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ゲート ~白き英雄~  作者: 閃天
ゼバーリック大陸編
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第6話 確かめたい事

 凄まじい衝撃が広がる。

 舞い上がる土煙。

 吹き上がる赤い炎。

 冬華の前に立ちはだかったセルフィーユが両手をかざしたまま苦悶の表情を浮かべる。

 かざした両手を中心に半透明のドーム状の壁が形成され、それが真っ赤に燃え上がるクリスの剣を受け止める。激しく燃え上がるその刃が、今にもその壁をぶち破ってしまいそうだが、『絶対障壁』と言うだけの事はあり、その一撃を完全に防いでいた。

 やがて、炎の勢いは弱まり、衝撃が収まる。静けさと白煙だけが残り、クリスはゆっくりと剣をおろした。セルフィーユとクリスを中心に地面には酷い亀裂が走っていた。それ程まで凄い衝撃だったのだ。

 息を切らせるセルフィーユの後ろから冬華は真っ直ぐにクリスを睨みつける。


「どう言うつもり? いきなり、斬りかかってくるなんて」


 強めの口調で言い放つと、クリスはゆっくりと頭を下げた。


「すいません。少々、知りたい事があったので……」


 頭を下げたクリスが顔を上げると、その手に握られていた剣がいつの間にか消えていた。だが、そんな些細な事気に留める事無く、冬華は厳しい視線をクリスへと向ける。

 呼吸を乱すセルフィーユはそんな二人の様子を交互に見据えながら、息を整えていた。


「で、知りたい事は分かったの」

「えぇ。本当、申し訳ありませんでした」


 もう一度頭を下げる。

 その態度は、さっきまでと打って変わり、尊敬の色さえ窺えた。

 クリスの態度の変わり様を気持ち悪く思いながらも、冬華はセルフィーユの方へと歩み寄る。


「大丈夫?」

『は、はい。そ、それより、彼女が試したのは、きっと私の事ですよ』

「セルフィーユを? でも、あなたの事は、私以外に見えないんじゃ……」

『だから、試したんだと思うんです』


 僅かに肩を揺らしながらそう言うセルフィーユに、納得いかないのか冬華は腕を組みクリスを見据える。申し訳なさそうな表情を浮かべ、少々困った様子のクリスに、冬華は深くため息を落とし、一度セルフィーユを見た後、クリスの方へと足を進めた。


「えっと、とりあえず、ここから離れない? 何か、凄い人集まり始めてるし」


 苦笑する冬華は先程の爆音で集まり始めた人達にチラリと視線を向ける。そこで、クリスも自体を把握し、「そ、それじゃあ、私の部屋に」と、すぐさま歩き出した。

 あれ程の爆音がしたのだから、人が集まるのは当然だが、何故か集まった人達はやけに落ち着いて見えた。普通、あれ程の衝撃があったら、敵襲だと思ってもおかしく無いはずなのに。不思議に思いながらも、冬華はクリスの後に続いた。

 人とすれ違う度に、輝きに満ちた視線を送られ、後方でザワザワと騒ぎ声が聞こえた。“英雄”と言う肩書きの所為なのだろうが、何処か居心地が悪かった。

 堂々とした態度で前を歩くクリス。長い銀髪を頭の後ろで留めたクリスをジッと見つめる冬華は、小さくため息を落とし、隣りを歩くセルフィーユに視線を向ける。その視線にセルフィーユも気付き、冬華の方に顔を向け、二人の視線がちょうど重なった。

 ニコッと笑みを見せたセルフィーユに対し、大きなため息を吐いた冬華は両肩を落とし、うなだれる。


『ど、どうかしましたか?』

「あっ、うん……ちょっとね……自信を失ってた所かなぁ」


 顔を上げ、遠い目で窓の外を見据える冬華に、セルフィーユは小首をかしげた。


『自信ですか? 冬華様は、十分な資質を持ってると、私は思いますよ?』

「あは……あはは……ありがとう。セルフィーユ。励ましてくれて……」

『私は本当の事を言っただけですよ。冬華様には、まだまだ未知なる力を感じますから!』


 両拳を胸の前で握り、目を輝かせるセルフィーユに、「そっちか」と呟いた。何のことか分からず、不思議そうに首を傾げるセルフィーユだった。

 その後、暫く静かに歩き続けた。

 何故か一人落ち込んだ様子の冬華。

 冬華の様子を気にし、オドオドするセルフィーユ。

 そんな様子だとは知らず堂々と歩き続けるクリス。

 異様に映る光景に、すれ違う人達が不思議そうに足を止める。実際、映っているのは、冬華とクリスの二人だけなのだが、その対極の二人の様子が異様に見えたのだろう。

 どれ位歩いたのか、ようやくクリスの足が止まり、冬華の方へと振り返る。


「ここが、私の――て、どうなさったんですか!」


 振り返り、初めて気付く。意気消沈した冬華の姿に。慌てるクリスに、何とか説明しようとするセルフィーユだが、自分の声がクリスには届かない事を思い出し、あたふたとしていた。


「し、しっかりしてください! 何があったんですか!」


 冬華の両肩をつかみ、前後に激しく揺さぶる。あまりの激しさに我に返った冬華は、すぐさまクリスの額にチョップを見舞う。


「てりゃっ!」

「はわっ!」


 いきなりのチョップに声を上げ、手を放す。その勢いで冬華の体は後方へと投げ出され、壁に頭部を打ちつけ悶絶する。


「うおっ……いっ……頭……」

『だ、大丈夫ですか?』

「だ、だい、じょうぶ……」


 頭部を押さえながら涙目で返答した冬華。その少し離れた場所で、クリスが額を押さえ蹲っていた。間に浮くセルフィーユは、心配そうに二人を交互に見ながら、


『あ、あの、と、止めようとしたんですけど……』

「い、いいのよ。ボーッとしてた私が悪いんだから」

『えっ、あの、でも……』


 胸の前で指をもじもじとするセルフィーユに、笑顔を返した冬華は頭を擦りながら、クリスの方へと歩み寄った。


「大丈夫?」

「ふぁい……だ、だいじょうぶです……」

「ごめん。本気でやっちゃったから、痛かった?」

「い、痛くないと言えば嘘になります……」


 顔を上げたクリス。その潤んだ瞳に冬華は思わずドキッと、してしまった。それほどまで、クリスが可愛く見えた。通常時とのギャップがそうさせたのだろう。視線を逸らした冬華は、クリスへと手を差し出す。あまりの可愛さにクリスの顔を直視出来なかった。


「す、すいません……」


 小声で謝ったクリスが冬華の手を取り、立ち上がると、背中を向け人差し指で涙を拭う。そして、冬華の方に向き直った時には、またいつも通りのクリスに戻っていた。


「す、少し取り乱しました。すいません」

「い、いいのよ。私がボーッとしてたのが悪いんだから」


 苦笑する冬華に、クリスは何度も頭を下げた。

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