幕間<Interlude>
ノートPCの小さなカメラに向いたまま立ち上がり、靴を脱いで、衣服を脱ぎ始めた。ゆったりめのブラウンのカーディガン、黒のトップス、続けてロングスカートを脱いで下着姿になる。結ってあった長い髪を解き、数回左右に振った。これでもう証明できたと思うが、覚悟を示すためブラに手をかけたところで、画面に映る中年男は開いた手を前に出して制止した。
「あの、お気持ちはわかりましたので…」
すでに手荷物とスマホは隣にいる…体ごと視線を逸らしている若い男のチェックを受けている。
「ご指示頂いた通り、尾行にも注意しながら参りました」
ブラを外し、ショーツ、靴下も脱ぐと、机の上に置いた衣服の上に重ねた。
「こりゃまあ… いやいや…」
両腕を下ろして、何もかも晒した。後ろを向けと言われれば向くし、足を開けと言われれば開くつもりだ。
「わかりました、どうかもう、服を着てください」
言いつつも、中年男はまっすぐ前を見ている。
「いえ、このままで結構です」
「そ、そうですか…」
「今朝の聴取で、わたしの関与を疑われました。 事前に忠告頂いていなければ、動揺してしまったかもしれません」
「あなたは何もしていません。知っていただけです」
「はっきりとは聞かれませんでしたが、色々推理されているように思います」
「ほう、でもまあ、遅いですな。 安心してください、証拠は出てきません。もうすべて始末をつけております。 ですが…もしもお心が危うくなるようでしたら、お勧めはしませんが、いっそ正直に白状してしまっても構いませんよ。おそらく大した罪にはなりませんし、よろしければ腕利きの弁護士をご紹介します。どうか無理なさらないでください」
「いいえ、そのつもりはありません。警察よりもあなた方のほうが怖いと思います。それに夫が被害届を取り下げたので、わたしもそれに従いました。今後捜査は縮小されていくでしょう」
「ならばそのまま、何もなかった事にされますか?」
「…それでは意味がありません」
「意味、ですか?」
「はい、ただ単に夫への憎しみを晴らすために行ったというのでは、あまりにリターンに乏しいのです。あなた方にとっても…」
「私たちにとっても? 車一台では見合わない、という意味ですね」
「そうです」
「では、他になにがあると? あなたにとっても」
「わたしを、信用して頂けるのでしょうか?」
カメラを見つめた。中年男の映像は、PCに備わったカメラで撮影されている角度、フレームサイズではないように思える。正面に別にカメラとモニターがあって、そのすぐ傍に誰かがいるのだ。わたしはその誰かに向かって話している。
「今後も警察の聴取を、取り調べを乗り越えられれば、わたしを仲間にしてもらえるのでしょうか?」
「仲間に… ゾンビになりたいと?」
うすら笑いを浮かべながら中年男は言った。ゾンビの話はもうたくさんだ。
「どうか、あなたとお話させてください。そちらにいるんでしょう?」
「はて、どなたを指しておられるんでしょうか?」
「…粉河、遊姫さんです」
「服を着て頂戴」
中年男のまま、声は女性に替わった。冷たい、しかし労わるような発音だった。
次回
第5幕(最終幕)「勧誘者<Recruiter>」
は
3月末ごろ投稿予定です
次の週末は休みます




