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幼き日の英雄、ドラゴンにより覚醒す!!

『お母さん……白いお馬が空を飛んでるよ。』


フランク王国の城下にある小さな家の窓から外を眺めている幼い男の子。


キッチンで夕食の仕度に忙しい母親のマーガレットは、クスッと笑って息子のロビンの方を向いた。


『ロビン、お馬さんは、空を飛ばないものよ~』


ロビンは顔をプクッと脹らませて母親のマーガレットを見た。


『お母さん、ボク、本当に、お空を飛ぶ白い羽の付いたお馬さんを見たもん!』


『長く赤い髪をした綺麗なお姉さんが乗ってたもん!』


母親のマーガレットは息子のロビンの側に寄り添って窓から空を眺めた。


『今日のお月さまは、とても綺麗ね………』


『ロビンが見た白い羽の付いたお馬さんは、もしかしたら……』


ロビンは咄嗟に母親の口に小さな手を当ててふさいだ。


『ボクが言うの!』


『あれは、伝説の英雄が乗るサモトラケのベガサスだよね!』


マーガレットは優しく息子のロビンの頭を撫でて呟いた。


『そうそう、よく覚えていたわね。』


ロビンは嬉しそうに母親のマーガレットに答えた。


『だって、毎晩、お母さんがベットで読んで聞かせてくれたもん。』


その時、慌ただしく聖堂騎士団の馬の隊列が石畳の街道を走り抜けて行った。


パカッパカッパカッ…………


パカッパカッパカッ…………


パカッパカッパカッ…………


息子のロビンを抱き上げて、窓のつっかい棒を降ろすマーガレット。


『聖堂騎士団が、あんなに慌てて走って行くなんて……』


奥の部屋から、ロビンの祖母イザベルが杖をついて、ゆっくりキッチンの間に顔を出した。


『マーガレット……何やら騒々しいが、なんぞ、あんたんかい?』


マーガレットはイザベルの背中にショールを掛けながら答えた。


『お祖母ちゃん……』


『大勢の聖堂騎士が慌てて走って行ったのよ。』


イザベルは、ロッキングチェヤーに腰を下ろすと徐に話し出した。


『お前が、ロビンくらい幼かった頃、同じ事があったよ……』


『龍じゃ……ドラゴンがお城に現れたにちがいない……ゴホッゴホッ……』


咳き込むイザベルを、いたわるマーガレットが暖かい薬草の飲み物を彼女に手渡した。


『お祖母ちゃん!』


『ドラゴンて何?』


孫のロビンは無邪気にイザベルのロッキングチェヤーを揺らしながら訊ねた。


『そうか……ロビンは、まだ、ドラゴンを知らんのじゃなぁ。』


『よく、お聞き……ドラゴンというのはなぁ……』


目を丸くして祖母イザベルの話に、耳を澄ませるロビン。



グラッグラッグラッ))))))))




グオオオォォォォォオオオオ)))))))))



その時、家全体が揺さぶられるような大きな獣の鳴き声が街中に響き渡った。


『これじゃ……この声じゃ!!』


『ロビン!、窓を開けて夜空を見てみよ!』


『聞くより、自分の目で確かめるんじゃ!!』


祖母のイザベルに促されてロビンは足場の椅子を窓際に用意し下ろし窓を開いた。


ロビンの瞳は夜空の満月と重なる大きな漆黒のドラゴンに釘付けとなった。


『す、す、すごーーーーいっ!!』


『ドラゴンだぁーーーっ!!』


イザベルは、ニコリと笑って娘のマーガレットに呟いた。


『これで、三代に渡ってドラゴンを目にしたことになるのう。』


『ヒャッヒヤッヒヤッ……』


爺さんも、お前の旦那もドラゴンを見て龍討伐騎士(ドラゴンスレイヤー)になったんじや。


マーガレットはロビンの目を両手でふさいで、その後、窓を閉めた。


『この子はだけは、お父様や、あの人(夫)のようにはなって欲しくはありません!』


祖母のイザベルはロビンを手元に呼び寄せた。


『お前に聞こう……』


『あの龍、ドラゴンを見て何を思った……』


『正直に(ばば)に話してみよ。』


青ざめた顔をして祖母のイザベルに詰め寄るマーガレット。


『お母様!』


『この子を恐ろしい世界へ引き込まないでください!』


ロビンは壁に飾られた会ったこともない父と祖父の勇姿が描かれたドラゴンスレイヤー

絵を見て呟いた。



『オレ!!』


龍討伐騎士(ドラゴンスレイヤー)になる!!』


祖母のイザベルは、高笑いをして、ロビンの頭を撫で回した。


『よくぞ言った!!』


『それでこそ、黄金の眉庇(まびさし)を受け継ぐ勇者』


『王座の(きざはし)を駆け昇れ!!』


『ロビンよ!!』



この時はまだ、後世に黄金のサレットと呼ばれる勇者は、ほんの夢見る幼い男の子に過ぎなかった………………





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