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ファンタジーを現実に  作者: 王国民
ルーキス王国編
20/207

ゴールドランクになる試験

 本日4話目です。

 冒険者ギルドに帰ってくると、オレは注目を浴びた。


「怪我はねえか!?」


「キラービーからは逃げて正解だ!」


「そうだぞ。若いんだからムチャするんじゃない!」


「なんであんな仕事を請けたんだ?」


「エミリーに止められただろう!」


「とにかく無事でよかった」


「まったくだ。聞いた時はダメだと思ったぜ」


 やたらと心配を掛けたみたいだな。

 オレは受付け嬢に自信があると言ったはずだけどな。ないならないと言うし、そもそも請けないからな。


「ソータさん……無事でよかった。いま話してたんですけど、準備をしてたんですね?」


「そもそも請ける請けないは冒険者の自由のはずなのに、なんで心配してるんです? オレは大丈夫だと伝えましたが」


 できないことをやるようなバカに見えるんだろうか?


「はい、ですから受付けました。いくら1人でプラチナランクになる人でも、キラービーの巣に1人で行くのは」


「いやいや、相棒のレオがいますから」


「にゃ~!」


 そこらの冒険者より強いぞ。


「こんなに小さくて可愛い猫ちゃんじゃ、キラービーに勝てるわけ――」


「いや、もう終わったんで確認してきてください。………………これが証拠です」


 外に出てバッグからクイーンの首を出して持ってきた。


「うそっ! クイーンキラービーの首!」


「まさか! 今朝出掛けてなんでこんなに早く勝てるんだ!」


「巣に突っ込んだんだな……なんて危ない」


 ちゃんと安全を考えて、最強クラスの装備品を用意したのに。

 これ以上の装備品は伝説の剣みたいなのしかないぞ。いずれ作るけど。


 さすがに神剣とかは、MP1000くらいじゃ作れないけど。

 魔力のステータスが500くらいだったら、1000でも作れるだろうが。


 でも魔力が500になる頃には、MPは2000を超えてるはずだし、ただの神剣じゃなくてオプションを付けられそうだ。


「誰か人をやって調べてください。残っていたとしても少ないはずです。レオの鼻で探して貰ったし、たぶんいないと思います」


「わかりました。それで、キラービーの死体はどうなりました?」


 死体に何かあるのか? 蘇るとか?


