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ゲート ~白き英雄~  作者: 閃天
最終章 不透明な未来編
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第229話 シオを取り戻す為に

 激しく火花が散り、ブーメラン状の刃が地面へと突き刺さる。

 双剣・嵐丸は風を裂き、大気を裂き、まるで全てを断ち切るかの如く、右へ左へと振り抜かれていく。

 相変わらず、獣魔族の青年はブーメラン状の刃を滑空させる。

 これが、獣魔族の青年の戦い方なのだろう。

 荒れ狂う暴風の様に、激しく嵐丸を振るうアースは、深い蒼の髪を振り乱す。

 その表情は鬼気迫るものがあり、獣魔族の青年は完全に気圧されていた。


(くっ! な、なんだ! コイツは……)


 額に薄らと汗を滲ませ、獣魔族の青年は半歩下がった。



 場面は変わり、最前線。

 冬華・クリスサイドへと移る。

 漆黒の鎧をまとう勇者アルベルト。

 彼の圧倒的な力が、次々と兵を蹴散らす。

 その一振りで数十と言う兵が吹き飛ばされ、冬華もクリスも手を出す事が出来ない。


「こ、これが……かつての英雄に仕えた者の力……」


 驚きを隠す事の出来ないクリスは、ただ険しい表情を浮かべる。

 一方、冬華も動揺していた。

 このままでは、また何も出来ないと。

 そんな折だ。思い出す。

 陣が渡してくれたスマホの存在に。


(何か、いい道具は……)


