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ファンタジーを現実に  作者: 王国民
ルーキス王国編
30/207

お花畑でお茶会

 本日2話目です。

 箱を開けると皿にケーキが載っていた。

 さらに人数分のイチゴショートケーキを出すと、お嬢様たちは真っ白なケーキに驚いた。

 バタークリームを使っているので、こちらのケーキは少し黄色いのだ。


「可愛い見た目です!」


「これは食べられますの?」


「なぜ箱からお菓子が……」


「お姉様、そんなこといいから、これ食べたい」


 幼い子供にとっては神器もそんなことか。ケーキは食っていいよ。


「遠慮しないで食べていいよ」


 1番幼い少女が、さっそくモグモグ食べる。

 他の女の子たちは、上品に食べた。みんな夢中で食べている。


「おいしい……」


 妹のはしたない食べ方にも叱ることはなく、年長者の少女も、一言呟いただけで食べることに集中している。


 オレも食べる前に、レオにキャットフードを与える。

 来る時に馬車で女の子たちに撫でられていたので、ちょっとぐったりしていた。


 しかし、メシ時に甘い物はオレにはつらい。甘い卵焼きをご飯のおかずにしたくない人なのだ。甘い卵焼きは寿司に使うのがいい。


 ケーキを食べ終わった少女たちは、じーっとオレを見ている。

 その目はもっと食べたいなぁと言ってるが、はしたないと思って言えないんだろう。


「もう1個ください!」


 1番小さい子は食べるのが遅かったが、食べ終わったあとは、お代わりを要求した。

 子供なので、はしたないことだと理解していないので、姉たちと違って遠慮なく皿を差し出す。


 メイドが新しい皿を持ってきてくれたので、それにケーキを出してあげた。

 今度はチョコレートケーキだ。しかしみんな戸惑っている。


「今度は黒いです! ソータ様、失敗したのですか?」


 レイシアが不思議そうに尋ねる。


「これで成功だよ。まあ食べてみてください」


 少女たちに勧めたが、1番小さい子以外は躊躇(ためら)った。


「大丈夫? シンシア。ソータ様が食べない物は食べないほうが」


 姉が心配して声を掛けるが、まったく気にしないで食べている。

 オレが食べないのはメシを食おうと思っているので、胸焼けしないようにだ。


 シンシアちゃんの笑顔を見て、美味しいのかもと思った少女たちは、自分たちも食べ始めた。


「美味しい!」


「苦甘のケーキ。大人の甘さですね!」


「それはチョコレートケーキですよ」


 名前を教えてあげると、チョコレートはどこで買えるのか聞かれた。

 こっちにはないようなので、神器で作ってるんだから神界じゃないですか? と誤魔化した。


 レイシアたちはすでに花を見ていない。

 貴族令嬢としてどうなんだと思うが、女の子だし甘い物に弱いのは仕方ないのか?


 オレはチャーハンとカレーライスを出して、食べ始めた。

 見知らぬ食べ物を食べているオレを、その場にいた使用人まで興味深そうに見ている。


「それはなんですか? ソータ様のことはなんでも気になります!」


「刺激的な香りですね。恥ずかしいですけどお腹が空いてきました」


 レイシアと中学生くらいの女の子が、オレに尋ねる。


「オレの故郷の食事で、チャーハンとカレーライスですよ。その神器に皿を入れて、これを思い浮かべれば出てきますよ」


 MPがあればだけど。

 オレは食べるのに忙しいので、メイドにやって貰う。

 次々と出てくる食事に、神器というのを理解したのか、途中から箱を触る手が震えていた。


「これ、辛いですけど美味しいです。ソータ様は凄い神器を持っていますね」


 オレが空想で作った物だけどな。

 モデルになったのはケルト神話のダグザの大釜だ。

 ダグザの大釜をそのまま作ったほうがMPは少ないんだけど、オレが食べたい料理じゃないしな。


「おかげで食事には困らないんです。だから宿代だけ稼げばいいんで、ラクなもんですよ」


 武器も防具も自分で作れるし。

 せいぜい誤魔化すために食料を買うくらいかな?