「普通に斬り殺しましたが?」


「やっぱり! 剣を持っていたからそうだとは思いましたが、魔術師の可能性もあるので。燃やしたりして倒したら素材が……」


 なるほど。普通の剣じゃオレも勝てないだろうからな。たぶん10匹くらいで剣が折れる。

 防具にでも使うんだろう。鉄のように硬いくせに飛べるからな。軽くて頑丈な防具は高級品だしな。



「それにしてもすげえな。キラービーを剣で斬るなんてゴールドランクになれるぞ」


「ゴールドランクなら斬れるが、数百匹も倒せるわけがないぞ。強さはミスリルランクに相応しいだろ」


 調査が終わるのを果物のジュース(高い)を飲んで待っていると、噂の的になっていた。

 なぜか同じ年代の新人っぽい人たちが、握手を求めてきたりするが。

 凄い活躍をしたのは認めるが、英雄みたいな活躍をしたわけじゃないのに。


「あのっ。お時間があったら剣の手解きをお願いできますか?」


 16歳くらいの女の子たちが、剣を教えて欲しがる。

 オレだって修行中なんだが、木剣で相手をするくらいならいいか。


「調査が終わるまでなら。オレは我流だから、木剣で相手をするくらいだぞ?」


「ありがとうございます!」


 ギルドに併設されている訓練場に行き、女の子たちにいっせいに仕掛けてくるように言った。


 5人の女の子たちが木剣で攻撃するのを、2本の木剣であしらう。

 上段から振り下ろされる木剣を左の木剣で受けて、絡め取るように巻き上げる。


 突きを繰り出す女の子は、木剣の腹で受けて逆の木剣を突き付ける。

 後ろから袈裟斬りで掛かってきた女の子は、前を向いたまま木剣を背中に回して受け、逆の木剣で前からくる女の子に牽制した。


 オレからは攻撃せずに、攻撃を受けてアドバイスを贈る。

 指摘した部分を直し、連携も少しずつ様になってきたところで、調査が終わったと呼びにきた。


「それじゃオレはこれで」


「はぁ……はぁ……あり……がとう……ございました」


 全員が膝を突きながら、口々にお礼を言う。頑張るのはいいことだな。オレも多少は訓練になったし。


「息一つ乱さないであしらったぞ」


「後ろにも目がついてるみたいだ」


「本気ならどれだけ強いんだ?」


 驚く冒険者の声を聞きながら、ギルドの受付けカウンターに戻った。


「確認が終わりました。全滅だったそうです」


「レオの鼻のおかげで、いままで助けられましたからね」


 足下のレオを見る。猫の真似をしていた。猫だから真似じゃないか。話せることの誤魔化し方が上手くなったな。


「それで素材なんですけど、買い取りでかまいませんか?」


「はい、オレには必要ないので」


 オレは自分で装備を出せるし。

 この2週間でレベルは48になったし、そのうち神剣で武装する予定だ。


「ありがとうございます。査定もしたので、報酬をまとめてお渡ししますね」


 キラービーとハチミツ、クイーンの代金で3500万リラ。

 依頼の報酬が85万リラだった。普通に倒すだけで依頼は必要か? 素材のこの値段。


「それと、爪で引っ掻いたような痕があったそうですけど、レオちゃんが?」


「だから強いって言ったじゃないですか」


「ごめんなさい。レオちゃんもごめんね?」


「んにぁ~お」


 アクビをして、気にもしていない。オレの役に立てればいいんだろう。


「それと、ソータさん。ゴールドランクの試験は受けますか? 試験といっても戦闘能力は依頼で証明されていますし、人柄も問題ありません。ギルドへの貢献も。あとは筆記試験だけです」


「それならすぐ受けます」


 別室に案内されて、試験官が用紙を持ってくる。

 10枚もあるな。設問されてるのは、魔物の知識やギルドの規約。

 他にも護衛の問題とかか。この場合はどうするかなんて問題だ。

 順調に書いていき、2時間くらい掛かって全部埋めた。


 1時間ほど採点を待ち、結果が発表された。


「結果から先に言うと合格です。知識の面ではほぼ満点です。普段からよく資料室で勉強してましたしね。素晴らしいです。冒険者の倫理に関しては満点です。しかし行動の問題は突飛なものがありますから気を付けてください」


 突飛?


「商人の護衛中、盗賊に囲まれた場合の行動ですが、とりあえず斬るって何ですか?」


「敵だし、どうせ死刑になるし」


「それはそうですが、まずは護衛対象に戦うのか交渉をするのか確認をしてください。あくまで護衛が仕事です。安全を優先させてください」


 なるほど。他人と行動すると大変だな。


「次は、護衛の最中に襲われている人がいた場合の行動で、助けるのは人として間違ってはいません。ですが、優先するべきは依頼人ですから、やはり許可を取ってからにしてください。依頼人の安全を確保してからですよ?」


 なるほど。世知辛い世の中だ。


「そんな顔をしてもダメですよ!」


 なんか教師みたいで、苦手なおじさんだ。


「解答例がありますから、持って帰ってくださいね」


 合格できたのに叱られたから、素直に喜べない合格だな。

 ゴールドランクの冒険者証を受け取る。早いな。重さからして金箔を貼った物だろう。


「合格を見越して作っておいたんです」


 どうりで早いはずだ。渡すだけだもんな。

 ランクが上がったし、明日はもっとレベルが上がりそうな仕事がいいな。

 オレたちは宿に帰り、2人で風呂に入ってカレーを食べた。レオはペットフードだが。

 早く自在にメシが出てくる神器が欲しい。10種類じゃ食べ飽きる。

 デザートのプリンを食べながら、チーズケーキに思いを馳せていた。

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