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六銘鑑  作者: 朝倉新五郎
ADAM30戦役
8/9

第8話 -要塞の攻防-

 その頃、銀河共和国軍のADAM30に続々と艦隊が合流していた。

 続々と続いて到着する艦隊は


 第65打撃艦隊提督デボラ・シュルツ大将

 第52打撃艦隊提督カーメイン・トムハ大将

 第184機動艦隊提督クハイ・チャパオ大将

 第248機動艦隊提督ミハイル・チャン大将

 達だった。


 各提督達は次々にワンダーク提督とタキヌマ提督に挨拶に来たが、全員が新進気鋭の若い提督だった。

 各地の会戦で勝利を収め勝ち残った猛者たちである。


 ワンダークは

 「これだけの面々はそうそう見れるものではないな。今回の作戦、よろしくお願いする。」

 と惑星要塞の作戦ルームで一同に会して述べた。


 シュルツ提督は

 「今回の作戦に関しては先任であるワンダーク提督の立案で戦うことを承知しているので、

遠慮無く使ってもらいましょう。気遣いは無用ですよ。」

 その言葉に他の提督達も頷いた。


 ワンダークは

 「その言葉、ありがたく頂戴する。」

 と謝意を述べ「まずは作戦を説明します」と3Dスクリーンを出した



 「基本的には防御戦となります。敵の総数は16万隻。

これに惑星要塞の守備艦隊が4万隻程度組み込まれると予想して当たることになります。」


 第27艦隊上級参謀シュウ・ユキモト大佐が説明を始めた


 「まず、敵本隊ですが、基幹艦隊が2個艦隊、打撃艦隊が3個艦隊と考えられます。

その打撃艦隊には101連隊を擁する第87艦隊が含まれており、

現在の情報では約700機の旅団規模となっているところまで突き止めました。」

 とユキモト大佐が説明すると


 「ブラックナイツが旅団規模・・・それは脅威となり得るな。」

 トムハ提督が顔をしかめた。


 「そうです、艦隊ならば要塞砲での牽制が出来ますが、

トルーパー部隊となるとこちらのトルーパーで受け止めるしか無い状況です。」


 ユキモト大佐は続けて


 「最大の問題は、この700機のブラックナイツを要塞に近づけないということですが、

正直なところ要塞守備のトルーパー5000機を出したところで全滅の危険があるということです。」


 すると、シュルツ提督が

 「第一特殊戦闘部隊は使わないのか?」と訊ねてきたので、ユキモト大佐は

 「200機弱の第一特殊戦闘部隊をこれに当たらせたとして、100機も落とせないと考えています。

これは前回の戦闘の結果を分析しての解答ですが、

敵部隊の倍の機数を出して、戦果は撃墜8。こちらの被害は撃墜20機、大破が1機です。

補充の効かないエースパイロット達を全滅の恐れがある戦闘には出したくないというのが正直な判断です。」

 

 その意見を聞き、各提督は黙りこんだ。


 「確かに、これから必要になる貴重な戦力をここで消耗させるわけにはいかんか。」

 チャン提督はワンダークの苦渋の決断を理解した。


 「我が方は14万隻、対して自由共和国側は20万隻の投入が可能ということか、トルーパー部隊の質は何おかいわんや、だな。」

 トムハ提督が目を閉じて呟いた。


 ワンダークはそれを見て

 「厳しい戦いになるでしょうな、防御に徹するか、打って出るかと訊かれれば、全力で打って出るしか無い、と言うところです。」と意見を言った。


 「銀河共和国きっての猛将ワンダーク提督をそこまで悩ませるとは、噂に聞くブラックナイツとは相当な実力なのが伝わってくるな。」


 シュルツ提督がワンダークの表情を見て危機を察知した。



 自由共和国軍の作戦が新たに作り直されていた。

 101旅団を要塞攻略の核として、発艦させ敵艦隊周囲及び出撃してきたトルーパーに当たらせる。


 その間に16万隻を広範囲布陣にし、出来るだけ艦隊戦で敵を消耗させてから惑星守備艦隊合流。

 その後全艦隊を持って押し通す。


 バートン提督が簡単に作戦内容を提示した。

 「と、このような順序での単純な攻撃が最善かと考えるのだがどうかな。

消耗戦になるが。ただ、場合によっては柔軟に対応する、ということになるが。」


 他の提督達に異存は無いようだった。

 名将と言われるバートンの立案だ、反対する者はなかろう。


 スクオーラ提督の予想通りであった。



 過去最大規模の艦隊戦が始まろうとしていた。


 銀河共和国軍14万隻が待機するクラムラン惑星要塞の自由共和国軍16万隻による攻略戦である。


 自由共和国軍のスクオーラ提督はADAM宙域全体の索敵は継続しつつ自分の艦隊の準備を行っていた。

 惑星要塞守備艦隊のうち4万隻を即応体制に起きつつ、クラムラン惑星要塞に移動可能な状態に置いていた。

 