 オレの仕事の話をやたらと聞きたがるのは、冒険したいお年頃だからかもな。


 食事も終わったので、話を切り上げて遊ぶことにした。


「そら、1番のおチビさんに使わせてあげよう」


 シンシアちゃんに頭巾を被せると、赤ずきんちゃんみたいで可愛い。


「可愛い帽子ですね。妹によく似合ってます」


 シンシアちゃんも可愛いと言われて喜んでいる。


「鳥に話し掛けてみるといいよ」


「鳥さん?」


 動物ならなんでもいいけど、近くにいるのはカラフルで小さい鳥だけだ。

 地面を(ついばむ)む小鳥に近付いて、シンシアちゃんが話し掛けた。


「鳥さん、なにをしてるの?」


「ピピピッピーピッピピーピッ」


「そうなんだ。食いしん坊かと思っちゃった」


 雀がシンシアちゃんのほうを向き、鳴き声を上げると、シンシアちゃんが納得した。


「シンシアは何を言ってるの?」


「お姉様。あのね、あのね、小鳥さんがね、お食事をしてるのかと思ったらね、貯めてるんだって」


 説明が足りずによく解らないようだ。


「リスみたいにエサを貯めてるんじゃないか?」


「うん! お口の中に貯めてるって言ってるの!」


 指摘してあげると、伝わって嬉しいのかニコニコしてる。


「鳥の言葉が解るの?」


「そうだよ? お姉様。この鳥さんは話ができるの!」


「鳥が話ができるんじゃなくて、その頭巾を被ると動物の気持ちが解るだけだ」


 ききみみ頭巾を参考にして作ってみた。

 しかし、よくよく考えると、あまり使い道がなかった。

 せいぜい偵察とかを動物に頼むとかだが、神や悪魔の力を借りるほうが早いし。


「すごいすごい! ねえマルコ。動物さんを連れてきて! お話するの!」


「お嬢様、罠もないのに無理でございます」


 シンシアちゃんの家は子爵家らしいんで、護衛の兵士を連れてきていた。

 マルコさんとやらに、話しをする動物を連れてくるように頼むが、そりゃ無理だ。


「む~、いいもん。小鳥さんとお話するから!」


 ちょっと拗ねてしまった。小鳥相手に愚痴を言ってる。

 その様子に心配になった姉が、鳥に愚痴を言わないように叱る。


「ねえねえシンシア様。私にも貸してくださらない?」


「いいよ! 順番に使お!」


 姉に叱られて落ち込んだが、動物と話をする仲間が増えて、機嫌を直した。


「すごい! 本当に聞こえますわ!」


「あっちのほうから旅をしてきたんだ?」


「シンシア様、また貸してくださいな」


「もう少しだけ」


 かなり騒がしくなったな。

 オレはお嬢様たちから離れて席に着いた。

 すると騎士が近付いてきて、オレに神器について聞く。


「あのような神器をどうして持っているのですか? ひょっとして他国の王子殿下であらせられるとか?」


「いや、違うし。オレは王族ではないですよ。たまたま手に入れただけです。冒険者ですからね」


 冒険でレベルを上げたから手に入ったのは確かだ。

 あまり納得していないようだが、立場的にオレは恩人。あまり突っ込んで聞けない。

 兵士は再び護衛のために離れていった。


 口寂しいから道具生成でジュースを出して飲む。

 よくよく考えたらジュースって道具じゃないよな。なんで出るんだ?

 ゲームのような感じでアイテム扱いなんだろうか?


 なんでもいいか、便利だし。

 道具生成で出した食べ物は、栄養にならないから腹は減るし、飢えは防げない。

 その代わり味を楽しめるし、絶対に太ることはありえない。女の子の味方だ。


 空想現実化で作った無限の食料庫は、出した食べ物も栄養になる。

 使い分けるほうがオレとしても賢いと思う。人が見てると道具生成は使いたくないが。

 神器の力だとしたほうが、オレが狙われる可能性が減るはずだ。




 夕方になる前に、帰る準備をする。

 馬車の中でもあれこれ聞かれたが、上手く話を逸らした。上品なお嬢様で助かるな。無理に聞こうとはしない。


 それとは別に、シンシアちゃんになつかれたので、レイシアが不機嫌になったのが困った。

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