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君という一握の光を見失って途方にくれる僕  作者: 新藤 愛巳
第一章 途方もなく恨まれた人と小磯良
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途方もなく恨まれた人と小磯良

世の中にはいろんな事件がある。犯罪。事件、事故。

ファーストインプレッションは犯罪だ。


 その事件は世間が神隠し事件にああでもないこうでもないと騒いでいたころに起きた出来事である。

 時はさかのぼる。僕は小磯良。ネットで音楽プロデューサーをやっている。暇な時にキーボードをかきならしていた。


 しかし、僕のバンドはボーカルが居ないし、曲調もデスメタルなので、なんかもう酷評ばかりをくらっていた。初めてのライブハウス運動をするにあたって、


「売れないな」


 チケットは売れなかった。本当に一枚も売れなかった。才能の無さを思い知り、むなしさを感じた。


「ダメなのかな……やっぱり、音楽で人を幸せになんてできないんだろうか?」


 ライブハウスの外、顔を上げた先には占いの看板があった。LEDで輝いていた。

 困った人占います。


「これだ。これしかない!」


 その時は本当にそれだと思ったのだった。

 音楽を聞きに来てくれた人を占います!

 有名占い師の弟子を名乗り、占いまくった。それが思いのほかよく当たっていたのだそうで……。あっという間に、僕の占いチケットは高値で取引され、小磯良の名前は爆発的に世間に広まった。このままではまずい。素人だとばれる前に有名占い師の弟子になってしまえ。愛すべき師匠に六年教育を受けて、そしてたくさんの人を勉強して今や、占い界の帝王にのし上がってしまった僕だった。最初はなんて事のない人気取りだったものが、いつの間にか本業になっていた。


 世の中本当にわからないものである。


「今、努力すれば試験に受かる」


「今、活動すれば就職できる」


「今はじめたらいい時なんだ」


 最初は音楽ライブに来た人だけを占い、お礼にコインをもらい、歌ネットを開設、占いコーナーを充実させた。そうしてある日、貯金通帳を見て気がついた。感謝でもらったお礼のお金がいつの間にか莫大な額になっていることに。僕は一大決心した。そうだ、京都に行こう。


 京都に行けば良い音楽が生まれるかもしれない。ワビとサビを手に入れて和風音楽で一世風靡しよう。もう動機は散々だけどどうでもいいや。僕はどうしても音楽で売れたかったのだ。占いではダメだったのだ。あの子が僕の作った歌で笑ってくれたから、僕はもうそれだけでよかったのだ。


 古都、京都で雅な音楽を奏でてこよう。

 三か月前に学校を休むことにした。高級寝台特急の券を買い求め、特別列車に乗る事に決めた。


「生まれ変わるぞ。京都で音楽の神様の弟子になるんだ。顎を洗って待っていろ、京都」


 そう呟いて寝台特急に飛び乗った僕だった。

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