第9話 テレビにハマる賢者様、そして出発!
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疲れていたのだろうか、私はあの後丸一日寝てしまった。寝起きは最高だ。目覚めてから急いで近くのコンビニでご飯を買って食べた。ニコとバステトは自分でダンジョンに戻ってご飯を食べていたらしいので、食費がかさむこともなかった。
ネット通販で注文していた携帯食料と水、念の為に買った浄化機能付き水筒、そして寝袋が届いていたので、ニコに飲み込んでもらった。これで旅行の準備もバッチリだ。出発は今日の深夜だ。それまでテレビをつけて適当にニュースを流していると、ヘルメスがそれを興味深そうに見ていた。
「次のニュースです。北朝鮮、ミャンマー、タイ、ベトナム、キルギス、タジキスタンに続いてネパール、ウズベキスタン、アフガニスタンが中華共栄構想への加盟を発表しました。ネパールの加盟により、ミスリル生産量が高いヒマラヤダンジョン群の一つ、アンナプルナダンジョンが中華共栄構想の圏内となります。」
「これは民主主義にとっての脅威です!中華共栄構想は表向きは発展途上国への投資計画とされていますが、実際は民族浄化を伴う侵略行為とも言われています。反乱によって内蒙古自治区を失った中国は今やブレーキを失った暴走車です!日本政府は抗議では足りません!迅速な制裁措置をしなければなりません!」
と先の選挙で野党第一党となった自由党の議員。
それに与党へと躍進し、共産主義と定義が曖昧な"民主主義革命"を掲げる共栄党と連立を組んだ民意党の国会議員が応える。
「それは中国に対しても、加盟国に対しても大変失礼です!中華共栄構想というのは両国首脳の承認の元に行われるODAの様なもので、決して侵略行為ではありません。むしろ、我々は一体感のない西洋世界をこのまま盲信するような態度でいいのか、今一度考えなければなりません。」
「ダンジョン発生以前の我が国に対する領海及び領空の侵犯、そしてチベットとウイグルの悲劇を忘れたというのですか!」
こうして口論にも近い討論は続いていく。
「この与党の者、愚かだな。かつて、核兵器や自衛隊に関して言い争っていた時代があったと聞く。魔物である私からすれば、人間たちの世において力のない者は皆、淘汰されるとしか思えない。言葉で平和が訪れるなら、是非ともゴブリンたちとの対話を試みて欲しいものだ。」
「私としては中華共栄構想が広がれば広がるほど、行きづらい国が増えるからやめて欲しいかな。」
「そうであった。主よ、今夜ここを発つならばこの家に結界を張っていくとよい。楽園の扉は決して壊れぬが、この家にもしものことがあっては困るだろう。」
「いいけど、魔法ってどうやって使うの?」
「それなら儂が教えよう。床に手を当てて、<蛇神の加護>と唱えてみよ。」
私は床に手を当てて「<蛇神の加護>!」と唱える。なんか恥ずかしい。しかし、家全体に何かが流れ込むのが感じられた。これが魔法か。
「成功じゃ。これは太古の蛇の神の力を借りるもので、この家は彼女の鱗で守られる。危害を加える者は猛毒と恐怖に襲われる。」
「それは、相手死んじゃわない?」
「死にはせんよ。多分。」
今まで生きてきて、ここまで多分が怖いと思ったことないよ。
その後、私たちは仮眠を取って夜を待った。そして遂に深夜となった。
「じゃあ行ってくるよ、ヘルメス。」
「この家と<楽園>に何かあれば儂と剣聖の奴で何とかしておこう。せっかくの旅行なのだから楽しんでくるといい。」
「うん。じゃあバステト、お願い。」
ニコと私を乗せたバステトは屋根から屋根へと跳び、人の目に付かないように奥多摩へと向かった。
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