第57話 天命が改められる時 (1)
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<楽園>が世に知れ渡ってから五日、人々は混乱していた。衆議院が解散しなければ一週間で東京のどこかが攻撃されるという脅迫、迷宮開拓に革命をもたらすであろう資源の数々、そしてそれに対する日本政府の沈黙。更にその最中に起きた警視庁本部庁舎爆破事件。日本国民は混沌へと叩き落とされたのだ。
右翼のインフルエンサーたちはこれを好機と見てこぞって民意・共栄連立内閣の退陣を煽った。台湾迷宮報による連日のスキャンダル報道はそれを更に加速させたが、日本の新聞やテレビは左翼思想に回答しているので、これを黙殺しようとしていた。
アフマド・サルマンはこの混沌を利用して<楽園>の所在地を暴露、調布一帯は記者や厄介な動画配信者、警察官、そして正体不明の諜報員たちの巣窟と化していた。しかし、<楽園>付近の賃貸住宅には<Bee Hive>が潜んでおり、半径200メートルは異常な閑静を保っていた。
そんなある日、遂に<楽園>一帯に中華系マフィアの一団が強襲を仕掛けてきた。まだ警備体制が整っていない<Bee Hive>は攻撃が激しい西側の対応で手一杯だった。その形勢を利用するかの様に、一台の高級車が<楽園>へと迫る。
そんな作戦はシェリーの諜報活動のお陰で全て分かっていた。現在<Bee Hive>と戦闘中のマフィアは中国共産党の息がかかった工作部隊でもある<狐会>である。そして情報が正しければ、日本の共産主義政党、共栄党幹部たちが来る。そこには日本政府の迷宮大臣、沢田タイチも含まれているそうだ。
私は何が起きてもいい様に、シェリーさんと日本語を話せるアリスちゃんと一緒に自室で待機していた。本当はヘルメスも呼びたかったが、とある研究が佳境に差し掛かっている様で、研究所から出てくることはなかった。待機すること十分、遂にインターホンが鳴った。
「すみません、迷宮庁の者です。」
そこにいたのは背広を着た四人の男だ。
「はい、要件はなんですか?」
「こちらにダンジョンが発生しているとの報告がありまして......」
「人違いです。」
「はぁ......おい、隠し通せると思うなよ!そこにいるんだろ、小田原トモ!」
そう叫んだ男は扉をガンガンと叩き始めた。
「ここは私に任せて。」
そう言ったのはシェリーだ。
「足音からしてインターホンの死角に四人いる。独特の金属音も微かに聞こえたから、恐らく拳銃で武装している。」
そう言いながら、シェリーは拳銃を取り出し、銃口にサプレッサーを付けていた。マガジンに弾薬が込められているのを確認してから、それを滑り込ませる。
シェリーはビーチサンダルを履くと、私の家の扉に手を掛け、僅かに扉を開く。カチャッという音が鳴ると、外気と共に強烈な緊張が流れ込んでくる。沈黙が支配するこの空間は全てシェリーの計画通りだった様だ。シェリーはビーチサンダルを床に打ち付け、大きな音を立てる。動揺した誰かが僅かに声を上げた。その時、既に扉は全開で、西部劇のガンマンの如き拳銃捌きでインターホンの死角にいた男四人に死を贈る。防弾ベストを身に纏い、小型の拳銃をこちらに向けていた男たちは迷宮庁の付き添いには不釣り合いな荒くれ者の人相をしていた。しかし、眉間に正確に撃ち込まれた鉛玉は彼らの顔にささやかな安らぎをもたらした。
「で、話って?」
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