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ゲート ~白き英雄~  作者: 閃天
最終章 不透明な未来編
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第241話 褐色白髪の男

 リックバード領主の屋敷の廊下。

 冬華とクリスは、褐色白髪の男と戦闘を続けていた。

 二対一にも関わらず、褐色白髪の男は二人を圧倒していた。

 棍棒と言うリーチの長い武器を使っている為か、クリスは間合いにも入れず、冬華はまだ力が足りなかった。

 呼吸を乱す冬華とクリスは、額に薄らを汗を滲ませる。

 一方、褐色白髪の男も僅かに呼吸を乱していた。

 圧倒していると言ってもやはり二対一。攻撃を防ぐのにもいなすのにも、それなりに体力を消耗していた。


「いい加減、諦めてくれませんかね?」


 面倒臭そうに、褐色白髪の男はそう口にするが、冬華は右足を踏み込み床を蹴った。

 精神力を槍へと纏わせ、冷気をまとう。

 その動きに褐色白髪の男は、眉間にシワを寄せる。


「その攻撃はもう自分に届かない!」


 褐色白髪の男はそう言い、冬華の槍を棍棒で払う。

 それにより、冬華のバランスは崩れる。

 だが、冬華はすぐに体勢を整え、褐色白髪の男へと突っ込む。


「しつこい!」


 突っ込む冬華へと褐色白髪の男は前蹴りを見舞う。

 腹部を蹴られ、壁へと背中を打ちつけた。


「ぐはっ!」


 背中を打ち付け唾液を吐き出す冬華。

 だが、その目は真っ直ぐに褐色白髪の男を睨む。

 その眼差しに奥歯を噛む褐色白髪の男は険しい表情を浮かべると、右足を振り上げる。


「何だ! その目は!」


 しかし、男がその右足を振り下ろす前に、視界の端に紅蓮の炎が映る。


「紅蓮一刀――」

「ッ!」


 瞬時にクリスが迫ってると判断する褐色白髪の男はその場を飛び退き、棍棒を構える。

 そんな褐色白髪の男に対し、クリスは構わず振り上げた剣を振り下ろす。


「火斬!」


 烈火の刃を包む炎が、熱気を吹かせ真っ直ぐに床を叩く。

 そして、叩かれた床を打ち破り炎の柱が噴き上がった。


「くっ! 貴様!」


 距離を取った褐色白髪の男はその炎の柱を見据え、そう声を上げる。

 気付いたのだ。クリスの考えを。

 熱風が男の白髪を揺らし、炎の柱は天井を破り、更に火の手を広げる。

 そんな最中、炎を挟み向かい合うクリスと褐色白髪の男。

 二人の視線は交錯し、鼻筋にシワを寄せる褐色白髪の男は声を上げる。


「何を考えている! この屋敷を焼き払う気か!」


 声を荒げる男に対し、クリスは小さく肩を竦める。


「構わんだろ? どうせ、貴様らに支配されているんだから」

「ふざけるな! ここには、まだ多くの人が残っているんだぞ! 何を考えているんだ!」


 褐色白髪の男がそう怒鳴ると、クリスは目を伏せ静かに息を吐き出した後に、首をかしげる。


「まだ多くの人が残っている? それは、貴様らのギルドのだろ? 私に何の関係がある?」


 冷ややかにそう言うクリスに対し、褐色白髪の男はギリッと奥歯を噛んだ。


「貴様! それでも、騎士か!」

「それを、貴様らが言うのか!」


 クリスはそう怒鳴り、褐色白髪の男を睨む。

 やはり、クリスの目にも、あの光景が焼きついていた。

 斬りつけられる少年の姿が。

 沈黙が場を支配する中でも、轟々と屋敷は燃える。

 静かなその場に突如として冷気が漂う。

 炎の柱が噴き上がり、熱気が溢れているはずのその場に、明らかにおかしな現象だった。

 その現象を引き起こしているのは、やはり冬華だった。

 その手に握られた槍が、床を凍らせ、壁を、炎をと、次々と周囲全体を凍りつかせていく。

 息を呑むクリスと褐色白髪の男。

 ゆっくりと動き出す冬華は、ゆらりと黒髪を揺らす。

 冷気の所為なのか、クリスも褐色白髪の男も寒気を感じる。


(な、何だ……この気配は……)


