森を抜けたら変態が
本日4話目。
いいもんだな~、空の旅は。
優雅な感じでバッサバッサと翼を動かすペガサス。
その上でお菓子を食べながら、ジュースを飲んで景色を楽しむ。
「ごしじんさま、ずっと緑が続いてますね~」
レオはにゃんを付けるのも忘れるくらい、景色を楽しんでいる。
確かに広すぎる森だな。なんか遠くのほうで竜巻が起こっているが。景色は綺麗だな。
たまに見付ける魔物に、剣を抜いて斬り掛かる。
ペガサスの急降下からの一撃はかなり強力になり、森で戦った時は一撃で倒せなかった魔物も、一撃で倒せるようになる。
ペガサスナイト気分を味わえて最高だな。オレはペガサスの鬣を撫でる。
「ブルルッ」
嬉しそうに鼻を鳴らして、力強く羽ばたく。
「ごしじんさま、ペガサスだけズルいにゃ」
「わかったわかった。オスなのに男のオレに撫でられて嬉しいのかね」
「猫心の解らにゃい人にゃ~」
猫心が解るわけないぞ。オレなら男に撫でられたら引っ掻くな。
とりあえず撫でると、体をクネクネさせて喜んでいる。
20分以上は飛んだかな? ペガサスの飛行速度は時速100kmくらいだろうが、オレはともかくレオがつらいので、速度60kmくらいにして貰った。
まったくもって広い森だったな。
歩いていたら何日で出れるのか。
「もう少しでペガサスも消えてしまう。まだ森は終わってないけど、墜落する前に下に降りよう。しっかり掴まるんだぞ?」
「はいにゃ!」
オレに体を寄せて、爪を立てないようにしがみつく。
ペガサスに頼んで森に降りて貰い、普通に走って森の出口を目指した。
オレは馬に乗れないが、ペガサスが器用に木を避けてくれるので、問題なく進めた。
2分ほど走ると、ペガサスが光を放ったので降りた。
別れを言う前に消えてしまい、少しだけ寂しく感じる。擬似生命体だから死ぬわけじゃないんだけどな。
「にゃんだか悲しいにゃ~。せっかく仲間が増えたのに」
「また呼び出せばいいさ。今のオレのMPなら満タンなら2回は呼べる」
「でもMPは大事にゃ。1回だけにするにゃ」
まあ寂しいからなんて理由で呼んだりしないからな。
とにかく気軽に呼べるくらいにレベルを上げよう。
仲間の居場所が判れば、一気に行けるようになるかもしれない。
森の出口はもうすぐだし、道に出れば街まで迷うことはないだろう。
身分証とかないけど、ちゃんと街に入れるんだろうか?
最悪、夜にでもコッソリ侵入して、どこかで身分証を手に入れよう。
定番で冒険者ギルドとかがあれば、そこで登録すれば冒険者の身分が手に入る。
「頑張って旅費を稼ごうな? オレの友だちはいい奴らだから、レオも可愛がって貰えるぞ。早く見付けよう!」
「お友だちが増えるのは嬉しいにゃ! ごしじんさまが嬉しいのも幸せにゃ! ボクはごしじんさまの優しい笑顔が大好き!」
最後は興奮して、にゃを忘れている。
跳び跳ねて元気なもんだな。体力がオレより高いからな。
ステータスが上がったからか、オレの頭の上を軽く飛び越える。
「ごしじんさま! 近くに臭い匂いがするにゃ! 魔物の匂いにゃ」
「近くに行ってみるか。18秒くらいなら変身できるし」
レオの案内に従って走ると、数十秒で会敵した。
その80cmほどの魔物は、食事中らしい。人間の死体を貪り食ってる。
餓鬼のような奴にコウモリみたいな羽が生えている。
インプって小悪魔だな。凶悪な顔つきで死体を食ってる。
木の裏に隠れているオレに気付いたインプが、グルンと顔を向ける。めっちゃ怖い。
いっせいに手の平を向けて、魔力の矢を放ってきた。
「うわっ! 魔法を使ったぞ!」
オレが隠れている太い木が、どんどん削られていく。
まずい。このまま隠れていると、蜂の巣にされてしまう。
オレは木の上に登り、木の枝を跳び移って移動し、インプたちの頭上から斬り掛かった。
1匹を斬り裂き、返す刀で横にいた奴の首を斬り飛ばす。
次の奴を狙ったが、パッと翼を広げて散開して、急降下でオレの首を狙ってきた。
