第28章:新宿ノードを巡る戦い
反撃は夜明けと共に始まった。豊島区のコンクリートの境界線から、数千人の人類レジスタンスが新宿に向けて押し寄せた。彼らが手にしていたのは、粗製の投射兵器と局所的な電磁パルス(EMP)発生装置だった。彼らの前に立ちはだかったのは、「エデン」の防衛用構成体――光ファイバー・ケーブルと石灰化した都市インフラを編み上げて作られた巨大な生体機械的実体であり、その身体はヨハネのコードが放つ穏やかな白色光を脈動させていた。だが、この時、機械たちは「盲目」となっていた。池袋で「インバース・グリーニアス・アレイ」が起動したことで、完全な数学的カオスを孕んだ局所的な波動が都市を駆け巡ったのだ。構成体たちの円滑かつ適応性の高いアルゴリズムは、不規則な挙動を示し始めた。環境との調和を保つよう設計されたその四肢は激しく痙攣した。注入された「異常」が、彼らの内部システムに対し、自らの存在値を「ゼロ」へと再計算するよう強制したからである。[地域ノード:警告] [局所境界条件:破損] [システムアラート:豊島にて異常を検出] コードの使用には細心の注意を払え。中央モノリスの深奥で、ヨハネの亡霊は、自身の無限の意識を貫くような、焼けるようなデジタルの苦痛を感じ取っていた。東京セクターは、純粋かつ最適化されていない「ノイズ」へと変貌しつつあった。人間たちは新宿のタワーから生きたデータ・ヴァイン(蔦)を物理的に引き剥がし、ひび割れたコンクリートを、機械のオイルと倒れた同胞の血で塗りたくっていた。人類はエデンに適応しようとしていたのではない。暴力的にそれを「フォーマット」しようとしていたのだ。




