表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲート ~白き英雄~  作者: 閃天
バレリア大陸編
201/300

第201話 裏切りと内通者

 青雷をまとうアオの鋭い一撃がジェスを襲う。

 圧倒的なスピードと手数でアオはジェスを攻め立てる。

 それでも、ジェスは何とかその速度についていき、致命傷は免れるように剣を受け止めていた。

 怒りに任せ“雷火”を使用し、アオの体力、精神力は急速的に失われる。

 その為、五分もすれば、アオの動きも次第に鈍くなり、攻撃速度も落ちていた。

 その頃にはジェスも完全にアオの攻撃を受け止める事が出来た。

 弱々しい金属音が響き、アオの黒髪からは大粒の汗が飛ぶ。

 相当の疲労を抱えているのか、大きく開いた口から荒々しい呼吸音だけが響く。

 疲労の色を隠せないアオに対し、眉間にシワを寄せるジェスは、逆立てた真紅の髪を左手でなで、ふっと息を吐いた。

 脱力する様に肩の力を抜いたジェスは、剣を下すと真剣な表情を向け、尋ねる。


「もう気は済んだか?」


 悲しげな瞳を向けるジェスに、奥歯を噛み締めるアオだが、ここで雷火の効果が切れる。

 当然の如く襲い来る急激な疲労感に、アオの膝が震え、腰がガクリと落ちた。だが、すぐに両手を膝に着き、折れるのを堪える。

 そんな満身創痍のアオの姿に、ジェスは目を伏せ、静かに息を吐く。


「俺はあんた達と争いたいわけじゃない」

「ふざけるな……お前の所為で……お前達の所為で、コーガイは――」

「落ち着いて! アオ!」


 すでに体の力も入らず、今にも倒れてしまいそうなアオへと駆け寄り、レオナがそう声を上げた。

 前のめりになり倒れそうになるアオを支え、その瞳を潤ませるレオナは、唇を噛み俯く。


「もっと冷静になりなさいよ! あんたが、こんな調子でどうするの?」

「分かってる……分かってるけど……」


 目を伏せるアオが強く拳を握ると、その後ろでライが静かに口を開く。


「リーダー。俺はさっ、コーガイみたく、大人な対応は出来ねぇーし、コーガイみたくリーダーを叱咤する資格もねぇー。

 けど、あんたは、リーダーなんだ。誰よりも冷静に考えて、仲間を導くのがリーダーの役目だろ? コーガイだって、あんただからこそ、命を賭して戦ったんじゃないか。

 今のあんたじゃ、命を賭けたコーガイが可哀想だ」


 いつに無く真剣なライの言葉に、アオは握っていた拳を開き、肩の力を抜いた。

 分かっているのだ。自分がすべき事も、ジェスが悪くない事も。

 それでも、誰かを責めずにはいられない。

 誰かの所為にしないと、今にも心が壊れてしまいそうで、仕方なかったのだ。

 深く息を吐き出すアオは、唇を噛み締める。


「悪かった……」


 静かにそう呟いたアオへと、ジェスはゆっくりと頭を下げた。


「俺の方こそ、すまない。止められなくて……。だが、信じてくれ。俺はお前達の敵じゃない」


 真剣な表情でジェスはそう口にした。

 その言葉にアオは険しい表情を浮かべる。なら、何故、レジスタンスにいるんだ、そう言いたげなアオの眼差しに、ジェスは答える。


「俺は、ハーネスがこんな事の出来る奴じゃない事を知っている」

「けど、人は変るものよ?」


 レオナがそう言い、悲しげな眼差しをジェスへと向けた。

 小さく頷くジェスは、レオナの言葉を肯定しつつも、複雑そうに眉をひそめ、鼻から息を吐く。


「確かに、人は変る。けど、変りすぎだ。普通、変っても、人の芯にあるものって言うのは、そう簡単にかわるもんじゃねぇ。だが、今のハーネスはそれまで変っちまった。俺は、その原因を突き止めようと、レジスタンスに参加している」

