開幕前
漢室の腐敗を敏感に感じ取り、己が道教で民を救おうとした男がいた。
兄に殉じ、己が歌と知略で民を救おうと共に起った女がいた。
男の理想に、そしてその在り方に感銘を受け、女と共に男を支えようと決意した男がいた。
才に申し分のない、しかし、持ち前の不運のために周囲から疫病神と謗られた男がいた。
自身の武をもって何かを成さんとしたのに、気づけばアイドルのマネージャーとして働く羽目になっていた男がいた。
大望を掲げた男の狂信者となり、万歳と喝采を上げ続けた男がいた。
女を抱くことに至上の喜びを見出し、肉欲に猛る心のままに走る男がいた。
誰に頼まれたわけでもないのに、偵察と嘯いて賊徒の中に入り込み、大反乱を楽しむ男がいた。
金を至上の目的とし、それがあれば他に何も要らぬと声を上げる男がいた。
金で物事を計り、金の香りを追い続けた女がいた。
憧れの人のもとで自分を輝かせ、その輝きに少しでも肖ろうとその背を追った女がいた。
食べることに情熱を燃やし、遂に戻り得ぬ地点まで行き着いた男がいた。
故郷の窮状を嘆き、どうにかしてその叫びを帝に届かせようとした男がいた。
怯え、恐れ、逃げ続けた先に、中方長としての重責が待っていた男がいた。
己の老いを憂い、戦場でその身を散らそうと前線に赴いた男がいた。
自らの武に信を置き、立身を求めた名も無き少年がいた。
仕えるべき主をもてたことに満足し、停滞している男がいた。
さて、語りを再び始めよう。
史上最大の大反乱、黄巾の乱。
腐敗し、乱れ切った朝廷に終止符を打たんと立ち上がった強者たち。
不幸に呪いに巻き込まれ、金好き悪食女好き、勘定屋少年好々爺、臆病狂信者背教者。
揃いも揃って個性的。
揃いも揃ってボケ専門。
そんな愉快な仲間たちが繰り広げる大反乱。
とくと、御覧じろ。