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番外編 結婚式

他サイトの感想で、二人のその後の話をという感想をいただきましたので、番外編追加させていただきました。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました♪



「姉さん、綺麗だ……」


レイバンは、目をキラキラと輝かせながらこちらを見ている。


「……姉上と呼びなさい。でも、ありがとう」


真っ白なドレスに身を包み、鏡の前に立ちながら自分の姿を見る。


「うう……っ……ぅぅっ」


お父様は、控え室に入って来てからずっと泣いている。


「お父様、そんなに泣かないでください」


一度目の結婚式の時も、ずっと泣いていたのを思い出す。


そう……これは、二度目の結婚式。

正直、不安じゃないと言えば嘘になる。


一度目の結婚式で、全てが変わってしまったのだから。


「ローレン、おめでとう!」


「キャロル! 来てくれたのね! お腹、少し大きくなったみたい」


キャロルは妊娠して、5ヶ月になる。


「そうなの! お腹が大きくなる度に、ダグラス様ったらオモチャを沢山買ってきてしまうから困っているの」


ため息をつきながらも、すごく幸せそうで安心した。


「ふふっ。まだ生まれていないのに、すでに親バカなのね」


「ロード侯爵も絶対に親バカになると思いますよ? ローレン様を溺愛していらっしゃいますからね」


ベロニカはドレスの形を直しながら、からかうように言った。私達のことを毎日見ているのだから、そう言われても仕方がない。


ハンク様は、ジュラン様とは違う。

容姿ではなく、私自身を見てくれる。

不安は、いつの間にか消え去っていた。


「お時間です。皆様、お席にお戻りください」


皆、会場の席に戻って行き、ベロニカだけが残る。


「ローレン様、準備はよろしいですか?」


ベロニカと共に、会場へと歩き出す。

入口では、お父様が泣くのを我慢しながら待っていてくれた。


……お父様、顔が面白いことになっています。


お父様と一緒に、赤いカーペットの上を歩きながら、ハンク様に少しずつ近付いて行く。

彼のそばまで来ると、お父様は小さな声で、


「ローレンを頼む」


そう言って、私から離れた。


ハンク様は、


「任せてください」


爽やかな笑みを浮かべて、そう言ってくれた。


彼と2人で並ぶと、嬉しさが込み上げてきた。

この日が来た喜びと、大好きな人の隣に立っている喜び、そして彼とのこれからの人生へのワクワク感。


そっと彼の顔を見ると、愛おしそうに見つめ返してくれる。


「2人の結婚を、祝福いたします!」


大司祭の言葉に、会場中が歓喜に包まれる。

大歓声の中、私達は結婚をした。



2人で過ごす、初めての夜。

緊張しながら、部屋の中に入る。


「やっと捕まえた」


そう言って、ハンク様は後ろから抱きしめてきた。抱きしめる彼の手が、少しだけ震えている。


その手に触れると、


「愛している……」


声が掠れてしまうくらい、感情のこもった愛の告白。どれほど思ってくれているのか、すごくすごく伝わってくる。


涙が溢れそうになりながら、そっと振り返って彼の顔を見つめる。


「私も……愛しています」


伝えたいことは沢山あるのに、これ以上言葉が出てこない。


彼は私の右目に、キスをした。


「君に触れていいのは俺だけだ」


次は、左目にキスをした。


「俺の全てをかけて、君を愛し守り続ける」


そして、唇にキスをした。


もう何も考えられないくらいに幸せで、これ以上ないくらい心臓の鼓動が激しく脈打っている。


甘い甘いキスに酔いしれながら、初夜を過ごした。



───そして、1年の月日が流れた。


「まさか、こんなに早いとは……。いや、嬉しいんだ。嬉しいんだが、早すぎる……」


雲ひとつない青空の下、庭園を2人で散歩していたのだが、 ハンク様は頭を抱えながら喜んでいる。


「ずいぶん、器用ですね」


からかうように笑うと、彼は拗ねた顔でこちらを見た。


「複雑な心境なのだから、仕方がないだろう?」


彼がどうして複雑な心境なのかというと、私のお腹に新しい命が宿ったからだ。


「5人欲しいと仰っていたではありませんか」


「それは、そうなのだが……」


口をとがらせている彼を見ると、大きな子供のように思えて来た。

陛下からも信頼されている近衛騎士団長だとは、とても思えない。こんな姿を見せてくれるのは、私だけなのだと思うと嬉しくなった。


「この子が生まれてくるまでは、まだ時間があります。2人きりの時間を、大切にしましょう」


「そうだな」


彼はそっと私を抱きしめ……


「姉さん! 子供が出来たと言うのは本当!?」


ようとした時、レイバンが私達の前にいきなり現れた。後ろから執事が追いかけて来ているのが見える。


「レイバン様~! お待ちくださ~い!」


息を切らしながら、レイバンを呼ぶ執事。

執事の案内を振り切り、いつも勝手に邸の中を探し回る。


「……レイバン、親しき仲にも礼儀ありと、前にも言ったはずよ」


「子供が出来たと聞いて、あまりにも嬉しくて! 姉さんと団長の子供……絶対に可愛い!!」


「レイバン……お前、空気を読め! そして帰れ! ローレンとの2人の時間は、一分一秒が貴重なんだ! 子供が生まれたら、会わせてやる! それまで、この邸に来ることを禁じる!!」


ハンク様の目が笑っていない。これは、本気だ……


「そんな~! 団長、嘘ですよね!?」


「本気だ!!」


こんなことを言っていたけど、結局レイバンは毎日のように邸に来た。キャロルも、ダグラス様と一緒に赤ちゃんを連れて遊びに来てくれて、シンシアさんも子育てについて色々教えてくれた。

お父様なんて、来る度に大量のオモチャや子供服を持ってきた。


2人きりの時間は、あまりなかったのは言うまでもない。


だけど、それはそれで幸せだった。

大好きな人達に囲まれて、私達は幸せだ。




END

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