レベル上げと剣術修行
本日2話目です。
交代で見張りをしながら睡眠を取っていく。長時間見張りをすれば、2人揃って行動する時に、片方に疲労が溜まってしまう。
だから2時間ごとに見張りを交代して眠った。
行動しない時は8時間ごとに交代で寝ることにしているので、寝不足になることはない。
起きている時よりも、寝ている時のほうがMP回復は早いということが判った。
そんな感じでMPが全回復するまで戦わず、見張りのたびに剣術修行をしていたら、レベルが上がってないのに、筋力と敏捷が1、器用が2上がっていた。
修行したから基本ステータスが上がったんだろう。修行時間は合計で30時間くらいか?
たぶん基本ステータスが高くなると、修行では上がりにくくなるんだろうな。
それでも技術は必要だし、修行は続けないといけない。
それと、この世界には剣術スキルとかないのかもしれない。どれだけ練習をしても、剣術スキルが手に入らない。
とにかく腹が満たせるうちは、この場を移動する理由はない。
徐々に探索を進めながら、レベルを15以上にしてからペガサスでも召喚して森を抜けよう。
たぶんそのくらいのレベルなら、空を飛ぶ生き物を召喚できるはず。
森で迷うよりは、安全な場所でレベルを上げて空から脱出するのが1番だ。
何日も過ごしているのに、まったく冒険者とかに会わない。かなり深い森なんだろう。
とにかくMPが回復したし、探索を再開しよう。なるべく森に長居はしたくない。
レオが鼻をスンスンさせて、匂いを探る。すぐにピョンピョン跳ねるように走り出す。
それを追い掛けていくと、オークの群が眠りこけていた。
「ちょうど眠ってるな。起きてる見張りは1匹だけだ」
「イビキが聞こえたにゃん。オークは臭いから遠くからでも判るし」
語尾ににゃんが付いてない時があるし、普段はオレへのサービスか? いろいろ気遣いをする猫である。可愛いからいいけど。
それにしても、レオはほんとに優秀だな。わざわざ注文しなくても、ラクに倒せる奴の所に案内してくれるとは。
こんなに賢くて可愛い猫を捨てるなんて、前の飼い主は人でなしだな。
「ごしじんさま。ボクが見張りを誘い出すから、ごしじんさまは後ろから斬り掛かってくださいにゃ」
こいつ賢すぎじゃなかろうか?
あの魔法陣に知性が上がる効果でもあったんだろうか? 人語を理解するのに必要な知性を与えられたのか?
「どうでもいいか……わかった。気を付けてな」
オレの独り言をスルーしてくれる優しさもあるし、最高の相棒だな。
見張りのオークの前にゆっくりと出ていく。さすがに敵だとは思わないので、見張りが騒ぎ立てることはない。
食べようとしたのかレオに手を伸ばすが、レオのスピードはオレより速い。
オークのスピードはオレよりもかなり遅いので、レオを捕まえられるはずもない。
オレの隠れている場所までオークを誘導してくれたので、オークが通り過ぎるのを待ってから首を斬り落とした。
後ろから斬り掛かってうえに、レオを捕まえるのに夢中だったオークに、避けられるはずもない。
他の眠っているオークも、こっそり近付いて首を斬り落とした。
レオも飛爪で首を斬り裂き、オークを殺していく。
筋力の低いレオの攻撃では、オークを一撃で殺すのは無理だが、飛爪だと首を狙えば殺せる。
すべてのオークを倒してもレベルは上がらなかったが、当然な気もするので気にはしないが、目標レベルまでちゃんとした食事ができないと思うと、チョコレートを節約せずにバカ食いしてしまいそうだ。
次の日に戦ったのはコボルトの集団だった。
犬が直立歩行したような見た目だが、可愛さはなく、鋭い牙と長い爪を持っていた。
血に餓えた狼のように鋭い目と、口から唸り声とよだれを垂らしているので、食われそうで怖い。
鼻がいいのと集団での狩りを得意としているだけあり、レオが匂いを感じる外から、着実に包囲をして近付いてきたらしい。
レオの鼻のおかげで、囲まれているのは判っていたのに、なすすべもなく包囲を縮められてしまったのだ。
四方八方から連携して襲い掛かるコボルトに恐怖を感じたが、背中を守ってくれる小さな相棒に勇気付けられ、返り血を浴びながらも斬っていった。