 褐色白髪の男は目を見開き、立ち上がる冬華へと目を向ける。

 明らかに冬華のまとう気配が、今までとは違う。

 何か、異様なものを感じていた。

 一方で、クリスも不穏なものを感じる。

 何かとんでもないものを呼び覚ましたんじゃないか、そう思わざる得なかった。

 冬華の全身を冷気が包む。

 俯きゆらりと垂れた前髪を揺らす冬華は、深々と真っ白な息を吐き出すと、静かに顔を上げる。

 その瞳が金色に輝き、右手の指に嵌めた漆黒のリングがバチッバチッと弾ける。


「くっ! 何だ! 何なんだ! 貴様は!」


 冬華に対し、褐色白髪の男は駆ける。

 直後、男の視界に迫る淡い青色の刃。

 それが、頬を霞め、鮮血が舞う。

 瞬時に後方に退いた為、頬を掠めるだけで済んだ。

 後、数歩踏み込んで入れば、恐らく首を切断されただろう。

 距離を置く褐色白髪の男は額から溢れる汗を拭う。


「…………」


 何も言わず突き出した槍を引く冬華は、無言のまま槍を構える。

 一層寒気を感じる褐色白髪の男も、同じように棍棒を構え、息を呑んだ。


(何だ! 今までと明らかに違うじゃないか!)


 焦りを見せる褐色白髪の男に、冬華は静かに床を蹴る。

 と、同時に、クリスも我に返り、動く。


「冬華!」


 声をあげ、冬華へと突っ込む。

 だが、それよりも速く、冬華の槍が褐色白髪の男へと突き出された。

 淡い青色の刃は、鋭く大気を貫き、真っ直ぐに褐色白髪の男の胸へと向かう。


(くっ! ダメだ! 間に合わない!)


 クリスは左腕を伸ばすが冬華には届かない。


(ここで、また冬華に人を殺させるわけには――)


 クリスはそう思い、必死に腕を伸ばす。

 その時だった。

 金属音が響くと同時に、褐色白髪の男の体が吹き飛ばされる。

 火花が散り、上へと弾かれた槍は、冬華の手からすり抜け、天井へと突き刺さった。

 刃がしなり、長い柄が僅かに揺れ、木屑がパラパラと降り注ぐ。

 立ち尽くす冬華の傍に、剣を振り上げる一人の男が佇んでいた。

 赤紫の髪を揺らす、その男は、ふっと息を吐くと、穏やかな面持ちでニコッと笑う。


「いやー。間に合いました」

「レッド!」


 驚きの声を上げるクリスは眉を顰める。

 そこにいたのは紛れも無い勇者レッドだった。

 だが、その手に持っているのは聖剣ではなく、普通の剣だった。

 何故、ここにレッドが居るのか、そう思うクリスだが、それに対し、レッドは剣を構えなおし告げる。


「すみません。説明は後です。今は、逃げますよ!」


 レッドはそう言うと、呆然と立ち尽くす冬華を担ぎ走り出す。

 その行動に、クリスは声を上げる。


「ま、待て! 天童と剛鎧を!」


 振り返り、レッドの背にそう言うが、レッドは立ち止まらず答える。


「いいから! 逃げてください! あの二人は大丈夫ですから!」

「は、はぁ? どう言う事だ!」


 クリスはそう尋ねるが、その時、背後で男が立ち上がる音がした為、考えているだけの余裕は無く、走り出す。

 立ち上がった男は、奥歯を噛み締めると走り去る二人の背を見据える。


「くっ……あの野郎!」


 声を上げる褐色白髪の男は、二人を追いかけようとするが、膝が震え、その場を動く事が出来なかった。

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