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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日のあなたは何をしますか?

作者: つたたたこ

 僕は目を覚ました。


 見慣れていた白い天井があった。学校から飛び降りて死んだはずなのに、今ベビーベッドの上で寝かされていた。僕の体は小さく弱々しい赤ん坊になっていた。


 とても見慣れていた天井は僕の部屋だった。親も前と同じだった。住む街も同じだった。知り合いも同じだった。何もかも前に生きていた自分と同じだった。


 そして僕は前と同じ人生をやり直す事になった。











 人形(自分)はとても絶望していた。


 新しい人生でまたあの快感が味わると思っていた。だが、記憶が、精神が、心が前と同じだった。


 前の自分が壊してしまった心はもう治らない。






『シニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイシニタイ』


 5歳になった人形(自分)はそれしか考えていなかった。周りから見れば無言で、無表情で、何もしなかった人形のようで気味が悪かっただろう。


 欲しいとは思わない。褒めて欲しいとは思わない。同情して欲しいとは思わない。この悲しみ苦しみから解放して欲しいとは思わない。


 人形(自分)は何かしたい欲がなかった。人間、欲がなかったらただの人形同然だ。


もう、どうでも良かった。周りからの目線、言葉、接触







 そして死んだ。







 横断歩道を渡っている時、人形(自分)が歩いている意味が分からなくなっていた。


『この道を渡って一体何になるの?』


 点滅する信号は赤に変わり道路の真ん中に立っていた人形(自分)は走るトラックに轢かれた。











 人形(自分)は目を覚ました。


 同じだった。


 人形(自分)の中身以外全て同じ人生だった。人形(自分)は3回目の人生が始まった。


『あはははは、酷いや神様。こんな人形(自分)に何度も何度も同じ人生を歩ませるなんて。どうせなら中身も新しくしてよ。』


 そんな願いが叶うわけもなくまた死んでいった。







 人形(自分)は目を覚ました。


 人形(自分)は死んだ。


 人形(自分)は目を覚ました。


 人形(自分)は死んだ。

  :

  :






 人形(自分)は目を覚ました。


 1746回目の人生が始まった。人形(自分)には同じ人生に興味も感情もなかった。何度も生まれては死ぬ、繰り返す人生に気が狂いそうだった。


 死ぬことができない人生を歩んでいると人形(自分)の中身にある芽が開いた。


『死なずに生きたらどうなるんだろ。』


 今まで考えて来なかった疑問だった。1746回も人生を繰り返していたのに一度も小学校まで生きていなかった。それもそうだ、生きる理由が無い人が長く生きられるわけがない。人形(自分)は死なずに生きてみることにした。






 そして入学式が終わり人形(自分)の教室に向かい席に着いた。前の席に座っていたのは前の自分の自殺を見ていた元親友がいた。親友はこちらの存在に気がつくと、


「お前名前はなんて言うんだ?あ、僕の名前は日野 秋って言うんだ。よろしく」

「日野 秋君だね、そのままヒノアキって呼んでいい?」

「うん、いいぞ。」

「僕の名前は空野 澪。これから‘‘も”よろしくね。」


 そう、これから‘‘も”よろしくねヒノアキ。






 人形(自分)の目標は死なないこと。だから勉強を頑張った。生きるために必要なのは学力だ。頭が良ければいい大学に入れて有名な会社に就職することができる。


 決意を固めた人形(自分)は再び前を向いて歩き出した。












 それから時は流れて、人形(自分)は日本トップクラスの会社に入ることができた。今までの努力が報われた瞬間だった。いつもと同じではない人生に人形(自分)は嬉しかった。まだ知らない人生があることを知った。


 そして、













 死んだ











 最後に覚えているのは包丁を持ったヒノアキだった。


 学力しか力を入れていなかった人形(自分)は、人間関係を疎かにしてしまった。その結果、恨み、怒り、憎しみを買った。


『まさかヒノアキに殺されるなんて思わなかったよ。こんな終り方があるもんだね。』


 慣れてしまった痛みはだんだんと薄れていった。


『あはは、結局人形(自分)は人形だったね。運命を変えることのできないまま壊れていく、それが人形(自分)


 さてと


 さぁ、1747回目の人生を始めよう。』











 日野 秋 サイド


 小学校から一緒だった澪を、今俺は包丁で刺している。


「ハァハァ、俺は、悪くない、俺を物扱いをしたお前が悪いんだ。だから俺は悪くない!!!!!!。」


 手に持っている包丁をさらに深く刺し手を離した。澪の腹から大量の血が流れ落ち、倒れていった。







 笑いながら。







「……………バイバイ、ヒノアキ、そして、ごめ……………」







 そして澪は死んでいった。


 地面には澪の血が広がっていた。口から血を吐いたようで顔中が真っ赤だった。俺は頭を揺らした。何度も何度も、澪の最後の言葉が頭に響いて消えてくれなかった。


「…………なんで、…なんでだよ!!


 なんでそんなに嬉しそうに死ぬんだよ!!!!!!!


 お前、俺に殺されたんだぞ。まだやりたいことあっただろう、それを俺

 が終わらせたんだぞ!!!!


 ……うらめよ、俺を恨めよ澪!!!!!!!」


 澪の死体は目を閉じ頬を上げていた。まるで澪の笑顔がそのまま石像になったみたいだった。


「そして謝るなよ!お前を殺した俺に謝罪なんて要らねーし、遅すぎなんだよ!」


 俺の両目から流れた涙は、赤く染まった手の甲に落ちた。恨らんでいた心はいつの間にか悲しみと後悔に変わっていた。


 さらに、追い打ちをかけるように頭に流れ込んだのは、







<澪の自殺を見た前の俺の記憶だった。>







「アアアアアアーーーァーー▽〜ーーアァーー¢ーー○ー・ーー●ー/ーーーー■ーー#ーーー\ーーー!!!!!!〜〜,〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!」


 その叫び声はもう人間の出る声ではなかった。守ることの出来なかった澪を自分が殺していることが信じられなかった。あれだけ時間があったのに、あれだけ何度も喋れたのに、おかしくなった澪を戻すことをしなかった俺が情けなかった。なんで澪を救えなかったんだ。頭が痛い。体が痛い。死なせてくれ。


 それは悲しみ、苦しみ、後悔を通り越して、日野 秋を破壊していた。


「&-、お¥:¥:/ーーーーーお:」れは/¥なんて¥@^:!!こ。ーとをーー!おれ、!?、は、^/?¥?ごーーー@、^!!めんーーー!、!、み@?/!@^おーーーー!、!、」











「それでは、次のニュースです。昨日の午後8時ごろに公園で2人の死体が発見されました。一人は腹に包丁で刺され、もう一人は死因がまだ分かっておりません。公園の近くに住んでいる住民に聞いてみると何かの叫び声が聞こえたのことです。現段階では、状況が分かっておらず捜索を進めて行く模様です。では今日の天気です。ーーーーーーーーーーー」











 そして今日も人形(自分)は目覚める。









繰り返す人生、あなたはどう生きたいですか?

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