俊敏に跳び掛かってくるコボルトは、ナイフのような爪を振り回してオレを襲う。
剣で受け止めても反対の爪で攻撃してくるので、避けることに集中する。
ギリギリで躱して、隙をみて反撃をして、確実に数を減らしていく。
それでも完璧に躱すことはできず、かすり傷が増えていった。
1匹だけなら楽勝なのに、集団の連携が恐ろしく上手い。
たぶん吠えて仲間とやり取りをしているんだろうけど、言葉が解らないので気が散るだけのうるさい声だ。
跳び掛かりながら爪を振るコボルトの喉を突きで貫き、抜いた動作で右から来たコボルトを斬る。
対集団の練習にはなるので、大きな遠吠えで仲間を呼ぶのはありがたい。
回復アイテムは道具生成で出せるので、戦闘が終われば回復すればいいだけだし。
倒し終わる頃には、オレの体は傷だらけになっていた。
幸い致命傷になるような怪我はないが、あちこち痛くて座り込みそうだ。
「ごしじんさま。ごめんにゃさい。ちゃんと守れにゃかった……」
シュンとして、とぼとぼと近付いてくるレオ。捨てられたせいか必死で尽くそうとするな。
「レオ、お前がいるからオレは生きてるんだぞ? レオがいなかったらコボルトに殺られてるよ。レオのおかげで後ろから襲われなかったんだ。お前は命の恩人……人じゃないな……恩猫だよ」
うつむくレオの頭を撫でると、レオはオレを見上げて、決意を口にした。
「にゃ~…………ボクはもっと強くなるにゃ」
レオの目からドバドバと涙が流れている。
オレはレオを抱っこして、拠点に歩きながら回復ポーションを出した。
道具生成は1時間で消えるが、消耗品なら関係ない。
道具生成で出したスコップで穴を掘って、1時間後にスコップが消えても穴は消えない。
それと同じでポーションの回復効果も、1時間経っても瓶が消えるだけだ。
オレはポーションに傷の回復効果と解毒の効果を持たせている。コボルトの爪に付いてる雑菌が怖いので、解毒の効果はかなり高くしている。
これで50MP消費するだけなので、かなりコストパフォーマンスがいい。
かすり傷の回復効果だけなら5MPでいいし、解毒には力を尽くして万全の態勢だ。虫歯にも効くので毎日飲んでいる。
食事も試してみたが、味を感じるのと空腹を解消できるだけだった。
さすがに1時間では消化吸収はできないから当然の帰結だな。
拠点に帰ってきても泣き続けるレオに、好物のキャットフードを出してやる。
いつも食べていたのは出せないが、前に1度だけお菓子と間違えて買ったやつなら、食べたことがあるので出せたのだ。
それを気にいったレオは、MPを気にして欲しいとは言わないので、たまに余裕がある時に出している。
「ごしじんさまが出してくれたこれが、世界で1番美味しい食べ物にゃ~」
もっと美味しい物はあると思うが、味だけはより美味くしておいたし、そう言われると気分はいいな。MPは2しか使わないんだけどな。
そんな毎日を過ごして、戦いに馴れながらレベルアップを繰り返した。
何度か死にそうになったが、レオのサポートのおかげで生き残ることができ、目標の15レベルになった。
剣だけで戦うことが多いので、何回も全てのMPを使って、空想現実化でいろんな道具を作ってみた。
その1つが肩掛け収納バッグだ。MPの関係でレベル15になってから作ったおかげで、6畳間くらいの収納量の物ができた。
さすがに全部は入らないので大半は置き去りだが、斬り落としたドラゴンの首と、爪や剥がした鱗を収納した。
肉は食えるか判らないし、なにより腐り掛けていたので捨てていく。
こうして準備を整えたオレたちは、ペガサスを召喚して森を飛び立った。
ペガサスに高く飛んで貰い、森が終わる位置を確認してから、全速力で街を目指した。
次は昼過ぎくらいに投稿します。
ステータスです。
レベル15 逢坂想太
HP 144 MP 321
筋力 72 体力 76
敏捷 53 器用 57
魔力 89 魔防 63
レベル15 レオ
HP 43 MP 0
筋力 21 体力 85
敏捷 117 器用 64
魔力 0 魔防 27