破滅とはじまり
俺の文才のなさに全米が泣いた!
大きな家に入った。細長く、ドアがなく、入口と出口がなく、筒抜けだ。
その家の中心にパンの耳が置いてあった。
俺はそのパンの耳しかみていなかった。
無心にパンの耳に進んでいき、家に入って10~15歩(人間でいうと6歩)位のところで違和感を覚えた。
足が床に引っ付いている。
いや、床が足に引っ付いている。
パンの耳まであと数歩。あと数歩だ。しかし、一歩も進まない。
そんな俺が苦悩している中、家の扉が開いた。
この家の主だ。
俺の頭には絶望、悲しみ、不安などの感情が渦巻いていた。
どうかこっちに来ないでくれ。
しかし、そんな俺の思いを裏切り、無慈悲に足音はこちらに向かってくる。
「さてと、ゴキブリホイホイちゃん。獲物は捕まえてくれた?」
あっ。この家ゴキブリホイホイっていうんだ。名前の通り俺はホイホイ入ってしまった。
……なんで俺はこんな時にそんなくだらないこと考えているんだ?
家の主がゴキブリホイホイを覗き込む。
「あらー。一匹つかまってるじゃない。」
主がなにかスプレーのようなものを取り出し、振り、俺に向けた。
「ふふふ。さようなら」
吹きかけられた。
意識がふらふらして遠のいていく。
俺……オワタ…
今思えば短い命だった。卵から生まれたのが昨日のようだ。
母さん、父さん。先に行くことを許しておくれ。
ばあちゃん、じいちゃん。今いくよ。
俺は、今日…死んだ
閉じていたはずの目が急にまぶしくなる。
俺は死んだはず。どうなってるんだ?
ああ、ここが天国か、出なければ地獄か。
重たい瞳を開け、あの世がどうなっているんだか見てみることにした。
……拍子抜けだ。
あたり一面草原だ。天国ならせめて虹やら黄金の雲、神様などがいればいいのに。地獄なら地獄で、血の池や、針山などがあればいい。
しかし、俺のいまいる世界は一面草原。
近くにはすこしきれいな川が流れている。遠くにはふつうの山も見える。空は雲一つなく晴天。
景色はきれいだか、話で聞いた天国ではない。
俺が困惑していると、また一つ悩むべきことが増えた。
足が4本しかない。いや、実際、歩ける足は2本だった。頭についているべき触覚もない。
そのほか、自分についているべきものが無かったり、ついていないものがついていたりした。
俺は、近くの川で自分の顔を見る事にした。
……人間だ……
自分の顔は人間だった。
昆虫じゃない、人間だ。
俺を殺した人間。
俺が色々なことに困惑してると、少女の悲鳴が聞こえた。
ああ、まためんどくさい事が増えそうだ。
しかし、こういうのは放っておけない。ある意味この性格が一番面倒だろう。
俺は悲鳴の場所へ向かった。