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正しい世界 ~これは幸せか、それとも――~  作者: ぼっち猫
~陽葵 side~
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第1話 人にとって完璧な世界

 2XXX年。

 2000年代から急速に発展したAI技術によって、人は働くことから解放された。


 IoT家電の進化で体調や衛生面、室温などの快適さもすべて自動で管理できるようになり、住人のすべてを把握したAIが必要なものを必要なときに提供してくれる。さらに、これで足りない部分は人型アンドロイドに命じることで、常時接続されているネットワークから最新かつ最善の言動を返してくれる。少し前には「そんなことあるわけがない」と一蹴されていたらしい未来像が、現実のものとなったのだ。


「んん……おはよう」

「おはようございます、陽葵ひまりさま。今日の朝食は何になさいますか?」

「今日はハムエッグとパン、それにプリンがいいな」

「承知しました」


 わたしは歯をみがき、顔を洗って、洗い立てのタオルで顔を拭く。使ったタオルは指定のBOXに投げ入れておけば、勝手に洗濯されて畳まれ、また同じように洗い立ての状態で棚にセットされる。わたしにとってはこれが当たり前だけど、少し前には人が手動で畳むのが普通だったみたい。


 リビングに行くと、テーブルには指定しておいた「ハムエッグ」「パン」「プリン」が準備されている。香ばしいパンとプリンの甘い香りが嗅覚と食欲を刺激する。野菜はいらないのかって?  実はこの朝食、必要な栄養がバランスよく詰め込まれた「完全栄養食」なのだ。見た目や味、香りは、生まれた時に脳に埋め込まれるチップによって完全再現されているらしい。特に意識したことはないけど。だからわたしは、栄養のことなんて気にせずただ好きなものを指定すればいいわけだ。


「んーっ! おいしいっ!」


 ハムエッグを口に入れると、ゾクゾクするほどの快感にも似た感覚に支配される。

三大欲求の1つである食欲を究極の形で満たしてくれる近年の食事は、体の栄養補給と同時に満ち足りた幸福感を与えてくれる。


 朝食を食べ終わったら、昼食までは自由時間だ。「労働」はすべてAIがしてくれるし、かつて人を苦しめていたという「勉強」の必要もない。昔の人は大変だったよね。わたしは目を閉じ、仮想空間にダイブして趣味に没頭する。音楽を聴いたり動画を見たり、ゲームをしたり。そのほか望めば何でも手に入るし、何でもできる。自分で選択できて自由に操れる夢の中、といった感覚だ。


 誰かに伝えたいことができたら、SNSに投稿する。直接会って話すことも時にはあるけれど、仮想空間の方が気がラクだしできることも多いため、9割以上はオンラインでの交流、というのが主流だ。もちろん、人間にも役割はある。こうして人間が趣味を楽しむことで、そこで起こったあらゆる情報がAIに蓄積されていく。そして人間の求める世界をAIが追求し、更なる発展を遂げていく。だから趣味も、立派で必要な活動なのだ。

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