第12話 「オタクには関わりたくない年頃です」
時は戻って、健康診断の日。
雅樹が連れてかれるのを目の前にした涼香は呆然としていた。
「高岡君大丈夫かな……」
「心配だね……」
つい先日、話相手になったばかりの後藤麻友も不安そうな顔をしていた。
順番は滞りなく回ってくる。今のところ雅樹のように連れてかれる人は出ていなかった。
保健委員会の活動で涼香の近くに来ていた麻友も他の場所へ行ってしまった。
一人が検査室から出ると、ドア横に立つスーツ姿の女が言った。
「じゃあ、次入って」
心細さを感じながら涼香はドアを開ける。
涼香が検査室に入るなり、明るい声が飛び出してきた。
「わ~! すっっっっっごく可愛い子だぁー!」
「え?」
明るい声の持ち主は明るい髪で、彩り豊かな服を着ていた。
「私、霜月っていうのぉー! よろしくね!」
「は、はぁ……? 私は涼香です」
「ふーん! 涼香ちゃんね!」
霜月に握手を求められ、涼香はそれに応じた。
その光景を見ていた白い特殊スーツを着た男が霜月に言った。
「霜月様、検査を続けてください。後がつかえてますので」
「むぅ……わかってるよー」
よく見れば、霜月に進言した男は他の人と異なる特殊スーツだった。隊長格といったところか。
「じゃあ、涼香ちゃん! ここに乗って、覗き込んじゃって!」
「う、うん……」
涼香は緊張した面持ちで台の上に乗った。
*
健康診断が終わり、時は放課後。
涼香と麻友は健康診断について話し合っていた。
というのも、今回はあまりにも不可解な点が多かったからだ。
検査も結局アニメを見せられただけ。
とてもあれでウィルスを検知できるとは涼香にも麻友にも思えなかったのだ。
「あれで終わりなのかな?」
「私にもわからない」
雅樹をアニメ講座を受講した涼香は名作と呼ばれるに値する作品というのはわかったが、それが何に関係があるのかは見当もつかなかった。
「あ、もう時間だ……委員会活動があるからまたね」
「うん、また……」
麻友がいなくなり、何もすることがない涼香。
学校が終わったのだから帰ればいいのだが、帰る気が起きなかった涼香は体育館裏に行った。
「そういえば、最初は絶対関わりたくない……なんて、思ってたっけ」
涼香が雅樹のことを知ったのは一年前だ。
アニメが嫌いで、オタクという存在には絶対に関わりたくなかった涼香は雅樹には近づかないようにしていた。
学校一のオタクなんて気持ち悪いはずだと決め付けて。
「私、本当に馬鹿だったな。話せばいい人だってわかったのに……」
オタクには関わらないような学校生活を送る日々。
気づいたら、友達が全員オタクになっていた。
それで、周りから浮くようになって、美咲さえも話が合わなくなった。
「あのときは辛かったな……」
どうにかしようと、雅樹を呼び出して、涼香はある告白をした。
オタクということで最初は素っ気無い態度をとっていたが、実際に話すと面白くて、雅樹にどんどん引き込まれていく。
「高岡君……これでさよならじゃないよね? せっかく友達になったんだから」
涼香は膝を抱えてうずくまる。
「寂しいよ…………」




