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神々の痴態  作者: 日車吟
何でも語り
2/2

質より量を、安いより質を見ましょう

 ある日、馬神の霪馬と神鹿の鹿威、神擬の小春という少女が店で買い物をしていました。


 小春達は貧乏な為、質より量を取るタイプでした。

 そんな彼らにある問題が起きました。

「や、やべぇぞっ!小春、コレを見てみろ!凄く安いぜ」

 鹿威は大声でそんなことを言いながら小春の前に差し出しました。

 鹿威が持っていたのは二つの大根が一束になったものでした。


「本当だ!どうしよう、買おうかな?あ……でもその大根、腐りかけ前では?」

 鹿威が持っている大根を見て小春が言いました。彼女の言っている通り、鹿威が持っている大根は4分の1が茶色く変色していたのです。

 小春は確かに質より量を取りますが、この大根の腐りかけ前の酷さを見てある心配が思い浮かびました。


(この大根食べたら絶対お腹こわすだろうな。そうなったら、他の料理が食べられないよ。うーん……わたし、沢山食べたいから、お腹こわしたくないな)  

 

 一生懸命考えている小春の前に霪馬が何かを持ちながら来ました。

「おーい、小春。このカブは安いぞ。何せ、もれなくネギ付きだっ」

「あ、うん。確かにネギ付きなのは分かりますが、そのカブの大半が腐りかけで異臭を放ち、ネギは所どころ虫に食べられていませんか?」 


 カブは色が変色し、ネギは虫が食べたせいで無数の穴があいていました。

「何言ってんだよ!安いんだぞ?貧乏な俺達には有り難い値段なんだぞ?」


 しつこく小春に勧める霪馬の必死さに小春は困り気味でした。

 そんなしつこい霪馬の前に立ちはだかったのは鹿威でした。

「ぅおい!待てよ霪馬!こっちの方が断然お得に決まってんだろ!?」

「はんっ、嘘言っちゃいけねーよ。断然こっちの方がお得だな」

「いやいやいや、こっちは普通、大根一本で十五文なのに二本で二十文なんだぜ」

「いやいや、こっちはとにかく安いんだぞ!そっちよりもお得だ!こっちは二種類だ!」


 店の前で言い争っている彼らに周囲の人々は非難の目を向けました。

 小春はますます困り、他人のフリをしようかと考えました。しかし、そんな小春の名前を霪馬達が呼びました。


「小春!どっちがお得だと思う!?」

「断然、大根だよな!?」

「え、えぇ」

 一斉に非難の目が小春にふり注ぎまた。小春はイタい視線に耐えて、何と言えばよいのか分かりませんでした。鹿威は何も気付かず言いました。

「だったら、両方買ってくれるのか!?」

 

 鹿威と霪馬は小春の両腕に傷んだ野菜を持たせました。

「く、クサッ」

 大根の腐りかけ前の臭いに顔をしかめ、手に変な大根の汁がつきました。

 小春が両方買ってしまおうか、と悩んでいる時、路地の向こうから見知った顔の人が現れました。その人は小春を見つけるとパッと顔を明るくしました。


「小春さん」

「あ、ああ。匠次郎さん、こんな所に会うんなんて偶然ですね」

「ええ………ところで小春さんは一体何をやっているんですか?ついでに店先で言い争っている鹿威と霪馬も」

「ああ、実はですね、一束になっている二本の大根と、カブを買うともれなくネギが付いてくるものをどちらがよりお得か言い争っているのです」

(そんな下らない理由で!?)


 匠次郎は食に困らない大店の跡取り息子な為、彼には下らないことでした。

「わたしも、どちらがよりお得か迷っているんです。値段的には一緒ですが……」

 小春は匠次郎に例の野菜を見せました。その野菜を見た匠次郎は直ぐに変な顔をしました。

 大根は食当たりにあたらない野菜で有名ですが、彼女が抱えている大根は明らかに不衛生だったからです。大根以外の野菜もでした。

 匠次郎は小春の両肩に手を起き、真剣な眼差しで小春を見ました。


「小春さん、危険です。それはよしましょう」

「へ?」

「私がお金を出しますから、しっかりとしたものを買いましょう」

「でも……匠次郎さんには悪いから」

「いえ、構いません。それに貧乏だからって流石に腐りかけ前の野菜は駄目です。安いから……ではなく、安くても少しは質に目を向けましょう」

「でも、この大根は漬け物でいけますよ!あと、カブもです!ネギは……汁物にでもしたら意外にいけるかもしれません!」

「いや、漬け物はしっかりした大根の方が……いえ、不衛生ですから、お腹こわします」

「えぇー、別に腹こわしたぐらいで死にませんよ?」

「いえいえ、死ぬことだってあり得ます」

「う………うん」

「わかりましたか?」

「はいっ!では、全て焼いて食べます!」

「……はい?って、いやいや、焼いて食べても駄目ですよ。つか、大根とカブ焼くんですか?私の話し聞いていましたか?」

「はい。聞いていました。確かに、この大根とカブとネギは危険ですが……もったいないですからっ!!」

「どんだけそれにこだわるんですかァァア!」


 と、匠次郎は小春の対応に困っていました。この後、匠次郎はやっとこそ小春を説得して、普通の大根とネギとカブと椎茸を買いました。

(あれ?何か一種類増えてないか?)

 匠次郎は買うとき、少し疑問に思いました。


 ところで、店先で言い争っていた霪馬と鹿威は店の人に営業妨害だと言われ、店を追い出されていました。



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