「それで、見つかったのか? その原因って奴は?」


 腰に手をあて、ライが怪訝そうに尋ねる。

 すると、ジェスは瞼を閉じた後、静かに息を吐き出す。

 それから、瞼を開き、アオ、レオナ、ライの順に目を向けると、チラリと後方を窺い小声で告げる。


「まだ、それが原因かは分からない。だが、一つ確かな事がある」

「確かな事?」


 レオナの肩を借り何とか立つアオが、いつものアオらしい落ち着いた声でそう聞く。

 ジェスは小さく一度頷いた。


「ああ。俺の調べた結果、この国にいるレジスタンスの内通者は――六傑会のケイトだ」


 ジェスの答えにアオ達は驚愕する。だが、同時に、アオは納得する。

 今までの出来すぎたレジスタンスの侵攻も、それなら辻褄があった。



 アオ達がようやく答えに辿り着いた頃、南口ではキースがケイスの剣で負傷し、蹲っていた。

 傷が深く、溢れ出した血が地面を赤く染める。

 腹部を左手で押さえるキースは体を震わせ、立ち上がろうと力を込める。

 だが、膝に力が入らず、キースは蹲ったまま奥歯を噛み締めていた。

 そんなキースの後ろに佇むのは、赤毛と青毛が入り混じった髪を揺らす小柄な男、ケイトだった。

 右手に持った剣の切っ先からは鮮血がシトシトと零れ落ち、その雫が地面へと落ち王冠型に弾け血痕を残す。

 静寂が漂う中で、ケイトはゆっくりと蹲るキースへと歩み寄った。


「いやはや、ようやく、隙を見せたね」

「ぐっ……ガハッ! な、何故……」


 奥歯を噛み締めたキースは咳き込み、吐血しながら、そう尋ねる。

 すると、ケイトは静かに笑い、肩を竦めた。


「何故だと思いますか? 頭の良いあなたなら、その答えも分かるはずですよ」

「ふ、ふざけ……るな……」


 苦痛に表情を歪めるキースが弱々しくそう呟くと、ハーネスが長い髪を揺らしながら歩み寄る。


「おい。他の連中はどうなっているんだ?」


 ハーネスの問い掛けに、ケイトは顔をあげ笑みを浮かべる。


「えぇ。良い具合に分断できましたよ。あとは上手い具合に彼らが動いてくれれば、事は全て上手く行く」

「そうか……」


 剣を鞘へと納め、腕を組むハーネスはその視線をゆっくりとキースへと向ける。


「コイツはどうする? トドメは刺さないのか?」

「ああ。そうだね。トドメはキミに任せるよ」

「そうか……」


 ハーネスは鞘に納めた剣を再度抜き、キースを見下す。


「じゃあな。キース。永遠に眠れ」


 ハーネスはそう言うと剣を蹲るキースへと突き出す。

 だが、その直後、閃光が閃き、一本のナイフがケイトの頬を掠め、ハーネスへと向かう。

 それに気付いたハーネスはキースへ突き下すはずだった剣を止め、その場を飛び退いた。ナイフはハーネスの前を通過し、地面へと落ち乾いた音が無情に響く。

 薄らと笑みを浮かべるケイトは頬から流れる血を右手の甲で拭い、振り返る。


「まさか、生きていたのか……」


 訝しげな表情を浮かべるハーネスが、そう呟くと、ケイトが肩を竦める。


「あなたの部隊にも裏切り者がいたって事ですよ。全く……こんな不測な事態にならぬ様に、あの場で始末しておくつもりだったんですけどね……ルピー」


 ケイトの静かな声の先に、痛々しく包帯を巻かれたルピーが佇んでいた。

 オレンジの髪は、初めから黒く染まり、赤い瞳には怒りが滲み出ていた。


「まさか、あんたが裏切っていたとは思ってもいなかったよ」


 大きく肩を上下に揺らしながら、ルピーはそう口にした。

 傷はまだ完治はしておらず、呼吸をする度に胸がズキリ、ズキリと痛んだ。

 それでも、ルピーは腰にぶら下げたナイフを右手で抜き、強い眼差しをケイトとハーネスへと向ける。

 しかし、ケイトはそんなルピーを呆れた様に鼻で笑う。


「その体で僕達二人を相手にする気かい? 今度は確実に……死ぬよ?」


 殺気の篭ったおぞましい声に、ルピーの体が震えだす。

 こんなにも恐怖を感じるのは、いつ以来だろう。思わずそんな事を考えてしまう程の恐怖をルピーは感じた。

 感覚が研ぎ澄まされているからなのだろう。ルピーは感じていた。ケイトの恐ろしいまでの強大な力を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