 「さてと、出るとするか。」バートン提督は緊張しつつ

 「全艦隊に告ぐ、これよりクラムラン要塞攻略戦を開始する!各艦隊は配置確認!」

 と全軍に通知した。


 第9基幹艦隊に続き第3基幹艦隊、第17強襲艦隊と続いてクラムラン惑星要塞から約1光年の距離にジャンプしていった。


 「さすがにこの数を相手にするとなると、我が方の惑星要塞に艦隊を送るのは不可能だろう」


 バートン提督は最悪の状況も考えて手を打っていたが、そうはならない事を確信していた。



 時を同じくして銀河共和国軍に索敵機からの一報が入った。

 「全艦隊が移動を始めました。なお、要塞守備艦隊4万隻も臨戦態勢のもよう。」


 ワンダーク提督は

 「来たか」とだけ言い作戦書に目を通した。


 「惑星要塞砲の射程圏内にて全軍展開!防御陣形にて待機」

 と司令を伝えた。



 クーン准将率いる第一特殊攻撃部隊は要塞の直上に陣取る重母艦内部で待機していた。

 戦況によっては命令に逆らって要塞を守るために部隊展開も考えていた。

 続々と惑星要塞周辺に出てくる艦隊が整然と並んで迎え撃つ準備を整えていた。



 「トルーパー部隊全機展開」の号令で各艦隊からパワードトルーパーが出撃した。

 その総数は15万を超える。


 「ほうほう、こうやって見るとやはり圧巻じゃのう、大軍じゃ」

 タキヌマ提督が楽しそうに言う。


 ブリッジの上級参謀キュメイ・ローダー大佐はそれを見て

 「嬉しそうですね、提督」


 と言いながら整列していく艦隊を眺めていた。


 「防御力の高い重戦艦、戦艦を前方に配置、その後方に砲艦。母艦は後方へ下げよ」

 ワンダーク提督の命令で艦隊が再度動き、迎撃体制は整った。


 あとは自由共和国軍を打ち砕くのみである。



 同じ頃、自由共和国軍はクラムラン要塞から約1光年の距離を置き、全鑑がジャンプアウトを完了した。

索敵機の情報では銀河共和国軍は全艦要塞前に展開していると言うことで、

待機させている要塞守備艦隊も呼び寄せる事となった。

 

 1光年の距離で睨み合いを続けつつ、守備艦隊4万隻が合流した。

 「これで合計20万隻、そろそろ往くか。」バートン提督は静かに言った。

 

 「全艦ジャンプ準備。敵要塞より10AUの距離にて再度艦隊の編成をとる!」

 バートン提督が再度命令を下した。


 

 無事敵要塞と10AUの距離を取り、全艦隊が集結した。

 「戦艦を前方に押し立て、包囲陣形を取りつつ敵艦隊に向かって前進」


 バートン提督の第9艦隊が敵正面に向かって前進し、それに続いて艦隊陣形を取りつつ他の艦隊も従った。

 「2AUの距離を保ち、全トルーパー発艦!」


 と命じると一斉に20万機のトルーパーが発艦し、艦隊半ば辺りに展開した。


 「101旅団は艦隊上方へ移動。敵の動きに注意しつつ攻撃準備しておけ」


 スクオーラはオーウェンに命じた。



 「来たようだな」ワンダークが言うと


 「約20万隻の艦影を確認、包囲陣形を取りつつ距離を詰めてきています」

 レーダー手がワンダークに報告した。


 「要塞砲準備、艦隊は要塞砲射程距離内で陣形を取れ」

 ワンダークは最初の一撃を要塞砲にするつもりだった。


 使わないまま破壊されては何の役にも立たない。無駄だと知りつつの決断である。

 


