善人は守りたい
本日1話目です。
今日も4話更新です。
ゴールドランクになったオレは、難易度が高い仕事を請けられるようになった。
レベルアップのためにも、大量の敵が出る仕事がいいな。
オレはベッドに寝転び、冒険者ギルドが開く時間を待っている。
「レオ~、お前はどんな仕事がいい?」
「ボクはごしじんさまが危にゃくにゃい仕事がいいにゃ」
「それを言ったらおしまいだぞ。レベルアップするには強い敵が必要だ」
あとは数が多ければ言うことなしだ。
「それにゃら、ボクがお役に立てる魔物が……」
小型の魔物か。
「考慮はするけど、ちょうどいい仕事があるかは判らないからな~。いい仕事があればいいな」
「ボクはごしじんさまが無事にゃら、にゃんでもいいにゃ~」
話してる途中にアゴを撫でると、凄く腰砕けになるな。面白い。
時間までレオと遊び、冒険者ギルドに向かった。
「いろいろあるな」
「にゃ~お」
コクコク頷いてるが、オレの言葉を理解してるのバレるぞ。
冒険者は夜遅くに仕事が終わることも多いから、朝一だと誰もいないな。
日本人のオレは、冒険者らしくないのかもしれないな。
護衛の依頼は多いな。慣れない仕事をする気にはならないけど、護衛の仕事も経験しておいたほうがいいかな? 護衛に関する試験の問題は散々だったからな。
複数の護衛が付く仕事を選んで、ベテランに教えて貰うか、依頼料が安くても人助けになる仕事を選ぶか。
後者だな。儲けが少ない所に命を懸けて商売に行く心意気が好きだ。
貧しい村だって生きて行くのに必要な物はある。
誰かがやらないといけない。でも金持ち商人は儲けることが最優先だ。
そんな中で儲けもあまりないのに、盗賊に襲われる危険を覚悟で商売に行くなんて、実に素晴らしい心根だ。
他の護衛が多い商人の仕事は、盗賊の危険度が低になってるのに、この商人の仕事は危険度が中になってる。
護衛の人数が多いと襲うほうも人数がいるからな。
護衛の少ないほうが、安全と実入りのバランスがいいんだろう。
危険度が高になってるのは、備考に盗賊団の被害が1度だけじゃなく何度もあるので、拠点が近くにある可能性が明記されてる。
これは護衛が多いようだし、護衛を1人しか雇えない商人の護衛をしよう。
オレは依頼票を持ってカウンターに行く。受付け嬢はいつもニコニコしてるな。
「おはようございます。今日も早いですね?」
「おはようございます。オレの故郷だと当たり前ですよ。これ、お願いします」
依頼票を渡す。
受け取る前は笑顔だったのに、いきなり曇ったな。
「実力を知っていますから、危険だと止めたりはしませんけど、なんで報酬が低くて危険な依頼を請けるんですか? ギルドは助かりますけど……」
それなら初めから依頼を請けなければいいのに。選り好みをして評判が下がるより、請けてから冒険者が誰も請けないほうがいいのか?
