アロガン王国の港町
本日1話目です。
ようやく新しい大陸に着いたな。
ラウトという港町は、アロガン王国にとって他の大陸からくる船の玄関口だ。
かなりの大きさを誇る港町で、人口は57万人ちょっとらしい。
別の大陸からいろんな物が集まり、物が溢れている。
商人のアーロンさんも、この街で買い付けを行っていると言っていた。
ルーキス王国と違い、この国は奴隷制度がある。
奴隷は魔術によって呪いを掛けられ、逆らえないようにする。
奴隷は大きく分けて2種類。通常の奴隷と犯罪奴隷だ。
通常の奴隷は、何らかの理由により自分を売った者で、主人は給金を払わなければならない。
給金は普通の人の5分の1程度だが、売られた値段と同額で自分を買い取ることができる。
言い換えると、自分を担保にお金を借りると言える。
主人は買い取りを拒否することはできない。借金の利息の代わりに働くわけだから、金を返したら自由になれるわけだ。
本当に嫌な命令には従う必要はないが、不当に拒否することは許されない。
給金は仕事によって変わるが、夜伽などの仕事は割高だ。早く解放されたいなら受ければいいし、嫌なら拒否すればいい。
犯罪奴隷は重い罪を犯した者が罰でなる。
罪に応じて働く期間が決まり、何があっても期間中は解放されない。
途中で主人が死んだり、手放したりしても、国の機関に引き取られて、再び奴隷商に渡される。
そしてまた買われて、働いた期間だけ罪が減じられる。
20年なら、主人の所で20年間働かなければならない。
1日休めば、その間は罪が減らないし、主人がいない間は奴隷商で小間使いなどをするが、罪が減るのは主人の所で働いた期間だけだ。
そしていっさい給金は発生せず、命令の拒否もできない。
死ぬような命令は拒否できるが、それ以外の命令には従う義務がある。拒否をすると場合によっては罪が増えることもある。
軽い罪では普通に捕まるだけで、街の掃除などの強制労働をさせられるだけだが、悪質だったり再犯だった場合には犯罪奴隷になることも。
奴隷以外に違うことと言えば、王族や貴族の力が強いらしい。
この街を治める貴族は、よその大陸の国と商売上の付き合いがあるので、かなりマトモらしい。
他の領地は税金が5割取られたりする所もあるので、傲慢な王族や貴族には気を付けるように、アーロンさんから忠告されていた。
なんにしても、傲慢な貴族じゃないし、他の大陸からの情報も入りそうだし、しばらくは仕事をしながら情報を集めよう。
勇者として召喚されてるなら、必ず噂になってるはずだ。
真由たちのいる国の隣とかなら、噂がされていてもおかしくない。きっといつかは見つかる。
「レオ、まずは宿を探すぞ」
「にゃん」
レオはこの国では、普通の猫の振りをすることになっている。
王族や貴族に傲慢なやつがいたら、確実にトラブルになるだろうから、人前で二足歩行で歩かないし話さない。
権力や横暴に従う気なんて微生物1個分もないけど、わざわざ喧嘩を売ったりトラブルを起こしたりはしたくない。
王都にある女神のダンジョンには行くつもりだけど、なるべく王族や貴族とは関わらない方向で。
宿の情報を聞くために、浮浪児たちに串焼きを奢る。お金をあげるために情報収集を頼もうかな。
「うめぇ~!」
「2日ぶりのごはんだ!」
「残飯を漁るのはごはんって言うの?」
聞いていると気が滅入るな。
思わず傲慢な王と貴族を滅ぼしそうだ。
「えっ、仕事をくれるの?」
「なんでもする!」
「そんなに大げさなものじゃない。なんでもいいから情報を集めて来てくれ。毎日、街で聞いた噂とかをオレに伝えにくるんだ。そうすれば毎日給金を払う。それこそ、どこかのだれかが怪我をしたとかでもいい」
食べ終わった子供たちに仕事を頼む。みんな嬉しそうでよかった。