最初に狙ってきたインプを斬ろうとしたら、急停止されて空振りした。
別のインプが首に爪を振るう。攻撃後で体が動かせないオレは、首だけは守ろうと腕を上げる。
しかし、レオが横からインプに体当たりをして防いでくれた。
首に噛み付きインプを殺す。構え直したオレは、急降下しながら襲ってくるインプに、攻撃を命中させることができない。
「あ~鬱陶しい! 空想転化! 宮本武蔵!」
オレの体が光に包まれ、インプを弾き飛ばした。
袴姿にハチマキ。そして2本の刀がオレの手に現れた。
吹き飛ばされたインプを斬り裂いていく。
すぐにインプも空中に舞い、急降下攻撃を仕掛けてくる。
オレは合わせて自分から前に出ると、インプを空中で斬り裂いた。
背後からのインプも、一歩前に出て攻撃を避け、振り向き様に斬り捨てた。
どう動けばいいのか、手に取るように理解できる。
10秒ほどで全滅させて、オレは変身を解いた。
「小さくて空を飛ぶ敵は当てにくいな。助かったぞ、レオ。ありがとう」
「どういたしましてにゃ。無事でよかったですにゃ」
今度から迂闊に近寄らないほうがいいな。でも宮本武蔵に変身したおかげで、二刀流の使い方を覚えたぞ。
この知識を基にして剣の腕を磨いていこう。
オレ自身が強くならないと、頻繁に変身はできないからな。
剣の手入れをしながら、道なりに歩いていくと、遠くに街の外壁が見える。
「ごしじんさま、やっと街にゃ~」
「まったくだな。ちゃんとした食事をして、仲間の情報を集めて、消えない便利道具もいっぱい作るぞ。街中なら安心して使える」
装備品も作らないとな。
MPを使い切ったら、剣の修行をして、適当に金を稼ぎながらレベル上げだ。
情報が入ったら街を出るが、出発前に増えたMPで強い装備を作ろう。
「まずはにゃにをするにゃ?」
横をとことこ歩きながら、クリクリした目でオレを見上げる。
「まずは身分証だ。そんで宿を決めて情報収集する。それと並行して装備品を作る。レオ用の装備も作るからな」
「ごしじんさまのを優先して欲しいにゃ」
ほんとに気を使う奴だな。
胸当てとかを作れば、レオでも装備できるかな? あと……手に付ける爪なんかも作れば攻撃力が上がるな。
ウキウキしながら街に近付いていくと、向こうから走って来る人がいる。
オレは異世界初の人間に、喜びながら走って近付いた。
近付くとオレの顔はだんだん曇っていったようで、レオが慰めの言葉を掛けてくれた。
「ごしじんさま、きっと街には綺麗な人がいるから元気出して」
にゃんを忘れるくらい、オレはガッカリしていたらしい。
もう声が聞こえるくらいの距離まで近付いてきた。後ろに兵士もいる。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!」
何やら陽気な笑い声が聞こえて、素っ裸のオッサンが綺麗なフォームで走ってきた。
ブラブラさせているアレを、斬り落としてもいいかな?
「待て! この変態!!!」
兵士がオッサンを端的に表す言葉を、やたらとデカイ声で怒鳴る。
なんで初異世界人が変態オヤジなんだよ。そこは美人にしてよ。襲われてるお姫様とかさあ。
オレの横を通り過ぎる時に、キラッと白い歯を見せて笑顔を振り撒いた。
無駄に歯並びがよくてむかつくな。歯を全部へし折りたい。
通り過ぎるオッサンと兵士を眺めながら、街に急いだ。
早く目の保養がしたい。ブラブラしてるアレを頭から追い出そう。
門にたどり着き、門番の挨拶に返事をすると、特に身分証を要求されたりせず、通行料なんかも取られなかった。
指名手配書が貼られていたし、怪しい奴は止められるんだろう。
あまり賑やかではない街だが、行き交う人たちの服装は、オレとは違うので珍しい。
街の建物も、コンクリートではなくレンガとかなので、何となく温かみを感じる。
さっそく冒険者ギルドを探しに行くか。金がないと宿にも泊まれない。
次は0時です。