平凡な日々
ここから本編、っていうよりプロローグです。
ある平凡な家のキッチンに、黒い物体があった。いや、正確にはいた。
彼はG。名前なんてない。兄弟にいちいち名前をつけていたら親は過労死するだろう。
彼らは何億年も前から現在の形で生き延びてきた。おそらくその形が彼らにとっては生きやすく、完璧な形なのだろう。そして、おそらく未来もその形で人類に嫌われる存在になるだろう。
しかし、そんな彼らの未来のことは今じゃどうでもいい。今の問題は彼だ。
前置きはここまでにして彼の視点で、今起きていることを見てみよう。
G目線
えっと、こういうのに慣れてないけどまず自己紹介だよな。俺の名前は…さっきも言ってくれたようにない。しかし、このままGと呼び続けられるのも不快(?)なので、ジャックとでも名乗っておこう。ちなみに、人間からは黒い悪魔やらなんやらいわれている。占い師のGからは勇者の生まれ変わりとか言われてるけどよくわかんね。
その次に現状説明な。俺は今、食料をさがして人間のキッチンを探索している。現状説明終了な。
今のところ何も起きない。起きなければ何も見つからない。つまり腹ペコだ。
しかし、さっきから妙にいい匂いがする。その匂いを追うごとに匂いは空腹の俺を狂わせた。
しばらく匂いを追った。戸棚の横に大きな家があった。窓からは仲間たちが手を振っていた。家には大きく「何とかホイホイ」と書かれていた。普段の俺なら、それが罠だと分かっただろう。仮にも勇者の生まれ変わりだから。しかし、今の俺は普通じゃない。俺は……空腹に負けた。