冒険者ギルドの前に商業ギルド
本日1話目です。
今日も4話更新します。
門番に尋ねたところ、冒険者ギルドより商業ギルドのほうが高値で買ってくれるそうなので、商業ギルドに行くことにした。
ちなみに街の名前はアガットというらしい。人口は1万人ほどの小さな街だ。
道行くお嬢さんたちに商業ギルドへの道を聞く。レオの可愛さもあって好意的だ。
レオは賢いので、普通の猫のふりをしているので、驚かれることはない。
街の猫から情報を聞いたりして、実に頼りになる奴だ。
商業ギルドに着くと、すぐにカウンターに行く。
商業ギルドには職員はいっぱいいるが、商人らしき人がいない。
街に活気もないし、道でも商人や旅人に出会わなかったし、門にも並んでいなかった。
「えーと……魔神のことをご存じありませんか?」
魔神は知らないけど、常識っぽいな。
たぶんオレたちが召喚された理由だろう。
「知ってますよ。暴れてるんですか?」
知ったかぶりをして、情報を引き出す。
「復活は10年くらい先じゃないかと言われていますね。でも影響はあります。世界中で異常気象が起きたり、魔物が増えたりしているそうです。だから行商人が旅をしにくくなって、この街の近所で手に入る物しかないんです」
活気がないのは品不足のせいか。
景気も悪くなってるようだし、旅人も少ないなら情報が入りにくいかもな。
「魔神の復活ですか。勇者が召喚されたりはしましたか?」
「さあ? そんな話は聞いたことが。情報がほとんど入らなくて……」
まだ情報が届かないのか、かなり遠くに飛ばされたのか。
「それはそうと買い取りをお願いしたいんだけど」
「はい、ありがとうございます。品不足なので助かります。お売りになりたい物はなんでしょうか?」
名前が判らないから、大きいのでと説明したら、どこに預けてあるのかを聞かれた。
どうやら収納するような道具はないらしい。バレたら困るかもしれない。
「外に仲間が待ってるんで、持って来ますから待っててください」
「かしこまりました。人手が必要ならおっしゃってくださいね」
とりあえず、強くなるまでは誤魔化そう。
外に出て、人通りの少ない裏路地に入ると、ドラゴンの首と鱗を出す。
2m近い首を引きずり、何枚もの鱗を重ねて蔦で縛った物を頭に乗せる。
裏路地から出てきたオレにギョッとする通行人たち。
ひそひそとオレの話をしている。どうやらこのドラゴンはリトルドラゴンというらしい。
そこそこ強い魔物だが、ドラゴンの中では最弱らしい。
思わぬところで情報が入ったな。
この調子でいろいろな情報を集めよう。そのうち真由たちの情報も入るだろう。
商業ギルドに戻ると、職員たちがザワついてオレの話を始めた。
冒険者のランクを気にしているらしい。どうやらゴールドランクあたりだと思われているらしい。
「リトルドラゴンですか……ゴールドランクなら数人で倒せる魔物ですけど、首を斬り落とすのはゴールドランクには無理ですね」
最弱のドラゴンなのに?
確かに神に変身したから楽勝だったが、こっちの冒険者の実力が判らない。
「ゴールドランクってレベルはどれくらいなんですか?」
「え? レベルは勇者様しか判りませんよ? 敵を倒せば強くなるのは同じですけど、普通の人は確認できません」
ステータスを見るのは勇者だけか。人前ではステータスを見ないでおこう。
「そうですか。高ランクの冒険者が、村で勇者とか名乗ってたんで勘違いしたみたいです。田舎から出てきたばかりだから世間知らずで」
「そうでしたか。ずいぶん強いんですね。努力されたんですね!」
努力はしてるが、まだそんなに強くはないんだよな。
なるべく早く強くならないと、変なふうに目立ちそうだ。
ことさら隠すつもりはないが、弱いうちに強いと思われるのはまずい。
「仲間が強かったんですよ。オレだけなら死んでます」
「それでも立ち向かっただけ凄いですよ」
確かにオレもこの受付嬢の立場なら、こんな魔物と戦うなんて凄いと思うだろうな。
「冒険者ギルドには持ち込まないんですか? ランクを上げて貰えるかもしれないのに」
「オレはまだ冒険者ギルドに入ってないんですよ。今はランクよりお金のほうが先です」
「そうですね! 装備品は高いですから。それでは査定をしますね。少しだけ待っていてください」
職員がドラゴンの素材を受け取り、傷などを調べている。
オレはイスに座ってレオを撫でて時間を潰した。
10分と掛からず査定は終わり、カウンターに呼ばれた。
「お待たせいたしました。査定結果です。全部で800万リラです」
それは高いのか?
