまった。
当然、馬元義は全ての湯呑みの中身を頭からかぶった。
「次は『申』だね」
『………………』
張角の言葉に皆が無言になる。
皆の意識の先の巨漢は、上に乗っかった頭からはぽたりぽたりと滴が落ちていた。しかしそれは汗ではない。
「あー、鼠ちゃん。お茶のお代わりと避雷針のメンテは後でいいから、何かつまめるものを持ってきてくれない?」
「おーい、避雷針ってオレのことかなぁ!?」
波才は、馬元義が頭からかぶったお茶の後始末を平謝りしながら行う鼠面の少女にそう言った。
「無駄だぜ。やめときな」
そんな波才の心配りを、黄邵が遮った。
「ったく。コイツと同じ側に立つことになるとはなぁ。おい、デブ! てめえ、挨拶くらいしやがれ!」
黄邵はそう言いながら、巨漢の頭をはたいた。
「………たい。………たい。………たい」
巨漢はそうぶつぶつと呟いている。その目は焦点があっておらず、口からは涎がだらだらと流れている。隣の『酉』の席に座る青年は涙目だ。
「きーこえーてまーすかぁ!? てかオメエ、お弁当があんじゃねえか?」
「お弁当!!」
黄邵の言葉に反応したように、巨漢は目を輝かせると、懐から箱を取り出した。
「あんたら、目、閉じてな」
「へ?」
「精神安定のためだぜ」
黄邵の言葉に嫌な予感のした全員が一様に目を閉じる中、ぐちゃり、ずちゃり、と音を立てた『食事』が始まった。
暫くして、音が止む。
「おう、あんたら。食い終わったぞ」
黄邵の声に皆が恐る恐る目を開けると、心なしか雰囲気の落ち着いた巨漢がいた。
(あば、あばばばばばば)
(あの、匂い、あわわわわ)
程遠志と趙弘は両隣だったため、巨漢の食べていたものに心当たりができてしまった。
「おいデブ。自己紹介と所信表明だとよ」
「お、おではデブじゃねぇよぉ」
黄邵に不満げに返しながら巨漢は立ち上がる。
「お、おでは何儀。青州で美食探訪してたらいつの間にか追われるようになっちまった」
「………美食、ねぇ」
波才が顔を引き攣らせる。
「うん。一度村を丸ごと食べたときにな、大好きになったものがあってな、最近じゃあ、それしか食べられなくなってな」
「あ、もういいよ」
「人の肉。うんまいんだぁ」
「………もういいって言ったのに」
「………っ」
程遠志が思わず、といったように吐いた。吐瀉物が馬元義に降りかかる。
「ぎゃー………」
顔からモロに食らった馬元義も言い返す気力が起きず、力無く退席した。
「女の肉はやわっこくてダメなぁ。男のコリコリしたのが良いんだぁ」
「よーし、次行こ、次」
程遠志も馬元義に次いで退席する中、波才が力無く言った。
場がどんよりとしている。
馬元義が着替えて席に戻り、程遠志が鼠面の少女と片付けをする間、何儀の解説が延々と続いたためだ。
その空気を払拭するために、立ち上がった青年がいた。
『酉』の趙弘だ。
「オラ―――俺は趙弘っていうだ―――いいます。えーと、皇帝に会って、世間に目を向けてもらいたいと思って、ここにいるだ―――います」
そして、座る。
「え、それだけ?」
波才の問いに、趙弘はビクリと震えた。
「え、あの、ダメですか?」
「いや、ダメってことはないけど………普通だね」
「まぁ、悪い考えではないけどな」
鄧茂の呟きに波才も頷く。
「今の世情を鑑みるに、一民草がどんなに声を荒げたところで、皇帝には届かないだろうしね」
「けど、それで賊になるのか? 矛盾してないか?」
「や、オラ―――俺は、」
「話しやすい方でいいよー」
「ありがとうございます、波才さん。オラは村じゃなく民から金を不当に集めてる奴らを狙ってるし、無駄な殺しもしてないだ。少なくとも、オラの中で矛盾はねえ」
趙弘は、きらきらとした目でそう言うと、拝礼をして、着席した。
「次は、『戌』」
張角の言葉を受け、しかし立ち上がるものは一人もいない。
「………?」
皆が視線を『戌』に向けた。
痩せた男だ。
頬は痩け、顔色は悪い。