 「敵要塞砲の射程距離ギリギリまで詰め寄る。まずは各艦レイルガン5斉射」


 バートンは「敵は下手に動けないだろう、実弾系兵器に注意しつつ微速前進、距離を詰めるぞ」

 最も被害の少ない方法で敵艦隊に対抗しようとしていた。


 2時間後

 「レイルガン第一波敵艦隊に届きます。」レーダー手が言うと。

 「敵の被害状況はわかるか?」バートンが問うた。


 「敵戦艦部隊に直撃ですが、被害は殆ど無いもようです」と返って来た。


 その時、スクオーラ提督から通信が入った。

 2Dモニターに現れたスクオーラが


 「101旅団を先行させますか?」と訊いてきたので

 「そうだな、敵要塞砲が発砲された後すぐに艦隊と共に準亜光速で敵上面攻撃とする。

要塞守備が手薄なようなら全力で要塞攻略を行え、要塞砲ジェネレータの破壊だ。」


 しばらくして、要塞砲が発射された。

 艦隊全面に粒子バリアが張られているため目の前が輝き、そして消えていった。


 「よし!全艦準亜光速突撃!粒子バリアを張り続けつつ敵前方1000kmまで一気に詰めるぞ!」

 バートンは続けて

 「0.5AUで粒子砲連続砲撃。続いてレイルガン、重粒子ミサイル、質量エネルギー弾頭を一斉射撃!よく狙え!」と命令した。



 「やはり要塞砲は届かんか、再装填まで30分だ。

全艦全砲門砲撃開始!要塞砲の装填まで時間を稼ぐぞ!」ワンダークは怒鳴り


 「要塞砲射軸を開けて前進!」と命じた。

 「混戦になるぞ、各艦隊及びパワードトルーパー隊は突出に注意、足並みを合わせろ!」と続けた。



 20分もしない内に双方の距離は1000kmを切り出した。

 バートン提督は

 「前回のように突撃してくるぞ、再度全艦全砲門全開射撃開始、

混戦になれば敵要塞砲の射軸に注意しつつ各艦隊連携して攻撃せよ。

敵艦隊に逃げ場はないため殲滅戦と考えてよし!

各個撃破されないように密集陣形を取りつつ各自突入戦開始!」と命令を下した。



 同時に双方の砲撃が前衛に着弾し出した。質量エネルギー弾やレイルガン等を強固な装甲で跳ね返しつつ最前列の戦艦部隊が突き進んでいく。


 密接陣形ではあるが、その間をかいくぐって艦隊内に入ってきた弾頭や弾丸が砲艦や駆逐艦、巡洋艦等に命中し次々と内部で爆沈する艦艇が出だしてきた。


 左翼と右翼に配置された第9、第3基幹艦隊はゆっくりと横に膨らみ包囲しつつ敵艦隊の横から猛烈な攻撃を浴びせた。


 ワンダーク提督は要塞砲の射軸に入り込み全方位攻撃を行いつつ自由共和国軍の後方に回り込もうとしていたが、自由共和国軍の要塞守備艦隊によって阻まれていた。


 30万を超えるパワードトルーパーが母艦を守りながら戦闘を行い、そこかしこで爆発が見て取れた。

 

 スクオーラ提督が

 「101旅団及び高機動トルーパーは敵要塞へ向かい要塞砲を破壊せよ!」と命令した。

 とたんに艦隊上方で待機していた101旅団全機が要塞に向かって超高速機動で向かっていく。


 オーウェン少将は

 「まずは要塞守備隊を出来る限り殲滅。数は多くないはずだ。その後要塞砲及び可動砲台を全て叩け!」

 と命令すると一直線に敵クラムラン要塞に向かっていった。


 それに続いて自由戦闘部隊や各連隊が超高速でついていく。

旅団防御部隊は周囲の要塞守備トルーパーを次々と落としていった。



 「白銀の部隊はどこだ?やはり温存か?」とオーウェン少将は全周囲警戒を行っていた。

 そして、普段はさせることのない編隊飛行を自由攻撃部隊に命じていた。

 それは「例の部隊が出てくれば2機で当たること」と言う簡単な命令だった。

 


 クーン准将はその様子を見つつ第一特殊攻撃部隊を出撃させるかどうかをクラムラン要塞のX軸直上で考えていた。

 「今出せば全滅必至だな・・・く・・・」命令違反は承知だが要塞付近で次々と落とされていく守備トルーパーや破壊されていく可動砲台を見ると出撃命令を出すか思案していた。


