港町の観光
本日1話目です。
宿で少し休んだら、涼しい服に着替えて観光に向かう。神剣だけは身に付けるが、他の武装は解除した。
潮風が少しジメジメしてるな。ドライ機能付きの扇風機でも作ろう。
レオも魚の匂いが気になるのか、キョロキョロとしている。
いろんな色の魚が店に並んでいるので、レオが気に入った魚を買ってみた。
どうやら美味しいみたいだな。シティーボーイのレオが、がっついている。
時間停止機能付きの収納バッグも作って、魚を買い込もう。
仕事しないとダメかな。いっぱい買ったらそれなりの値段がしそうだ。
海が荒れてる今は漁ができない。だからこの値段でも仕方ないだろう。
漁師は近場で釣りをして魚を調達しているみたいだな。釣りを楽しむ感じじゃない。
収入が途絶えてるから、漁師も必死なんだろうな。
港を見て回ると、荷物が集まる倉庫がいっぱいある。
商人が足止めをくらっているので、船を出せるのはいつになるのか、貨物船の船長に詰め寄っていた。
自分で船を持っている商人も困り果てているようだ。
オレも船を作るかな。空想現実化は、魔法的な物を作らない限りは、消費MPも少ないから、大きい物でも作れる。
多少の余裕はあるだろうし、魔法の船を作れるかもな。
前に試した時はダメだったけど、レベルが上がったし、魔力も思わぬ報酬で高くなったし。
でも人がいないと船って動かないしな。無理だな。オレたち2人で動くわけがない。
自分の船を持ってみたいんだけどな。ギルドで仲間でも探すかな。
やっぱり真由たちと合流したら作るかな。早く欲しいけど。
「だから! こんなに荒れてたら船は出せないんだって!」
船員が怒鳴ってるのは中年女性のようだ。
身なりがいいから、商人かな? あるいは旅行したい金持ちか。
暗い顔をしてるのが気になるけど、周りの商人も同じように溜め息をついてるしな。
海が荒れてるのも魔神の影響か?
まあ、聞いた感じ毎日じゃないし、異常とまでは言えないだろう。
でも、1日収まるだけなら、逆に危ない。何日も様子を見てからのほうがよさそうだ。
「レオ、冒険者ギルドで適当な魔物退治の仕事を請けて、少しお金を稼いでおこう。好きな魚をいっぱい買ってやるからな」
「にゃあ!」
しかし、凄い渦だな。
シーサーペントでも溺れそうだ。
オレたちは冒険者ギルドに行って、魔物退治の仕事を請けながら、神器を作っていった。
オレの防具も見た目は変わらないが、物理防御力も魔法防御力も上がった。
全属性を軽減できて、疲れを少しずつ回復する機能を付けた。
ブーツには速度を上げる付与がされてるし、傷の回復とMPの回復を早める効果がある指輪も作った。
MP0から回復するのに、今までは10時間くらいの睡眠が必要だったが、8時間で回復した。
これに女の子のお尻の感触をプラスすれば、3時間で回復できる。
レオの装備も全部強くした。
レイピア型の神剣と全属性軽減の胸当て。
体力回復効果のあるマントと羽根つき帽子。これで最高速度を出し続けられる時間が5倍くらいになった。
ブーツや手袋も新調し、さらに性能が上がって喜んだ。
けっこう強い魔物が出てきたんで、お金を稼ぐことはできたけど、未だに海が荒れてる。
毎日フラフラして修行して魔物退治の仕事をしてばかり、正直に言って飽きてきた。
「なんか力を使いたくなってきたな。そしたらすぐに解決だし」
「にゃあ~」
レオは毎日のように魚を食べて、幸せそうでいいな。
オレも付き合いで魚を食べてるが、こっちも飽きてきた。
今日も今日とて街をフラフラする。最初は新鮮だったけど、船には乗れないしつまらない。
あのレオを買おうとしたアホ商人も、足止めをくらって滞在費が嵩んでいる。
人数が多いと宿泊費だけでも凄い額だし、商品を預けている倉庫の費用だってバカにならない。
あのバカ商人はともかく、国の経済がおかしくなりそうだ。
でもなるべく自然現象は操りたくない。人命が懸かってるなら別だけど。
何日かに1日は収まるんだよな。
2日収まる時もあるけど、別の大陸に行くのに2日は短すぎる。