そんな男が俯き、滝のような汗を流しながら震えていた。
「………えーと、『戌』さん?」
趙弘が声をかけると、『戌』の肩がビクリと震え、
「あっぎゃあぁあぁぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫をあげた。
「ひゃう!?」
程遠志が突然の悲鳴に驚き、
「熱っづぁ!?」
その拍子に倒れた湯呑みが、中身を馬元義に浴びせかけた。
「やややややだやだやだ。おおおおまえら全員、あああああ頭おかしいだろ!?」
『戌』は吠えた。
「こここここんなかで数千の人間を指揮したことがある奴は!? いいいいいいいとこ数百人規模の軍の指揮官風情が集まって、すすすすす数十万の大反乱を指揮する!? むむむむむ無謀だ! むむむむむ無茶だ!! おおおおおれはまだ死にたくねえ!!!」
その言葉に、面々がハッとする。
「すすすすす数百規模の賊の頭!」
鄧茂、劉辟、黄邵、何儀を順に指差す。
「じじじ人物鑑定にううう占い師!」
卜己、程遠志を指差す。
「かかか官軍の裏切り者にななな何でも屋!」
波才、馬元義を指差す。
「じじじ爺にあああ青二才!」
『亥』、趙弘を指差す。
「ききき狂信者におおお臆病者!」
張曼成、そして自分を指差す。
「おおおおおおまえら、ばばばバッカじゃねえの!? かかか勝てるわけねーだろーがよ!! むむむむむ惨たらしく死ぬだけだ!」
「怯懦の将、ってかー。また難儀な………なんでこんな所にいるのさ」
波才が呆れたように片目を閉じて『戌』を見る。
「そそそそんなの、俺だってしりてえよおおぉぉぉ!」
『戌』は泣き崩れた。
「韓忠は僕が見いだし、ホウが追い詰め、リョウが引き込んだ男だよ」
泣き崩れた男の代わりに答えたのは張角だった。
「韓忠は逃げる。それは病的なまでに、だ。司州の役人として働いていたけれど、その逃げ方は見事としかいえなかった。そんな彼が、どんな自棄を起こしたのかは知らないが、黄巾の末端にいたんだ。何度か試させてもらったけど、彼は指揮官としての有能さを見せてくれたよ」
韓忠と呼ばれた男は顔に絶望の色を浮かべてうなだれた。妻と子を病で失い、有能な部下も流行病に倒れた。財政は逼迫し、中央に税を納められなくなった。それだけで罷免させられた。
郷里に帰ろうと失意の歩を進めていたが、賊に囲まれた。そこで韓忠は、逃げるために、生き延びるために他人を売った。
同僚の邸宅を教え、警備の配置をばらし、家の間取りを暴露した。
賊たちは喜んだ。
韓忠という男は、脅せば脅すだけ、金持ちの家の内情を吐き出した。韓忠は逃がされず、賊の中で飼い殺しにされた。必死になって情報を調べ上げていたら、いつの間にか彼を囲っていた賊は、黄布を頭に巻いていた。
新しい場になっても、韓忠は必死に調べた。敵軍の構成を。拠点の配置を。陣の配置の隙を。生きるために。死なぬために。
気づいたら彼を囲っていた賊は皆、骸と成り果てていた。
しかし、韓忠の周りには最初に彼を囲った賊の数倍の数の賊徒が集まっていた。
「このやる気に溢れる反乱軍の、良きストッパーとなってくれることを、期待するよ、韓忠」
その言葉に、韓忠は青い顔で涙を流すことしかできなかった。
「………」
「いてぇ!? え!? 何で!?」
波才がブスッとしながら地に落ちていた石を馬元義に投げる。
「いや、オチがないから」
「理不尽だっ!!」
黄徒十二志も残すところ後一人となった。
「最後は儂じゃな」
『亥』の席についた老人が立ち上がる。
白髪に白髭。
年は五十を過ぎていようその男は、皺だらけの顔を豪快に歪めて笑った。
「若い者たちの若い言葉、この老骨に染み渡ったわい。しかし、ちと長かったな。もう日も落ちた。儂は簡単に済ませるとしよう」
ズハハハ、と笑って面々を見渡す。
「儂は管亥。この老骨の埋め場を探しておってな。大きな戦場で果てることこそが我が本懐。そのためにここに身を置いた。願わくば、この老人に意味のある、名の残る死を!!」