オレも毎回請けるのは無理だしな。
今回で魔物や盗賊を一掃しよう。人助けは気分がいいからな。
オレを好きでいてくれる真由に、好きになってよかったと思って貰うのが、普段から世話になってるお返しになると思ってる。
手に入れた力は好きに使わせて貰うから、たまには世間に還元しないとな。
魔神もいずれ倒したい。魔神なんていたら仲間も危険だし、帰るまで無事に過ごしたい。帰る方法は知らないけど。
「幸いお金に困ってませんし、困ってる人を助ける余裕もありますから」
それに人脈作りにもなる。知り合うなら悪い人間より、いい人と知り合いたい。
そういう人のほうが、真由たちの情報が入ったら教えてくれそうだし。
「そうですか。若いのにしっかりしてますね」
「しっかりしないと生きていけない世界ですからね」
少し世間話をしてから、オレは依頼人の所に向かった。
なんでも市場を仕切ってる人だそうで、名前はアドルフさん。
年齢は51歳で、苦労して今の地位を築いたらしい。
ただ、利益にならない仕事なので個人資産でやっているらしく、護衛は1人だけなので冒険者を雇うことにしている。
請けてくれる冒険者がいない時は、その護衛1人だけで出発するらしい。
何度も危険な目に遭ってきたそうだが、若い頃から一緒に頑張ってきたので、常に護衛を買って出るそうだ。
市場は賑やかだな。
でも秩序は保たれているようだ。アドルフさんの評判はいい。
若い女の子はこういう所へ買い物に来ないようで、威勢のいいおばちゃんが値切る声がしている。
黄色い声ではしゃぎながら買い物する女の子は、普通の商館にしかいないんだな。
この辺りは食品が多いから、昼ご飯を作らなきゃならない主婦だろう。
料理をするのも時間が掛かる文明レベルだからな。宿でも燃料の節約のために、食事の時間は決まっている。
客1人のために、少なくない薪を使ってくれたりはしない。
市場の端のほうに倉庫があり、その辺りに管理事務所みたいな建物がある。
近付いてみると、10台の大きい4頭立ての馬車に、タルや木箱を積み込んでいた。
「アドルフさんはいますか?」
冒険者証を提示しながら尋ねると、積み込み作業をしていた人が呼んで来てくれた。
「お待たせしましたな。申し訳ない」
汗を拭きながら小走りで寄ってくる。
51歳だから、運動がつらいんだな。
「いえ、冒険者ギルドの連絡より先に来てしまったみたいです。挨拶にきただけで、作業の邪魔にならないようにすぐ帰って、明日の準備をします」
「わざわざ挨拶に来ていただけるなんて。あの依頼料でそこまでさせてしまいますと、心苦しいですな」
とりあえず出発は明日だし、自己紹介をしてから準備を急いだ。
そして翌日、待ち合わせの場所に行くと、アドルフさんと護衛のジェフさんがいた。他にも馬車の数だけ御者がいた。
軽く挨拶をして出発する。オレは護衛なのでアドルフさんの操る馬車に乗った。
ジェフさんは別の馬車に乗って、先導してくれるようだ。
「ジェフさんってどのくらいの腕なんです?」
御者台で隣のアドルフさんに尋ねる。
人数を最小限にするため、アドルフさんも御者をしている。
「ジェフはオークくらいなら2匹まで倒せますよ。同じ村の出身でしてね。私たちの村は魔物に襲われてなくなりましたが、それ以来なんとか頑張って店を持つことができ、今のような立場になれました。ジェフがずっと守ってくれたおかげですよ」
なんでも貧しい村だったが現領主の父親が、街で買うのと同じ値段で、必要な物を届けてくれていたそうだ。
現領主のロジャー・オルコット伯爵も、父親と同じように領民を大事にしている。
「それじゃあ、回る村は別の領地ですか?」
「ええ、隣の領地です。ほんの少し住む場所が違うだけで、驚くほどの差になることもありますから。隣も酷い領主様ではないのですが」
要はお金がなくて十分にできないんだろう。
「私たちも苦しい思いをしていましたから、他人事ではないんです。幸い領主様のおかげで生きるための必需品は手に入りましたが」
隣の領地は不足しているんだな。
オルコット伯爵も隣の領地では手が出せないだろうから、アドルフさんがやってるのか。
「ロジャー様も私に援助はしてくれているんですが、他領のことに領地のお金を使うわけにはいきませんから、こっそりポケットマネーからバレない程度に」
なるほど。立場があるもんな。
この領地の人が払った税金は、この領地のために使われるべきだ。
かといってポケットマネーから出すにしても、バレたら問題になる可能性がある。
喧嘩売ってるようなもんだしな。お前は統治を失敗してると言ってるのと同じだ。
「実に素晴らしいことです。オレからも2000万リアほど寄附をしますね」
「えっ! 仕事を請けて貰っているのに、そんなことまでして頂くわけには」
「どうせ使い道のないお金ですから」
前の仕事で手に入れた3000万ちょっと。そのうち1000万は教会の孤児院に寄附したからな。
最初に売ったリトルドラゴンと、鋼鉄の名剣のおかげで生活には困らない。
「…………ありがとうございます。有効に使わせて頂きます」
ずいぶん苦労したんだろう。感極まった様子で頭を下げた。
何日か進んで、村や小さな街を通りすぎる。街の特徴なんかを聞いたりしているので退屈しない。
そんな感じで会話をしていると、レオがオレの服を引っ張って、視線を大きな岩に向けた。