途中で海が荒れて、神の力を借りるはめになるのは意味がない。
必要に迫られてなら積極的にバラすけど、無意味にバラす気も頑なに隠す気もない。
悩みながら街を歩くと、つまらなさが増す気がするので、休みを貰ったと思うことにする。
そう考えて気分よく散歩をしていると、気分を害する揉め事に遭遇した。
「違約金の代わりに娘たちは貰っていくぜ」
「もう少しだけ待ってください! 夫が帰ってくれば……」
最後のほうの言葉には勢いがない。
旦那が借金作って蒸発でもしたか? 違約金って言ってたな。
同い年くらいの女の子と、中学生くらいの女の子、あとは小学校低学年くらいの女の子が、屋敷の扉から母親を見守って怯えている。
「ちょっと待った! 通りすがりにお節介を焼かせて貰う」
女の子を泣かすのはよくない。
「なんだお前は! 邪魔するなら痛い目見るぜ!」
そりゃ無理だな。チンピラにやられるようなことはありえん。
「暴力でくるならありがたい。掛かってこい」
神剣を抜くまでもないが、オレは油断も容赦もしない主義だ。
「くっ……こっちは違約金を肩代わりしてやってたんだぞ! 回収するために娘たちを働かせるんだ!」
「まずは事情を話せ。金ならオレが払ってやってもいい」
「ガキに払える額じ――――オリハルコンランクだって!?」
冒険者証を見せると、争うのはマズイと思ったらしく、素直に話した。
嘘をつく可能性があるので、個別に話を聞いた感じだと、娘を連れて行くのは可哀想だな。
父親のアーロン37歳は商人。
仕事を請けて商品を調達に行ったが、嵐のせいで船が沈没したんじゃないかと言われている。
当然商品が届かない人が怒る。
そして契約通り違約金を払ってくれと言ってきた。
これは当然だ。約束した商品を届けられないんだから、商品の値段の数倍は違約金を貰わないと、損失が埋まらない。
相手だってその商品を使って儲ける予定だったわけだし、この時点で倍は貰わないとな。
そして相手も商品を用意できなかったと、評判が下がってしまう。
その迷惑料やトラブル回避にお金を使うだろうし、3倍以上は違約金を貰わないと、自分の店まで潰れてしまいかねない。
違約金は当然として、アーロンの代わりに肩代わりした金貸しが回収に来たらしい。
「なぜ一気に回収する必要があるんだ? 金貸しなら利子で儲けたほうがいいだろ」
「だから3人の娘を男客相手に働かせて、その金を利子代わりにするんだよ」
ふざけたやつだな。
娘を買った代金で借金はチャラにする。
そして借金を返し終わるくらい娼婦として働いても、さらに娘を使って稼ごうとしてる。
それなら娘を買わなくても、娼婦はできるだろうに。借金以上のお金を稼いでも逃がす気がないってことだな。
そもそも相手の商人が債権を売っただけで、いつまでに返すなんて契約してない。
いきなり債権を買ったから娘をよこせなんてな。
「ならオレが債権を買ってやる。それなら文句はないはずだ。まさか不当に稼ぎたいから借金を返されたら困るなんて言わないよな?」
「うぎぎっ…………ああっ! そんなこと言うわけないだろ? 犯罪じゃねえか」
悔しそうにしてる時点で犯罪者だと言ってるようなもんだな。
他でもやってるな。犯罪者には払わなくても問題ないんだよな。犯罪で稼いでるんだから。
この国では奴隷は禁止されている。
娼婦として働くことは禁じられてないが、強制したら犯罪だ。
あくまで借金を払うために自主的になるもので、囲って逃がさないようにして、借金や決まった利子以上に稼がせるのは法に触れる。
「お前は犯罪者か? 犯罪者から借りたお金は返さなくていいんだぞ? 知ってるだろ」
犯罪の資金になると国としても困るので、それこそ犯罪者は殺されても文句は言えない。
「ち、違う! 証拠はあるのか!?」
「それは調べれば済むことだ。知り合いの騎士に調べて貰おう」
あ、逃げた。
「金塊クラッシュ!」
収納カバンから王に貰った金塊を取りだし、金貸しの背中に投げ付けた。
肺の空気を勢いよく口から吐き出すような感じで、金貸しが呻いて地面に倒れた。
「悪は滅びろ!」