 そして「第一特殊戦闘部隊全機発艦し、一撃後帰還せよ!戦闘時間は10分とする!」と配下の部隊を一斉出撃させた。

 

 レーダーを注視していたオーウェンは一瞬にして気付き

 「白銀の部隊が要塞X軸直上に出現、来るぞ!構えろ!」と全部隊通信で叫んだ


 レギオン大尉は

 「来やがったな、モト少佐の仇を取ってやるぜ!ロロルド中尉往くぞ!」とブースター噴射で向かっていった。


 同時に

 「中佐、あたしたちも行くよ!」とジーン少尉がギャロップ中佐に通信した。

 「第一連隊と自由攻撃部隊は全機敵白銀の部隊に当たれ、残りは敵要塞攻撃を続けろ!」


 オーウェンは単騎でレギオン大尉やジーン少尉を追い抜いていった。


 

 「あれか」遠方から飛来する約200機程度の編隊を見てオーウェンは

 「陣形は崩すなよ、一機でも多く仕留めろ!」と命令した。

 101旅団第1連隊が大きく弧を描いて敵側面に回り込もうとするが、半数がその動きについてきた。



 「側面攻撃なんてさせやしねぇ!」

 ランゲート少佐は先頭に出て第1連隊に攻撃してきた。



 その動きを見て

 「小隊単位で戦え、各員無理はするなよ」とラムゼ上佐は命令した。


 「半分に別れたか、こちらもだがな」オーウェンは呟き

 「すれ違いと同時に攻撃開始、初撃で出来るだけ落とせ」

 と自由攻撃部隊通信を入れた。



 「一撃離脱だろ、時間は10分か、厳しいな」ランゲート少佐も初撃に賭けていた。


 「ここか!」先頭のラムゼ上佐機が視認出来た時にランゲート少佐は全質量エネルギー弾、フレシェット弾を発射し、粒子砲とレイルガンを連続射撃した。

 ラムゼ上佐始め20機程度が小型エネルギーポッドを打ち出し、質量エネルギー弾を防いだ。

 しかし、フレシェット弾とレイルガンは防御出来ず数機が損傷を受けた。


 「次はこちらの番だ!」とラムゼ上佐率いる第1連隊機は同様の攻撃を行った。

 数秒の違いであったが、より敵近くでの攻撃により第一特殊戦闘部隊十数機が爆沈した。


 波状攻撃の様に旋回と攻撃を繰り返し、

 ランゲート少佐達の第一特殊戦闘部隊は半数が装備を失っていた。


 一方オーウェン少将率いる自由攻撃部隊は着実に戦果を上げていた。電撃戦のような攻撃とレイやジーン少尉のようなトップエースがペアで1機に攻撃を集中すると逃げ場はなく、ベイルアウトする機体が多く出た。


 要塞の方でも戦果は着実に上がっていた。

 敵の攻撃を受け付けないGS8ダイダロスGXXが盾となりFF13ケンタウロスAXXが高速機動攻撃を行う。

 第2、第3連隊も守備トルーパーを破壊しつくし、要塞のジェネレーターにたどり着いた。


 ジェネレーター目掛けてFB15シンフォニアが爆撃を行い、要塞砲を沈黙させることに成功した。



 そして

 「クリスティン・イラーム上佐よりオーウェン少将へ、敵要塞砲破壊を確認。引き続き要塞守備への攻撃を行います」と連絡を入れた。


 「了解、第3連隊をこちらに回してくれ、敵白銀部隊を殲滅する。」

 オーウェン少将が短く通信を入れると、ほぼ無傷の第3連隊が上方へ急加速して自由攻撃部隊と合流した。

 


 「クーン准将より第一特殊戦闘部隊へ、要塞砲がやられた。全機撤退せよ」

 との命令が届き、残った部隊員がベイルアウトやベイルオフした機体をフッキングし準亜光速で母艦へと戻っていった。


 オーウェンは

 「やはり撤退か、こちらも被害状況を確認し、戦闘不能機をベイルオフ後フッキングしてキサラギへ帰還させろ。残った者は惑星要塞外殻の砲台を全て撃破する。格納庫はシンフォニアが吹きとばせ。」と命じた。