紙に書かれた内訳を見ると、牙が高くて爪も高い。鱗は思ったほど高くはない。
それでも1枚30万リラだし、最弱ドラゴンならこんなもんか。
「かまいません。それで売ります」
「ありがとうございます。税金は引いてありますから、他に手続きは必要ありません。サインくらいです」
たぶん召喚魔法の力だろう。言葉も文字も理解できる。
2枚の紙にサインをして、1枚受け取る。そして情報収集をする。
「田舎と違って物価は高いですか?」
「そうですね。多少は高くなります。田舎だと野菜なんかは村に畑があるなら安いでしょうし、お肉は魔物退治ができないから村のほうが高いですね」
産地が安いのは当然か。
「税金ってここだと、どのくらいですか?」
「2割です。安いほうですね。収入に対して税が掛かるので、冒険者ギルドや商業ギルドは引いてから渡します」
サインしたやつにオレが受け取った代金の上に、1000万リラって書いてあったし、これが税金を払った証明書になるんだな。
「あれ? 商業ギルドの手数料は?」
「そんなのないですよ? 買い取った素材を利用して利益を出すんですから。お店で買う時に手数料なんて貰わないですよね?」
そう言われると確かに。
「それと、この街での生活費ってどのくらいですか?」
「家を持ってるなら10万リラもあれば、1人暮らしできますよ。家を借りるなら15万リラくらいです。宿を取るなら20万から25万リラくらい必要です」
「そうですか。ありがとうございました」
お礼を言って商業ギルドを出る。
宿を取ると高くつくな。家を借りるのに身分証とか必要かな?
でも毎日宿に泊まるわけじゃないからな。少し遠出すれば2~3日帰れないだろうし。
家を借りてしまえば、家事をやったりする必要もあるし、仕事で帰れない日も家賃が発生してると思うと。
宿のほうが手間がないし、必要な時だけ利用すれば節約になるな。宿にしよう。
お嬢さんたちに話を聞いて、1泊7000リラの宿に決めた。
3食で1000リラだそうなので、1日8000リラだな。
外で食べると1食で500~800リラは掛かるようだし、宿で食べたほうが安い。
30日使えば24万リラだけど、仕事に頻繁に行くから、実質的に20日くらいしか使わないかもな。
それなら家を借りるのと大差ない。手間の分だけ損だ。月1万リラで家政婦を雇うようなもんだ。
宿で5日泊まる手続きをしたあと、冒険者ギルドに向かった。
例によってお嬢さんたちに聞きながら、無事に冒険者ギルドに着いた。
「おっ、細い奴が来たな。ボウズ、危ない仕事は請けるんじゃねえぞ?」
「まったくだ。最近は魔物も増えたしなぁ。この間もボウズくらいの奴が死んじまった。若い奴が死ぬと気分が悪いぜ」
なんか心配されてるが、確かにインプ相手に苦労したな。
「服だってボロボロじゃねぇか。怪我はしてねえのか?」
「心配しなくても大丈夫ですって。怪我は直ってますから。服だって買うお金がなかっただけで、あとで買いますから」
ずっとこの服を着てたから気にならなかったけど、よく考えたらダメだよな。
街の人がみんな気にしなかったのは、武装した人間の服がボロボロなのは珍しくないからだろうな。
「そうか。若いうちはカネに苦労するからな」
そう言って安全でそこそこ稼げる仕事を教えて貰った。
冒険者ギルドはギルド員同士の戦闘はご法度らしいから、絡むようなバカは滅多にいないそうだ。
当たり前だよな。原始人でさえ無駄な争いはしないだろう。
異世界だからって知性は地球人と変わらないよな。
悪党はどこの世界にもいるだろうが、みんなが乱暴なわけはない。
早く登録して、レベルとお金を稼がないとな。夜には防具を作ろう。
今日も更新は、数時間置きになります。