Black cats Café
「ごめん下さい…どなたかいらっしゃいますか?」
「…はーい、いらっしゃいませ。おひとり様でよろしいでしょうか?」
客は頷くと、案内されるまま二人掛けの席に腰かけた。
「…ココアをひとつ」
「かしこまりました」
客はそっと溜息を吐いた。
店員はココアを客の目の前に置いた。
コトリ
音を立てて置かれたカップから漂うココアの甘い香りが鼻を擽った。
「貴女…なにか、抱え込んではいませんか?」
客は図星だったらしく、直ぐに俯いた。
そしてぽつぽつと語りだした。
___
「有栖川、(2)答えてくれ」
「はい。xー3です」
「よくできたな。ここテストに出るから覚えておけよー」
はーい、と生徒たちの無気力な声が響く。
丁度よくチャイムが鳴り、その日の授業は終わった。
「アリスちゃんやっぱりすごいなあ…今日も全教科完璧だなんて。
私も戦国以外もできるようにならなくちゃ。」
「私も実央に日本史教わりたいな。ストーリーみたいに覚えられたらいいけど」
そういって優香は笑った。
実央は大笑いした。
優香は実央に純粋な尊敬の眼差しを送っていた。
___私もあんな風に笑えたら。
だけど、優香は実央の前以外では笑えなかった。
あああああ!
「悩んでいるうちに実央はいなくなっていた!
実央の前でしか笑えない私はもう笑えないし今も辛いことしか目の前にない!
いっそのこともう死んでしまいたいよ…!」
「…アリスちゃん、泣かないで。
改めまして、店員の安本実央です。
あの時と変わらないアリスちゃんの笑顔を見せて!」
そう言って実央は大笑いした。
あの時と変わらない笑顔で。
「実央…!」
優香は笑った。
あの時以上の笑顔で。
___
「忘れないで、優香。アリスは何があっても最後には笑顔になるんだよ。
たとえトランプの兵隊に虐められても、うまくいかないことがあってもね」
実央はトランプのジョーカーにキスをした。
店は跡形もなく消え、その地に残っていたのは十字架だった。
___
実央、ありがとね。
10年前、実央が死ぬ前に言いたかったけど叶わなかった。
今日会議企画通ったの。ようやっと生きる希望が見えたわ…
十字架の前に花を手向けた女の呟きは、月夜に消えていった。
アリスと実央という強い友情の持ち主の二人のお話でした。
アリスこと有栖川優香は友人の安本実央の前でしか笑えなかったのに、
当の実央は中2の時に踏切事故に巻き込まれそうになった
ご老人を庇って亡くなってしまいました。
アリスはこのあと仕事が成功して大出世を果たします。
みなさんもアリスみたいな状況に陥る前に
伝えたい人に感謝を伝えておきましょうね(´∀` )
以上、たまごやき。でした(^^♪