ただでお金をあげると、この子供たちのためになりそうにない。
自分たちで稼ぐ方法を教えたほうがいい。レベル上げも手伝ってやろう。
「情報はなんでもいい。活用するのはオレの役目だからな。給金は1日全員で5万リラ」
「そんなにくれるの?」
情報収集は大事だからな。
まずは宿の情報を聞いた。立派な宿からボロい宿までよく知ってる。
「俺たちは残飯を集めるために、街中を走り回ってるからね!」
理由を聞いたら切ない答えが返ってきた。
とりあえず1泊7万の宿を選んで、宿の主人に子供たちが来たら取り次いでくれるように頼んでおいた。
「それじゃあ今日の給金だ。細かいので払うから、分散して持っとくんだぞ?」
「えっ、宿を教えただけでくれるの?」
「ああ。毎日新しい情報を集めて来てくれ」
大喜びで走って行く子供たちを見送り、オレたちは宿に入った。
夕食時に気付いたんだけど、昼間の串焼きといい宿の夕食といい、香辛料がかなり使われているようだ。
この国だと香辛料が安いのかもしれないな。ルーキス王国だと高めだったが。
娯楽が少ない世界だからか、金持ちは食事にお金を掛ける傾向があるようだ。
ルーキス王国の王宮で出された食事も、香辛料を使い過ぎてる感じだった。
だから洗練された地球の料理の味に、王も驚いていた。
香辛料は他の国で高く売れるようだ。
アーロンさんの商材の1つに、香辛料があったようだし。
考え事をしてたら、眠くなってきた。今日はもう寝るか。
「レオ、おやすみ。明日は冒険者ギルドに行って仕事を請けるぞ。いいか?」
「ボクはごしじんさまに付いて行くにゃ」
嬉しくなったので、レオを撫でていたが眠気が限界だ。オレは意識を手放した。
冒険者ギルドに行くために外に出ると、昨日の子供たちが宿の前で待っていた。
「どうしたんだ? 情報なら夕方にでいいぞ」
「情報収集は小さい子たちでやってる」
「あたしたちは他にお仕事がないかと思って……5万リラは多すぎるもん」
生活が苦しいんだから気にしなくていいのにな。
「わかった。荷物持ちを頼む」
レベル上げをさせよう。
レベル10くらいになれば、武器があればゴブリンくらいなら倒せるだろう。
討伐報酬で生きていけるようになれば、オレも次の街に行ける。
王都に行って、情報収集と女神のダンジョンでレベル上げだ。
「任せてくれよ、にーちゃん!」
「私たちもいっぱい運ぶよ」
急遽、冒険者ギルドに行くのはやめて、ゴブリン退治に向かう。
途中で武具屋に寄り、子供たちにショートソードと皮の胸当てを買い与えた。
「かっこいい、にーちゃん?」
「これで私も戦えるかな?」
別に戦うのが仕事じゃないんだけどな。
10人の子供たちを連れて街を出る。近くの雑木林に入り、レオにゴブリンを捜して貰う。
「きゃあああ!」
ゴブリンを見て悲鳴をあげる女の子たち。
「心配するな。オレが動きを止めるから止めを刺すんだ」
一瞬で5匹のゴブリンに接近し、両手両足をへし折った。
「さあ、動けなくしたから攻撃をするんだ」
「にーちゃんの動き、速すぎて見えなかった」
驚きながらもゴブリンに攻撃をする。
へっぴり腰なのは仕方がないだろう。正式に剣術でも習わないと。あとは馴れだな。
レベルチェッカーで確認すると、レベルは上がっていない。
与えたダメージが低いからとかじゃないんだよな。たぶん人数が多いからだな。
でもこれなら安全にレベルを上げられる。少し強くなったら、自分たちで戦わせてみよう。
オレだってレベル1で倒せたわけだし、レベル5もあればギリギリ勝てるかな?
レベル3くらいで、子供たちだけでも倒せるとは思う。
でも強くなったって、危ないことはさせないように教えないと。
少しずつ馴れてくれたらいい。じっくり育てていこう。