そう、高らかに宣言し、着席する。
こうして十二の志がつまびらかにされた。
「さて」
静かに、しかし不思議と人の意識に染み渡る声が発せられる。
黄巾党党首、『天公将軍』張角だ。
「名が揃い、志が揃った。次に行うのはこれからこの軍団がとる、戦略の発表だ。基本方針と言ってもいい」
それに皆が同意する。
これからこの軍は何を行うのか。何を攻めるのか。何を守るのか。
軍か群か。
その違いはこの部分にある。
皆が張角の言葉を聞き逃すまいと意識を集中する中、張角は手拍子を打った。
皆の集中が乱れる。
「とはいえ、日も落ちた。皆は遠いところから来ている者もいるだろう。この乱は長い。まだまだ始まってもいないのに、そんなに急かなくても大丈夫だ。今日のところはこれで会議は仕舞にしよう」
張角がちらりと目線を天幕の入り口に向けると、鼠面の少女がコクリと頷いた。
「ささやかながら、宴席を用意している。今宵は食って呑んで語り合ってくれ」
張角は立ち上がり、皆に向かって拝礼をする。次いで、『地公将軍』張宝、『人公将軍』張梁も立ち上がって、十二志の面々に拝礼をした。
十二志も立ち上がり、拝礼をする。
こうして、大陸を揺るがす密会は終わりを告げた。
「お疲れさん、唐周」
馬元義の言葉に鼠面の少女が面をずらし、その顔を晒す。
「お疲れ様です、ゲンギさま。今日も見事なご不幸で」
無表情のままそう言う少女は唐周といい、馬元義の何でも屋を昔から手伝っている少女だ。ちなみに、少女とはいっても二十代半ばである。
「その面、どうしたんだ?」
馬元義の言葉に、唐周は無表情のままくるりと回る。
「似合います? ゲンギさまが『子』の隊だと聞いて、作ったんです」
くるりくるりと回ってまた、馬元義に向かう。
「私も『子』の隊に入ります。ゲンギさまと一緒です」
無表情でそう言う。
「嬉しいか?」
「はい、とっても」
唐周は変わらず無表情で言った。
唐周の表情が変わるところを、馬元義は殆ど見たことがない。付き合いも十年を数えるようになり、流石に一度もないわけではないが、滅多に見ることができないのだ。
代わりによく動くので、今日のように面を被っていると、まるで表情豊かのように見えてくる。
「私の頭は、ゲンギさまでいっぱいですね!」
無表情の中に誇らしさを纏った唐周が言ってくる。
唐周は頭の右側に馬の顔の髪留めを、左側に人参の髪留めを付けており、頭頂からは二本の触角のような髪が、左方向に流れている。
馬は馬元義の『馬』。
人参は馬が『げんき』になるもの。
そして、人参の髪留めの左側に来るようにされた二本の髪で『゛』を表現し、『げんき』+『゛』で『げんぎ』。
彼女は頭全体で、馬元義の名前を作っていた。
自分への敬愛を感じ、くすぐったくなった馬元義は唐周の頭を撫でる。
「きゃー」
無表情に叫びながら、馬元義の撫でに任せる唐周。その顔は無表情ながらどこか嬉しそうだ。
唐周がくるりと回る。丈の長いチャイナ服のような格好なので、小柄な唐周が更に小さく見える。
「なっでられたー、なっでられたー」
くるりくるりと回りながら、体全体で喜びを表すご機嫌な唐周は、馬元義より一足先に、天幕を後にした。
「幸せだなぁ」
馬元義は一人呟く。
そして、自分も宴会場に向かうべく、天幕を出ようとした。その時。
ミシリ、と音を聞いた。
「?」
上を見上げたとたん、天幕が崩れた。
「へぶぎゃあ!?」
天幕に生き埋めにされながら、馬元義が叫ぶ。
「なんでじゃあ! オレが落ち担当だなんて認めねぇぞゴラァ!!」
天幕に押し潰され、身動きのとれない馬元義が救出されたのは、宴の終わった後だった。
「は、腹減った………」
その言葉が、冬の空気に溶けていった。
敵勢力、大集合☆
敵幹部たちの顔見せ回。
誤字、ルビ、表記ゆれの修正を行いました(2024年9月4日)。




