12.外への道
ぼくとカケラがやってきたのは、以前にも来たことのある工場の残骸地だった。
海へ……
「海へ行こう」
あのあとぼくはただうなずいて、そのまま、カケラと一緒に走った。なにも持たずに。曲がり角を曲がれば家が見えたけど、ふり向かずにきた。一度戻れば、もう、カケラはその間にいなくなって、ぼくは一人で、なにもない、だれとも会わない夏休みをすごさなきゃならないことになる気がした。
工場残骸地は、ぼくらの区域のいちばんはずれにあった。少し小高い丘になっているので視界がよく、一度工場にもぐりこめば、だれか外からやって来ないかよく見えたし、あのいやな鳥が飛んできても、すぐに注意することができた。
丘の向こうには、区域一帯を囲う壁が伸びている。高い壁。
海へ……
海へ行く? どうやって。
そう、あの壁がある限り、ぼくらはどこにも行けない。どこにも、行けやしない。
ぼくはカケラの方を見た。カケラも、ここまで一気に走ってきて、息をきらしている。
「海へ行こう」
さっき、カケラはたしかにそう言った。それからぼくたちは一度も口をきいていない。本当に、カケラは海へ行くつもりなのだと思う。ぼくにはそれがわかった。だけど、ぼくはひとつ、わからなかったことを聞いた。
「カケラ。今まで、いったいどこに行っていたの……」
「この世界の外へ出るんだ。とにかく。どんどん、外へ、外へ行くしかない。海へたどりつくまで。いくつでも、あの壁を越えて」
カケラはしゃべりながら、息をととのえていた。すぐにも落ちついた様子に立ち戻り、言葉をつづけた。
「イキは、むかし、あらゆる川が、海へとつづいていたと言っていただろ。あらゆる水は海へ。おれは調べていたんだ。この町の下水を。
行こう。
下水は、壁にはばまれずにとなり町へ伸びている。水をたどって行くんだ」
そう言えばカケラの服はうすよごれて、とくにくつはぼろぼろになっていた。
「……その先に」
ぼくも、ようやく息を整えながら言った。
「きれいな海が、あるのかな……ぼくらの世界のよごれた水の行きつく先に……」
ぼくは、屋上からの景色を思い浮かべた。高い壁の向こう側にも、ずっとつらなる灰色世界を。世界をおおう灰色の雲……
そのとき、ぼくの頭のなかの灰色の風景が、突如ぬりかえられたみたいに、あの景色がよみがえってきた。青い空の下、ひまわりの立ち並ぶあの景色……
ぼくはもう一度カケラの方を向いた。
カケラはぼくの目を見て、うなずいた。
「おれのかばんにパンをつめられるだけつめこんできた。そんなにはもたないだろうけど、もし長い旅になるのなら、どうせ行き先でどうにかしなきゃなんないからな」
この旅は、夏休みのうちにおわるのかな。ぼくらは戻ってこれるのかな。ぼくらは、夏休みを越えてそのままどこかへ行ってしまうかもしれないな……
「この世界の外へ出るんだ。とにかく……外へ……」
外へ、外へ続く暗く長い道をぼくは思った。それでも、行こう。外へ。