 その後数十分後に

 「敵要塞完全に沈黙、艦隊へ戻る。敵の背中を叩くぞ!」

 オーウェン少将は機を翻して激戦最中の艦隊方面へと戻すと、旅団全機がそれに付き従った。


 敵の背後に回りこんだ101旅団は後方の守備をする駆逐艦や砲艦、パワードトルーパーをまるで射撃ゲームのように落としていった。



 ワンダークは通信士とレーダー手から

 「クラムラン要塞守備隊及び全砲門沈黙です。」

 「後方にブラックナイツらしき編隊約500機が背後より我が艦隊に攻撃を加えています。」


 と聞き

 「く・・・ここまでか」と拳で壁を叩き

 「全艦隊に告げる、トルーパーを収容し敵後方に移動、突き抜けた後全速で上方転回、敵の頭上から全力にて攻撃しつつ距離を開けて離脱する。」とあえて全チャンネルで通信した。



 バートン提督は

 「これは戦闘回避と受け取るべきですか。」


 とチャップマン提督にスクリーン越しで尋ね、チャップマン提督は

 「どうやらそうらしいのぅ、こちらの被害も相当な状態じゃしこの際相手の手に乗ってみるか?これ以上の被害はこちらも避けたいところじゃな」

 と返答した。


 それを聞きバートン提督は

 「敵艦隊機動を確認、残弾やエネルギーの確認は不要、全艦総攻撃を行え。その後タイミングを合わせて全艦隊離脱せよ」と命令した。

 


 自由共和国軍が空間戦闘で勝利を収めた後、残るのは要塞内の陸戦隊だけである。


 バートン提督は3万名の陸戦隊を作成し、要塞内に送り込んだ。

 もはや降伏か全滅しか選択肢の無い銀河共和国軍陸戦隊はしばらくの戦闘の後あっさりと降伏した。


 500万人に上る民間人は元々自由共和国連邦の者達であり、バートン提督達は解放者として歓迎された。

 クラムラン惑星要塞自体にはもう問題は無かった。元々銀河連邦が2つに別れる前に建造された人工惑星であり、分裂後も規格は両共和国と同じである。


 ADAM21の2個守備艦隊は2000隻を失いながらも主要鑑の被害がほとんど無かったため、そのまま送り返されることとなった。失った艦艇やトルーパーはADAM21の工廠で建造されるだろう。


 ただ、丸裸になってしまったクラムラン惑星要塞の復旧のためには半年程度掛かる。

 司令部に連絡し、守備艦隊と修理兵及び資材を送ってもらうこととなった。


 それまでの間はひとまずバートン提督の第3基幹艦隊とスクオーラ提督の第17強襲艦隊が守備することに決まった。

 


 戦闘は終結しクラムラン惑星要塞に今回戦闘参加した提督達と上級参謀が集まり、被害の報告の後戦勝を祝うこととなった

 合計20万隻の艦隊の被害は今回約3万隻と少ないとは言えないが、バートン達が考えていたよりかなり少なかった。



 対して銀河共和国軍の被害は7万隻と推定された。

 数で勝利したとも言えるが、用兵の点での勝利でもあった。


 包囲し、2方向からの攻撃により銀河共和国軍は数多くの後衛艦をも失っていたのである。

 勝利に対する最大の貢献はやはり101旅団ということとなった。


 要塞を無力化し、相手の切り札を失わせたのは精神的に敵を追い詰めることとなっただろう。


 今回は新規隊員を多く抱えながらも戦死者はおらず、重軽傷者12名にとどまったということも自信となった。


 対して、敵白銀の部隊は撃墜48機ということである。

 ベイルオフしたトルーパーの破壊は確認が取れなかったので完全撃墜とは言えなかったが優位は自由共和国軍側にあると確認が取れた。



 一方、ADAM30を守りきれなかったワンダーク提督は沈痛な表情を隠さなかった。


 14万隻の内半数以上の7万隻強を失った上、第一特殊戦闘部隊隊員も15名が戦死した。

 各提督は無事だったが、優秀な将兵を数多く失ったのである。


 15000光年先のEVE25までの長旅の間にジャンプブースターの故障により落伍する艦艇も出るだろう


 最終的に残るのは6万隻程度となると計算された。



 この会戦は「クラムラン要塞奪還戦役」と名付けられ、バートン提督の名をより上げることとなった。

 しかしバートン自身は、この功績は自分一人のものではなく参加した提督、将兵全てのものだと確信していた。


 勝利してなお謙虚、

 それこそがバートン提督を名将と言わしめることに自身は気がついていなかった。

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