 冬華はそう願い、スマホをポケットから取り出すと、電源入れた。

 スマホが起動し、その画面にアイコンが幾つか並ぶ。

 何が何のアイコンなのか分からない為、冬華が適当にタッチすると、音声が流れる。


『装備。対魔のリング』


 機械的な声に冬華は、ビクッ肩を跳ね上げ、スマホの画面へと目を向けた。

 その画面には黒いリングの映像と、対魔のリングの説明が記載されていた。

 簡潔に説明すると、対魔のリングは、冬華の使う悪魔の力を抑止する効果があるリングだ。

 悪魔の力を使用した時の副作用、冬華を蝕むその力を幾分か軽減すると、言う事だった。

 どれ程の効果があるのかは分からない。それでも、もしもの時の為に、冬華はそのリングを呼び出した。

 僅かに画面が光ると、スマホの中から対魔のリングが飛び出す。

 どう言う原理になっているのかは分からないが、冬華はそれを右手の人差し指へと嵌めた。

 それから、槍を呼び出し構える。

 そんな冬華へとクリスは声を上げる。


「冬華! ここは私が何とかします! あなたは、シオを探してください!」

「えっ! で、でも――」

「我々の目的はここで無駄に兵を失う事ではなく、シオを正気に戻す事です!」


 クリスはそう言い放ち、剣を振り抜く。

 それを、黒騎士アルベルトは剣で受け止める。

 金属音が響き、火花が散った。

 衝撃でクリスの銀髪が揺れ、その刃は震える。

 これでも、腕力には自信のあるクリスだが、アルベルトとの鍔迫り合いは勝てる気がしなかった。

 クリスの姿に、唇を噛む冬華は、周囲を見回し、


「分かった! 私は、シオを探して正気に戻すから! それまで、頑張って!」


と、声をあげ走り出す。

 それと同時に、クリスはアルベルトによってなぎ払われる。


「くっ……お願いします!」


 すぐに体勢を整え、クリスは低い姿勢でアルベルトへと突っ込む。

 右手の烈火と左手の焔狐に炎を灯し、クリスは右足を踏み込む。


「紅蓮二刀――」

「一閃!」


 クリスが烈火と焔狐を振り抜く前に、アルベルトの聖剣が一振りされる。

 それを防ぐ為に、右手に持った烈火を体の横へと立て、その一撃を受ける。

 衝撃がクリスの体を襲い、足は地面から引き剥がされた。

 軽々と吹き飛ばされるクリスは、地面を激しく横転する。


「くっ……」


 眉間にシワを寄せるクリスは、ゲホッゲホッと咳き込むと血を吐いた。

 今の一撃でアバラにヒビが入っていた。

 それだけ、アルベルトの一撃は重く勢いがあった。



 更に場所は中衛、ディーマットサイドへ移る。

 白銀のコートを揺らすディーマットは両手に魔力を込め、突如現れた魔人族の青年と激突する。

 すでに兵達にはコチラに構わず先に行けと、指示を出していた為、そこにはもうディーマットと魔人族の青年の二人しかいない。

 背中を丸めた上体から放たれるその一撃一撃が恐ろしく鋭く、ディーマットの魔導義手をも一太刀で切断してしまいそうだった。

 その為、ディーマットは肘にある挿入口から土の魔法石を入れ、魔導義手を硬化していた。

 それでも、剣を受けると時折、義手が軋む嫌な音が響いていた。


「くっ!」


 衝撃で後方に弾かれたディーマットはそう声を漏らす。

 そんなディーマットに、魔人族の青年は長めの黒髪を揺らし、合間から赤い瞳をチラリと見せた。

 二人の視線が交錯し、再び動く。

 右手の平にある発射口に魔力を集めるディーマットは、グッと拳をを握りこみ更に魔力を圧縮する。


(圧縮して威力を最大限まで引き上げる)


 ディーマットはそう自分に言い聞かせる。

 ディーマットは魔力を持っているわけではない。魔導義手に取り込んだ魔法石を燃料にし、魔力を込めるのだ。

 現在、手持ちの魔法石が少ない為、極力節約しなければいけないのだ。

 拳が魔力を帯び、輝く。

 それを見て、魔人族の青年は距離を取った。

 ディーマットの拳に纏った魔力の強さを感じ取ったのだろう。


(距離を取られたか……リーチ的に言って、コッチは不利だからな……)


 ディーマットは眉間にシワを寄せる。

 武器を持たず拳で戦うディーマットに対し、魔人族の青年は剣を所有している。これは、かなりディーマットには不利な状態だった。

 一撃でも貰えば致命傷になりかねないのだ。


「風塵……」


 背を丸め、腰の位置に剣を構える魔人族の青年に、ディーマットは寒気を感じる。


(まずい! これは――)


 この一撃は貰うわけには行かないと、ディーマットも右拳を振り被った。

 直後に、魔人族の青年の剣が下から切り上げる形で振り抜かれ、ディーマットもその拳を振り抜いた。

 そして、凄まじい衝撃が周囲一帯へと広がった。



 場面は――シオを探す為にクリスと別れた冬華へと移り変わる。

 馬に乗り、駆ける冬華は、全神経を研ぎ澄まし、周囲の気配を探った。

 その結果、この辺りで最も強い気配を感知し、そこへと最短ルートで向かっていた。

 明らかに兵達とは違う方向へと進んでいるが、冬華は気にせず直進する。

 やがて、冬華はその視界に捉える。

 真紅のマントに身を包む金色の髪を揺らす小柄な少年――シオを。


「シオ!」


 思わず冬華は叫ぶ。

 すると、シオの傍らに佇んでいたかつての獣王ロゼの右腕だった男バロンが、ゆっくりと振り返った。

 その眼差しに、冬華は思わず手綱を引き、馬を止めた。

 バロンの放つ殺気は圧倒的で、冬華は一瞬にしてその殺気に呑まれる。

 しかし、すぐに唇を噛むと馬から飛び降り、声を上げる。


「そこを退いて! 私は、シオに用があるの!」


 冬華がそう声を上げると、バロンはそれを鼻で笑い、拳を握り締める。


「我が王に何の用だ? 英雄、冬華よ」


 その言葉遣いが明らかに違う。

 その為、冬華はすぐに理解する。

 バロンもなんらかの力の影響を受けているのだと。

 唇を噛む冬華は、震える手に力を込める。

 やるしかないのだと覚悟を決め、冬華は声をあげる。


「シオ! 私が必ずあなたを助けてみせる! だから! 待ってて!」


と。

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